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ラジオ局主催のライブイベントと連動! 音楽と万博の未来を目指す「EXPO酒場 ミナホ店」イベントリポート

2025年に開催を予定されている大阪・関西万博。各国の英知やアイデアが集結する世界的イベントの幕開きまで、あと500日ほど。

「万博って、結局何をするの?」「自分には関係なさそう」「興味はあるけど、どうやって関わればいいのかわからない……」と、どこか「他人ごと」に捉える人が多いのでは?

その一方、万博に向けて「勝手に」盛り上がり、続々とたくさんの人を巻き込み、共創の渦を生み出しているのが、有志団体「demo!expo」。本連載では、彼・彼女たちが生み出すムーブメントを取材していきます。

万博やまちづくりへの思いがある人たちが交流するイベント「EXPO酒場」は、これまでに全国30カ所以上で開催され、関西から全国各地へと活動を広げています。

今回は、音楽をまちに届ける大阪のラジオ局「FM802」と万博をまちごと盛り上げる「demo!expo」がタッグを組みました。FM802が主催する、大阪の繁華街・ミナミを中心に20カ所以上のライブハウスが会場となるサーキットライブ「FM802 MINAMI WHEEL 2023(通称・ミナホ)」とともに、「EXPO酒場 ミナホ店」を開催しました。

2023年10月7〜9日の開催で総勢450組以上のアーティストが出演するビッグな音楽イベントで、EXPO酒場でもアーティストを招いてライブを開催。開催2日目の10月8日は「万博デー」と題して、大阪・関西万博関連のイベントが催されました。万博と音楽でまちごと盛り上がった当日の様子を振り返ります。

総勢450組以上が出演 街中のライブハウスが会場に

「大阪No. 1のミュージック・ステーション」として知られる大阪のラジオ局「FM802」が主催する、大阪屈指のサーキットライブイベント「FM802 MINAMI WHEEL 2023(以下「ミナホ」)」。

大阪市西心斎橋地区の通称アメリカ村(以下、アメ村)を中心に難波まで、ミナミ全体に点在する各ライブハウスが会場となり、3日間で総勢450組以上のアーティストが出演する、年に1度のビッグなイベント。25回目という節目を迎えた今回も、ビッグアーティストから学生バンドまで、キャリアやジャンルに捉われない多彩な顔ぶれがそろいました。

1)スキマスイッチ

2)阿部真央

3)鉄風東京

※1)メジャーデビューした2003年にも、この日と同じ会場でミナホに出演していたスキマスイッチ。(写真提供:FM802、撮影:田浦ボン)

※2)過去にもミナホ出演経験がある、シンガーソングライターの阿部真央も登場。(写真提供:FM802、撮影:田浦ボン)

※3)圧倒的なライブパフォーマンスで会場を盛り上げた、注目の若手オルタナティブロックバンドの鉄風東京。(写真提供:FM802、撮影:ハヤシマコ)

「万博デー」の10月8日は残念ながら雨模様……。ですが、来場者のみなさんは天候など気にする素振りもなく、お目当てのアーティストがいる会場へとホッピング。公開されているライブのタイムテーブルに合わせて、ミナホを全力で楽しんでいました!

そんなミナホの本拠地となるのは、アメ村のランドマークであるファッションビル「心斎橋BIGSTEP(しんさいばしビッグステップ)」。正面の大階段では、アーティストによるフリーライブが実施されていました。

「音楽✕祭り」で盛り上げる、FM802のEXPOブースをお披露目

ミナホでは、demo!expoがFM802とタッグを組んで制作した山車型ブース「FM802 SOUND PAVILION(サウンド・パビリオン)」がお披露目されました。誰でも演奏可能なストリートピアノとして連日設置され、3日間を盛り上げていました! ピアノ以外の使い方もできるらしいですよ。

まちの中で音を鳴らすことを目的に、DJブースやラジオブースにも切り替えられる設計になっています。移動可能なので、これからもFM802のイベントに登場し、大阪のまちを盛り上げていくそうです!

