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海外移住フリーランスのリアル:働き方への影響と5つのリスク

フリーランスは、柔軟に働く場所や時間を選べるだけではなく、職種によっては海外で働くこともできる。私はライター業を中心に仕事をしており、2017年にオランダ移住をして5年が経った。

しっかりとした事業計画を提出すれば、オランダはフリーランスビザを比較的取得しやすい。ドイツやイタリア、ベルギーなども同様なのか、隣国に住むユニークな日本人フリーランスに出会うこともある。

ヨーロッパの美しい街並みや自然、自由な文化の中での暮らしはとても素晴らしいものだ。こちらに来て得たことは数え切れない。旅と仕事を組み合わせたワーケーションのようなライフスタイルを叶えることができた。

しかし、それと同時に渡航前には想像もしなかったトラブルや、大変なこともたくさん経験した。

海外でのリモート勤務を許可している日本の会社もあり、今後、より多様な働き方を求めて海外で働くフリーランスや会社員が増える可能性がある。

そこで、海外移住をする際に注意しておかなければいけないことなどを私の実体験に基づいてお伝えしたい。

オランダ移住を決めた理由

海外移住で得たことや注意点をお話する前に、そもそもなぜ私がオランダに移住したのかをご紹介したい。移住した理由はいくつかあるが、大別すると「自立のため」と「海外生活への憧れ」がある。

① 自立して生きるため

学生の頃から、「大企業に勤めれば安心」という考え方に違和感があった。何が起こるかわからない時代だ。勤め先が潰れてしまう可能性もゼロではない。

そんな時に「その会社以外で働けない」ことは大きなリスクだ。また、日本がずっと安全で平和である保証もない。日本語でしか仕事ができないことも、私にとってはリスクだった。

海外で事業を立ち上げて仕事をつくり、英語を使えるようになれば多少のことがあっても大丈夫なはずだと考えた。

② 海外への憧れ

単純に「海外で働いてみたい」という気持ちもあった。Webの仕事はインターネットさえつながればどこでもできる。ワーケーションのような働き方をして、日々新しい発見をしたり、多様な文化に触れたかった。旅行ではなく実際に生活して仕事をすることでしか分からないことがあるはずだと信じていた。

移住先をオランダに決めた理由は、

・英語が通じること

・街が美しくて人々の雰囲気も良いところ

・ビザを取得しやすいこと

などが主な理由だ。

然るべき手順を踏めば、フリーランスビザの発行は難しいことではない。日本人のパスポートは世界最強と言われているが、オランダでのビザ申請の手続きの際も、日本人は信頼されているように感じた。

以上の理由から私はオランダ移住を決意し、大使館、移民局への申請、商工会議所への登録を経てビザを取得、オランダでの生活をスタートした。

オランダ移住がキャリアと人生に与えた3つの大きな影響

オランダで5年暮らして得たことは数え切れないが、その中でも自分の人生やキャリアに大きな影響を与えたことを記載したい。

①キャリアの変化

オランダに来るまでに、Web制作、マーケティング、ライティング、広告営業などさまざまな仕事を経験してきたが、どれも「広く浅く」で、一つのことを掘り下げてこなかったことに課題を感じていた。

しかし、オランダに来てからは日本との時差が最大8時間あることもあり、一人で仕事が完結するライター業に専念するように。

オランダ企業への取材記事執筆や、オランダで感じた日本との文化の違いに関するコラム執筆などを中心に行うようになった。

また、コロナ禍を経てからはリモートでのインタビュー記事の執筆依頼も増え、広報・採用のためのコンテンツ制作も請け負っている。

②新規事業の立ち上げ

オランダ移住がきっかけで、中学生の頃から続けてきた剣道が仕事になった。

現地の剣友から「日本の剣道雑誌の翻訳はできないだろうか」と相談を持ちかけられ、剣道雑誌に翻訳サイトの企画を提出。月額6ユーロで英語の剣道記事が読み放題になるKendo Jidai Internationalを立ち上げるに至った。

オランダに来るまではこんな仕事をするとは予想もしていなかったので、現地に来ることでしか分からない空気感やニーズを知ることができると痛感した。

③多様な価値観に触れた

日本だと社会的なプレッシャーを感じてできないことも、こちらは自然とできる。

例えば、オランダ人は家族や友達との時間をとても大切にしている。

シェアオフィスで仕事をしていると、みんな17時過ぎには仕事を切り上げて18時にはほぼフロアに人がいなくなる。

窓の外から見えるカフェやバーには人が賑わい、お酒を楽しんでいる。

そんな雰囲気のなかにいると、自然と自分も早めに仕事を切り上げるようになる。「周りが残業しているから何となく残業してしまう」ことと似ているかもしれない。

また、印象的だったのは「日本人はコミュニケーションが下手だよね」とオランダ人に言われたことだ。

「我慢して我慢して、ある日突然爆発して怒る。訳がわからない」

確かに、察する力や周りに配慮する力は日本人は高いかもしれないが、自分が嫌だと感じることを相手に伝えるのは上手ではないかもしれない。

英語が直接的な言語だからかもしれないが、日本語だと角が立つようなことも、英語だとどこかさっぱりしているように感じる。

何でもかんでもダイレクトにハッキリ伝えるのではないという発見もあった。オランダのある友人は、まずは「最近どう?」と相手を気遣うそぶりを見せてから自分が困っていることや意見を伝えている。

