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観光名所とはひと味違う大阪の魅力を深堀り。「大阪まちごと万博」モデルケース・バスツアー&オープンセレモニーをリポート

2025年に開催を予定している大阪・関西万博。各国の英知やアイデアが集結する世界的イベントの幕開きまで、1年を切りました。

しかし、「万博って、結局何をするの?」「自分には関係なさそう」「興味はあるけど、どうやって関わればいいのかわからない……」と、どこか「他人事」に捉えてしまう人が多いのでは?

その一方、万博に向けて「勝手に」盛り上がり、続々とたくさんの人を巻き込み、共創の渦を生み出している企業・人々がいます。

本連載では、大阪・関西万博に向けて「勝手に」生み出されたムーブメントに着目し、その仕掛け人たちの胸の内を取材していきます。

大阪・関西万博(以下、万博)を勝手に盛り上げる有志団体として設立された「demo!expo」は、活動規模も拡大。いつの間にやら、公的に大阪・関西万博に携わっている人たちにまで知られる存在となりました。

demo!expoは4月12日に、「自分のまちを、もうひとつの万博会場に。」を掲げたプロジェクト「まちごと万博」を、デモンストレーション的に体感するバスツアーを企画。

まちの各地を「パビリオン」と捉えて、マスコミやアーティスト、万博の関係者などを招いて梅田近隣の中津となんば近隣のアメリカ村を巡り、それぞれの「まち『パビリオン』」で「食」と「文化」の体験プログラムを実施しました。ツアーの最後にはJR天満駅前広場で「まちごと万博」のオープニングセレモニーが行われ、プロジェクト発足の経緯や活動内容が語られました。

開放感満点のレストランバスで「まちごと万博」を体験

大阪・関西万博開催まで約1年となった2024年4月12日、バスツアー参加者は、梅田スカイビルのバス停留所に集合。開催直前までの不安定だった天候も嘘のように晴れ渡り、絶好のバス旅日和となりました。

今回のツアーでは、テレビやウェブ、YouTubeなど、さまざまなメディア取材の他、万博のランドスケープデザインディレクターの忽那裕樹(くつな・ひろき)さんと会場デザインプロデューサーを務める藤本壮介(ふじもと・そうすけ)さん、ベルリンと東京を拠点に活動するアーティスト・西野達(にしの・たつ)さんなど、日本有数のクリエーターも参加。定番の観光スポットとは一味違った大阪を堪能できるとあって、出発前からツアーへの期待を語り合っていました。

今回のツアーに使用するバスは、移動と食を融合することで新たな感動体験を提供する、日本初のレストランバス。1階にキッチンを備え、2階で景色を眺めながら食事もできることから、「まちごと万博」を体感するにはうってつけの車両となっています。

午後0時30分にバスが出発し、いよいよツアーがスタート。車内では関西のラジオ放送局、FM802のDJである土井コマキ(どい・こまき)さんが「まちごと全部が万博な大阪を楽しんでいただきたいです」と挨拶し、ツアーの概要を説明しました。透明なガラスで覆われていた天井が出発時にはオープンになり、開放的な雰囲気に。そんな中、まちをパビリオンに見立てて巡るツアーの1カ所目として、梅田スカイビルと目と鼻の先にある「中津商店街パビリオン」を目指します。

下町情緒を残す「中津商店街パビリオン」でご当地の食を体験

阪急中津駅の線路と平行に走る国道176号線沿いにバスが停車すると、まずは中津の案内人で、「一般社団法人 うめらく」の代表を務める山田摩利子(やまだ・まりこ)さんがお出迎え。長屋など古い建物を活用した店が多く、クリエーターやアーティストなど「際立った人」が多く暮らして独自のカルチャーを形成しているまちの特徴を移動しながら解説しました。

国道脇にある秘密の入口のような階段から阪急中津駅を経由し、まちなかへと抜けるコースが、さっそく参加者の心を捉えます。時間が早かったためオープンしていませんでしたが、駅の真下にある大阪有数の名酒場「大衆酒場いこい」には参加者も興味津々。「次は絶対飲みに行きたい!」という声が上がっていました。

「中津商店街パビリオン」では、まず中津商店街のすぐ隣にある「UPCYCLE(アップサイクル)中津荘」へ。こちらは洋服のアトリエショップや量り売りの食材店、私設図書室などが入居する、築65年の木造2階建てアパートをリノベーションした複合施設です。建物の入口には「おにぎりサミット」ブースが設置されています。家電メーカーの象印と、中津で15年営業し地域内外からも人気のアボカド専門店が手掛ける飲食店「アボカ食堂」が今回限定でコラボレーションしたこのブースでは、参加者全員にアボカド入りのおにぎりと中津の魅力を伝えるフリーペーパーが配布されました。

