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福岡発グローバル企業は 「よき隣人」を目指す ― NULAB

 

この記事は、ビジネス誌「WORK MILL with ForbesJAPAN ISSUE04 LOVED COMPANY 愛される会社」(2019/4)からの転載です。

 

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写真撮影のとき、色々なポースでおどけてみせる。グローバルに展開する企業のトップとは思えないその親しみやすさに、ヌーラボが地域社会から信頼され、愛される理由が垣間見えた。

 

2014年、グローバルスタートアップ国家戦略特区に指定された福岡市。起業に対する支援体制が手厚く、中には60を越えた女性が「起業」の相談に来ることもある。そんな福岡においてスタートアップの機運が高まる10 年前、代表取締役の橋本正徳ら3人によって「Nulab(ヌーラボ)」は産声を上げた。今や福岡を代表するグローバルなICT企業だ。ユーザー数100万人を突破しているプロジェクト管理ツールの「Backlog(バックログ)」を含め、提供しているサービスは3つ。どれもチームで働く人たちの生産性を高め、成果を出すのを助けるサービスである。

 

―執務スペースとは別に、息抜きでダーツや卓球ができるフロア。奥のバーカウンターでは、朝はコーヒーを、就業後はお酒を飲みながらコミュニケーションを取る。

 

11 年のシンガポール進出を皮切りに、14 年にニューヨーク、17 年にはアムステルダムにも拠点を開設。現在は、本社の福岡に、東京と京都を含む国内外6つの拠点がある。11 年の就任以来、ベンチャー企業育成に力を入れている高島宗一郎市長の政策に、橋本は深く共感し、ヌーラボとしても、これまで数々の福岡市のプロジェクトに協力してきている。その辺りの話を橋本にうかがおうと「福岡市とヌーラボはこれまでも色々な取り組みを進めてこられましたが……」と水を向けると、「僕個人ではありますけど、ヌーラボでは特にないですね」と拍子抜けするような答えが返ってきた。

 

そんなはずはないと、働き方改革を推進する福岡地域戦略推進協議会(FDC)の「スマートワークプロジェクト構想」や、福岡市の起業家やその候補者の交流のための「サンフランシスコ/シリコンバレー グローバル起業家育成プログラム」、スタートアップや起業家の成長支援を目的とした「FGN Jumpstart Program」への講師としての協力など、具体的にプロジェクト名をあげてたずねてみると「そっか、そういうのやってましたね。そこはヌーラボとしてやっています。忘れてました」と苦笑い。

 

―橋本が足繁く通うバー「awabar」で談笑する、福岡市長の高島宗一郎(右)。ふたりはここで、福岡市の未来について話し込むのだという。

 

多忙を極める中で終わった仕事は忘れるというのもあるだろうが、これまで福岡市と共にスタートアップに適した環境づくりを進めてきたヌーラボも、最近は少し違うフェーズに入ったようだ。「これまでの活動を通して、福岡市内にスタートアップが次々と出てくるような環境は一応できたと思うんです。これがお祭り騒ぎだけにならないように、実際に成功事例が出ないといけないし、ヌーラボがそのロールモデルになれればと、今は自分の会社にフォーカスしています」

 

とはいえ、福岡市との協力関係が急になくなったわけではない。現在市が進めている「エンジニアフレンドリーシティ福岡」などでも引き続きサポートをしているそう。両者の関わり方は変わっても、相思相愛の関係はそう簡単には変わらない。ヌーラボが地域と良好な関係を築いているのは、福岡だけではない。国内拠点のひとつである京都では、地元の人たちと一緒に自分たちのオフィスを手作りした。このような活動を通じてコミュニケーションすると、ヌーラボが何をやっている会社かわからなくても、「床貼りを手伝った会社」として地域の人たちに認識され、親近感もわく。橋本はこのような活動をする理由を「身の回りの人たちに愛されようとしてやっているわけじゃないんです。もしかしたら迷惑かけているかもしれないし」と説明する。「迷惑をかけているかもしれないから仲良
くやろう」というのは“よき隣人”の発想だ。ヌーラボは、どこに行っても“よき隣人”となることで、社員が働きやすい環境をつくり、地域に溶け込んでいるのだろう。
 

