モノが少ないと効率が上がる? 明日から活かせる時間管理術、ホームオフィスのはじめ方
コロナ禍でリモートワークが一気に普及し、自宅で働く人が増えました。在宅ワークは「通勤にかかる時間や労力が減らせる」「他人の目を気にすることなく働ける」などのメリットがあります。一方で、「オン・オフの切り替えができない」「作業に適した環境がなく働きにくい」などの声も挙がっているようです。効率的に働ける環境を整えるには、どうすればいいのでしょうか?
2022年4月20日に開催されたウェビナーのテーマは「集中して仕事、できていますか?」。ステーショナリーディレクターの土橋 正さんをゲストにお迎えし、ホームオフィスのつくり方と時間管理術、集中して快適に働ける環境づくりについて、株式会社オカムラ ワークデザイン研究所の花田 愛が聞きました。
─土橋正(つちはし・ただし) ステーショナリー ディレクター
文具の国際見本市主催会社に10年間勤務。2003年土橋正事務所設立。文具の商品プロデュース、文具売り場のディレクションを行っている。文具ウェブマガジン「pen-info」では500本以上の文具コラムを連載中。著書に「モノが少ないと快適に働ける」東洋経済新報社など。
─花田愛(はなだ・あい) 株式会社オカムラ ワークデザイン研究所
空間デザイナーを経て現職。コミュニケーションと環境をテーマに、これからのはたらき方とその空間の在り方についての研究を担当。大阪大学国際公共政策研究科招聘教員。名古屋市立大学芸術工学部非常勤講師。博士(学術)。
リビングやダイニングで働いている人は、満足度が低い
イベントの冒頭では、花田が「在宅ワークに関する調査結果」を紹介しました。
コロナ前と後で在宅ワークの実施頻度を比較したところ、コロナ前に在宅ワークを行っていた人の割合は3割以下でした。しかし、2021年は約6割の人が在宅ワークを行っています。
次に、コロナ禍の長期化による健康への影響要因について。在宅勤務を取り入れている場合は、頻度を問わず「自宅の作業環境が整っていない」「作業時間が長い」「休憩がとりにくい」が上位に挙がりました。仕事の環境と時間管理が悩みになっているようです。
整理をすると、在宅ワークの満足点は「通勤時間の短縮」「働く時間の柔軟さ」、不満点は「座る時間が長くなる」「オン・オフの切り替えができない」でした。
「在宅ワークにより時間の柔軟性を獲得する一方で、思うように仕事時間を管理できない現実があるといえます」(花田)
場所別に見ると、リビングやダイニングで在宅ワークをする人は満足度が低くなっていることがわかります。
在宅ワーク中の作業やリフレッシュ時間の切り替えについても、仕事専用ではないスペースを使っている人は評価が低くなっていました。
「仕事専用の環境が整っていないことは、作業効率だけでなく休日や余暇の充実度が低下してしまうなど、私生活にも影響を及ぼしていることも調査からわかりました。在宅ワークの広がりによって、仕事専用の環境をどうやって整えていくかは重要だ、といえますね」(花田)
道具が少ないほど、仕事の効率は上がる
自分にとって働きやすい環境を整えていくには、どうすればいいのでしょうか。働く環境を大きく変化させながら模索してきた、ステーショナリーディレクターの土橋正さんに聞きました。
土橋さんは会社員を経て独立し、自宅(書斎)、カフェ、レンタルオフィス、個人事務所、自宅(ホームオフィス)と働く場所を次々に変えてきました。
レンタルオフィスは個室やフリーの場所があり、集中できる環境でした。しかし会議室には、予約の煩わしさや手軽に延長できない不自由さという点で不満がありました。
その不満を解消すべく、自由に使える事務所を構えました。これはこれで理想的なワークスペースだったものの、コロナ禍になってからは来客がほぼゼロに。土橋さん自身も2週間に1回、郵便物を取りに行くだけの場所となってしまったため、事務所を引き払って自宅の「ホームオフィス」へと戻りました。
これまでの働き方で土橋さんが最も影響を受けたのは、レンタルオフィスだったそう。利用形態は、そのときに空いている個室を借りる方式でした。そこで仕事道具を広げ、終わったら片づけて帰る。したがって、仕事道具は最小限に絞らざるを得ません。
「それまでは、仕事道具を減らすと作業能率が下がると思い込んでいました。でも少ない道具で仕事をやってみたら、思いのほか快適だったんです。例えば赤いペンを取るとき、20本の中から探すのは手間がかかるけど、3本しかなければ煩わしさはありません。モノが少ない方が集中できる、そう気づいたのです」(土橋)