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チャンスはたいてい面倒くさい顔をしている 「他人に遠慮する」のをやめよう(澤円)

仕事でもプライベートでも、やりたいことは山のようにある。同時に、周りからのいろいろな頼まれごとにも向き合っていくと、いつの間にか予定はいつもパンパンに。この働き方、暮らし方は思っていたのと、ちょっと違う気がする……。

そんなときに必要なのは、こだわりや常識、思い込みを手放すことなのかもしれません。連載「やめるための言葉」では、圓窓代表取締役・澤円さんと一緒に「やめること」について考えていきます。

意外と知らない「遠慮」という言葉の正体

皆さんこんにちは、澤です。めでたく第二回の原稿をアップする運びになりました! 「一回でやめよう」という展開にならなくて本当によかった(笑)。

さて、今回のテーマは「遠慮」です。遠慮するというのは、日本人のDNAにしみこんでいるマインドセットかもしれませんね。

さて、この遠慮という言葉、当たり前のように使っていますが、改めて意味を調べてみました。

えん‐りょ〔ヱン‐〕【遠慮】
読み方:えんりょ
[名](スル)《3が原義》

1 人に対して、言葉や行動を慎み控えること。「―なくいただきます」「年長者への―がある」「この部屋ではタバコは―してください」

2 辞退すること。また、ある場所から引き下がること。「せっかくですが出席を―します」「君は―してくれ」

3 遠い将来のことを思慮に入れて、考えをめぐらすこと。遠謀。「深謀―」

4 江戸時代、武士や僧に科した刑罰の一。軽い謹慎刑で、自宅での籠居(ろうきょ)を命じたもの。夜間のひそかな外出は黙認された。

※デジタル大辞泉より引用


トップ2が「何かを控える・やらない」という意味で説明されていますね。相手に気を使って自分は引き下がる、というニュアンス強めな気がします。

でも、ボクはなんとなく3番目と4番目が気になりますね。

3番目は、前漢時代の書物に記された言葉からの意味をさしているそうです。遠慮の語源は「深謀遠慮」に表されるように、「遠くを慮る」という未来的思考だったようですね。大きなことをするためには、深く考えて計画し、未来をじっくり見通しましょう、というのが新法遠慮の意味。「何かを控える」って意味ではないんですよね。

そして、4番目の「軽い謹慎刑」というのも、実に味わい深いですね。遠慮が罰になるとは、ずいぶんと元の意味からはかけ離れているような。でも、なんとなく「行動を制限する」という意味合いからすると、納得感もありますね。

ビジネス現場で遠慮すると何が起きるのか

さて、ビジネスの現場でも「遠慮」は日常茶飯事ですね。今日も何かに遠慮したなぁ、と思い当たるふしがある方も多いのではないでしょうか。

仕事中の遠慮って、どんなものを思いつきますか?

「トラブル発生中だけど、上司が忙しそうだから声をかけるのは遠慮しよう」
「彼の資料の数字は間違っているけれど、傷つけるのはかわいそうだから指摘するのは遠慮しよう」
「明らかにこの資料印刷は無駄だけど、役員は紙が好きかもしれないから、言うのは遠慮しよう」

こんな感じですかね。でも、これって遠慮が問題を大きくしたり、かえって仕事の効率を下げてしまったりするかもしれませんよね。

トラブルを伝えないことで、対応が後手に回ったり。
間違った数字が独り歩きして、決算の時に大騒ぎになったり。
実は役員も紙資料は苦手なのに、ずっと無駄な印刷を続けていたり。

こういう遠慮って、結局リスクに化けるんですよね。実際のところ、これは「遠慮」というよりは「責任を負いたくない」という回避行動でもあるでしょう。

もちろん、誰しも面倒は避けたいものです。

ただ、「遠慮」という脳内変換で「何もしない」を選んだ結果、ビジネス上で大きな問題に発展すると、もっと面倒なことになるかもしれません。

では、どういう考え方で自分の中の「遠慮」と向き合えばいいのでしょう?

「時間を生む」というマインド

前回の記事でも「時間」について触れました。おそらく、この「時間」というキーワードは、毎回出てくることになるでしょう。

遠慮をするかしないかを決めるとき、「時間」というパラメータは極めて重要です。遠慮することによって多くの人たちの時間的なメリットが大きいなら、遠慮するのはアリでしょう。

でも、遠慮することで一時的な時間の余裕は生まれるけれど、あとでヤバいことに発展するかもな、とちょっとでも思うなら、行動した方がいいんじゃないかなと思います。

といいつつ、ここで一つサラリーマンあるあるな考え方を紹介したいのです。

「何か新しいことを提案すると『じゃあ、あんたやりなさい』といって、その仕事が増えて“言ったもの負け”になるんですよ」ってやつです。

この話、めちゃくちゃよく聞きます。そして、そのたびに「あー、この人は大きな成功はできないかもなー」とちょっと気の毒になってしまったりします。

というのも、チャンスはたいてい面倒くさい顔しているんです。面倒くさいからこそ、チャンスに変化するパワーを持っているんです。

この面倒くさいという感情に蓋をするために、「遠慮」という便利な言葉で距離をとっているのだとしたら、ちょっともったいない気がします。

忙しい上司に「このExcelのデータを集めて印刷するオペレーションはやめて、BIツールを導入していつでも見られるようにしませんか?」と提案したとしましょう。「じゃあ、君がやりなさい」と言われる可能性、高いですよね?

これチャンスですよね。会社の正式な指示として、会社の業務効率をアップさせる任務を得たのですから。でも、仕事全体の時間は増えません。

なので、何かをやめましょう。それこそ、遠慮なくやめましょう。発言機会のない会議や、読まれているかどうか怪しいレポート作成など、やめちゃえばいいんです。遠慮するから、相手はつけあがるんです。(ちょっと言いすぎですけど)

BIツール(※)が使いこなせる人は、キャリアの上でもいいタグが付きます。さらに、そこで扱う数字そのものについても理解が深まると、経営そのものにも明るくなり、最強のビジネスパーソンにぐっと近づけます。

遠慮はいりません。やってみたいことはどんどんやって、やりたくないことをどんどんやめちゃいましょう!

※BIツール……Business Intelligence ツールの略。組織内に蓄積された様々なデータを一元的に表示したり分析したりすることを可能にするツールです。TableauやQlik Sense、MotionBoardといった製品があります。

編集:ノオト