働く環境を変え、働き方を変え、生き方を変える。

WORK MILL

EN JP

肩書きをつくり名乗るのは未来をデザインすること | 八木橋パチの #混ぜなきゃ危険

こんにちは。コラボレーション・エナジャイザーのパチです。前々回の予告「コラボレーション・エナジャイザーとはなんなのか?」について今回は書いてみました。

ただこの話、「自分語り」の要素がけっこう強いんですよね。

前回の「パブリック・ナラティブと社内転職」も自分の過去についてだったので、「パチさんってどれだけ自分大好きなんだろう!」と受け取られそう…。でも、私は、どこかで聞いた誰かの良い話や正しい話よりも、自分が体験したことをベースに話をしたいんです。そんなわけで、今回も自分の体験をベースにお伝えさせていただきます。

今回は、先にお伝えしたいポイントを書いておきます。

  •  コラボレーション・エナジャイザーを選んだワケ
  •  肩書きをつけることは、自分が何者かを決めること
  •  肩書きを名乗ることは、自分の未来にタネをまくこと

コラボレーション・エナジャイザーを選んだワケ

「コラボレーション・エナジャイザー」は、2008年頃に自分で自分につけた肩書きです。当時、日本IBMで社内SNSを推進するリーダーに立候補した私は、「どうすればこの社内SNSをIBM社内に広げられるか。そのためには自分自身がどんな役割を果たす必要があるか」を考えていました。

私は、権力を盾に人に管理されたり「上からグイグイ」くるタイプのリーダーシップが苦手です。いや、より正確には苦手ではなくて嫌い。そんな、自分が嫌いなタイプのリーダーシップを絶対に用いたくなかったし、自分らしいリーダーシップのスタイルってなんだろうと、考えて出てきたのが「コラボレーション・エナジャイザー」という役割であり、肩書きでした。

コラボレーション・エナジャイザーの「コラボレーション」は、当時、SNSに対する「コミュニケーションの道具」というイメージを変えたかった、という気持ちから選んだものです。IBM社内には、当時すでにたくさんのコミュニケーションツールが揃っていました。

「もう1つ新しいコミュニケーションツール」は要らない状態。必要なのは「もう一歩二歩踏み込んだ共同作業を行う」ための道具でした。だから、コミュニケーションではなくコラボレーションです。

コラボレーション・エナジャイザーの「エナジャイザー」は、エネルギーを与える人という意味の単語です。

正解を与えるだけの知識も能力もない私が、みんなに与えられるものってなんだろう? そう考えて出てきたのがエネルギーでした。自らが社内SNSを職場のあらゆるモノコトに使い倒して、そこで体験したことをみんなにSNSを通じて伝えて、擬似体験してもらうこと。

そして願わくは、良いと思うところを真似してもらう。これがみんなのエネルギーになるのではないか? そして、このような実践型のリーダーシップの発揮のしかたこそ、自分にピッタリなやり方だと思ったのです。(なお、私にとっての「リーダーシップ」は「いつでもどこでも誰でもが発揮できる、周囲の人々の意思や行動をポジティブな方向へ変化させるアクションを取れる能力」を意味します。)

肩書きをつけることは、自分が何者かを決めること

ここまでいろいろ書きましたが、実際には一つひとつ言語化しながら細かく決めていったわけではなく、直感的なものでした。

「SNSの目的はコミュニケーション」という社会の思い込みを覆したかったこと。エバンジェリストという当時IT業界で流行していた肩書きがなんだか「偉そう」な響きがして嫌いだったこと。社内の情報格差を壊すことでもっとイノベーションが生まれやすくなるんじゃないかと思ったこと。他の誰とも重なることのない自分だけの肩書きが欲しかったこと。その肩書きが「どんな仕事なんだろう?」と聞いた人の興味を沸きたたせそうなものじゃなければ嫌だったこと。

こうしたいろんな考えが「コラボレーション・エナジャイザー」という肩書きにスッと収まる感じがしました。

自分で付けた肩書きをあちこちで名乗るようになり、多くの人に「それってなんですか?」と聞かれて答えているうちに、自分で付けた肩書きをどんどん好きになっていきました。そしてそれに価値を与えたくなっていきました。