こちらでは、なんと万博のマスコットキャラクターであるミャクミャクが登場! 参加者たちを出迎え、記念撮影にも快く応じていました。

UPCYCLE中津荘を抜けて中津商店街に入ると、関西のスパイスカレー保護を目的に設立された「関西カレー保安協会」のブースがお目見え。こちらでは、協会メンバーであるタレントの小塚舞子(こづか・まいこ)さんが、中津でも高い人気を誇る飲食店「ダイヤモンドビリヤニ」の特製ビリヤニと、「スパイスカレーまるせ」のカレーを配布していました。

その隣では関西大学の万博部がブースを設置しており、学生たちが開発したクラフトコーラを振る舞いました。快晴の中、歩き通しだった参加者たちは炭酸の爽やかな味わいで喉を潤わせていました。

ストリートカルチャーの中心地「アメリカ村パビリオン」でブラスバンドとごみ拾い体験

中津を後にした一行は、続いての目的地である「アメリカ村パビリオン」へと移動。到着までの間、車内はランチタイムとなり、参加者たちは中津商店街で配布されたおにぎりやビリヤニの味に舌鼓を打っていました。

四つ橋筋と北堀江通りが交差するポイントでバスが停車すると、「アメリカ村パビリオン」の案内人で、バンド「愛はズボーン」のボーカルを務める儀間建太(ぎま・けんた)さんが合流。儀間さんが取り組んでいる「アメ村ごみゼロ運動」を体験しますが、そこはエンターテインメントの中心地であるアメリカ村らしく、ただのごみ拾いでは終わりません。大阪を拠点に活動している「ビッグマウスブラスバンド」(BMBB)の演奏に合わせながら行進し、ゴール地点である商業施設・心斎橋BIG STEP(ビッグステップ)を目指すという、楽しさ満点の清掃活動がスタートしました。

BMBBは2020年に結成された7人組。ジャズ発祥のまち・ニューオリンズの音楽や文化を伝えることをモットーとしており、迫力満点のパフォーマンスで人気を集めています。

参加者たちはトングを片手に四つ橋筋を横断。BMBBの演奏が高らかに響く中、道の端や植え込みなどに落ちているごみを次々と拾い、袋へ入れていきました。軽快な音色を奏でるBMBBとごみ拾いという組み合わせが、多くのまちの人から注目されていました。

約250mのコースでごみ拾いをしながら歩いた一行は、ゴール地点の心斎橋BIG STEPに到着。ツアー参加者たちは異例の清掃活動を満喫し、達成感から一様に笑顔を浮かべていました。「一時期よりかなりきれいになりましたが、それでも吸い殻などのごみがいまだに多いです。たこ焼きやスイーツなど、食べ物のごみは鳩が食べ荒らす前にかたづけるのが重要です」と語る儀間さん。ストリートカルチャーを牽引するまち・アメリカ村を万博に向けてさらに活性化させるべく、今後もさらなる挑戦を続けたいと意欲を見せていました。

バス内もエンターテインメント満載のパビリオンに

2つのまちパビリオンでの体験が終了し、バスは最終目的地であるJR天満駅前に向かって走りますが、移動の車内もまたエンタメ系のパビリオンへと様変わり。まずはサックスの早川一平(はやかわ・いっぺい)さん、ギターの芦田良平(あしだ・りょうへい)さんによる音楽デュオ「PEPE Django(ぺぺ・ジャンゴ)」が、オリジナルとカバーをまじえた3曲を演奏し、にぎやかなムードを演出しました。

続いて登場したのは、関西紙芝居界の新世代を牽引する「紙芝居屋のガンチャン」。「万博ヤバい!」というタイトルで、まちの人々の万博に対する印象が、ネガティブなものからポジティブなものへと変わっていく様子をユーモラスに描いていました。

「まちごと万博」への思いを語る。JR天満駅前でのオープニングセレモニー

「まちごと万博」の体験ツアー第一部では、まちパビリオンでの「食」と「文化」の体験を堪能し、第二部では「まちごと万博オープニングセレモニー」を実施。会場となったJR天満駅前には「まちごと万博」のロゴマークをあしらった櫓がセットされ、お祭りムードを醸し出す中で登壇者による「まちごと万博」関連のトークが繰り広げられました。

