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仕事スタイル、どれだけ知ってる? 自分を知って、仕事と余暇の時間を最大化する(コラムニスト・りょかち)

家で仕事をしていると、けじめがつけられない……。気がついたら、とっぷりと日が暮れている……。どうしたら、ちゃんと気分転換ができるんだろう。そんな、「仕事のスイッチのON/OFF」をどうしているのか、リモートワークでメリハリをつけるための考えていることや、工夫していることについて、カナダに一時滞在中のコラムニスト・りょかちさんに教えてもらいました。(本記事は2022年6月に執筆いただきました)

ここ数年は、働き方の試行錯誤の連続だった。

会社員としてのリモートワークを経験し、その後、自由に時間を使えるフリーランスライターとして独立、現在はカナダの叔母の家に長期滞在して16時間時差のある日本との超リモートなワークをしている。

その中で試行錯誤したのはまさに、仕事とともにどう生きるか——それは「仕事のON/OFF」とも言えるし、「“仕事のON”と“余暇のON”をどう組み合わせて生きていくか」とも言える問いだった。

「仕事と共にある人生」の最適解はまだまだ見つからない。しかし、ここ数年時間の使い方については細かく考えてきたので、その中で得られた知見をここでご紹介したい。

仕事のON/OFFをつけるため徹底的に自分の仕事を「記録」する

仕事と余暇をうまく組み合わせる上で最も重要だと私が考えるのは、「まず、自分と仕事について知りましょう」ということだ。

私はとにかく何でも記録する“ログ魔”で、自分が食べたものや歩数、睡眠時間、鑑賞したコンテンツなど何でも記録している。その中でも一番長く記録しているのが“仕事”についてだ。

会社員時代からすでに5年ほど記録をつけている。きっかけは、四半期に1回評価をもらう期間に、自分の仕事についてまとめたレポートを書かなければならなかったこと。それで、普段から自分の仕事について書き残しておこうとしたのだった。

記録するのは「どんな仕事をどれくらいかけて終わらせたか」。これを私はGoogleカレンダーで一括して管理している。予定のタイトルにタスクの名前を入れて、かかった時間をタスクが終わった瞬間に記録しておく。

ちなみに、途中で集中が切れてNetflixを見た……なんてときには、ちゃんと「Netflixを見た」という記録もしている。

さらに、私は仕事の種類ごとに色を変えておく。仕事によって、時間の使い方が変わるからだ。

例えば、長時間集中して取り組みたい「執筆」はピンク、マルチタスクしながら進める「ディレクション作業」のような仕事は黄緑、「MTG」は黄色、「休憩」はグレー、といったふうに。そうすることで、一週間にどういった質の時間が必要なのかを把握できる。

こうしておくと、今日どんな仕事を何時間ずつしたのか、どんな仕事にどれくらいの時間がかかっていたのかが一目瞭然になる

とある一週間のスケジュール。予定と記録を同じカレンダー上に整理

この作業に加えて、自分の仕事上の「集中力の癖」も、発見次第、書き出しておくようにしている。集中力は仕事を効率的に進める上で必須だからだ。

私の場合、「一旦集中が切れると、次に集中するまでに数時間かかる」「Slackでコミュニケーションしたりする仕事は、SNSなどを見ながら進める方が意外と早く終わる」などが見えてきた。

とにかく、自分の時間の使い方について記録しながら細かく観察していく。そうすることで、自分の仕事においてどんな時間や環境が必要なのかが見えてくる。

“自分の仕事スタイル”の観察結果をもとに、仕事時間を組み立てる

自分の仕事時間の記録と観察。それができると、自分の人生の使い方を具体的に考えられる。毎週どれだけの時間をどう使っているかわかるので、それに沿って、「今週はどれだけの仕事をどういうスケジュールでやろうかな」「明日の勤務時間はどんなふうに働こうかな」と考えていく。

