WORK MILL

EN JP

猫がいるオフィスのリアルって? 9匹の保護猫社員と共に働く株式会社qnoteの「猫ファースト」な環境づくり

“仕事をする空間”であるオフィスに、もしかわいい動物がいたらどれだけ楽しいだろう……。しかし、実際にオフィスに動物を迎えるにはさまざまな準備やケアが求められるため、実行には覚悟が必要です。

動物と一緒に過ごせるオフィス環境を作るためにはどのような心構えや想いが必要なのでしょうか? その答えを知るためには、すでにオフィスに動物を迎えている会社にリアルな声をお聞きするのが一番!

そこで、今回は、杉並区にある自社オフィス、通称”ネコビル”に9匹の猫社員さんたちが働く株式会社qnote(キューノート)代表取締役社長の鶴田展之さんに、猫たちと働くための環境作りや会社が動物を迎える意義について、お話を伺いました。

子猫との偶然の出会いをきっかけに、猫社員を迎えた

まず猫さんを社員として会社にお迎えした経緯について教えてください。

鶴田さん

きっかけは、ランチを食べに行ったお寿司屋さんで、引き取り手を探している保護猫の「ふたば」と出会ったことです。

当時はまだ起業したばかりで、社員は創業メンバーの4人。会社にふたばを迎え入れるにあたって、メンバーに確認を取ったところ、みんな快くOKしてくれたので、晴れてふたばを迎えいれることになりました。

当時のメンバー4人中3人がもともと家で猫と暮らしていたこともあって、とても寛大でしたね。

会社に猫を迎えるという選択に迷いはなかったのでしょうか?

鶴田さん

起業するにあたって、あまりルールや規則を作らない、自由な会社にしたいなという想いがありました。

私たちの会社には、そもそも会社に動物を迎えてはいけないというルールなんて存在しない。引き取り手を探している猫がいるなら、迎えてもいいんじゃないかなと自然に思いました。

今のふたばちゃん

今は9匹の猫社員さんがいらっしゃるそうですが、ふたばちゃん以外のみなさんはどのようなタイミングでお迎えしたのですか?

鶴田さん

ふたばが大人になった頃に、社員の家にいた男の子とお見合いをして家族になりました。その後、2匹の間に6匹赤ちゃんが誕生。お父さん猫と息子1匹が元いたおうちに戻って、あとの5匹が今も会社にいます。

その後も、社員が道端で保護した子や保護猫カフェ「CAT’S INN TOKYO」の移転時に一時保護で迎えた子たちなどが加わり、9匹になりました。

とはいえ、猫同士にもいろいろ相性があって。会社ではなく、社員の家に迎えてもらった子もいますね。縁あった子たちはみな、元気に暮らしています。

猫社員さんたちのQOLを考えた”猫ファースト”なオフィス作り

とはいえ、オフィスで猫を飼うのはハードルが高い面もあると思います……。猫社員さんたちが過ごす環境について教えてください。

鶴田さん

過去に数回、社員の人数に合わせてオフィスの移転を繰り返して、2020年10月に東京・阿佐ヶ谷にある現在の自社ビル、通称「ネコビル」に移転してきました。

4階建てで、2〜3階がオフィススペースです。猫たちが過ごしやすい環境を作るために、さまざまな工夫を凝らした特別仕様の空間になっています。

リノベーションにあたって、最初に猫トイレのスペースを確保して、階段の踊り場に棚を作ってトイレを収納できるスペースを作りました。2〜3階にそれぞれ6個ずつおけるようになっていて、最大で12個のトイレが設置可能です。トイレ専用スペースを設けることで、猫砂の飛散問題もかなり解消されました。

トイレは定期的に洗う必要があるので、もともとあったユニットバスを解体してシャワールームを新設。そこに動物病院でも使われているペット用のシンクをつけました。

猫トイレ掃除は1〜2週間に一度スケジューリングされていて、社員総出で洗っています。一種の社内イベントですね(笑)。

最初からビルの寸法を計算して作られたという猫トイレスペース

猫社員さんたちのお世話が社内イベントになるなんて、とても素敵です! 他のスペースはどのような工夫をされているのですか?

鶴田さん

オフィスエリアは、壁に沿って机が並んでいます。部屋の中心にある2本の柱を起点にキャットウォークが全面的に張り巡らされていて、社員の頭上を猫たちが悠々と歩いています。たまに上から猫が降ってくることもありますよ。

猫社員たちがのびのびと過ごせるキャットウォーク

鶴田さん

床には、猫ベッドや子供用のテントを置いています。その下にホットカーペットを敷くと猫たちが集まってきて、ぬくぬくと寝ています。

観葉植物は中毒を起こしてしまうものがたくさんあるので、基本的には何も置いていません。誤飲の可能性のある小さいものなどの取り扱いにも細心の注意を払うようにしています。

猫社員に会うのを楽しみに、打ち合わせに訪れる人も増加中!

鶴田さん

猫たちが壁をよじ登ったり、爪を研いだりして、壁紙をボロボロにしてしまうのはよくあることだと思うんですが、そもそも破れる壁紙を貼っている我々が悪いと思っていて(笑)。

そこで、今は壁紙を貼るのをやめて、「しらす壁」という塗り壁にしました。猫たちが過ごすエリアはすべてしらす壁です。

コストダウンのために、社員全員で壁を塗りました。大工さんがやり方を教えてくれて、みんなかなり左官がうまくなりましたよ。

しらす壁のDIYもある意味で大切な社員イベントに

かわいい猫とパワハラは共存できない?

