通知で動くのは、他人のペースで働くこと。即レスに振り回されるのをやめよう(澤円)
仕事でもプライベートでも、やりたいことは山のようにある。同時に、周りからのいろいろな頼まれごとにも向き合っていくと、いつの間にか予定はいつもパンパンに。この働き方、暮らし方は思っていたのと、ちょっと違う気がする……。そんなときに必要なのは、こだわりや常識、思い込みを手放すことなのかもしれません。連載「やめるための言葉」では、圓窓代表取締役・澤円さんと一緒に「やめること」について考えていきます。
即レスは大事ではあります
この連載は「やめる」がキーワードになっているわけですが、今回のテーマはなんと「即レス」。
「え? 即レスはシゴデキ人間の基本動作では?」と思う方もいますよね。
はい、その通り。即レスはシゴデキ人間の基礎として太古の昔から語り継がれている人類の常識ですね。
「おいおい、矛盾してるじゃないか!」と怒らないでください、ちゃんと整理していきますので(笑)。即レスは確かに大事です。
「メール、確かに拝見しました」
「いただいたメッセージ内容を踏まえて確認します」
「◯時までにコールバックします」
このようにすぐ反応があれば、相手はひとまず安心します。
逆説的に言えば、遅レスは仕事の相手を不安にさせ、信頼を損ねがちです。
「メール送ったけど、全然返事ないぞ……」
「チャットに既読が付いたけど、反応がないのはなんでだ?」
「コールバックお願いしたけど、全然かかってこないなぁ」
こんなことがあると、相手は「この人とのやり取りはリスクがあるな」と思われてしまい、その後の仕事にネガティブな影響が出てしまいます。なので、早めの反応は大事ですし、できるだけいろんなことを前倒しで片付けることは、ビジネスパーソンとして大切にしたいマインドセットです。
ただ、「即レスをすること」と「パフォーマンス高く仕事をすること」は、完全一致するわけではありません。
通知をいくつオンにしていますか?
さて、これを読んでくださっているあなたは、システム通知をいくつオンにしていますか?
メール、カレンダー、チャット、Teams、Slack、LINE、その他の各種業務アプリケーション……さまざまな通知がちょくちょく上がってきていませんか?
パソコンやスマホだけではなく、最近は腕時計型デバイスにまで通知が来るので、色々とせかされている気分になる方もいるのではないでしょうか。即レスのきっかけがこれらのシステム通知になっている人は、ちょっと要注意だと思っています。
というのも、通知は「相手都合」で送られてくるもので、自分のペースとは無関係です。裏を返せば、通知を基準に仕事をすることは、自分のペースで仕事をすることが犠牲になるとも言えるわけです。
通知は、相手に気づかせるために機能するわけですから、集中力をしっかりと断ち切ってくれます。Slackの「シュコココ!」が、緊急警報のように感じて身構えてしまう人もいるのではないでしょうか。
今のビジネスパーソンは、同時並行でさまざまなタスクをこなしている人も多いですよね。次々にくる通知を片っ端から拾い上げて、マルチタスクで進めないと間に合わない……。そう思っている方もたくさんいることでしょう。
ただ、このマルチタスクというのがなかなかの曲者で、効率よく進めているつもりが、実はめちゃめちゃ効率悪いことを証明したレポートがいくつもあります。
262名の学生を対象としたスタンフォード大学の認知的制御に関する研究では、日常的にマルチタスクを行う人ほどタスク切り替えや不要な情報の排除が苦手であるというデータが示されており、一見効率的に思えるマルチタスク作業が生産性低下につながる可能性が高いことを示しています。(出典:出典:Eyal Ophir, Clifford Nass, Anthony D. Wagner “Cognitive control in media multitaskers” PNAS, 2009)
通知によって、強制的にマルチタスク環境に置かれている人は、かなり効率の悪い状態で仕事と向き合っている可能性が高そうですよね。
でも、「即レスしなくちゃ……!」という呪いにかかっていると、ついつい通知に合わせて仕事をしてしまう、そんな気持ちもよくわかります。
ただ、通知を起点に仕事をすると、他人の予定表で働くことになります。自分で仕事の優先順位を決めているつもりでも、実は通知を送ってきた相手に決めてもらっている状態かもしれません。
まずは自分の「スピード」を知る
ちなみにボクは、画面ポップアップやサウンドによる通知は、全てオフにしてあります。そして、定期的に自分から各種コミュニケーションを見に行くようにしています。これは、全てのタスクを「自分のペース」で進めるための工夫です。
「即レス」という観点では、若干のタイミングのずれが出る可能性はありますが、1時間に一度程度チェックしに行って、必要に応じて反応をしておけば、「ものすごく遅い」という印象を持たれる可能性はほぼないと考えています。
何より、通知という「割り込み」が起きない分、思考の連続性が担保されるのが一番のメリットになっています。通知きっかけでタスクに取り組むのではなく、常に自分がタスクのきっかけになるようにすることが、生産性高く仕事をする上で大事ではないかと考えています。
ボクは独立して仕事をしているので、普段の仕事場には誰もおらず、物理的に誰かから割り込まれることはありません。
しかし、オフィスにいる方は、「誰かから声をかけられる」という形の割り込みがとても多いのではないでしょうか。それを無視するのは人間関係にネガティブな影響が出てしまうので、優先度は高めておいた方がいいでしょう。
その分、システム通知に対しては「自分のペース」を守ることを意識した方がいいでしょう。外部刺激に依存した仕事を続けてしまうと、「自分の頭で考えて仕事をする」というビジネスパーソンの基本動作ができなくなるのではないかな……と心配になります。
自分のペースで仕事をするために大事なことは「自分の仕事のスピードを知る」ということです。タスクを何分・何時間・何日でこなすことができるのかを知っておかないと、スケジュールは立てられないですよね。
自分の仕事のスピードは「平均スピード」と「トップスピード」の二つを認識することが大事です。「日常的にこのスピードは出せるな」って認識していれば、日々の仕事のペースを計算できるようになります。
トップスピードを知っていれば、「いざという時」に一気に片付ける目処を立てることができます。そして、平均スピードを知っておけば、やりとりする相手に対して「何時までに返信」「何月何日に納入」といった具体的な日時や時期を示すことができます。
即レスも大事ではありますが、仕事は「具体的な行動」が全て。内容の薄い反応を早くするよりも、明確な時間軸を共有して仕事をすることが「シゴデキ人間」にとって大事な要素です。
「即レスをやめる」のではなく、「即レスに振り回される」のをやめる。ぜひお試しあれ。
アイキャッチ制作=サンノ
編集=ノオト


