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生活必需品ではなく「幸せ必需品」 京都で洋菓子ブランドを手掛けるロマンライフが愛される理由とは

2019年4月発行のビジネス誌「WORK MILL with Forbes JAPAN ISSUE04」では、世界中の「愛される会社」を巻頭特集としました。

しかし、日本にも多くの「愛される会社」が存在しています。今回は伝統・文化が根付き、商業の街としても栄える関西エリアに注目。全6回の取材とトークイベントを通して、顧客や社員、地域社会との強い関係性をつくりだしている「愛される会社」を探求していきます。

京都宇治白川をはじめとする厳選お濃茶を使ったラングドシャ「茶の菓」。京都土産の定番商品の生産・販売を手掛けるのは、地元企業の株式会社ロマンライフです。

1951年に創業され、現在は洋菓子ブランド「マールブランシュ」、飲食店や調味料販売を手掛ける「侘家古暦堂」を運営。2020年10月に創業の地である京都市山科区に「マールブランシュ ロマンの森」をオープンさせました。

店舗やカフェ、工場、オフィスが一体となった空間には、ロマンライフが長らく京都の地で愛されてきた理由が詰まっていました。

いかにお客様と社員、そして地域を大切に経営してきたのか。どんな使命を持って、「食」を提供しているのか。常務取締役の河内優太朗さん、経営サポート部次長の降矢友弘さんに、「ロマンの森」の中を案内していただきながら、お話を伺いました。

河内優太朗(かわうち・ゆうたろう)
2007年同志社大学商学部卒業。2010年入社後、マールブランシュ北山本店など数店舗の店長を経て2018年常務取締役に就任。2020年10月京都市山科区にオープンした「ロマンの森」では、プロジェクトリーダーを務める。無類の肉好き。

─降矢友弘(ふるや・ともひろ)
2006年同志社大学商学部卒業。新卒で侘家事業部へ配属となり料理人として社会人の第一歩を踏み出す。新規店舗の立ち上げ、店長を経て2012年経営サポート部へ異動。2016年より現職。得意料理は、だし巻き。

ギフト菓子販売店から「地域の憩いの場」へ

「ロマンの森」はどんなコンセプトで作られたのでしょうか?

河内

この辺りはファミリーの方は多いものの、公園や自然がある場所が少ないんです。だからこそ、お子さん、親御さん、おじいちゃん・おばあちゃんまで、「三世代で来られる森」をコンセプトにしました

実際にカフェには、大人と子どもの両方が座れる椅子をおいています。絵本をたくさん用意して読み聞かせできるようにしたり、壁で身長が測れる仕掛けを作ったり。たくさんの工夫を施しています。

だから、従来のマールブランシュとは店内のイメージが少し異なるんですね。

河内

マールブランシュは、もともとはギフトを売るお店です。しかしそれだと、お中元やお歳暮、クリスマス、バレンタインなど、イベントごとにしかお客さまと接点がもてません。

それならば、お客さまに何度も来ていただけるような地元に根ざした場所が作りたい。そんな思いから、「ロマンの森」を立ち上げました。

ロマンライフ常務取締役・河内優太朗さん。「ロマンの森」立ち上げは数年がかりの大プロジェクトだったと言います。

カフェや店舗はお子さんも居心地良く過ごせそうな雰囲気です。

河内

カフェでは焼き菓子やクロワッサンを多く提供したり、テラス席を開放したり。それに、特に家族づれの方に来ていただきたいんです。

僕たちはコンビニにあるような120円のケーキは作れませんが、少しハイプライスでも良い商品を提供したい。スーツでビシッと決めるのではなく、地域の方が繰り返し来たくなる、カジュアルな店にしようと思いました。

館内には工場も併設。実際のお菓子作りの様子をガラス越しに見られます。

河内

この工場ではお菓子の生産だけでなく、「ちびっ子ケーキ教室」も開催しています。毎週日曜日、小学生を1人招待し、現場で働いているパティシエと一緒に、ホールケーキやタルトを作ってもらうんです。

まずお子さんに「誰に作りたいですか」「どんな思いで作りたいですか」と聞いて、思いを乗せて作ってもらいます。

工場内に別で1人だけ入ることができるので、隣でうれしそうに親御さんが写真を撮られています。お子さんたちはみんな、すごくレベルが高いんですよ。

子どもたちをお菓子作りに誘うプロジェクトは、2010年にスタート。夢のケーキを商品化して実際に販売するコンペティションも開催しています。

2階には、社員の皆さんが働くオフィスがありますね。

降矢

オフィスフロアは、基本的に全員が好きな場所に座るフリーアドレスです。重役室もありません。

オフィスが「ロマンの森」に移転したことを機に、全員の備品をノートパソコンへ変更。これにより、社員の移動がしやすくなりました。

以前は、違うスタイルだったのでしょうか?

降矢

はい。移転前は階が分かれていて。部署の違う社員と会えるのも週に1回なんてこともザラでした。話がしたいときは、内線を使ったり。コミュニケーション不足や不便さを感じていましたね。

移転後は、あえて部署にかかわらず全員を同じフロアにすることで、コミュニケーションが活発になりました。また、「今日、この人は元気かどうか?」がわかるだけでも、働く上で非常に大きなメリットになると感じています。

オフィスフロアには、共有スペースもあります。

降矢

共有スペースは社員の打ち合わせだけでなく、学生向けの会社説明会の会場としても使っています。

すぐ隣にオフィススペースがあるため、会社説明会に参加する学生も入社後の姿をイメージしやすくなったそう。

降矢

会議室はそれぞれ16名、6名、4名を収容できる3部屋で、評価面談などの機密性の高いミーティングやお客さまとの会議などで使用するのみ。

それ以外は基本的に共有スペースを使用して、風通しの良さを実現しています。

同じ建物の中に託児所があるのも魅力的ですね。

降矢

はい。お子さんのいる社員でも安心して働けられるよう、2006年より設置しています。だいたい3歳までのお子さんが多いです。

降矢

ちょうど休憩室とガラス張りを隔てて隣接しているので、休憩時にお子さんの顔を見に来られるようになっています。

キッチンも備えつけられた休憩室。壁には、ロマンライフが辿ってきた歴史が写真や資料と共に展示されています。