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ネコ型、イヌ型、あなたはどっちの会社員? ─ 働き方の祭典「TWDW2021」1日目レポート

毎年11月の「勤労感謝の日」に合わせ、7日間にわたって開催される働き方の祭典「Tokyo Work Design Week(以下、TWDW)」。

9年目を迎えたTWDW2021は「ネコに学ぶ働き方」をテーマに、7日間連続のオンライン開催となりました。初日は「ネコと会社員」と題し、総勢10人によるパネルディスカッション。その様子をダイジェストでレポートします。

<イベント概要>
Tokyo Work Design Week 2021
11/17(水) 
1日目「ネコと会社員」: Keynote Session

■ゲスト(敬称略)
仲山 進也(Shinya Nakayama)|楽天大学 学長
藤野 英人(Hideto Fujino)|レオス・キャピタルワークス代表取締役会長兼社長
島原 万丈(Manjo Shimabara)|LIFULL HOME’S総研所長
流郷 綾乃(Ayano Ryugoh)|スパイスファクトリー株式会社 取締役CSO
倉貫 義人(Yoshihito Kuranuki)|株式会社ソニックガーデン 代表取締役
伊禮 真(Makoto Irei)|琉球銀行 営業統括部メディア戦略室室長
我堂 佳世(Kayo Gado)
宮本 恵理子(Eriko Miyamoto)|インタビュアー・ライター・編集者
戸村 朝子さん(Asako Tomura)|ソニーグループ株式会社 コーポレートテクノロジー戦略部門Group1統括部長

TWDW2021の1日目は、オーガナイザーの横石崇さんの挨拶からスタート。今年の全体テーマとなった「ネコに学ぶ働き方」は、楽天大学学長の仲山進也さんが上梓した『「組織のネコ」という働き方』(翔泳社)をモチーフにしています。その流れで、横石さんと仲山さんによる「組織のネコ」に関する説明が行われました。

ダイアグラム, 概略図

自動的に生成された説明

著書の中で仲山さんは、働き方を大きく4つのタイプに分けています。組織に忠実なタイプを「イヌ」、組織よりも自分の価値観に忠実なタイプを「ネコ」、そして従来型の立派なリーダーとして群れを統率するタイプを「ライオン」、ネコの上位互換を「トラ」と位置付けました。

そして、これまでは組織でイヌとして働き、やがてライオンを目指しなさいというのが日本社会では美徳されていましたが、最近ではマネージメントの仕事につきたくないと考える人が増え、働き方の価値観が変わってきていると仲山さんは言います。さらに、それぞれのタイプの相性として、イヌとネコは考えの違いから互いを軽蔑しがちだと指摘しました。

その一方、多様性の社会の中で「それぞれのタイプが、お互いの価値観を理解しあった上で、得意な役割をすり合わせながら、組織が作れるとハッピーになれる」と視聴者へメッセージを送り、オープニングセッションが終了しました。

画面左上から、横石さん、仲山さん、藤野さん、島原さん、倉貫さん、戸村さん、我堂さん、宮本さん、流郷さん、伊禮さん

続いては、総勢10人によるパネルディスカッションです。仲山さん曰く、今回のパネリストは「トラ中のトラ」ばかり。それを検証すべく、仲山さんが用意した10項目の「組織のネコ度チェックリスト」を参加者たちにチェックしてもらったところ、全員が8つ以上に該当する見事なネコっぷりを見せました。

パネリストの中では少ない8つにチェックをしたスパイスファクトリーの流郷さんは、「『社内キャリアのレールの先に到達している人の姿にワクワクしない』は、私の場合は逆にワクワクしちゃいます。これは所属している会社によって変わりますよね」と当てはまらなかった理由を説明しました。

この意見を受けて、仲山さんに「組織のトラ」を提唱したレオス・キャピタルワークスの藤野さんは、「昭和96年型と令和3年型の企業」の違いに言及しました。

「今年は令和3年で、昭和にすると96年。会社を見ていると、今でも昭和のまま生きている会社が結構あるんです。私の方針として、なるべく昭和の会社に投資しないようにしています。特に昭和96年型の会社の場合、残念ながら社内キャリアのレールの先に到達している人の姿にワクワクしないことが多いですね」(藤野さん)

グラフ, ツリーマップ図

自動的に生成された説明

流郷さんと同じく8つにチェックをしたソニーグループの戸村さんは、「『群れに組み込まれるのがニガテ』だけど、仕事上はどうしても群れを作ることもあるので……」と該当しなかった理由を明かしました。