「今、自分が取ろうとしている行動は、コラボレーション・エナジャイザーと名乗っているヤツが取るのに相応しい行動だろうか?」と考えるようになっていったんです。

ときどき、「これはちょっと…みんなに見られたくないな」という気持ちが湧くこともあります。そんなときに、「いや、どんどんSNSで仕事をオープンにしていき、その結果をみんなにSNSで伝えるっていうのがコンセプトだったよね?」と、自分がやろうとしていたことを思い出させてくれるものになってくれていました。

私は、価値観というのは心の中にあるものではなく、行動の中にこそあるものだと思っています。「重要なのは価値観」と言う人は多いけれど、それが実際の行動に表れていなければそれは価値観ではなく単なる理想なのではないか?? 語るだけではなく行動することで自分の価値観を示したいのです。(とは言え、行動に移せないこともままありますが…。)

自分が何者かを決めるのは自分。コラボレーション・エナジャイザーという肩書きは、行動の方向性や判断に迷ったとき、自分の行動に一貫性を持たせてくれるものとなりました。

肩書きを名乗ることは、自分の未来にタネをまくこと

コラボレーション・エナジャイザーを名乗って社内で活動し、そこでの成功や失敗、学びや試行錯誤についていろいろなところ、社外でも発表をするようになりました。それから「もっと詳しく活動内容を教えてもらえませんか?」や「活動内容を当社のブログにも書きませんか」というリクエストをいただくようになったのです。

そして、リクエストに応えて活動し、それをまた社内外で発表しているうちに、「うちの会社のオンライン・コミュニティーもエナジャイズしてくれませんか?」という新しいお誘いやリクエストをさらにいただくようになり、活動範囲がどんどんと広がっていきました。

自分のことって、自分が思っているほど理解できていないなって思いませんか?

私は、お誘いやリクエストに応えていろんな新しいことに手を出しているうちに、自分の「好きなこと」「得意なこと」「やりたいこと」がはっきりと分かってきました。また同時に、「実際にやってみたら、自分で思っていたほど苦手/得意じゃないこと」というのも分かってきました。

頭で考えるのと実際にやってみることの間には、それはそれは大きな違いがあります。皆さんも、自分に肩書きをつけて名乗り、それを通じて体験したことを発表してみませんか? 自分の周りを見ていると、それが新しい道を示してくれることって結構珍しくない気がするんですよね。

こちらは3年以上前のインタビュー記事ですが、そのあたりの事を話しているのでよかったら読んでみてください。

守備範囲を超えていけ! 遊撃手人材インタビュー 第3回日本アイ・ビー・エム株式会社・八木橋 パチ 昌也さん “飼い馴らされない野鴨”の精神をつらぬく

「会社で何者かを名乗るのにはプレッシャーを感じる」とか「専門家だと思われるのは大変そう…」とか、きっと不安に思う方もいらっしゃるでしょう。でも、肩書きをつけることは自分の未来への種まきです。ぜひ「成りたい自分」をイメージして、自分にステキな肩書きをつけてみてください!

「肩書きをつけることがもたらす可能性は分かりました。でも、つける機会も場面もありません。」そんなふうに思われている方も少なくないかな? でも、ちょっと見方を変えれば、「自分が何者か」を名乗る場面ってわりと身の回りにあるのではないでしょうか。自分がいるチームで。出かけていった先で。新たに知り合った人に。

よかったら、「こんな肩書きをつけましたよ」ってTwitterで教えてくださいね! 「…ん〜でもやっぱり無理。専門家だと思われるのは大変そう…。」そんなあなたに、1つ裏技を。

「xxx見習い」「xxxトレーニング中」「xxx候補」、最後にこんな言葉をつけることでハードルがぐっと下がりますよ。

Happy Collaboration!

著者プロフィール

八木橋パチ(やぎはしぱち)
日本アイ・ビー・エム株式会社にて先進テクノロジーの社会実装を推進するコラボレーション・エナジャイザー。<#混ぜなきゃ危険> をキーワードに、人や組織をつなぎ、混ぜ合わせている。2017年、日本IBM創立80周年記念プログラム「Wild Duck Campaign - 野鴨社員 総選挙(日本で最もワイルドなIBM社員選出コンテスト)」にて優勝。2018年まで社内IT部門にて日本におけるソーシャル・ビジネス/コラボレーション・ツールの展開・推進を担当。 twitter.com/dubbedpachi

2021年7月29日更新