持ちつ、持たれつ

そんなヌーラボには、グローバル企業らしいユニークな制度がある。それは、年1回世界中の社員全員が本社に集まる「ジェネラルミーティング」だ。ここでは、事業計画など会社としての情報共有も一応あるものの、一番の目的はポジティブで強烈な思い出を残すこと。入社後のコミュニケーションやチームビルディングに一役買っているという。

 

ヌーラボは年に一度、世界中の従業員が福岡本社に集い、一週間もの間共に交流を深める「ジェネラルミーティング」を行う。同社が出したリリースによると、自身が所属するチームメンバー以外との会話量が平均39.6%増加したと感じ、70%以上のメンバーが「仕事の依頼や相談がしやすくなった」と感じているとのこと。

ヌーラボは年に一度、世界中の従業員が福岡本社に集い、一週間もの間共に交流を深める「ジェネラルミーティング」を行う。同社が出したリリースによると、自身が所属するチームメンバー以外との会話量が平均39.6%増加したと感じ、70%以上のメンバーが「仕事の依頼や相談がしやすくなった」と感じているとのこと。

ヌーラボは年に一度、世界中の従業員が福岡本社に集い、一週間もの間共に交流を深める「ジェネラルミーティング」を行う。同社が出したリリースによると、自身が所属するチームメンバー以外との会話量が平均39.6%増加したと感じ、70%以上のメンバーが「仕事の依頼や相談がしやすくなった」と感じているとのこと。

 

「国内外のメンバーは、それぞれ違う時間軸で働いています。普段はほぼオンラインでコミュニケーションをしていますが、年に1回みんなで集まると、リアルで会った時の感情の濃さみたいなのがいいんですよね。あの人とリアルな場で一緒に過ごして楽しかった、面白かったという思い出が刻まれていたら、その後の1 年間の業務がやりやすいだろうなと思います」

 

最後に、今後の目標について尋ねると「もう少し会社が大きくなったら自分たちのカンファレンスを開催して、地元の人はもとより、世界中の人たちに足を運んでもらえるようにしたい。だって、飛行機代を払って自分たちの話を聞きにきてくれるんですよ。うちの社員であることを誇りに思うでしょうし。すごく楽しいだろうな」と夢を語ってくれた。そしてつぶやくように「そのためには、福岡市には早くもっと宿泊施設をつくってもらって……」と、やはり最後も福岡のコミュニティを牽引する存在だと思わせるような発言で締めた。ヌーラボと福岡の持ちつ持たれつ、共に成長を支え合う関係は、これからもまだまだ続きそうだ。

 

―ヌーラボ
2004年創業。提供しているサービスは、プロジェクト管理ツールの「Backlog」、ビジュアルコラボレーションツール「Cacoo」、ビジネスチャットツール「Typetalk」の3つ。現在は福岡・東京・京都の国内3拠点に加え、ニューヨークなど国外にも3拠点を構える。主軸ビジネスとは別に地域社会とのつながりを意識した活動も行う一方で、社員の働き方にも注力。みなし残業ゼロやコアタイムなしのフルフレックス制度、有給休暇や子育て休暇などの充実から、Great Place to Work(R)Institute Japanが世界共通の基準で調査分析を行う、2018年日本版「働きがいのある会社」ランキングでは8位に選出されている。

 

―橋本正徳 NULAB CEO
福岡市出身。飲食業や劇団などに携わった後、福岡に戻り建築業界を経て2004年にヌーラボを設立。11年には個人として、福岡版SXSWともよばれる「明星和楽」を立ち上げる。

 

2020年4月15日更新
取材月:2019年2月

 

テキスト:的野裕子
写真:金東奎(ナカサアンドパートナーズ)
※『WORK MILL with Forbes JAPAN ISSUE 04 LOVED COMPANY 愛される会社』より転載

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