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ファミリー・フレンドリーな企業になるために ― 仕事と子育ての両立支援で大切なこと

2020年のパンデミック以降、新型コロナウイルス感染症対策として外出自粛やリモートワークが要請され、多数の人々が対応を余儀なくされた。働く時間・場所が、家庭の時間・場所と半ば強制的に一体化したことにより、家庭と仕事のあり方について改めて考えさせられたという方も多いのではないだろうか。

 

一人ひとりのライフスタイルに合わせた柔軟な働き方の重要性が増す今だからこそ、企業には、従業員の仕事と家庭の両立を支援する「ファミリー・フレンドリー」の視点が欠かせない。

 

「ファミリー・フレンドリー」とは

仕事と生活の調和をめざす「ワーク・ライフ・バランス」が全ての働く人を対象とするのに対して、「ファミリー・フレンドリー」は、ワーク・ライフ・バランスの中でも育児・介護を担う人々へ焦点を当てた概念だと言える。厚生労働省では、「仕事と育児・介護とが両立できるような様々な制度を持ち、多様でかつ柔軟な働き方を労働者が選択できるような取組を行う企業」のことを、ファミリー・フレンドリー企業と定義している。

 

ファミリー・フレンドリーの視点の中でも、仕事と出産・育児の両立は、子育て世代の従業員が継続的に働けるかどうかを左右する大きな課題である。そこで今回は特に子育てに注目し、従業員の仕事と子育ての両立をサポートするうえで考慮したいポイントと、そのポイントを実現するための施策例を紹介する。

 

ポイント①:子育てが時間的・経済的に保障されているか? 

まず大切なのは、従業員が安心して子育てを行えるよう、時間的・経済的な保障を充実させることである。特に産前産後や子どもがごく幼い間は、親子ともに最もケアを要する期間であり、並行して仕事を行うことは現実的ではない。そのため、もし出産・育児に専念する間の時間的・経済的な保障がなければ、仕事と秤にかけたとき、子どもを持つという選択肢すら奪われてしまうかもしれない。その点をしっかりと保障するための制度が、「産前休業と産後休業(産休)」や「育児休業(育休)」である。

 

「産休」や「育休」には、国の定める休業と、企業が独自で導入する休暇が存在する。例えば日本の育児休業は、基本的に子どもが1歳になるまでの間取得することができる。しかしながら、未だ男性の育休取得率は1割に満たず、休みを取りやすくするために男性版産休を新設する改正法が2021年6月に成立したばかりだ。対して男性も9割近くが育休を取得するスウェーデンでは、両親合わせて480日の育休が定められていて、分割して取得することもできる。母親と父親が1ヵ月おきに交互に育休を取るなどの柔軟な利用が可能だ。所得保障の水準も高く、480日のうち390日は給料の8割、残りの90日は定額給付が受けられる。

 

また、育休や産休の他にも、ニュージーランドでは流産忌引きの法律が2021年3月に可決されている。流産を経験した人とそのパートナーは、妊娠期間に関わらず3日間の忌引有給休暇を取得可能とするもので、これも出産に関わるファミリー・フレンドリーな休業制度の例と言えるだろう。

 

もちろん、国の休業制度が充実していても、そのまま取得率に結びつくとは限らない。ただ保障するのではなく、実際に子育てのための休みを取りやすくするには、社内の取得事例の周知や上司に向けた研修など、職場における理解促進が不可欠である。また、法律で定められた育児休業・出産休業の取得を促すだけでなく、独自に育児休暇を追加導入して子育てへの企業姿勢を示すことも、子育てのための休みを取りやすくするうえでは重要な施策だ。

 

ースウェーデン公式情報サイト「Sweden.se」より

 

ポイント②:仕事に復帰しやすくする仕組みがあるか? 

当然のことながら、子育ては産休や育休を経たら終わるわけではない。休業から復帰した後も、仕事と子育ての両立のために奮闘する日々が待っている。従って企業には、可能な限りその負担を減らし、子育てを行う従業員が仕事に復帰しやすい仕組みを作ることが求められる。

 

仕事復帰のための施策の一つとしては、企業内保育所の設置が挙げられる。居住地域の状況によっては、希望する時期に子どもを預けられる場所が見つからなかったり、場所はあっても送り迎えの時間を確保できなかったりする場合があり、復職の大きな妨げになってしまうからだ。子どもの面倒を見てくれる人もおらず預け先もないときに、選択肢として企業内保育所がある意義は大きい。

 

現在日本では、企業や病院が事業所内に保育施設を設置する例は増加しており、厚生労働省の「平成30年度 認可外保育施設の現況取りまとめ」によると、平成31年3月時点で認可外の事業所内保育施設が3,402か所設置されている。1年前の1,786か所(平成30年3月時点)と比較すると、ほぼ倍増していることが分かる。

