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私のウェルビーイングとサステナビリティ | 八木橋パチの #混ぜなきゃ危険

先日、「未来デザイン調査室 第1回 ワーケーションがひらく新たな可能性」という、IBMの社内オンラインイベントにスピーカーとして登壇しました。

参加者の方がたの本音の声をリアルタイムで聞かせてもらいたかったので、匿名で好きなだけコメントを書き込むことのできる「Sli.do」というツールを使いながらインタラクティブに進めたところ、テーマとして設定した「ワーケーション」よりも「仕事と自分自身の関係性」についての意見や質問をたくさんいただくことができ、とっても盛り上がりました。

今回は、その中で個人的に「もっともっと掘り下げて対話する機会を持ちたいなぁ」と感じた「ウェルビーイングとサステナビリティ」について、その日話したことと、もっと話したかったことについて書いてみます。

最近の興味は…ウェルビーイングですね

「ワーケーションという新しい働き方を頻繁に実践しているパチさんですが、最近の興味は?」という質問に、「最近の興味は…ウェルビーイングですね」と答えました。というのも、自分が直近1週間にやったことを挙げてみたら、ほとんどが自分のウェルビーイングを保つ、あるいはそれを長続きさせるためのものだったからです。

「スポーツジム」「オンライン呼吸塾」「献血」「ボランティア家庭教師」「会社の歓送迎会」「10年ぶりの友人とのオンライン雑談」…。

ただ、どうも「オンライン雑談」や「献血」、「ボランティア家庭教師」は、ウェルビーイングのためと言われてもピンと来ないという方も少なくないようでした。

“健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。(Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.)”

これは、「ウェルビーイングとは?」という話でよく参照される世界保健機構(WHO)による定義です。つまり「心身ともに健康であり、他者や社会とのよい関係も維持できていて、それらが保たれている状態」がウェルビーイングであるということです(なお、これが唯一無二の答えというわけではないく、異なる捉え方をする人もいます)。

それでは、ここで1つずつ、先ほど挙げたものを見ていきましょう。まずは「スポーツジム」。これは解説不要ですよね。太りすぎ痩せすぎは健康の敵、病気になりやすい状態です。私は油断するとすぐ太ってしまう体質なのですが、2年間たっぷり油断していたので4月からスポーツジムに通い始めました。 次の「オンライン呼吸塾」はスポーツジムよりは分かりづらいですかね?

私はここ数年マインドフルネス呼吸法をやっていて、それが日常的に自分の心を穏やかにしてくれることを実感しています。そして最近、友人が「呼吸の習いごと」というオンラインの塾を始めたので、そこにお試し参加してみました。呼吸以上にいつでもどこでも手軽に行えるものってないですよね。オススメです。

献血は社会的な健康と精神的な健康の2つを維持するためのもの

続いては「献血」です。これは自分的には、社会的な健康と精神的な健康の2つを維持するためのものです。ところで、皆さんは「社会的な健康」という言葉がしっくりきますか? ウェルビーイングの話をする上で、多くの人がこの言葉に引っ掛かりを覚えるようです。

実は私もその一人です。すごく簡単に説明すると、「人や組織やコミュニティーなどの社会と自身の関係が良い状態にあること」ということなのですが、これって「それが良い状態じゃなければ、結局はそれが精神的な不調として表れるのではないだろうか? つまりこれって『精神的な健康』の一部なのでは?」という気もするのですが…。ここは私も理解しきれていない部分です。

Blood donor. Hands with red heart and drop. Medical donation and blood transfusion.

ともあれ、話を戻しましょう。献血は社会的な健康と精神的な健康の2つを維持するためのものと先ほど書きました。もうすでにお気づきかなとも思いますが、私にとって献血は「社会に対して自分ができることを行なった。受け持っている役割を果たした自分」という実感を与えてくれることなのです。

そして「誰かの日常や健康、ひょっとしたら命を救ったかもしれない自分」は「良いことができた自分」であり、誇らしさを感じることができます。これは私が「しあわせに生きるための最大のポイント」と考えている「自分を好きでいること」に大きな意味を与えてくれるのです。


きっとこれまでの話で残りの「ボランティア家庭教師」「会社の歓送迎会」「10年ぶりの友人とのオンライン雑談」も見当が付くのではないでしょうか。どれもすべて、私に取っては社会的と精神的の両面で、自分のウェルビーイングを維持してくれるものであり、高めてくれるものです。

そして同時に、こうして「1週間の活動の中で自分のウェルビーイングにとって良かったことを思い出す」という行為自体も、ウェルビーイングにとって良いことなんです。

たとえば「献血」という1つの行動も、私の場合はソーシャルメディアで「献血行ってきた!」と発信したり、友人にあったときに話題にしたり、こうして文章にしたりと、何度も繰り返して幸福感を味わいます。そしてこの幸福感が、「またやろう」という動機づけを強めてくれます。オススメですよ!

