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立場も社名も関係ない――本音を引き出す共創の場、200人が語り合う大阪・関西万博「EXPO大酒場」

2025年に開催を予定している大阪・関西万博。各国の叡智やアイデアが集結する世界的イベントの幕開きまであと800日を切りました。

「万博って、結局何をするの?」「自分には関係なさそう」「興味はあるけど、どうやって関わればいいのかわからない……」と、どこか「他人事」に捉えてしまう人が多いのでは?

その一方、万博に向けて「勝手に」盛り上がり、続々とたくさんの人を巻き込み、共創の渦を生み出しているのが、有志団体「demo!expo」。本連載では、彼・彼女らが生み出すムーブメントを取材していきます。

2022年12月15日夕方、大阪・京橋の「QUINTBRIDGE」で、「demo!expo」が主催する「つながれ!EXPO大酒場」が開催されました。

当日は夕方まで、同じ会場で、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会主催のイベント「TEAM EXPO 2025 Meeting」も。

公式イベントの参加者も加わって、集まったのは200人以上! これまでの「EXPO酒場」とは異なるカラーのイベントになりました。新たな「共創」が生まれゆく模様をレポートします。

共創の観点から大阪・関西万博に関わる人々

公益社団法人2025年日本国際博覧会協会は、参加型プログラム「TEAM EXPO 2025」を実施。プログラムの理念に共感するワクワクした人たちが、ワクワクすることを実現していくために共創し、万博のもつ力を多方向に広げようとしています。

今回の「TEAM EXPO 2025 Meeting」には、このプログラムへの参画を検討している人々も参加。プログラムの説明やトークセッションを聞き、自分たちがどのように共創に加わっていけるのか、考えを深める時間となりました。

会場には、所属企業や団体のリソースを活用し、大阪・関西万博を契機に新たな取り組みを行いたいと考えている人々が約130団体以上集まった。

すでに共創パートナーとして取り組みを進めている企業・団体も登壇。経済や教育、IT、漁業、地方など、さまざまな分野で万博を通して価値を生み出そうとする事例が紹介されました。

共創パートナーである近畿経済産業局の発表。万博を通して関西の経済を活性化させ、万博そのものを価値あるレガシーとして残していくための取り組みを行っている

登壇した企業・団体と「共創」したい人々同士で交流する時間も。リアルな情報交換を経て、より明確に万博のビジョンや関わり方を想像できるようになったり、共創に向けて具体的な話に踏み込んだ方もいらっしゃいました。

紙芝居で語られた「demo!expo」にかける想い

「TEAM EXPO 2025 Meeting」で参加者の万博への関心を高まった後、いよいよ、「demo!expo」による「つながれ!EXPO大酒場」の幕開けです。

大酒場のオープニングには、「demo!expo」の取り組みを紙芝居で伝える「紙芝居屋のガンちゃん」が登場!

紙芝居屋のガンちゃん 子どもからお年寄りまで幅広く楽しめるオリジナル紙芝居をこれまでに300作以上生み出し、日本全国はもちろん世界のイベントで披露している。

今回の紙芝居に登場するのは、「万博を盛り上げよう」という人々の気持ちを邪魔し、万博の失敗を目論む黒い物体「ジャクジャク」。よく見ると、公式キャラクター「ミャクミャクくん」にそっくりの見た目をしています。

そんな万博の危機を救おうとしているのが、「デモデモ」。「自分たちは万博を作り上げる人たちには呼ばれていない。でも、勝手に面白いことをして万博を盛り上げていこう」と意気込む生き物です。

「デモデモ」(写真右)、は「EXPO酒場」を通して勝手に万博を盛り上げようしている「demo!expo」のような存在です。(提供:紙芝居屋のガンちゃん)

そんな「デモデモ」の取り組みに対して、公式の万博主催者もまた「デモデモと一緒なら、万博を成功させられるかもしれない」と期待できる。そんな2025年への希望を感じさせる紙芝居作品が演じられました。