 

企業内保育所以外にも、2013年から子どもをオフィスに連れてきて働くことを認めているソウ・エクスペリエンスのように「子連れ出勤」を許可する例や、ママスクエアのようにキッズスペース併設型のワークスペースを基礎としてビジネスモデルを生み出している例もある。さらに、場所の選択肢を用意するだけではなく、DeNAのようにベビーシッター代の補助や割引券の提供、ソフトバンクのように提携保育園の保育料補助など、費用面でサポートすることも可能である。

 

短時間勤務やコアタイムの無いフレックス勤務などの柔軟な勤務体系と合わせて、こうした例のように子どもと一緒に働ける場所や、経済的な面での補助の有無も、仕事への復帰しやすさを大きく左右すると言える。

 

ーママスクエア聖蹟桜ヶ丘店の間取図

 

ポイント③子育ての悩みを相談できる場があるか? 

子育てをしながら働くうえで、職場で理解を得たり、孤独から来る不安を和らげたりするには、対話や情報共有が必要である。しかしながら、対面での接触が制限される今、社内で子育ての悩みについて相談するタイミングを見つけることは難しい。だからこそ、情報交換や悩み共有を通して子育ての不安を軽減できるように、従業員同士がつながりを持つ機会をつくることはいっそう大切になると考えられる。

 

例えばイギリスのExperianでは、28の従業員リソースグループ(ERGs:Employee Resource Groups、共通の関心や背景を持つメンバーが集まるコミュニティ)の中の1つとして、2017年からWorking Families Network(働く家族ネットワーク)を築いている。当初は幼い子どもを持つ親だけを対象としていたが、現在はケア対象の年齢に関わらず育児や介護を担う従業員同士が交流できる場になった。仕事との両立に役立つ情報も盛んにやり取りされ、子育てのお悩み相談にも役立っている。同社はイギリスのファミリー・フレンドリーな企業を称するTop 30 Employers for Working Families 2020のうちの上位10社に選ばれており、従業員同士のネットワーク形成も高く評価されている。

 

コロナ禍の収束が見えづらい現在の状況では、対面での機会づくりは難しくとも、上述したようにオンラインで情報共有や悩み相談ができる場を用意する取り組みや、他にも子育てをテーマとしたウェビナーを開催して学びを深めるなどの取り組みは可能である。子育てをする従業員同士のつながり形成をサポートし、不安を解消しやすくするための工夫が求められる。

 

ーExperian公式ウェブサイトより、従業員リソースグループの例

 

ポイント④:子育てに専念する時間への配慮があるか? 

技術の進歩によってリモートワークが可能になり、いつでもどこでも仕事ができることには、柔軟な働き方を可能にするという良い面もある。その一方で、「いつでもどこでもつながれてしまう」ことによって、仕事が生活に割り込んでくるという負の側面も存在する。そこで必要とされるのが、常時仕事のメールや電話等に応対しなくてもよい権利、つまり「つながらない」権利を保障することだ。

 

これは子育てにおいても重要で、家庭によって「この時間だけは邪魔されずに子どもの世話に注力したい」という時間が少なからずあるはずだ。一日の中で子育てに専念する時間があることに配慮し、「つながらない」権利を保障することは、従業員にメリハリのついた自律的な働き方を可能にし、結果として仕事の生産性を高めることにもなるだろう。

 

実際にこの「つながらない」権利を最初に法整備したのはフランスで、2016年に可決された。ドイツでは法整備は行われていないものの、企業側で同様の制度を整えてきた経緯があり、例えばドイツのVolkswagenでは、18:15~7:00の間は従業員が携帯電話から仕事上のメールにアクセスできない方針が2011年に導入された。

 

ただし、これから「つながらない」権利の導入を考える場合は、性急に進めてしまうと逆に柔軟性を損なう恐れもあるため、注意が必要である。なぜなら、「つながらない」時間などの条件を一律に決めてしまっては、結局働き方に制限がかかり、自由度を下げてしまうからだ。子育てにおける「つながらない」権利は、あくまで無暗に仕事によって子育てが妨げられないために保障されるべきものであり、不自由さを強要するものであってはならない。

 

 

仕事と子育ての両立に向けて

ここまで、ファミリー・フレンドリーの観点から、従業員の仕事と子育ての両立をサポートするために企業が考慮しておきたいポイントと、その実現のための施策例を紹介した。仕事と子育ての両立に向けて支援を行うことは、従業員の心理的安全性を醸成し、組織へのエンゲージメントを高め、生産性をも引き出す。その結果、優秀な人財の確保や企業イメージの向上にもつながる。企業には、従業員の「仕事を続けながら子どもを育てる」という選択を応援するために、さらなる実践が求められている。

 

2021年6月17日更新

テキスト:前田英里(株式会社オカムラ)

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