大阪府・大阪市も大阪・関西万博のPRブースを出展し、2025年の万博の開催に向けてしっかりとアピール。 ミャクミャクのステッカープレゼントも行なわれていました。

音楽と楽しむ「EXPO酒場 ミナホ店」がいよいよ開店!

各ライブハウスでの公演が終了したあと、ライブハウス「心斎橋JANUS(しんさいばしジャニス)」で「EXPO酒場 ミナホ店」が開店します。

入場時に配られたのはサイリウムのブレスレット。アート好きは黄色、お出かけが好きならピンク色……と、お客さんに自分の興味対象の色を選んで身につけてもらいました。

乾杯の音頭でステージに登場したのは、FM802ラジオDJのおふたり、土井コマキ(どい・こまき)さんと樋口大喜(ひぐち・だいき)さん。お客さんの多くが、丸一日ミナホを楽しんでから来店していますが、疲れを感じさせない元気いっぱいの乾杯からスタート!

「酒場なので乾杯からスタートしましょう!」と樋口さん(奥左)と土井さん(奥右)による、元気あふれる乾杯から幕を開けたEXPO酒場 ミナホ店。

FM802の協力により、EXPO酒場  ミナホ店は2組のアーティストがステージに登場。最初に登場したのは、関西を中心に活動する若手注目バンド「LAYRUS LOOP(レイルス ループ)」。

ポップなバンドサウンドで全国区の人気を伸ばしてきているこちらのバンド。代表曲「ダンスフロア」では、思わず腕を振ってしまうほどフロアがノリノリに!

そして2組目に登場した、台湾の女性デュオの「凹與山(Our Shame/アワ・シェイム)」は、なんと日本での初ライブ! 貴重な機会に立ち会え、お客さんのボルテージも上がります。ファンたちが注目するなか、人気の楽曲「理查(Richard)」などを聴かせてくれました。

大盛り上がりのライブの合間には、demo!expoのまちごと万博プロデューサーである今村治世(いまむら・はるとし)さんと、作家・しまだあやさんが万博つなぎ人としてステージに登場。お客さんを交えた万博トークセッションが始まりました。

お祭りらしいハッピ姿で登場したしまださん(左から2番目)と、EXPO酒場オリジナルの前掛けを身につけた今村さん(右から2番目)

テーマは「あなたの好きが万博になる」。入場時に配ったサイリウムのブレスレットをお客さんに掲げてもらい、それぞれの「好き」をつなげて、新しいアイデアに。万博でみんながやってみたいことについて話し合いました。

「アウトドア好き」のブレスレットを掲げていた男性は、「万博までに1回キャンプに行きます!」とコメント。グルメが好きな人から「万博でキャンプ飯は?」、「フードトラックで出店したい!」など、みんなの好きなことが集まり、次々とアイデアが生まれていきます。「オチケン」の愛称で知られる、FM802のラジオDJ・落合健太郎(おちあい・けんたろう)さんに協力してもらって、「マツケンサンバ」ならぬ「オチケンサンバ」を作ろうというアイデアでは、会場に笑い声が広がりました。

「音楽が好きな人も、音楽を作る人も、まちにはあふれている。誰でも自由に演奏できるから、まち自体がいつでもステージになるんです」と、SOUND PAVILIONについて説明したしまださん。

「SOUND PAVILIONは移動できる屋台だから、万博でパレードもできそう。とにかく、万博で音楽イベントをやりたいんですよ!」と土井さんは、 大阪のまちにいる人自体の魅力を、音楽を通して発信したいと語りました。

「妄想でいいから、みんなの楽しいこと、やってみたいことを集めて実現を目指す。みんなの『好き』で万博を作っていきましょう!」と、今村さん。最後は出演者を含めて、全員の乾杯でEXPO酒場 ミナホ店の営業は終了!

