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好奇心と余白(とフューチャーズ・デザイン) | 八木橋パチの #混ぜなきゃ危険

突然ですが、皆さんに1つ質問させてください。

あなたは、毎日「好奇心」を発揮して暮らしていますか?

こうやって質問されると、「好奇心を発揮するってどういうことかしら? そもそも好奇心ってなんなのかな?」となりませんか。私はなります。そこで、先日ちょっと調べてみました。

「好奇心 | 珍しいことや未知のことなどに興味や関心を向け、物事を探求しようとする心。知的活動の根源となる感情。」

辞書などで調べると、大体こんなことが書かれていると思います。それでは、この説明を読んで、あなたはどう思いましたか?

私は「え、好奇心って<感情>なのか! 感情って<喜怒哀楽>みたいなことだよね。あれ、感情と<気持ち>って何が違うんだっけ?」と、<好奇心>の周囲に知りたいことや調べてみたいことが拡がっていき、好奇心に対する好奇心で一杯になりました。 そして、「これが好奇心を発揮しているってことなのかな?」と思いました。

もちろん、発揮の仕方はいろいろあるでしょうから、みんなが同じように思う必要も感じる必要もありません。でも、それがどんなやり方であれ、蓋をしたり頭を押さえつけるのではなく、そこに生まれて存在する好奇心をきちんと自分自身が認めて受け止めてあげることが大切なことには変わりがないと思うのです。

そして、好奇心を発揮して暮らすとは、そういう自分の「知りたい」を、「聞いてみよう」や「話してみよう」だったり、「やってみたい」や「試してみよう」だったりにつなげていくことではないのかなって思うんです。

好奇心って得なの? それってなんだかコスパ悪そうじゃない?

未来デザインとは、自分たちの望む未来を起点に現在を捉え、人びとの考えや意見を集める民主的な実践手段。デザイン思考を活用して、人と社会と地球をより良い場所にしていこうという意図に基づいた取り組みであり方法論。

これは前回の「好奇心から生み出すフューチャーズ・デザイン(未来デザイン)」で紹介した、デンマークのコペンハーゲンを主拠点として活動しているデザインファーム「Bespoke(ビスポーク)」の未来デザインの定義で、私もBespoke流の未来デザインを実践しているフューチャーズ・デザイナーです。

そんな私がここ数年気になっていることがあります。それは私たちの身の回りで「好奇心」がどんどん枯渇してきてしまっているのではないか? ということです。

上の定義に書かれているように、民主的に未来をデザインしていくには、たくさんの人たちの「自分にとっての望ましい未来」に対する考えや意見が必要です。でも、実体を伴う分厚い未来を思い描くには、現在に対する、そして周囲に対する興味・関心が欠かせず、それを「自分の頭で理解したい」という欲求が必要となります。

その欲求を支える意思、そして周囲に対する興味・関心を支えるものこそが好奇心だと思うのです。…でも、私たちの周りにはこんな言葉が溢れています…。

それって得なの? コスパ悪そう。誰か得意な人がやればいいんじゃない?

学校で探究学習やアクティブ・ラーニングを教えても無駄?

未来をデザインするのには、自分の知らないことや、今、自分の目や耳には入ってきづらいところでどんなことが起きているのかを、好奇心を持って探る力が必要です。 

「世の中は知らないことで溢れかえっている」という事実に気付き、それを受け止めて味わい、新たに知ったことを既知の事象とつなげてそれが持つメッセージを見つけ出す。それをみんなにシェアし、みんなのそれと混ぜたりつなげたりしていく。このプロセスは、フューチャーズ・デザインの根幹となるものです。そしてこうした手法は、最近では探究学習やアクティブ・ラーニングという形で、初等中等・高等教育の場にも用いられるようになっています。

でも、学校を卒業して会社勤めを始めたら、日々のルーティンに忙殺されて好奇心を発揮できない毎日が続き、気がつけば自分の好奇心がどんどん萎え衰えていってしまう…。これでは学校が、そしてBespokeが、どれだけフューチャーズ・デザインを伝え、広めたところで無駄です。 

人と社会と地球をより良い場所にしていこうという意図に基づいた取り組み ― その実践者を増やしていくためには、フューチャーズ・デザインを伝えるだけではなく、同時に人びとの好奇心の育成と発揮の後押しをもっともっとする必要があるのではないでしょうか。

 好奇心は5種類に分類できる?

好奇心についてもっと詳しく調べたくなった私パチは、3年ほど前に発刊された雑誌『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー(DHBR)』の好奇心特集号を買ってみました。 

そこには、ユニクロやジーユーでお馴染みのファーストリテイリング社トップの柳井正氏の「勝ち続けるには好奇心を持って、新しいことに挑戦する気持ちが欠かせない」というインタビューや、ハーバード・ビジネス・スクールのフランチェスカ・ジーノ教授の「好奇心が企業業績に果たす役割は従来考えられていたよりもはるかに大きく、高い収益を上げるためにも、リーダーは口先だけではなく部下の好奇心をもっと刺激すべきだ」という論文。
ジョージ・メイソン大学のトッド・B・カシュダン教授を中心としたグループによる「好奇心には5つの類型があり、そのうちのどの資質が仕事と人生の充実と成功に役立つか」を分析したレポートなどが掲載されていました。 

私が特に興味を惹かれたのは「好奇心の5類型」の話です。これまで好奇心といえば、強いか弱いか、あるいは外に開いていく「拡散的好奇心」かそれとも中に絞り込んでいく「特殊的好奇心」かくらいしか違いを意識したことはありませんでした。でも、もっと細かく分類できるものだったんですね! 

