もっと、ぜんぶで、生きていこう。

WORK MILL

EN JP

会社の中に“もうひとつの居場所”を。小さなコミュニティから情熱を伝播するコツ(日立社会情報サービス・喜納真里子さん、東京ガス・山田翔吾さん)

2026年1月20日、冷たい風が吹き抜けた大寒の夜『会社の中に“もうひとつの居場所”をつくる 東京ガスと日立グループが語る、社内コミュニティの灯し方 ~職場でも「もっと、ぜんぶで、生きていこう。」イベント×連載シリーズ〜』が開催されました。

シリーズ3回目、そして2026年初回のテーマは「社内コミュニティ」。ゲストに日立社会情報サービスの喜納真里子さんと、東京ガスの山田翔吾さんを迎え、社内コミュニティの始め方から持続可能な運営方法までじっくり考えました。

モデレーターをつとめるのは、森みたいな株式会社 代表取締役で「コアキナイ」という“らしさ”をいかした社会プロジェクトに取り組む嶋田匠さんです。

私は「パンツの話」をしたかっただけなんです

1人目のゲストは、日立社会情報サービスの喜納真里子さん。日立グループを対象に「女性のウェルビーイングを考え、選択肢を広げる」をテーマにした自主活動コミュニティ(ERG)の立ち上げ、運営を行っています。

喜納

今回のテーマは社内コミュニティですが、コミュニティを作りたくてこの活動を始めたわけではないんです。2022年に、生理用の吸水ショーツに出会って感動してしまって。

このパンツの話をしたくて行動した結果、日立グループ公認の女性ERG(従業員リソースグループ)として活動するまでに至りました。

喜納真里子(きな・まりこ)。株式会社日立社会情報サービス BtoBマーケティングを担当。製品・サービスの販売戦略立案・推進に従事。同時に、日立グループを対象に「女性のウェルビーイングを考え、選択肢を広げる」をテーマにした自主活動コミュニティ(ERG)の立ち上げ、共同運営を行う。

喜納

吸水ショーツと出逢って「こんな便利なもの、なんで誰も教えてくれなかったのー!」とワクワクした気持ちになったんです。もっと多くの人にこの感動を伝えたい。でも、社内の友人・知人には伝え切ってしまって……(笑)。

上司に「もっとパンツの話をできる人はいませんか?」と相談したところ、日立グループ内で実施されている新規事業コンテストで「フェムテック」をテーマにしている人がいると上司に教えてもらいました。全く知らない人だったのですが、私から声を掛けました。それで、最初の仲間ができて、コミュニティ活動を始めることになりました。

そして、2025年12月末までに49回のイベントを実施してきました。2023年からはERGの認定を受け、会社公認の活動として運営しています。

日立グループの国内には約11万人の従業員が働いているので、この仲間たちと「この指止まれ」方式でコミュニティ活動を広げていくことは意外とやりやすかったんだそう。(提供スライド)

喜納

イベントのテーマは、女性社員の体験談を共有する会からお金やキャリアに関することまでさまざま。

生理の話はタブーとされていることが多いため「この悩みは私だけのことじゃなかったんだ」と言われることが多かったです。

私自身も長年、生理の悩みを抱えていたのですが、フェムテックという言葉が浸透していく中で自分の中にある“生理の常識”がバイアスまみれだったことに気がつきました。

活動を続けていく中で、話す機会が少ないことで悩みの解決方法を知らずに生きている人が一定数いることも知りました。

提供スライド

喜納

現在は約700名がコミュニティに参加し、情報発信・交換、対話型意見交換会、経験者を招いたディスカッションと大きく分けて4つのイベントを企画・運営しています。

男性の社員も参加可能ですが、女性だけの方が話しやすい話題は女性限定に。日立が変われば、日本も変わる。そんな気持ちでこれからも活動を続けていきたいと考えています。

社内コミュニティは「応援の循環」で育む

続いて、2人目のゲスト・東京ガスの山田翔吾さんにお話を伺います。社内の有志活動「Tomoshibi(燈火)」についてご紹介いただきました。

山田

2019年8月からスタートした活動は、現在3名の事務局メンバーと協力しながら運営しています。

学び・出会い・発信をテーマに、ほぼ毎月イベントを続けてきました。毎回試行錯誤をしながら運営しています。

山田翔吾(やまだ・しょうご)。2011年入社。東京ガス ソリューション事業創造部 新事業開発グループ 課長。複数の部署異動を経て、2019年に有志活動「Tomoshibi(燈火)」を立ち上げる。