ボランティアをやっていない? なんてもったいない!!

ところでちょっと話がズレますが、ボランティアや社会貢献って、いろんな種類や方法がそれこそ星の数ほどありますが、案外長く続けていくのが難しかったりするんですよね。実は「10年ぶりの友人とのオンライン雑談」で、この話ですごく盛り上がりました。

その友人は「児童支援」に熱心で、昔はボランティアとして住み込みで児童養護施設に行っていたほど入れ込んでいたそうです。でも、子どもたちが感じている辛さに一緒になって向き合っているうちに、自分が与えられるものがあまりに小さ過ぎることに対峙するのが辛すぎて、心が折れてしまった…ということでした。

私も昔、とあるNGO団体にプロボノとして関わっていたとき、自分が提供していたものがちっぽけすぎて、「これって自分がいい気持ちになりたいからやっているだけじゃん」と感じるようになってしまい、だんだんと足が遠のいてしまった経験があります(なお、今では「自分がいい気持ちになりたいから」というだけの理由であっても、それがその団体やその先にいる方たちの役に立っているなら、何一つ問題なしだと思っています)。

これは決して珍しい話ではなく、私は多くの方たちから似たような体験談を聞いたことがあります。そしてその後について聞いてみると、「自分には向いていないと分かったから」と、ほとんどの人がボランティア活動をすっかり辞めてしまっているのです…。これって本当にもったいないなと思います。なぜなら、ボランティアには本当に星の数ほどいろんな種類があって、いくつか試していけばきっと自分にしっくりくるものが見つかるからです。

ちなみに先ほどの友人は、現在はシングルマザー向けに、お金の管理を中心としたライフプラン支援をボランティアで行なっています。これは、親の金銭的な事情から、児童養護施設に送られてくる子どもが少なくないということを知っているから。

そしてこの「親のお金に関するリテラシーを上げる」という活動であれば、子どもと直接接することで自分の感情を擦り減らしてしまうことなく、「児童支援」への想いを叶えることができるからです。

この話を聞き私は「なるほど!」と膝を打ちました。そして同時に、自分がボランティア家庭教師を続けているのも、自分にとって「負担の大きなところ」を回避しながら、得意な部分を活かしつつやりたいことができているからだということを再認識しました。

私の場合、「対象となる相手」と直接やりとりし、その相手から感謝のフィードバックをいただけることに強い幸福感を覚えます。そして教えるという行為を通じて物事を深く捉え直すことや、改めて自分が学べることに大きな喜びを感じます。さらに、私が教えている子どもたちは海外にルーツを持っている子たちなので、彼らとの話を通じて世界と自分とのつながりを感じられるのです。これらのどれもが、以前やっていた他のボランティアでは足りていないことでした。

この辺りの「自分が何を得たいのか」「何に苦手意識があるのか」という点を少し意識するだけで、自分にとって負担が大き過ぎず、複数の楽しみや喜びを内在している、ちょうどよくそして気持ちよく長く続けられるボランティアとしての関わり方が見つけられるんじゃないでしょうか。

成長と自分自身のサステナビリティ

「サステナビリティ(持続可能性)」という言葉は地球環境や企業、組織に対して使われることが最近は多いですが、個人的にはもっと「自分自身のサステナビリティ」について、一人ひとりが考えた方が良いのではないかと思っています。

今の自分の働きかた、今の自分の生活のしかた、今の自分の社会との関わりかた。

それがサステナブルなものとなっているか。もしそうじゃないのであれば何が原因で、それを変えるためにどんなアプローチが考えられるか。

こうしたことをしっかり見ようとすれば、その鍵を握っているのが「自身のウェルビーイング」であることに気づくと思います。自身に無理な負荷をかけ続けていれば、どこかでポキンと折れてしまうでしょう。もちろん「負荷をかけることで成長する」というのも事実であり、道のりの大切な一部だとは思います。

でも、一方で「そこで手に入れようとしている成長」が、本当に自分が求めているものなのか、自分をしあわせにするものなのかについては、もっと真剣に考えた方が良い気がします。だってあなたも私と同じで、きっとしあわせになりたいと思っているでしょうから。

Happy Collaboration!

著者プロフィール

八木橋パチ(やぎはしぱち)
日本アイ・ビー・エム株式会社にて先進テクノロジーの社会実装を推進するコラボレーション・エナジャイザー。<#混ぜなきゃ危険> をキーワードに、人や組織をつなぎ、混ぜ合わせている。2017年、日本IBM創立80周年記念プログラム「Wild Duck Campaign - 野鴨社員 総選挙(日本で最もワイルドなIBM社員選出コンテスト)」にて優勝。2018年まで社内IT部門にて日本におけるソーシャル・ビジネス/コラボレーション・ツールの展開・推進を担当。 twitter.com/dubbedpachi