まずは、一般社団法人demoexpoの代表理事である花岡(はなおか)さんが、「万博の閉幕後にもその価値をまちの中に残したいという思いで2021年頃から『まちごと万博』の概念を提唱してきました」と、プロジェクト発足の経緯を語りました。また、「まちごと万博」のプラットフォームとなるサイトを公開することも告知しました。

大阪商工会議所の会頭を務める、サントリーホールディングス株式会社の鳥井信吾(とりい・しんご)さんは、「まちごと万博」の意義について「大阪は江戸時代から町衆の力が強い。それを受け継ぐ今の若い人たちには、失敗を恐れず、『やってみなはれ』の精神で頑張っていただきたいです」とエールを送りました。

第一部のバスツアーにも参加した藤本さんと忽那さんも登壇。「『まちごと万博』の取り組みで大阪のみなさん1人ひとりが万博を自分事として捉えていただけたら」(藤本さん)、「まちのみなさんも『自分の店が1つのパビリオンだ!』と言い切ってしまうような勢いで一緒に盛り上がりたい」(忽那さん)と、万博公式プロデューサーの立場から「まちごと万博」への思いを語りました。

その後は、「まちごと万博」に携わる30代、40代の人々が「まちごと万博」で実現させたい楽しみ方や達成したい目標を発表。鉄道会社から和菓子店、助産師など、幅広い分野の登壇者が集い、ユニークなアイデアの数々に聴衆も聞き入っていました。

1) 岩田唯淳さん

2) 岡本栄理さん

3) 紙芝居屋のガンチャン

4) 儀間健太さん

5) 杉原博行さん

6) 竹本洋平さん

7) 村上弘祐さん

8) 望月里恵さん

1) 大阪梅田と、神戸・宝塚・京都を結ぶ阪急電鉄株式会社の岩田唯淳(いわた・ただあつ)さんは、「電車の新しい楽しみ方」というタイトルで「まちごと万博」と連携する特別運行列車を紹介。

2) 株式会社オカムラの社員で一社demoexpoの理事も務める岡本栄理(おかもと・えり)さんは、「大阪から全国へと繋げる共創ワールド」と題し、全国的に展開している「EXPO酒場」で大阪マインドを広めたいという思いを語りました。

3) レストランバスの車内でもパフォーマンスを披露した紙芝居屋のガンチャンは、紙芝居の作る世界と万博の共通性、そこから広がる相乗効果について力説しました。

4) 「アメリカ村パビリオン」の案内役を務めた儀間健太(ざま・けんた)さんは、1人ひとりの個性を尊重しながら新しいアメリカ村の文化を作りたいと語りました。

5) 旅行事業社、WILLER ACROSS株式会社の杉原博行(すぎはら・ひろゆき)さんは、「移動で繋ぐ、未知なる世界」と題し、第一部で提供したレストランバスなどを通して大阪の魅力を拡散させたいと語りました。

6) 和菓子店、株式会社髙山堂の代表・竹本洋平(たけもと・ようへい)さんは、「あたらしい大阪みやげ計画」としてキューブ型の羊羹を開発し、新しい大阪土産や文化を作りたいという目標を語りました。

7) 観光事業を営むMUIC Kansaiの村上弘祐(むらかみ・ひろゆき)さんは、高齢者や障がい者など、移動が困難な人でもあきらめることなく、万博を楽しめるプロジェクトを進めていることを発表しました。

8) 一般社団法人U-meの代表理事を務める助産師の望月里恵(もちづき・りえ)さんは、生み育ての支援として、親子とまちをつなげる場を作ることや、乳児期から学童期の親子が楽しめる「はぐくみマルシェ」の活動を紹介しました。

万博の開催が迫る中、まちそのものをパビリオンとして捉え、大阪の魅力を発信する「まちごと万博」の取り組み。

普段、何気なく暮らしている中で、ついつい忘れがちな大阪の濃い〜魅力を再発見する機会として、今後、ますます活動の拡大が期待されています。

5月13日に公開された「まちごと大阪」のプラットフォームサイトでは、5月から本格的に始動した「まちごと万博」に参加する企業・団体・個人を募集しています。2025年の万博に向け、大阪の魅力発信に一役買いたいという方は、この機会にぜひ、登録してみてはいかがでしょうか。

2024年4月取材

取材・執筆:伊東孝晃
撮影:西島本元
編集:かとうちあき(人間編集部)