山田

最初の頃は、簡単なチラシを作成していろんな部署に「良かったら来てください!」とアプローチしていました。

またテーマも、いろんな人の興味にアプローチしたかったので、育休や留学、ビールの話、転職についてなど幅広いテーマを取り上げてきました。

富士通と東京ガス「Tomoshibi(燈火)」のコラボレーションイベントの様子。実は、本連続企画「会社でも『もっと、ぜんぶで、生きていこう。』」の第1回イベントでFujitsu Gen Z Community代表の廣木健志さんと知り合ったことで生まれた企画なんだとか。(提供写真)

山田

大事にしているのは「応援しよう」という気持ち。社内には「〇〇をやってみたい」とか「もっとチャレンジしてみたい」という想いをもった社員がたくさんいるんです。

そこで、僕らの活動を通じてその思いを発信したり、すでに活動を始めて頑張っている社員や関係者の活動を紹介する。その応援の循環が社内コミュニティーを育んでいくと感じています。

提供スライド

山田

Tomoshibiは非公式活動なので、時間もなければ人手も足りません(笑)。「なぜここまでやり続けられるのか?」と考えてみると、僕たちの活動も応援してくれる人たちがいるからなんですよね。

社内でも助けてくれる人が増えてきたので、日々試行錯誤を続けながらより良い活動へとつなげていきたいと考えています。

職場の中で「サードタイム」は可能か? 自分のやりたい! を職場で発揮する方法

ここからは、モデレーターの嶋田匠さんも交えながらクロストークが行われました。

嶋田匠(しまだ・たくみ)。2015年、リクルートキャリアに新卒入社。2018年に日替わり店長の「ソーシャルバーPORTO」を開業。その後リクルートキャリアから独立。2019年から「コアキナイ」というエコシステムを主宰。

嶋田

おふたりの最初の一歩についてもっと深掘りさせてください。

個人の想いを社内コミュニティという形で始動するきっかけはどんなことだったのでしょうか?

喜納

私の場合はシンプルに……、いわゆるナンパですね(笑)。

新規事業コンテストでフェムテックのアイデアを出していた人に「あなたのアイデアがすっごく好きです。仲間に入れてください。もし何もやっていないのだとしたら私と一緒に何かしませんか?」と誘いました。

嶋田

素敵な声かけですね。

喜納

最初はその方も入れて、3人でおしゃべり会をしたのがすごく楽しくて。次のアクションとして、2000人くらいいる社内コミュニティに「女性特有の課題について話をしませんか?」と投げかけてみたんです。

そうしたら、30人も集まってくれて。やはり一人で悩んでいる人たちが多いことを知りました。こうなったら「やらない」っていう選択肢はないんですよね。

嶋田

そこからどのようにプロジェクトへと発展したのでしょうか?

喜納

最初の30人との対話で、200個くらいの課題が出てきたんですよ。ちょうどコロナ禍だったので「同僚と話したいけど話せない」とか「雑談の機会が減った」という状況も後押しになって、プロジェクト化が進んできました。

気をつけていたのは、上下関係が生まれないようにすること。私たちのコミュニティでは、肩書きは明かさず、自分が呼ばれたい名前で参加する。フラットな関係性になるように工夫はしていました。

山田

面白い社員がいるのにもったいないなーとか、若手の転職が増えているのが残念だなーとか、日々「何かできないかな?」と考えていたのですが……。喜納さんが「ワクワク」起点だとすると、僕は寂しさとか「モヤモヤ」が起点になったのかな?と思います。

そしてある日、僕は、トイレの中で「こうすればできるじゃん!」というこのモヤモヤを解消するTomoshibiの構想を思いついたのが最初の一歩でした。そこから、チラシを作って、社内に配っていきました。

嶋田

お二人とも社外ではなく、社内でワクワクやモヤモヤを解消しようと動いたのが面白い視点だと感じました。

本来、セカンドプレイスである職場で、いわゆる「サードタイム」を生み出せた理由はどこにあると思いますか?