この特集号はとてもおもしろくて好奇心がくすぐられっぱなしになる一冊なのですが、それでも、私が抱えている「それでは一体どうすれば、人は好奇心をもっと強め、深め、広め、長め、高めることができるのだろうか?」という問いへの答えは載っていませんでした…。 

なお、好奇心について調べたことを、ブログにもう少し詳しく書いています。また、書籍に掲載されていた「好奇心の自己測定テスト」の結果も載せているので、よかったらそちらも読んでみてください(私の場合、「ストレス耐性」好奇心がかなり高かったです。他は「心躍る探求」と「高揚感の追求」が平均を上回る高さでした)。 

好奇心でズレを調整する | #好奇心 について調べてみた 

好奇心が大切なのはわかった。じゃあ一体どうすればみんながそれを伸ばせるのさ?

未来デザインを会社でも実践したいけれど、現況の日常業務が忙しいこともあり、「仕事を通じて社会を良くしていこう」という変化を起こすための行動が受け入れてもらえない。

また、忙しくてやらなきゃいけないことがたくさんあり、社外でも「社会のこと」に取り組む時間が取れない。

― これも、前回書いたことです。今の私たちって、「やらなければいけない」とされていることに取り囲まれてしまっていますよね。

そして私たち自身も、仕事も勉強も趣味も、なんなら人間関係も、スタートする前から「損か得か」「成功か失敗か」「正解か誤りか」「楽ちんか苦労か」を予想して、その結果で「やるかやらないか」を決めてしまってはいないでしょうか。本当はやってみなくちゃ分からないのに。そして結果に至るまでのプロセス自体を楽しみさえすれば、それでもう得だし成功だし正解なのに。これってやっぱり「好奇心の頭を押さえつけている」ことだと思うのです。

もっと、好奇心にのびのびできる場所を! 時間を!!

好奇心が広がるためのスペース「余白」を!

好奇心は、自分の現在の認知と、何かを目にしたり耳にしたり感じたりしたもののズレが発生させるものではないでしょうか。つまり、そのズレの正体を掴もうとするのが好奇心であり、それを分類すると「欠落感」「心躍る探求」「社会的好奇心」「ストレス耐性」「高揚感の追求」という5形式になるのではないかと思っています(今後、研究が進めば、さらに増えたり減ったりするのかもしれませんが)。

これはまだ自分の中の仮説に過ぎないのですが、私は好奇心の育成と発揮の後押しに必要なのは、日常にもっと「余白」を創り出していくことではないかと思っています。余白とは、時間的な余白であり、心理的な余白であり、物理的な余白です。自分自身のコントローラーを好奇心に預け、「知りたい」や「試してみたい」という感情を十分に満足させるスペース「余白」を、日々の中にもっと埋め込む必要があるのではないでしょうか。

…と、書いたものの、実は具体的な方法にまでは考えがまだ至っていません。

今、ぼんやりと頭に思い描いているのは、ちょっとした空き時間に自分一人で、あるいは周囲の人と一緒にパッと取り組めて習慣化しやすい、好奇心版「体幹トレーニング」のようなプログラムを開発できないだろうか? と考えています。

さらには、自分に今足りていないのが「欠落感好奇心」「心躍る探求好奇心」「社会的好奇心」「ストレス耐性好奇心」のどれなのかを自己判定できて、その日の気分でメニューの中から選べるくらい、バラエティ豊富なプログラムにできたらステキなんじゃないかなと妄想中です。

どうですか? この話を聞いて好奇心をくすぐられる人はいませんか? もしよかったら、一緒に「好奇心ラボ(仮)」を立ち上げてみませんか? 「やってみたい!」という個人や組織の方からのご連絡、お待ちしております!!(そうだ! WORK MILLさんも一緒にいかがですか?)

Happy Collaboration!

著者プロフィール

八木橋パチ(やぎはしぱち)
日本アイ・ビー・エム株式会社にて先進テクノロジーの社会実装を推進するコラボレーション・エナジャイザー。<#混ぜなきゃ危険> をキーワードに、人や組織をつなぎ、混ぜ合わせている。2017年、日本IBM創立80周年記念プログラム「Wild Duck Campaign - 野鴨社員 総選挙(日本で最もワイルドなIBM社員選出コンテスト)」にて優勝。2018年まで社内IT部門にて日本におけるソーシャル・ビジネス/コラボレーション・ツールの展開・推進を担当。 twitter.com/dubbedpachi

2021年12月8日更新