音楽が好きな人から万博のことをあまり知らない人まで、遊びに来たお客さんの興味はさまざま。でもなかには、イベントが終わってから「万博をとりまくニュースはいろいろあるけど、もっとカジュアルに万博のことを考えてみてもいいって思えた」とコメントしてくれる人も。

万博の開催まで、およそ500日。万博を「他人ごと」から「自分ごと」に。まちの人々の万博に対する意識の変化と盛り上がりを予感させてくれました。

【出演者インタビュー】関わる人がまちを、万博を変えていく

ライブあり、トークセッションありの2時間だった今回のEXPO酒場。店長を務めたFM802のDJと、出演者たちに話を聞きました。

土井コマキ。奈良県出身のFM802ラジオDJ。アジアと大阪の音楽をつなぐ架け橋を目指す〉

土井さんがdemo!expoに関わるようになったきっかけはなんでしょうか?

土井

誘致が決まったはじめのころは万博のことをよくわかっていなかったけど、開催が決定したからには意味のあるものにしたいって考えるようになって。「まちの人を主役に、まちから万博を作っていく」っていう、demo!expoが掲げる「まちごと万博」の考え方がすごくいいなって思ったのが、関わりはじめたきっかけです。

今回はEXPO酒場の店長として大活躍でしたね!

土井

音楽には言語の垣根を越える力があります。今回の酒場でも台湾のアーティストに登場してもらいました。人の意識が変われば、万博も、まちも変わっていく。「面白い」の種はみんなの中にあるはずなので、それぞれの面白い素敵な部分が芽を出して、さらに、それをお互いに尊重して面白がることができたら、とても素敵なまちになりますよね。音楽でみんなの意識のスイッチを押せたらいいなと思います。

樋口大喜。兵庫県出身のFM802ラジオDJ。大学時代から構内のキャンパスDJやTV番組の司会を経験。

万博に向けて、どんな思いで活動してますか?

樋口

昔から岡本太郎さんが好きだったので万博がすごく楽しみで、何かで関わりたいってずっと思ってたんです! 万博に対するイメージは人それぞれだろうから、みんなの考えを変えようと努力するより、オモロイことをしていたら自然と人が集まってくるから、いずれはみんなを巻き込んでいけるんやないかな。

樋口さんが万博でやってみたいオモロイことは、どんなことでしょうか?

樋口

ラジオパーソナリティとして、いろんなアーティストやゲストを呼んで、会場で生放送をしてみたいです。このEXPO酒場のように万博をテーマにしたら、今まで出会えなかったような人とたくさん出会えたのが嬉しくて。みなさんも万博をきっかけにどんどん新しい出会いをして、それぞれが新しい自分の一面に気づくことができたら素敵やなって思います。

さらに、EXPO酒場を音楽で盛り上げてくれたアーティストたちからも、このイベントについてコメントが届きました!

関西を中心に活動し、主にZ世代から熱い支持を受けるスリーピースバンド・LAYRUS LOOP(レイルス ループ)。左からオオトシ ユリヤ(Ba/Vo)、ムラカミ マホ(Gt/Cho)、モトザワ ソラ(Dr)。

ユリヤ

万博の印象といえば、アニメ『クレヨンしんちゃん』の映画で出てきたな〜っていう記憶。未来のモノや技術が集まるっていうくらいしか、まだイメージがないです。でも万博に対して前向きに盛り上がるイベントに携わることができて、万博がすごく待ち遠しくなりました。

ソラ

それに、今回対バンさせてもらったOur Shameさんみたいに、万博までに私たちも海外でのライブに挑戦してみたいです。

マホ

いつものライブイベントとは違ったけど、自分たちらしいライブができて、とても楽しかったです。

エレクトロとアコースティックが入り混じったサウンドが魅力の、台湾のハウスデュオ凹與山(Our Shame)。左がIsan(イーサン、Per)、右がEstelle H(エステル、Gt/Vo)。