「demo!expo」は、「万博ってどんなことをするの?」「興味はあるけど、どうやって関わればいいのかわからない」と思う人々に応える形で立ち上げられた団体です。

「万博って結局何なん?」という不安から、「万博って楽しそう」という希望に変えていく。紙芝居を通して、「EXPO大酒場」は「demo!expo」のそうした歩みが結実したイベントであることが伝えられました。

本音を引き出す2つの仕掛け

「EXPO大酒場」には大きなテーマが掲げられました。それは、「共創と本音」。建前の言葉ではなく、万博というキーワードで未来について本音で語り合う。そんな意味が込められています。

「demo!expo」のメンバーであり、株式会社人間の花岡さんは、交流タイムに先駆けて、こう呼びかけます。

花岡

会社や団体を背負っていると、つい“建前”で話してしまうことが多かったと思います。

今日は、そうしたしがらみを取っ払い、自分の心から湧き立つ本音の言葉で万博について語り合いましょう。ネクタイを着けている人は、外しても大丈夫ですよ!

ただお酒を片手に交流するだけでなく、そこから「本音」を引き出すための仕掛けも見られました。

1つ目は、会場内に設けられた5つのブース。それぞれの場所には、「入門」「実践」「公式」「地域」「エンタメ」のテーマに強い「demo!expo」、博覧会協会、過去のEXPO酒場の店長たちがブースの「店長」として常駐します。

万博のことをまだあまり知らない人は、「入門」ブースへ。万博に向けてもっと行動に移したい人は、「実践」ブースへ。

参加者それぞれの万博への温度感や興味のあるキーワードがとっかかりとなり、参加者同士の新たな出会いが自然と生まれました。

「エンタメ」ブースの店長は、NTT西日本の社員でありながら、マジシャンやシンガーソングライターとしても活動する及部一堯さん。この日はコインを使った手品も披露。
「入門」ブースでは、数々の地域で「EXPO酒場」を手掛ける株式会社オカムラの岡本栄理が店長を務めた。

「地域」ブースでは、過去にEXPO酒場 淡路島店 で店長を務めた齊藤美結さんが、ここでも店長として参加。齊藤さんの所属する「淡路ラボ」を例に、地域から万博を盛り上げていくことの重要性が熱く語られていました。

淡路ラボの齊藤美結さんを中心に、地域創生に関する事業を行う人たちが語り合う。

「本音」を引き出す2つ目の仕掛けは、「本音のレッテル祭」

参加者全員に配れられた、「大阪を変えたい」「クリエイターに出会いたい」「お金がほしい」などと書かれたユニークな1セットのシール。

「EXPO大酒場」で出会った人と語り合い、適したシール=レッテルを相手の背中に貼る。ただし、どのシールを貼ったのかは、相手には秘密です。

シールがきっかけとなり、初めて話す相手とも自然と話が弾み、「万博ではどんなふうに関わっていくつもり?」と、未来を前向きに見つめるようなトークが繰り広げられていました。

一人ひとりの内側に未来への思いを生み出す

「demo!expo」には、これまで一貫して大切にしてきたことがあります。それは、万博に興味のある人々の主体的な姿勢を育むこと。

「公式ではこうしているから」「上司に言われて万博担当になったから」とトップダウン型の「やらされ仕事」ではなく、ボトムアップ型で万博を作り上げていくことを目指しています。

今回のイベントに集まったのは、万博に強い関心を持つ人から、「なんとなく来てみた」という人まで、さまざま。

しかし、どんな想いを持っていて、どんな組織に所属しているとしても、立場を問わずフラットに語り合い、万博とその先の未来をともに見据えられる場所となったのが、「EXPO大酒場」です。

「万博」を合言葉に、日々を暮らしているだけでは出会わなかった人々とつながり、気づけば手と手を取り合っている。すでに始まりつつある「共創」が、さらに広がっていく様子を垣間見た一夜でした。

2022年12月取材

取材・執筆:桒田萌(ノオト)
写真:古木絢也
編集:鬼頭佳代(ノオト)