誰しも事情があるし価値観も違うことを彼らは分かっているのだ。

このコミュニケーション方法を見てから、私自身の人との付き合い方も少し変わったし、「あるべき論」を押しつけなくなった。

あまり語られない、移住に際してのリスクと注意点

多様な働き方が実現できる一方で、リスクもある。たまに「移住したい」とダイレクトメッセージをもらうことがあるのだが、その中で印象的だったのが「日本にいるとあくせく働いて、収入も低い。海外に出て素敵な環境で暮らせたらどんなにいいだろう」というものだった。

しかし、海外移住をすれば無条件で素敵な生活が待っているなんて保証はどこにもない。

ここからは、移住生活を送る上で感じたリスクと注意点について解説したい。

①仕事がうまくいかないリスク

フリーランスビザを取得するためには、「この国で生計を立てていける」と納得してもらえるだけの事業プランが必須だ。ノープランで移住しようとしても、そもそも移民局や商工会議所の審査に通らない。

仮に事業プランが通ったとしても、右も左も分からない土地で言語も生活様式も異なる。銀行口座の開設や携帯電話の契約をするだけでも一苦労だ。移住に際してはこういった雑務も納税も全部自分一人でやらなければならない。

また、どれだけ頑張っても仕事が軌道に乗らない可能性もある。日本で会社員をしていたら毎月決まった日にお給料が振り込まれるが、海外フリーランスの場合、見知らぬ土地で生活できなくなる可能性すらある。

②生活の基盤を整えるのに時間がかかる

海外フリーランスの友人たちがよく言うのが「諸々の手続きに手間取り、仕事も生活も、予想よりずっと進捗が遅い」だ。

社会保障(保険や年金)も日本とは制度が異なる。しかも、会社勤めのように会社が全て用意してくれるわけではないから、自分で調べて、健康保険に加入しなければならない。

納税に関しても、自分で確定申告をする必要がある。税制度が異なる国で、自分で納税のための準備をしなければならないのだ。

日本は確定申告の情報もたくさんあって、しかも日本語で発信されていたから理解しやすかった。しかしオランダでは自力での確定申告は難しく、税理士さんもしくは会計士さんの力を借りる必要がある。

そもそも、会計士さんに仕事をお願いするにしても、誰にお願いすればいいのか?からスタートする。

スーパーで売っている野菜も日本と全然異なる

③大きな変化による体調・精神面での不調

言葉、文化、人間関係、生活、全てが激変することで、人は喪失感を感じる。その結果、うつ状態になってしまう人もいて、大使館も注意喚起を行うほどだ。

ヨーロッパは夏はとても気持ちの良い気候だが、冬は暗くて寒い。紫外線の不足を防ぐためにUVライトを買う人もいるほどなので、日本とは気候が大きく異なる。

体調面でも精神面でも健康でいるために、自分自身のケアをしなければならない。

さらにコロナのような感染症や戦争の危険もある。欧州は日本のようにマスクをする文化がない上にロックダウンも長く、個人的には気持ちがかなり塞いでしまった。

④現地でのトラブル

現地でのトラブルもよく聞く。最も多いのは住居や人間関係のトラブルだ。日本人が日本人を狙った詐欺もあるので、恐ろしい。「日本人同士だから」と安心して信じて、お金を貸したらそのまま音信不通になることや、ひどい場合は監禁され全財産を騙し取られたという話も聞く。

信頼できる人も少ないし、緊急時に助けを求める場所をそもそも知らない人がほとんどだ。日本で暮らすよりもずっと怖い思いをする可能性がある。

人との関係づくりのために新しい環境に飛び込む勇気と、信用できる人間を冷静に見極める力が必要だ。

⑤多様性を受け入れられないリスク

多様性の尊重はとても大切なことだが、簡単ではない。日本のように単一民族の国から出た場合、文化背景と言語の問題から「伝わらない」もどかしさと孤独を感じることもある。少なくとも私は強く孤独を感じたし、自分と全く違う価値観を受け入れるまで時間がかかった。今も、本当に受け入れることができたのかどうか分からない。

観光や一時滞在の場合は、笑顔で触れ合うことができた人々と、腰を据えてその国で生活するようになった場合は、理解できないこともたくさん出てくるはずだ。「分かり合えないこと」を前提に付き合う覚悟が必要に感じる。

自分の人生に責任を持つということ

日本にいても人間関係のトラブルや対立が起こるのだから、海外であればなおさらだ。

仕事に関しても、海外に出たら語学の壁や困難が待ち受けていることがある。

しかし、その分、得るものもとても大きい。自分と価値観の異なる人と触れ合うことはとても勉強になるし、環境が変わることで日本にいたら考え付かなかったようなアイデアが思い浮かぶ。

大切なことは、どこの国にいても、どの会社に所属していても、自分で事業を経営していても、自分の人生に自分で責任を持つという覚悟だと思う。

これからの日本の未来を考えた時に、海外に出て挑戦することは個人にとっても日本の社会にとっても大きなプラスになると私は考えている。

今後、海外に出たいと考える日本人の方々にとって本記事が役立てばうれしく思う。