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ホフステードに見る「幸福」と「価値観と文化」 | 八木橋パチの #混ぜなきゃ危険

 

私は昔から文化比較論が好きで、それを見ていろいろと考えを巡らすことが多いです。特によく見るのが国際的な調査をもとにしたもので、そのたびに自分の頭の中にある「文化の捉え方」をチューンナップするように心がけています。ただ「昔から好き」と書いたけれど、具体的にはいつ頃から好きだったのだろうかと考えると、おそらく初めて海外旅行に行った後からではないかと思うのです。

 

「どうしてこんなに XXXX なの?!」と笑ったり怒ったり、羨ましがったり呆れたり。「違い」を目の当たりにして、その違いをもっと深く理解したい(「なぜこういうルールができたんだろう?」、「どんな出来事がこのルーツにはあるんだろう?」)、この不思議さを納得したいという経験をしたことが、その直接的な理由だったんだと思います。

 

一言で言えば「知りたがり」だからってことですね。でも、みんなはそうじゃないのかな? …程度の差はあれ、人は誰しもみんな「知りたがり」だと思っているんだけど…違うのかしら?

 

そんな私がここ数年ずっと気にかけているのが、「幸福と価値観と文化」の関係性です。…と、こう書くと、なんだか重たげな話に聞こえてしまうかもしれませんが、実際はとてもシンプルな話です。

 

・ 自分がもっとしあわせに生きるために、大切にした方がいい価値観やマネできる文化って世界中にいろいろあるはず。どんなものがあるんだろう?

 

・ その文化や価値観って、ひとりでも育んでいけるものなのかな? 自分だけじゃなくて、自分の周りにももっとしあわせになって欲しいんだけど…。(しあわせは、友人の友人の友人まで「伝染する」という研究結果が知られています。)

 

こんなふうに、自分と周囲がもっとしあわせになる方法やスタンスを(そして不幸せにするものを遠ざける方法を)、空間的な視野を広げて海外からも学ぼうってことです。幸福とは何か? そしてどうすれば幸福になれるのか? はとてもとても難しいテーマで、おそらくは万人に当てはまる答えはどこにも存在しないでしょう。でも、「幸福になりたくない人」は世界中どこにもいないと思います。それであれば、少なくとも自分が幸福になるためのヒントを、そこから見つけ出すことはできるんじゃないかなと思うのです。

 

 

ホフステードの6次元モデルとは

「ホフステードの6次元モデル」って見聞きしたことがありますか? ホフステード(Geert Hofstede)さんという、昨年亡くなられた研究者を中心に開発された国家文化指標モデルのことで、世界中で多くの著作や解説本が出版されています。

 

ホフステードさんご本人を中心に書かれた『多文化世界 — 違いを学び未来への道を探る』が最も有名な本ですが、正直、ちょっと読みづらいです。もしご自身でも読んでみようという方には、『経営戦略としての異文化適応力 ホフステードの6次元モデル実践的活用法』が解説書として読みやすく、オススメです。

 

なお、Wikipediaでホフステードさんのことを調べてみたところ、20言語以上で解説ページがあるにもかかわらず、日本語版はありませんでした。

 

Wikipedia英語版ページでは「最も古い歴史と大きな人気を持つグローバルな文化測定フレームワークの開発者(“He is best known for developing one of the earliest and most popular frameworks for measuring cultural dimensions in a global perspective.” )」として紹介されていました。国際文化比較という分野においては相当な重鎮であるはずなのですが…。もしかしたら、日本って国際文化比較においては後進国なのかも?

 

そんなホフステードの国民文化6次元モデル、一体どんなものなのか気になりますよね? そして、それがどう私たちをしあわせに近づけてくれるのかも。私は専門家ではありませんが、簡単にモデルを解説し、それから、「ここがポイント」と私が思う点について書いてみます。

 

次元モデル一例 | 日本の権力格差は…

ホフステードの6次元モデルでは、各国の文化の違いを6つの軸で数値化しています。その6つとは、「権力格差」「集団主義 / 個人主義」「女性性 / 男性性」「不確実性の回避」「短期志向 / 長期志向」「人生の楽しみ方(主観的幸福感)」。ここではその中身を1つずつ見ていくことはしませんが、その仕組みは、それぞれ1つずつの軸(次元)で見たときに、その国が0から100までの数字のどこに位置するのかを示したものとなります。

 

例として「権力格差」という次元を見てみましょう。

 

権力格差は、国や組織における富や権力などの不平等を、権力の弱い側にいる人間がどう捉えているかを示す数値です。数値が大きい国では力の不平等は当然のこととして受け入れられ、教師、政治家、医者など力を持つ人は人間としても優れているべきと受け止められます。一方数値が小さい国では、力の不平等は極力小さい方が良いと考えられ、職業や年齢の違いや社会的地位の高さと人間的な優劣に関係はないと捉えられます。

