働く環境を変え、働き方を変え、生き方を変える。

WORK MILL

EN JP

正しいランニング知識を身につければ、今日からハイパフォーマー!? 仕事の効率を上げる「走り術」

運動不足解消だけでなく、仕事のパフォーマンス向上のために、ランニングに取り組むビジネスパーソンは少なくありません。その効果についてあまり深く理解しないまま、ただ漫然と走っている人も多いのではないでしょうか。

ランニングの効果と正しい方法を理解するだけで、仕事のパフォーマンスがアップする――そう話すのは、有酸素運動が脳に与える影響をあらゆる角度から分析している関西福祉科学大学教授・理学療法士の重森健太さん。 本当にランニングは仕事の効率に影響するのでしょうか? そうであれば、一体どのようなメカニズムが働き、具体的にどんな効果をもたらしてくれるのでしょうか?  仕事のパフォーマンスアップに適した走り方やヒントも併せて伺います。

―重森健太(しげもり・けんた)
関西福祉科学大学教授。同大学学長補佐、理学療法学専攻長、玉手山学園地域連携センター長を歴任。聖隷クリストファー大学大学院博士課程修了。トレーニング科学の視点から認知症の予防について研究し、NPO法人や研究所の立ち上げを行いながら、啓発活動としてエクササイズを用いた脳トレーニングや健康増進事業を展開している。著書に『走れば脳は強くなる』(クロスメディア・パブリッシング)、『超姿勢力』(クロスメディア・パブリッシング)など。

ランニングは、脳内物質の分泌を促してくれる

ビジネスパーソンの中には、仕事のパフォーマンスを上げるためにランニングをしている人がいますよね。実際のところ、本当に効果はあるのでしょうか。

WORK MILL

重森

はい、ランニングは仕事のパフォーマンス向上に非常に効果的ですよ。

一体どんなメカニズムによって、パフォーマンスが発揮されるのでしょうか?

WORK MILL

重森

ランニングをすることで、さまざまな脳内物質の分泌が盛んになるんです。

ランニングは、新たな血管の形成を促進させる「VEGF」の発現を増加させ、脳の血管も強くなることで知られています。それに伴って、脳に血液を送り出すポンプ作用が盛んになり、脳の働きが活性化します。

なるほど、脳にしっかり血液が運ばれるんですね。

WORK MILL

重森

はい。次に、神経栄養因子「BDNF」が分泌され脳の一部である「海馬」が大きくなり、神経細胞が増えます。

このことで記憶の引き出しが増え、記憶力がアップする準備ができます。海馬は、運動習慣に大きく影響される特徴があります。

同時に、走ることで脳内にある「前頭葉」の働きも活発になりますので、計画性・注意力・集中力が高まり、仕事面では特に情報処理やひらめき系の能力がグンと上がります。

記憶力が上がってひらめき力までアップするとは、仕事をする上で最強ですね……!

WORK MILL

重森

さらに、気持ちを前向きにさせてくれる「ドーパミン」や精神的な積極性を促す「エンドルフィン」の分泌も促してくれるので、メンタルにもいい影響を与えるんです。

仕事をする上で、メンタル面の健康は非常に大切ですよね。

WORK MILL

重森

それから、ランニングは仕事のパフォーマンスに直結するだけでなく、生活習慣を整えてくれる役割があることも忘れてはいけません。

どういうことでしょうか?

WORK MILL

重森

ランニングをすると、上記に加えて「セロトニン」が分泌されるんです。

「セロトニン」は聞いたことがあります。気持ちを落ち着かせてくれる脳内物質ですよね。

WORK MILL

重森

そうです。「セロトニン」は太陽の光を浴びることでも分泌されるので、屋外でランニングをするとさらに有効です。

このセロトニンは、睡眠ホルモンと呼ばれる「メラトニン」の分泌も促し、質の良い睡眠を可能にしてくれるんですよ。

睡眠がしっかりとれると、おのずと日中の活動効率もアップします。

夏の時期は熱中症が心配なので、ジムにあるランニングマシンを活用したいところですが、暑すぎない季節に屋外で走ると、さらにうれしい効果があるわけですね。

WORK MILL

「ちょっときつい」と感じられる強度が脳活性化のカギ

VEGF、BDNF、ドーパミン、エンドルフィン、セロトニン、メラトニン……。

ランニングがこんなにも身体やメンタルにポジティブな影響を与えるなんて、知りませんでした。

ちなみに、仕事のパフォーマンスを最大限引き出すための、ランニングに適した時間帯はいつなのでしょうか。

WORK MILL

重森

仕事に取り掛かる前に体内時計を整えるという意味では、朝がオススメです。朝ごはん前の空腹状態で走ると脂肪燃焼効果も狙えるので、さらにいいと思います。

ただし、ここぞというときにパフォーマンスを狙うのであれば、「仕事をしながら」が最も効果的なんですよ。

仕事をしながらランニングというのは、ちょっと非現実的な気がするのですが……。

WORK MILL

重森

一部の企業では、ウォーキングしながら会議をするという試みを取り入れていますよ。でも、たしかに一般的ではないですよね。

難しい場合は、ハイパフォーマンスを出したい勝負事の直前のランニングをオススメします。 理想は、ある程度強度のあるランニングをすることです。

難しければ階段の上り降りをしたり、早歩きで一駅分を歩いたりするなどのややきつめの運動をしたりするだけでも、脳を活性化させることができ、その後の仕事にいい影響を及ぼしてくれます。

なるほど。ここぞという勝負事に臨む際には直前に、日常的にパフォーマンスを上げたいなら朝のランニングがオススメなのですね。

ちなみに「ある程度の強度」とおっしゃいましたが、具体的にはどういう意味なのでしょうか。

WORK MILL

重森

脳の活性化に重要なのは、速度よりも強度なんです。

体力の限界値に個人差はありますが、一般的に脳を活性化させるためには「70%強度」が有効だと言われています。

何を基準にして70%なのですか?

WORK MILL

重森

最大心拍数を100としたときの、70%の心拍数を指します。

カルボーネン法という計算式があり、

((220-年齢)-安静時心拍数)×運動強度(%)+安静時心拍数

という計算式で求めることができます。安静時心拍数は、Apple Watchなどのスマートウォッチでも測ることができますよ。

ちょっと難しいです……。体感値では、どれくらいがちょうどいいのしょうか。

WORK MILL

重森

心拍が上がってややきついと感じられる強度」です。ウォーキングのような緩やかな運動ではあまり効果はなく、早足からジョギング程度の負荷は必要になります。

これを最低15分〜30分以上、週に3日行うことで、脳が活性化されると言われています。