行動か撤退かを決める判断基準とは? 「この環境だから仕方ない」と諦めるのをやめよう(澤円)
仕事でもプライベートでも、やりたいことは山のようにある。同時に、周りからのいろいろな頼まれごとにも向き合っていくと、いつの間にか予定はいつもパンパンに。この働き方、暮らし方は思っていたのと、ちょっと違う気がする……。そんなときに必要なのは、こだわりや常識、思い込みを手放すことなのかもしれません。連載「やめるための言葉」では、圓窓代表取締役・澤円さんと一緒に「やめること」について考えていきます。
諦めたくなるときもあるけれど
仕事をしていると、「これじゃどうしようもないよなぁ」と感じるような、如何ともし難い状態に出くわすことがあります。
これは環境に起因することもあり、そうなるとどうにも自分では動かしようがないと感じる場面も。
たとえば、慢性的な人不足でとにかくみんな余裕がなく、コミュニケーション不足に陥ってミスや手戻りが連続して起きていたり。部署が超縦割りで、かつ部門間の関係が険悪だったりして、経営層が「社内でイノベーションを起こそう」という掛け声が虚しく響き渡ったり。親会社の力が大きすぎて、子会社側では何も変えられそうになかったり。
どれもこれも、「サラリーマンあるある」のシーンですよね。まさにこんな環境に身を置いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
環境がこんな状況だと、なかなか自分で打破しようというマインドにならないのも無理からぬ話です。環境にはパラメーターが多く、複雑に絡み合っていたりすると「これはどうにもコントロールできないよなぁ……」と諦めの境地にたどり着いてしまうのも、自然な流れだと思います。
とはいえ、「どうにかできないかなぁ」と考えてみたくなる日もあると思うんですよね。そんな時のために、ボクなりの考えを書いてみます。
OODAループを思い出しましょう
ボクは以前の記事の中で「OODAループ」についてお伝えしました。
OODAは、Observe(観察)/Orient(状況判断)/Decide(意思決定)/Act(行動)の四要素からなります。
まず、どうにもならないように感じる環境をObserve=観察してみましょう。その時には、「ズームイン」と「ズームアウト」の両方を意識してみるといいかなと思うんですよね。
ズームインは、めちゃくちゃ細かく見る。ディテールに目を向けて、言語化をする。漠然と「うちの会社は」「うちの部門は」と捉えるのではなく、環境に関わる人物ひとりひとりに目を向けてみましょう。
また、その人たちの「時間ごとの行動の違い」を知ろうとするのも有効なアプローチです。
たとえば、朝の忙しい時間と、ひと息ついた夕方とで、その人の様子がどう違うか、といったことです。
次に、ズームアウト。これは、全体を俯瞰して捉えてみるのです。先ほどの人物の相関関係や、社内での部門の立ち位置、あるいは社会にどのような形で自分たちの仕事が影響を与えているのか。これらを言語化しておくことで、Orient=状況判断ができます。
そして、「よし、これで行こう」とDecide=意思決定ができて、Act=行動に移せるわけです。漠然と環境を捉えている間は、なかなか行動に移すことはできません。
行動は、常に具体的なものなんですよね(抽象的な行動って、なかなかない気がします)。具体的にするためには、解像度を高めて環境を把握することが欠かせないと、ボクは思っています。そのためにも、まずはOODAループをイメージして、環境と向き合ってみるといいかなと思います。
アクションの3分類
さて、ここでは環境をどうにかしたいと思った時の判断基準を、3つに分けてご紹介します。
「直接変えられる」
「影響を与えられる」
「変えられない」
この3つです。直接変えられるぞ、と思った時には、OODAのA(Act)は自分から動くことができます。自分が何かの資料を作る、作業を自動化するエージェントを用意する、汎用的なプロンプトを共有するなどですね。
自分が動くことで誰かの助けに直接なれるなら、どんどん進めていいと思うんですよね。冒頭の人不足も、自分の作業を自動化することでほんの少しでも余裕が生まれるなら、このゾーンです。
「縦割り」「部門間の関係が険悪」という例も、自分が間に立つことでちょっとでも改善が見込めるなら、動いてみる価値はあると思います。多くの人の信頼を得られれば、自分自身も仕事がしやすくなりますからね。
ちょっと自分には荷が重いけれど、影響を与えることはできそうだなと思ったら、そのためのアクションを考えてみるといいかなと思います。
その典型が「誰かに動いてもらう」です。最近、いいケーススタディがありました。10月21日に、高市早苗首相からPHPの脆弱性に関する注意喚起が、Xにポストされました。
これは本当に素晴らしいポストでした。(なーんか否定的な人もたくさんいたけれど、まぁそれはそれってことで)。「首相も言ってる」で、思い切ったアップデート作業ができた会社や組織も多かったのではないでしょうか。
この脆弱性に関する情報は、おそらく国家サイバー統括室および各関連部署のエキスパートが収集・精査して高市首相にインプットしたのでしょう。もちろん各部署からの発信も可能だったと思いますが、この脆弱性のリスクはとても大きかったので、内閣総理大臣という強大な影響力を使って発信したのではないでしょうか。
職場に置き換えて考えてみましょう。あなたが何かしらの業務の改善案を思いついたとします。でも、自分がミーティングで発言しても、先輩や上司から突っ込まれるかもしれません。
そこで、あえてその上の部長さんとかにインプットして、部長のアイディアとして発言してもらうわけです。このように、「自分が行動するよりもずっと効果的である」と判断すれば、他人に動いてもらうのは素晴らしい判断になり得ます。
この時、部長に手柄を渡すことになります。ボクはギバー(見返りを考えずに、まず与える人)でありたいと思っているので、まず渡します。渡す前に「この人は返してくれるかな」と損得を計算するのは、マッチャー(損得をそろえようとする人)の発想なんですよね。
まず渡して、そのあとの様子を見る。部長が周りにあなたの貢献を伝えてくれるのか、次の機会をくれるのか。もしそうでなかったら、渡す先を変えればいいだけです。渡すこと自体をやめる必要はありません。ごますりに見えるかもしれませんが、目的は部長に気に入られることではなく、改善案が動くことなんですよね。
ボクは、他人への影響力は、普段から「この人の言うことは信用できる」というタグを作っているかどうかで変わると思っています。「正しいことを言えば相手が動く」とは限らないのが、人間関係というやつですよね。だからこそ、影響を与えられるようになるためには、普段から周囲とうまくやっていくマインドが効いてくると思うんですよね。
そして最後は「変えられない」と判断した時です。これは撤退フラグと捉えていいでしょう。変えられないことに向き合い続けると、疲弊するだけなんじゃないかなと、ボクは思っています。冒頭に例として挙げた、親会社と子会社の関係とかはまさにこれに相当しますね。
ただ、どこまでを「変えられない」とするかは人によって違うので、あくまでボクの見立てです。その部分からは距離をとって、自分の心と時間を守るほうを優先してもいいと思うんですよね。
これは諦めではなく、変えられるところに時間を使うための選択です。変えようがないことと向き合うよりも、自分の行動で環境が変わって、誰かが幸せになることに自分の人生を使いたいと、ボクは思っています。
ほんのちょっとした行動でもいいです。朝の挨拶の声のトーンをちょっと上げてみるだけでも、職場の雰囲気が明るくなるかもしれません。社内SNSにポジティブなトピックを毎日投稿してみるのもいいかもしれませんね。
ボクも、自分ができることを探しながら、自分にとっていい環境を作っていきます。
アイキャッチ制作=サンノ
編集=ノオト