 

さて、この説明を読んだら、日本は0〜100のどこに位置するのかが気になりますよね? 答えは、54 でほぼ真ん中。世界の中では平均的で、権力格差の小さい国の代表格が、私の大好きなデンマークやニュージーランド 。また、オーストラリアやイスラエルもそうです。そして権力格差の大きい国の代表格が、マレーシアやフィリピン、サウジアラビアやイラクとなっています。

参考: 異文化理解のフレームワーク「ホフステードの6次元モデル」(1)パワーの使い方:権力格差

 

ここで1つ、とても大切なことを書きます。

 

この6次元モデルとその数値は、それが「正しいか間違っているか」を表しているわけでは決してありません。単に、その国の文化傾向を統計的に他国との比較で示しているだけです。そして統計的ということは、国の平均的傾向を表しているだけであり個々人に当てはまるものではないということです。

 

つまり、権力格差 54 の日本は、格差 18 のデンマークよりも国民の平均としては人びとの間の不平等を受け入れているけど、格差70のベトナムよりは権力の不平等はない方がいいと考えているということです。そしてデンマークのアナセンさんが、日本の村上さんやベトナムのグエンさんよりも不平等を受け入れないかというと、それは分からないということです。その可能性は数値的には高いけれど、アナセンさんが平均的かどうかは分かりません。

 

 

日本に顕著な文化的傾向

さて、それでは「集団主義 / 個人主義」「女性性 / 男性性」「不確実性の回避」「短期志向 / 長期志向」「人生の楽しみ方(主観的幸福感)」という残り5つの軸の中で、日本が世界各国との比較で顕著な偏りを示しているのはどれだと思いますか?

 

答えは「女性性 / 男性性」「不確実性の回避」「短期志向 / 長期志向」の3つです。この3つはそれぞれ以下のように説明できます。

 

世界の中で、日本に顕著な文化的傾向

極端に強い男性性 | 「男らしい」という言葉で古くから表されがちな「競争や対立」を「共生や協力」よりも重要視する傾向であり、強者や成功者になるための絶え間ない努力が求められ称賛される。

 

極端に強い不確実性の回避傾向 | 不確実・未知の状況を強く不安に感じるがゆえ、予測可能性を高めることで不確実性を回避しようとする。そのためにルールや仕組み、約束事を増やしたり強めたりする。

 

極端に強い長期志向 | 結果が出るまで時間がかかることを前提とし辛抱強く努力を続けることが称賛され、「現在の余暇や充実」よりも「将来の成長や利益」を極端に大切にする。

 

さて、これを読んで、皆さんはどう思いますか? 「ああ、そうだな。日本文化の特徴を表しているな」と感じられる方が多いのではないでしょうか。私もそうです。それでは次に、それをどう感じますか? 「この文化を大切にしていきたい。今後もこうであって欲しい」と思われますか?

 

はっきり言って、私はまったくそう思いません。

 

これらの価値観が交じり合い日本特有の文化を作り上げてきたのだろうと思います。そして大きな役割を果たした時期があったことは私も理解していますし、それを大事にしたいと思う人がいるであろうことも理解できます。

 

ただ、これらの文化と価値観が、これから私と私の周囲の人たちをしあわせにするものだろうかと考えると、まったくそう思えないのです。いや、むしろ、不幸に近づけてしまうだろうという気がしてなりません。

強者になれ。

我慢して努力し続けろ。

将来の安泰につながるのだから苦労は仕方がない。

ルールや約束事を守ってさえいればひどいことにはならない。

 

私の思い込みでしょうか? こんな言葉が、私には聞こえてくる気がしてなりません。これらの言葉……しあわせにつながると思いますか?

 

 

「幸福」と「価値観と文化」の関係性、次回に続きます! 皆さんの意見や感想聞きたいです。

 

Happy Collaboration!

 

著者プロフィール

八木橋パチ(やぎはしぱち)

日本アイ・ビー・エム株式会社にて先進テクノロジーの社会実装を推進するコラボレーション・エナジャイザー。<#混ぜなきゃ危険> をキーワードに、人や組織をつなぎ、混ぜ合わせている。2017年、日本IBM創立80周年記念プログラム「Wild Duck Campaign - 野鴨社員 総選挙(日本で最もワイルドなIBM社員選出コンテスト)」にて優勝。2018年まで社内IT部門にて日本におけるソーシャル・ビジネス/コラボレーション・ツールの展開・推進を担当。 twitter.com/dubbedpachi

 

2021年8月31日更新

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