すると、仲山さんは「群れに『組み込まれる』かどうかがポイントです。自分で群れを作るのはトラも変わりません。ただ、何のために群れに組み込まれているのかわからないシチュエーションが嫌と感じるのです」と説明。これを受けて戸村さんは、「それならマルになるので、9つですね」とネコ度をアップさせました。

さらに、戸村さんがチェックしなかった「同調圧力をかけられるのも、かけるのもキライ」について、仲山さんはこう説明します。

「同調圧力をかけるのもかけられるのも嫌がるのがネコで、物事に取り組む意味を語るのがトラです。一方、『社長が言っているからやりましょう』と同調圧力をかけるのがイヌ。上司から同調圧力をかけられると文句は言いますけどね」

この話を聞いた戸村さんは、「じゃあ、それもマルですね(笑)」と、最終的に10項目すべてのチェックリストが埋まりました。

仲山さんが次に開いたスライドは、「組織のトラの共通特性」チェックです。こちらは全10項目のうち、全員が9つ以上に該当しました。

オーガナイザーの横石さんは、最後の項目「展開型キャリア(運ばれるキャリア)で活動が広がっていく」は、自身がまさにそのとおりだと感じたそうです。

仲山さんは、「組織の中のトラは、キャリア計画を立てて邁進していくタイプとは異なり、目の前の仕事を面白がりながら知り合いを増やしているうちに、様々な声がかかるようになります。そして、そのままどんどんと転がって思いも寄らない面白いキャリアにたどり着くタイプですね」と補足しました。

藤野さんは、働き方スタイルにおけるメンバーシップ型とジョブ型が、イヌとネコの違いに近いだろうと指摘しました。

「イヌ型はメンバーシップ型、ネコ型はジョブ型。人材の流動性が低いのはメンバーシップ型で、高いのはジョブ型。社内教育でも、上司の指導・研修・ジョブローテーションはメンバーシップ型で、ジョブ型は自己研鑽と言えるでしょう」(藤野さん)

さらに仲山さんは、「トラ型のタイプは『本業は何?』と聞かれることが多いですよね」と発言。これを受けて藤野さんは、「イヌ型の人は『何業であるか』にこだわる傾向がありますね」と、これまでの経験を踏まえて話を展開しました。

登壇者の中で唯一、プロフィールに肩書を記さなかった我堂さんは、自身が何者であるかについて、こう話してくれました。

「やりたいことはあまりないけど、どうせ仕事をするなら楽しいほうがいいなと思っています。そうしたら『楽しそうに仕事していますよね』とよく言われるので、ビックリしてしまうんですよね(笑)。それで、新しいものを生み出してって言われて進めていると、今度は別の人から『何をやっているんですか?』と聞かれて、どうにもうまく説明できない。そんな感じで、どこの部署が担当していいのかわからない仕事をしているうちに、ますます何屋さんなのか説明できなくなって、名刺も持たないことにしました」(我堂さん)

琉球銀行の伊禮さんは銀行員でありながら、福祉団体の理事、沖縄県立芸術大学の非常勤講師、さらにDJにビール作り、キャンプ、ガーデニング、大工と数多くのジャンルに手を広げています。そのため、「何者ですか?」とよく質問されるそうです。

「銀行という堅物なイメージを逆手にとっているから、伊禮さんは美味しいと思っている」(仲山さん)

「銀行のように、イヌ的な会社や集まりほど、ネコはポジションがはっきりしやすいんですね」(横石さん)

「ただ、心の強さは必要です。100対1ぐらいで戦わないといけないこともある。孤立しやすくはありますね」(伊禮さん)

イベント参加者から「トラが率いる組織でもイヌは必要ですか?」との質問が投げかけられると、仲山さんは「必要です」と即答しました。

「トラの人が得意なのは、何かよくわからないものをわちゃわちゃしながら立ち上げ、うまくいくまでやり続けて、立ち上げること。立ち上がって軌道に乗り、マニュアルとか作ったほうがいいよね〜といった雰囲気になった瞬間に興味がなくなり、いなくなる。この絶妙なタイミングで、イヌの人たちにうまくバトンを渡すことができれば、立ち上がったものはきっちり運用されます。そういう強みを活かした役割分担という意味で、イヌの人もとても大事な人材なんです」(仲山さん)