Isan

日本には何度も遊びにきています。大阪はまちの人がすごく明るくて、自分らしさを表現している人が多い印象。551の豚まんもすごく美味しいし(笑)。今日のライブで話すために、日本語も少し勉強してきました。

Estelle H

以前、他の国のライブに出演したときはオンラインだったんです。ようやく念願の日本で初ライブ、しかもこの地を踏んでライブをすることができました。世界中のアーティストと知り合うことを目標にしているので、今日をその始まりとしたいです。

万博に向けて、改めて音楽の可能性を感じることができた

FM802が開催したEXPO酒場 ミナホ店。そのつなぎ役となった今村さんに、イベントを振り返ってもらい、今後の展開について聞きました。

今村治世(いまむら・はるとし)。一般社団法人「demoexpo」理事。株式会社三菱総合研究所  万博推進室室長。自身もバンド経験があるほどの音楽好き。

今回のイベントは、FM802とのタッグで開催されました。FM802とdemo!expoとのつながりはどのようにして生まれたのでしょうか?

今村

FM802は万博に向けて、いい音楽やフレーズを未来に届けていきたいと思っていて、一方でdemo!expoは、万博をきっかけにして、まちのいろいろな人と一緒に面白い活動をしています。やり方が違うだけで、互いに万博を盛り上げる目的は一緒なんです。以前から万博関連でつながっていた縁もあり、今回はEXPO酒場をすることになりました。

ミナホでは「FM802 SOUND PAVILION」を制作されました。

今村

万博が開催されても、会場だけ盛り上がっているだけじゃ面白くない。まちの人を主役にして、まちから万博を作っていくことが大切なんです。SOUND PAVILIONを移動式の屋台にしたのも、まちの中で音楽を鳴らして、まちを盛り上げるためです。

今回のEXPO酒場はアーティストを招いたのが印象的でした。

今村

EXPO酒場は今回で32回目の開催。音楽と酒場の相性の良さみたいなものをすごく感じているんです。今回、台湾から来たアーティストがライブしたように、音楽は国境や性別、年齢に関係なく、いろんな人が楽しめるものなんですよね。

音楽の可能性は土井さんも感じられているようです。今後もdemo!expoでは音楽を絡めた取り組みを増やしていくんでしょうか?

今村

今回の酒場で話したように、パレードは音楽を使ってまちを明るく、面白くできるし、まちに住む人を巻き込みやすい仕組み。実は計画も進めているんです。

まちの人たちを巻き込む点では、demo!expoはすごくいい活動ができている感覚があります。今後はいかに多くの人に活動を届けて、仲間を増やすかが重要だと思っています。今回の酒場のテーマのように、一人ひとりがそれぞれ好きなことを持ち寄って、まちの人みんなの力で盛り上げる万博を目指して、これからも活動していきます!

万博を“言い訳”にしたら新しいことを始められる

万博という大きなテーマに向かって、お酒の力を借りたカジュアルな場で、自分たちが面白いと思えるアイデアを自由に話し合う。EXPO酒場には、学生時代に文化祭を準備していたときのようなワクワク感がありました。

「万博のためにやってるんだからと『言い訳』をしながら、何か新しいことを始めるチャンスは誰にでもある」と今村さんはEXPO酒場で話していました。得意なことや興味のあることは人それぞれ。人の数だけいろいろな考え方が集まり、アイデアが生まれていきます。

何はともあれ、2025年に開催が決定している大阪・関西万博。万博を難しいものと考えず、何かワクワクすることができないかを考えてみる。demo!expoの掲げるキーワード「万博を自分ごとにすること」は、今より何倍も、万博を自分たちで楽しむための秘訣かもしれません。

2023年10月取材

取材・執筆:関戸ナオヒロ
撮影:山本裕人
編集:かとうちあき(人間編集部)