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市場で評価され、周りから必要とされるマネージャーとは? 昇進を恐れるのをやめよう

仕事でもプライベートでも、やりたいことは山のようにある。同時に、周りからのいろいろな頼まれごとにも向き合っていくと、いつの間にか予定はいつもパンパンに。この働き方、暮らし方は思っていたのと、ちょっと違う気がする……。そんなときに必要なのは、こだわりや常識、思い込みを手放すことなのかもしれません。連載「やめるための言葉」では、圓窓代表取締役・澤円さんと一緒に「やめること」について考えていきます。

島耕作的生き方

みなさん、『課長島耕作』ってご存知ですか?

1983年にスタートして、課長から部長〜取締役〜常務〜専務〜社長〜会長と登り詰め、相談役や社外取締役にまでなるという、会社員人生がそのまんま本人の人生みたいな漫画ですね。

この漫画の特徴は「出世していく」というプロセスが物語として成立していることです。島耕作自身は、めちゃくちゃ出世欲があるタイプではなく、結果的にポジションがアップしていくという内容でした。これ、結構ポイントなんですよね。

高いポジションを得ることを目的にするのではなく、いい仕事をする結果としてポジションがアップしていくということで、自己実現ができたというストーリーが印象的でした。

日本企業が長らく共有してきた“理想的サラリーマン像”としては、割とリアリティがあるとも言えるのではないでしょうか。「サラリーマン」という和製英語が定着した社会において、「出世は正義」というニュアンスが結構含まれている気がしています。(この記事では、あえて「サラリーマン」という古い言葉も使っていきます)

出世、すなわち昇進をすることによってできることが増え、さらに給料もアップする。仕事における自己実現と、プライベートの充実が同時に満たされる。

日本の場合には昇進と昇給が完全にセットになっている人事制度が定着していて、「高給取りになるには昇進しなくちゃいけない」という縛りのようなものがありました。

新卒一括採用によって入社して、「よーいドン」でキャリアスタート。あとは、定年という一つのマイルストーンまでにどこまで昇進できるか。その結果が、自分の人生の通信簿になる。

これが長年、サラリーマンという生き方の根本となる価値観を醸成し、定着してきたのは間違いなさそうです。

最近よく聞く「昇進したくない」マインド

ただ、最近はちょっとその様子が変わってきたようです。端的に言えば「昇進を望んでいない」という人が増加していることが、いろいろなメディアでも取り上げられていますよね。

日本経営協会の『若手社会人就労意識ギャップ調査報告書2024』によると、就職3年前後の正規雇用者で「昇進(昇任)したくない」が58.4%に増え、前回調査(2019年)より15.8ポイント上がっています 。

また、同じく日本経営協会の『女性管理職意識調査報告書2021』によると、現状維持をのぞむ人が32.8%で最も多く、昇進希望者は14.5%であるとレポートされています。

昇進を望まない理由は、多くのレポートにおいて「責任や仕事量が増える」がトップになっています。この裏には「仕事の量が増える割に報酬はアップしない」や「ライフワークバランスが悪くなる」といった理由も含まれています。

たしかに、日本の「中間管理職」と呼ばれるポジションは、マネジメント業務だけではなくて自分自身もプレーヤー的に動く必要がある場面もあり、いろいろと忙殺されがちのようですね。

特に、いわゆる「Job Description」が明確になっておらず、業務範囲がフワッとしていたりして、「とりあえずなんでもカバーする役割」になりがちなようです。

ボクがいたマイクロソフトは、マネージャーの仕事はあくまでマネジメントであり、プレーヤーとして動くことは「オプション」のような扱いでした。誰かの穴埋めのために動くのは、本当に例外的な仮の措置であり、人が抜けたら必ず埋めるというオペレーションが徹底されていた印象です。

なぜならば、マネジメントは片手間にできるような仕事ではなく、「マネジメントに集中すること」が最も大事だと定義されていたからです。

ボクは、「管理職」という言葉が個人的に好きではありません。マネージャーの仕事は管理ではなく、メンバーが効率的に動けるような環境を整え、問題が発生したらいち早くそれをリカバリーすることだと思っているからです。

定型タスクになっている管理業務は、それこそAIの方が絶対得意なわけで、わざわざ人間がやるような仕事じゃないよな~っていうのが正直なところです。

でも、「管理職」という言葉は完全に浸透しきっており、そして「管理業務」のために多くの時間を使っているのが実態でしょう。そして、そのような姿を見ていると「ああはなりたくないよな」と思うのも、自然な話ではあります。

それでもやっぱりやってみる価値はある

ボクは転職支援サービスを提供している会社と深い関わりがあります。今は、JAC リクルートメントのデジタルアドバイザーを拝命していますし、ビズリーチは創業間もないころからずっと顧問としてお手伝いしてきました。

そのおかげで、転職市場を客観的に眺める機会に恵まれていたわけですが、とにかく重宝されるのはマネージャー経験者でした。それも「抽象的思考ができるマネージャー」はどこの会社でも大人気で、取り合いになっていました。

なんといっても「抽象的思考ができる」ってところがポイントです。逆に「具体的にしか考えられないマネージャー」というのは、こういう人たちですね。

・その会社のルールの範囲でしか考えられない
・自社製品に関すること以外は何も知らない
・社会のニーズよりも社内の暗黙知を優先させる

今まで数多くの管理職経験者と会ってきましたが、この手の人って少数派ではありません。

また、「プレイングマネージャー」と自称する人も要注意ですね。プレーヤーとマネージャーを兼務するのって、口で言うほど簡単なことではありません。むしろ、「両方において超人的な才能がないと成り立たないんじゃない?」とさえ思います。「両方やっています」って人は、マネジメントがおろそかになっているパターンが少なくないように感じます。(ボクの経験則ですけれど……)

「やらされているから仕方がないんです」と思う方もおられるでしょうが、メンバーからしたらマネジメントが十分機能してないのは、けっこうな地獄ですからね。状況改善を上層部に求めるのも、仕事のうちと考えてみてはいかがでしょう。

自分の人材価値を高めたいと思うのであれば、マネージャーになるのは本当にお勧めです。そのうえで、抽象的思考を同時に磨くようにすれば、ビジネスパーソンとしての価値は跳ね上がります。

「プレーヤーとして抽象的思考を磨けばいいんじゃないの?」とお思いになるかもしれませんが、マネージャーになると「メンバーを俯瞰するポジションが得られる」のが最大の価値です。

ビジネスは、多くの人たちが複雑に絡み合い、相乗効果を発揮することで社会貢献を最大化するものです。そのような複雑な関係性を俯瞰するうえで、抽象的思考は極めて重要になります。

前述の「具体的にしか考えられないマネージャー」と対をなす「抽象的思考ができるマネージャー」の脳内は以下の通りです。

・業界や自社の常識を「前提」ではなく「仮説」として捉え、他業界や異分野の知見を組み合わせて考えられる
・自社製品そのものではなく、「顧客が本当に解決したい課題」や「社会構造の変化」から逆算して意思決定できる
・社内ルールや暗黙知を守ることを目的化せず、「なぜその仕組みが存在するのか」という本質を問い直し、必要ならルールそのものを更新できる

マネージャーとしての権限を持ちながらこういう思考をするようになると、本物の「シゴデキ人間」になれます。

そして、このような思考をしつつマネージャー経験をしておけば、例えば独立したときや組織変更でプレーヤーになったとき、驚くくらいにパワーアップしていることでしょう。

ぜひ、昇進そのものを恐れず、素晴らしい機会だと思ってやってみることをおすすめします。

アイキャッチ制作=サンノ
編集=ノオト