私がエッセイを書くのに必要な環境は、「5時間ほどのまとまった作業時間」が「1~2日」と「適度な頻度のまとまった気晴らし時間」である。

だから、エッセイを書くと決まった場合、5時間×1〜2日を先にブロックしてしまう。もしMTGがいくつもある日に、1〜2時間の隙間があったとしても執筆の予定は入れず、休憩にしたり、ディレクション仕事を入れたりする。

執筆仕事が多いときには、集中が切れるとなかなか仕事に復帰できないので、OFFのとり方は「午前は執筆作業にして、夕方からOFF」「午前中はMTGして午後は執筆」「執筆を3日して3日間OFF」という形になる。

カナダに来て仕事がしやすいのは、カナダの17時が日本では朝の9時であり、夕方以降しか会議が入らないことだ。おかげで日中は執筆作業に集中できている。

逆に、にマルチタスクの方が捗る仕事中は、好きな音楽を聞きながら仕事したり、SNSを見ながら仕事したりもする。休憩も頻繁に取る。執筆時間の合間や移動時間には、ディレクション仕事のようなマルチタスクにできる仕事を入れていく。

そうやって一日、あるいは一週間の時間を組み立てていくのだ。

日中をOFFの時間にして、散歩した日の公園にて

自分の時間の使い方のイメージが湧いていると、ON/OFFがつけがたいときによくある「OFFなのに仕事のことを考えてしまう」「OFFなのに仕事の連絡をしてしまう」という問題にも対処しやすい。

OFFの時間に仕事が邪魔してくるときには、「あと数時間でOFFが終わる」とわかっているので、「あと数時間後にまとめて考えた方が効率的だ」と割り切りやすいし、事前にSlackなどの名前の欄に「数時間休憩します」「午後は集中タイムにしますので返信が遅れます」などコミュニケーションもしやすい。

逆に、仕事中なのに気づいたら集中が切れてしまうときにも、「一旦ここで切り上げて、明日がっつり時間をとってやり直したほうが効果的だな」と考えられたりする。

仕事に対する気持ちはOFFなのに、身体だけデスクにかじりついてONしようとしている。そんな時間が一番もったいないからこそ、自分の仕事への気持ちがどのように揺れ動いているのか観察し、それに沿って行動を決めていくのだ。

常に変化しながら「もっと楽しい」毎日の探求を

これだけこだわって毎日時間の使い方を工夫していても、”完成形”のような仕事スタイルにたどり着くことはない。というか、そんなものはないと思っている。

なぜなら、体力とか疲労度合いとか、環境の変化でどんどん自分の集中力の質や働ける時間は変わっていくからだ。「朝起きたらまずブラックコーヒーを飲む」といったようなON/OFFを区切るような仕組みも、その習慣が目新しいうちは有効だけれど、慣れていくうちに効果が薄れてしまう。それに何より、完成したスタイルは変化に弱い。

だからこそ、習慣を変えていくことを厭わないのが大切だ。「仕事のON/OFF」がつかない、日常がままならなくなっているならメンテナンスが必要で、私も時に25分働いてから5分休憩を繰り返す「ポモドーロ・テクニック」を取り入れてみたり、シェアオフィスに行って仕事してみたり、工夫を続けながら仕事している。

休日にした日に海沿いでランチ。取材などででかけた日にはその後OFFにすることも。

職場と居住エリアが一体化しつつある今、仕事と余暇も一体化してまるっと人生の時間となりつつある。仕事時間の質の向上は、余暇を最大化することでもある。仕事のOFFは余暇のONなのだ。

「仕事のON/OFF」と考えるよりも、「人生の時間のデザイン」と呼んでみるとやる気が出たりする。仕事の時間をより良くすることは、人生の時間をより良くすることでもある。そう考えるとまた、試行錯誤の時間も楽しいものである。

全ては、「もっと楽しい時間をつくる」の探求なのである。

編集:ノオト