前職でマネジメント職だった我堂さんも、これまでの経験から「ネコの人だけでチームを作ると、向いていない仕事をネコのメンバーにさせるのが嫌だから、自分がやらないといけなくなる。だからイヌの人を入れておいたほうがいい。混合チームで、みんな得意なところをやったほうがいい」と、仲山さんの意見に賛同しました。

ここで再び、4タイプの相関図を表示したあと、実際に4タイプがどれくらいの割合でいるのか、スライドが表示されました。現状はイヌが多数派でありつつも、実はイヌの皮をかぶった隠れネコが多くいるのではないかと、仲山さんは持論を展開します。

「戦後の日本は、高度経済成長を経て、言われた通りに手を動かすとパフォーマンスが最大化するみたいな仕事のやり方が勝ちパターンでした。その結果、会社に入って働くイコール、組織のイヌとして活動することだったのです」

「社員は組織でイヌの人として働き、がんばればそれ相応に報われてきました。そういう時代や環境、成功体験があったから、ネコの人が入社したとしても、イヌとしてみんなで一致団結して働くことは、とても効率が良かったのです。その結果、それなりの隠れネコが生まれたと考えています」

「ところが、そろそろ隠れネコの人たちが、言われたとおり仕事をしても、会社の業績上がらなくなってきて、何をやっているか意味がわかんなくて、嫌だ、息苦しい! みたいな状況になってきてしまった。これによって、イヌの皮を脱ぐネコの人が増えてきているのではないでしょうか」

グラフ, ツリーマップ図

自動的に生成された説明

最後の質問は、「組織のネコから組織のトラになるために必要なこと」。パネリストのみなさんは、次のように回答しました。

「やらないといけないという情熱が沸き起こることで、ネコはトラになる。その時機が来るまで待ってもいいのではないかと思う」(伊禮さん)

「トラは自称できるものではないので、爪痕がないとなるのは無理だと思う。その業界において、名刺代わりになる成果が必要」(島原さん)

「『トム・ソーヤの冒険』で、主人公のトムがいたずらの罰としてペンキ塗りを命じられたとき、これみよがしに楽しそうにやっていると、周囲のみんながやりたいと集まり、あっという間にペンキ塗りが終わった話が大好きで。楽しそうにやっていれば、仲間ができていく」(戸村さん)

「与えられた役割を一生懸命こなし続けたことが、ネコからトラになった理由かもしれない」(流郷さん)

「トラとの出会いが大きかった。そして会社かどうかといった枠組に関係なく、自分なりの勝手な使命感を持ったのがよかった」(倉貫さん)

「自由に働きたいなら、嫌な仕事もコミットしなければならない。すべての立て付けの中で、大きい枠組みで自分の働き方を見つめ直すと、そのコミットなくして自由な生活は続かないことに気づいた」(我堂さん)

「楽しそうにしているトラの人、あるいはそういった働き方のイメージをたくさん見る機会があれば、徐々に引き寄せられる」(宮本さん)

「意図するかどうかは別にして、何かすごいなという実績を出すこと。この人がいたからこれができたんだという形になるものは、どこかで必要になる」(藤野さん)

さらに、島原さんは「運も大事。事がはじまるときに、たまたまその場にいたというのが大事」と補足。これを受けて仲山さんは、「いい流れに乗るためには、浮いている必要がある。そして、周りを見回すと同じように浮いている人がいて、今日みたいな感じで知り合いが増えていくわけです」と、ポジション取りのコツを表現しました。

あっという間の1時間半。白熱したトークセッションは、藤野さんの総括コメントで締めくくられました。

「ネコとトラという生き方がある。トラはネコが進化したものかもしれないけど、ネコ的な生き方はそこまで能力や意気込みがなくてもできるはず」

「本当はネコなんだけど、イヌのフリをしている人たちが結構いっぱいいる。でも、世の中の流れからすると、イヌの皮をかぶったネコである必要はない。イヌの皮を脱いで、楽になろうと言いたい」

「ネコでは出世できないと思う人がいるかもしれない。でも、ネコも正常進化したらトラという生き方もあって、楽しい。これからの時代、チャンスは必ずあります」


Tokyo Work Design Week 2021 レポート

2021年11月取材
2022年1月18日更新

執筆:黒宮丈治
編集:有限会社ノオト
グラフィックレコーディング:五藤晴菜(haruna1221)