目の前の仕事に集中するから信頼される。「人脈をつくらなきゃと焦る」のをやめよう
仕事でもプライベートでも、やりたいことは山のようにある。同時に、周りからのいろいろな頼まれごとにも向き合っていくと、いつの間にか予定はいつもパンパンに。この働き方、暮らし方は思っていたのと、ちょっと違う気がする……。そんなときに必要なのは、こだわりや常識、思い込みを手放すことなのかもしれません。連載「やめるための言葉」では、圓窓代表取締役・澤円さんと一緒に「やめること」について考えていきます。
ボクがやらないと決めていること
おかげさまで、ボクにはたくさんの素敵な友人がいます。ほとんどが、ここ10年くらいでできた友人です。Facebookの友達もとうの昔に5000人の上限を超え、サブアカウントもつくりました。
友人の中には、相当な有名人もたくさん含まれています。それこそ、書店のビジネスコーナーには、たくさんの友人の名前が並んでいます。そんなボクのもとには、こんなお願い事が時々来ます。
「XXさん紹介してください!」
気持ちはわかります。ボクを知っている人からしたら、自分がどうしても知り合いになりたいなと思う人にたどり着く最短コースに思えますからね。
でも、ボクは基本的にお断りすることにしています。(例外はありますけれど)
理由は二つ。一つ目。その人とのつながりは、自分の運命によってつくられたもので、そのつながりを続けていくのはボクの意志が働いています。そして二つ目。つながりの維持のためには、ボクの信頼貯金が不可欠です。これは人に簡単に譲渡できるものではない、と考えています。
ボクは15年ほど前に一度だけ人を紹介してもらったことがあります。(後にも先にも人に紹介を頼んだのはその一回だけ)
同時にお二人紹介してもらったのですが、先方からすれば「なんでこの人と会わなきゃいけないんだ?」が本音だったそうです。(この話は後から聞きました。今でもありがたいことにご縁は続いているんですけどね)
その後、ボクもそこそこ名前が世間に知られるようになって、「紹介してくれって頼まれてるんだけど、繋いでもいい?」と聞かれることも増えました。
「是非是非!」ってなることもありますが、「んーー、それはボクの人生にどうプラスになるんだろうか」とマッチャー的思考(見返りを求める人)になることもあります。
紹介、という近道を求める人には、一定の警戒心を持つ方が安全かなって思っています。その相手がとんでもないテイカー(受け取る人)だったりすると、ボク自身も紹介のために間に立った人も困りますからね。
※マッチャー・テイカーの定義については、拙著『The Giver 人を動かす方程式』(文藝春秋)をぜひご覧ください(笑)。
そもそも人脈はどのようにできるのか?
ボクが多くの人たちとつながりを持てるようになったのは、やはり人前に立って話をする機会が増えたことと連動しています。イベントなどのバックステージでお話させてもらったり、パネルディスカッションで一緒に登壇したり、同じスタジオで収録したりして、仲良くなるパターンが多いですね。
その時は、ボクは単なる自己紹介ではなく「この時間を楽しもう」という意識が働いて、どうせ話すなら楽しく、と思って会話するようにしています。登壇される方が、他の講演などで使えそうなネタを提供したりすると、大変喜ばれることもあります。
そうやって何かしらの「ギブ」をすることで人脈と呼ばれるものはできると考えています。
なお、ボクは人脈という言葉を使うのは好きではありません。ネガティブな意味の言葉ではないことは分かっているのですが、昨今のビジネス界隈での「人脈」という単語が使われるコンテキストが、ともすれば怪しげなものと繋がっている場面を目にすることが多く、なんとなく敬遠したくなっているのが本音なんですよね。
とはいえ、人のつながりを表す言葉は「人脈」なので、その本質を大事にするという前提で「人脈」で通すことにしましょう。
ボクは「異業種交流会」と呼ばれるイベントに、ちょっとばかし懐疑的だったりします。人のつながり「だけ」をつくるために時間を使うのは、なんとなく効率が悪いように感じてしまうのと、手段の目的化っぽくも見えてしまうからです。
テック系のコミュニティイベントなどは、「テクノロジー」というコンテキストが共有できている人の集まりを通じて、結果的に人とのつながりが深まっていくものなので、人脈をつくることだけに特化しているわけではないと解釈しています。
目的なく人脈だけをつくる、ということにボクはちょっとした違和感を持つんですよね。
「タスクフォーカス」を心がける
AIによって仕事の環境は大きく変わっていくことになります。これは決定事項であり、不可逆です。AIにできないことのトップがまさに「人のつながり」だと講演でも度々お話ししています。
「やっぱり人脈じゃ〜ん!」って思われたかもしれませんが、その人脈のつくり方が大事になってくるわけです。
人脈は「結果として」できるものである、というのがボクの理解です。そのためには、やはり「目の前の仕事に集中すること」が大事だと思うわけです。ただ、「目の前の仕事」は勤務先だけに限定する必要はないというのがポイントです。
いろいろなコミュニティに参加して、ちょっとしたボランティアに挑戦するのも大いに結構ですね。あるいは友人が始めた会社やお店のお手伝いをちょっとしてみるのも視野を広げるという意味では有意義です。
このような副業においても大事なことは「タスクフォーカス」のマインドセットです。タスクフォーカスとは、「自分がやらなくてはならない行動に集中する」という概念です。
この話は2025年7月24日公開の『「“何者かにならなきゃ”と思う」のをやめよう』回でも紹介させていただきましたが、ワールドカップもあったことですし、再度ご紹介しましょう。
世界で盛り上がったサッカーのワールドカップで言えば、PKを蹴る時に「枠内を狙って、しっかりと蹴り足を振り抜くこと」に集中するのがタスクフォーカス。
「これをミスると決勝トーナメントに出られない」
「外した後のSNSのコメントが怖い」
「止められたら監督にめちゃくちゃ怒られるだろうな」
これは、「アウトカムフォーカス」と呼ばれていて、目の前のことに集中できていない状態とも言えます。そして、アウトカムフォーカスになってしまった人ほど、ミスをしやすいという傾向があります。
仕事に集中すれば、結果が出る。人はその結果を信頼することになります。「自分のキャリアにプラスになるから」というアウトカムフォーカスで仕事をしても、人の信頼に繋げるには遠回りになってしまうのではないでしょうか。人脈は、信頼によってつくられるものです。
焦って人脈をつくろうとして、怪しげなサイトのイベント募集に引っ掛かるくらいなら、自分の仕事で人に喜んでもらうことに集中してみてはいかがでしょう。その方が、ずっと続く素敵な人間関係の礎になってくれますからね。
アイキャッチ制作=サンノ
編集=ノオト


