他人基準で自分の意志を押し殺していませんか? 「社内制度を使うこと」に罪悪感を持つのをやめよう
仕事でもプライベートでも、やりたいことは山のようにある。同時に、周りからのいろいろな頼まれごとにも向き合っていくと、いつの間にか予定はいつもパンパンに。この働き方、暮らし方は思っていたのと、ちょっと違う気がする……。そんなときに必要なのは、こだわりや常識、思い込みを手放すことなのかもしれません。連載「やめるための言葉」では、圓窓代表取締役・澤円さんと一緒に「やめること」について考えていきます。
休みを取ることへの意識の違い
夏休み、取りましたか?
会社によっては、全体で一斉休業というスタイルのところもあるようですね。各自で有給休暇をとるというスタイルの会社や組織もあるでしょう。
この「休みをとる」ということに対する日本人の考え方は、結構特殊なようです。
ボクは外資系にいたので、欧米の人たちの「休みをとるのは当然の権利」というポリシーをさんざん見てきました。
めちゃくちゃクリティカルなプロジェクト中でも、平気で2週間とか休暇を取るアメリカ本社の人もいたし。その辺の線引きを明確にするのは、欧米流って感じみたいですね。
アジアでは、わりと日本に近い感覚の国もあるみたいですけれど、休みを取ることに対してもっとも引け目を感じるのは日本人じゃないかなと常々感じています。だからこそ、お土産屋さんでは「お詫びの品」として最適な個包装のお菓子がわんさか売られたりしているわけですね。ボクもよく買ってたけど(笑)。
今のところこれが最新なのですが、2024年のエクスペディアのレポートでは、日本の有給休暇取得率が調査対象国中最下位であることを示しています。
このレポートの面白いのは、日本人の有給消化率は悪いけど、毎月分散して有給休暇をとっていて休み不足はあまり感じていないという結果が出てる点なんですよね。
「まとめてドーンと休みを取る」ってことには少々罪悪感を持ちやすいのかも?ということがちょっと透けて見えますね。
「人に迷惑をかけるかもしれない」という「他人基準」によって、長い休みをとらないというのは、他人の目を気にしがちな日本人の気質を表しているように感じます。
制度はあるけどなかなか利用されない例
さまざまな制度をアップデートして採用を強化したり、離職率を下げようとしたりしている企業が数多く存在します。
リモートワーク制度、副業解禁、リスキリング休暇、社内FA制度……。実にたくさんの社内制度が用意され、働きやすい環境が整っていると自信を持つ経営者もたくさんいることでしょう。
でも、実際にはなかなかこの制度が活用されていなかったりします。この原因の一つが、前述した「他人基準」にあると思っています。「人に迷惑をかけたくない」というマインドは、ボクはとてもいいものだと受け止めています。
ボクはAI時代において人間の仕事は「他人とうまくやっていくこと」と定義しているのですが、「人に迷惑をかけない」というのは非常に効果が高いと思うんですよね。
ただ、それが極端な遠慮につながり、自分の意志を押し殺すことになるのは、ちょっと違うのではないでしょうか。
「自分は自宅の方が集中できるけど、リモートワーク中にサボっていると思われるのは嫌だから出社しよう」
「友人の会社を副業でお手伝いしたいけど、本業をおろそかにしていると思われたら困るからやめておこう」
「他の部署で違う仕事にチャレンジしたいけど、上司が怒りそうで嫌だな」
こんな風に、「他人基準」で自分の行動を制限してしまっている人に、数多く会ってきました。そして、「制度はあっても使うことは許さん」というマネージャーにも会ったことがあります。
「リモートワークは、サボるに決まっている」
「副業をやるような奴は、本業で結果が出せるわけがない」
「あいつはほかの部署に行こうとしている。裏切り者だ!」
これ、本当に耳にしたセリフです。そのようなマネジメントをしている組織では、どんなにいい制度を作っても活用はされないでしょうね。
このようなマネジメントをしてしまったり、同僚に対してそのような目を向けたりする人たちの背景には、「自分は我慢しているのに」とか「自分が若いころはそんな制度はなかった」とか、被害者意識があるのではないかと思っています。
そんな被害者意識を持っているマネージャーや同僚のために、自分のキャリアにブレーキをかけるのは、あまりにももったいない。自分のキャリアは自分で作るんだ!という意思があるなら、罪悪感を持つことなくどんどん制度を活用することをお勧めします。
使わないことがリスクになる制度
そして、前述の制度以上に活用しないと致命傷になりかねないものもあります。
それは、ハラスメント相談窓口や内部通報窓口です。ある程度の規模の組織になると、これらの制度を用意しているところも多いのではないでしょうか。
これらの制度は、健全な組織運営のためには非常に重要です。何か本当に困ったり、問題だと感じたりしたことを報告することは、ビジネスパーソンとしてとても大事なことだと思います。
ハラスメントを我慢することは、自分自身を壊すことにつながりますし、新たな被害者を生む可能性も高まります。不正に気が付いたのに通報しないことは、今いる組織が崩壊するリスクから目を逸らすことになります。ハラスメントや不正を報告した社員に不利益な取扱いをすることは、法律で禁じられているんですよね。
ボク自身も、この制度を使ったこともありますし、使うことを促した経験もあります。ボクのケースでは、制度を活用したことで、結果的に健全な組織運営につながることを自分の目で確かめることができました。社内の窓口が使いにくければ、社外の窓口という選択肢もあります。
ハラスメントに関しては、厚生労働省が「あかるい職場応援団」というページを用意してくれていて、多くの情報がまとまっています。
社内不正などに関しては、消費者庁が公益通報者保護制度相談ダイヤルを用意してくれていて、どのように通報すればいいかなどの相談に乗ってくれます。匿名で相談できるのも安心ですね。
そして、これらの制度のその先には、プロが控えているはずです。最終的な判断ができるプロがいるのですから、遠慮なく頼ろうじゃありませんか。
これらの制度というのは「ちょっと便利」とかそういうレベルのモノではありません。ご自身の心身の健康や組織の存続を担保するために、法律に基づいて厳正に定められている制度です。
あなたが抱え込んでつらい思いをする必要はありません。ハラスメントや不正に関する制度を使うことに対する罪悪感は不要です。
むしろ、その罪悪感がより一層事態を悪い方向に向けてしまうかもしれません。制度を活用することこそ、あなた自身を救うことにも直結するのです。
アイキャッチ制作=サンノ
編集=ノオト