喜納

私はそれぞれの時間を明確に分けていなくて、仕事もプライベートも循環している感じがあるんです。当社はジョブ型で自分のやりたいことを実現しやすい背景はあります。

ただ、職場でサードタイムを過ごせたのは……、熱意じゃないでしょうか? やりたい想いを抱えていても、それを行動に移すってものすごく大変なんですよ(笑)。でも、熱意があれば誰でもできると思います。

山田

Tomoshibiの活動は我ながら「いいコンセプトを作れたな」って思っているんですよ。コミュニティのコンセプトを常に尊重するために自分のルールとして、元気がない時も、悲しい時も、Tomoshibiに来てくれた人を応援すると決めました。

僕のストレングスファインダーに「成長促進」が入っているんです。それも大きいかもしれませんね。コミュニティのコンセプトが明確だったことと、自分自身と向き合い内省した結果、自分の得意なことを反映させる活動ができた。それによって、自然とサードタイムが過ごせるようになったんだと思います。

山田

過去に「社内でカードゲームをやりたい」と相談を受けたことがあったんですが、「やりたいという気持ちを応援しよう!」と決めて会社でカードゲームイベントを開催しました。

その結果、すごく盛り上がって、参加してくれた人たちのサードタイムを生み出せたと感じました。めっちゃ嬉しかったですね。

嶋田

会場にいらっしゃる方の中には「上司を説得できない」と悩んでいる人もいるのかな、と。

立ち上げる前にどのように周りを説得したのか教えてください。

喜納

まず、「上司に相談する必要があるの?」という問いはありますよね。まずは、非公式コミュニティからはじめてみればいいのではないでしょうか。

非公式コミュニティでも活動して仲間を増やすことで、やめる理由がなくなることもあります。日立グループがコミュニティを作りやすい環境なのは、先人の皆さまが活動してきたおかげだと私は考えています。始めることで、周りを巻き込んで、いつの間にか文化になるくらい、継続することが重要だと思います。

山田

僕の場合は、非公式コミュニティなのでコミットしないといけない目標があるわけではありません。

でも、非公式だから他社さんと共創したり、個性が浮き彫りになったり、情熱が生まれるのではないか? と思っていて。公認ではないことで、やりやすくなることもあります。

どういうところに向かっていくかのビジョンが固まっていれば、堂々と「このコミュニティは非公式の活動です」と言い切っていいんだと思います。

テーブルトーク社内コミュニティの価値と役割を語り合い大盛り上がり

イベントの後半は、登壇者を交えたテーブルトークが行われました。


「イベントのテーマ決めはどうしているんですか?」
「幅広い人に参加してもらえる活動にするためには?」
「集客に苦しんでいます……」

「喜納さん、私にもおすすめのパンツを教えてください!」という話題で盛り上がるテーブルも!

みなさんのトークがアツくて思わず腕まくりしてしまったという山田さん。社内コミュニティの価値についてじっくり考えながら、楽しく語り合う様子が伝わってきました。

15分ごとに喜納さん、山田さん、嶋田さんがテーブルを移動していくのですが、本企画発起人の宮野さんの声かけが届かないほど盛り上がったテーブルトークになりました。

宮野玖瑠実(みやの・くるみ)。株式会社オカムラ 働き方コンサルティング事業部 WORK MILL編集部メンバー。本企画の発起人でありファシリテーター。

テーブルトーク後、「吸水ショーツの実物を持ってこなかったことを後悔しています」と喜納さん。ここでの出会いを次につなげたいとお話いただきました。山田さんも「みなさんの熱量に、汗をかきました」と笑顔に。大寒の寒さを忘れるほどアツいイベントになりましたね。

『職場でも「もっと、ぜんぶで、生きていこう。」イベント×連載シリーズ』、次回開催が決まり次第、またWORK MILL上でお伝えします。どうぞお楽しみに!

登壇者のお二人と、嶋田さんで「はいチーズ!」

2026年1月取材

執筆=つるたちかこ
撮影=栃久保誠
編集=鬼頭佳代(ノオト)