社員のみなさん、多才ですね……! ちなみに、「猫好き」は、やはり採用の条件になっているのでしょうか?

鶴田さん

そうですね。猫が好きじゃないと、そもそもうちの会社に入ろうと思わないんじゃないかなと思います(笑)。

もちろん猫好きにもいろいろなタイプがいて、ちょっとずつ温度差はありますよ。なので、猫が大好きな社員ほど、お世話の負担が大きくなることもあります。その温度差をいかに減らしていくかも、コミュニケーションにおいて大事だと思っています。

社員はそれぞれ、育ってきた環境も趣味も違う人たち。同じ会社に入りました、同じチームになりましたというだけで、すぐに仲良くなるのは難しいですよね。

そのとき、オフィスに猫たちがいることで、共通の話題ができたり、共同作業をしたりする機会が増える。その結果、社員同士のコミュニケーションも増えるなど、いい効果を生んでくれていると思います。

あと、猫たちにどう向き合っているのかは、人によって顕著に違いが現れますね。そういうところから、社員一人ひとりの特性が見えることもあるんです。

求人に苦戦する会社が多いと聞きますが、弊社はありがたいことに募集をかけるとたくさんの応募がきます。うちの猫たちは幸せも人も招いてくれる、「招き猫」なんですよ。

働き方改革で労働時間や環境が見直されることも多くなりましたが、そもそも職場が楽しい場所であるか、は大切なことだと思っています。かわいい猫を抱っこしながら大きな声で叱ったり、パワハラしたりなんて絶対にできないですからね。

現在このコロナ禍で、猫さんたちのお世話はどのように分担されているのでしょうか?

鶴田さん

当社はもともとフレックス制で、どの時間に出勤してもよいことになっています。とはいえ、同じ時間帯に出社するメンバーは大体決まっているので、その中から日直制でお世話をしていました。

コロナ禍になってからはリモートワークを推奨したので、日直制はお休みして臨機応変に対応しています。

最近は、電車に乗らずに出勤できる人や会社の近くに住んでいる人が中心になって、お世話をしてくれている状況です。

ふたばちゃんをお迎えしたのと会社設立が同じころとのことで、ふたばちゃんもシニア世代になっていると思います。みなさんどのようにケアをされているのでしょうか?

鶴田さん

猫は年齢を重ねると、腎臓や肝臓などが悪くなってしまいます。うちの子たちも15歳過ぎてから徐々に老化現象が見られるようになりました。病気や症状によって病院に行く必要が出てきますが、頻繁に病院に連れていくことは猫にとって大きなストレスになります。

そこで、会社での投薬や皮下点滴の仕方を覚えて、みんなで猫たちのケアができる環境づくりをおこなっています。獣医さんからもらった診断書や薬の情報などは、Microsoftの「Teams」とNulabの「backlog」というツールを使って管理しています。

ほかにも猫写真専用ルームがあって、猫の動画や写真が毎日アップされていますね。みんな猫たちのことを大切に思って、しっかりとケアしてくれています

ちょっとした情報もITツールで共有する仕組みに

行き場のない命 企業が動物を受け入れる社会的意義

経営者という視点で、会社で動物を迎えることに対してどのようにお考えですか?

鶴田さん

猫たちは、たくさんの幸せや学びを与えてくれるかけがえのない大切な存在です。個人的には、動物を迎えられる環境にある会社はぜひ動物を受け入れることに対して、積極的に取り組んでほしいなと思っています。

動物を育てることは、仕事をする上でもとても大切な責任感や自己肯定感を育むきっかけになると信じています。

もちろん、動物を迎えるにあたって覚悟は必要です。自分より弱い者の命をどう捉えるかは人それぞれです。ただ、「自分は間違ったことや曲がったことはしないぞ」という強い思いは、そもそも人として大事にしなければいけないことではないでしょうか。

加えて、個人やボランティア団体が行き場のない命の保護に取り組んでいます。財力には限りがある個人やボランティア団体が頑張っているのに、企業が何もしていないのはよくありません。

例えば、中小企業の2〜3%が行き場のない犬や猫を受け入れるだけでも、殺処分が減るなど動物たちを取り巻く環境も大きな変わるはずです。1匹でもいいので、まずは自分たちができることを少しでも取り組む会社が増えることを願っています。

今回お話をお聞きした鶴田さんとふたばちゃん

最後に、これから職場に動物を迎えたいと思っている会社や経営者の方にメッセージをお願いします!

鶴田さん

もともと私はルールが嫌いなタイプの経営者で。それは、ルールがあると、人が何も考えなくなると思っているからです。

「ルールを守っているんだから、これでいいじゃないか」と思ってしまうと、「このルールができた理由は何だろう?」「なぜこのルールが決まっているのだろう?」まで考えなくなってしまいます。

会社に動物を迎えることに対しても、「会社に動物がいるなんておかしい」というところで思考停止しないでほしいんです。

何か問題が起きたら対処すればいいだけ。何か問題が起きるかもしれないと恐れて、取り組まないのはもったいない。それに、問題に対処することで、得られることやスキルもありますから。

だから、まずは「猫がオフィスにいたらきっと楽しいだろうな」と思ってほしいですね。

生き物である以上、いつかは命が尽きてしまいます。会社にお迎えした子たちが生きている間に、たくさんの幸せを与えてください。私たちも縁あって来てくれた子たちの最期のときが来るまで、しっかりと向き合っていきたいと思います。

株式会社qnote
東京都杉並区本天沼1-1-13 ネコビル

2022年2月取材

編集:ノオト