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大阪・関西万博開幕まであと2年! 会場外から万博を勝手に盛り上げる「まちごと万博 2023」とは? 大作戦会議の様子をリポート

2025年に開催を予定している大阪・関西万博。各国の英知やアイデアが集結する世界的イベントの幕開きまであと700日を切りました。

「万博って、結局何をするの?」「自分には関係なさそう」「興味はあるけど、どうやって関わればいいのかわからない……」と、どこか「他人事」に捉えてしまう人が多いのでは?

その一方、万博に向けて「勝手に」盛り上がり、続々とたくさんの人を巻き込み、共創の渦を生み出しているのが、有志団体「demo!expo」。本連載では、彼・彼女らが生み出すムーブメントを取材していきます。

2025年の大阪・関西万博の開幕までちょうど2年に迫った2023年4月13日、万博を有志で「勝手に」盛り上げる一般社団法人 demoexpoが発足しました! 「頼まれていないけど、『でも、やろう。』」というコンセプトのもと、民間の力で万博の「DEMO=試作」を繰り広げて、より多くの人を巻き込めるような活動を行います。

会場となった「β本町橋」

一般社団法人発足の同じ日、demo!expo(プロジェクト名は「!」表記あり)主催のプレ万博イベント「まちごと万博 2023」の大作戦会議が、大阪市中央区の「β本町橋」で開かれました。まちごと万博とは、大阪や関西の街をまるごと舞台にして「プレ万博」と呼ばれるイベントを開催し、大阪・関西万博(以下、「万博」)のおもしろさや創造性をたくさんの人へと伝えることを目指す、ボトムアップ型のイベントの総称。大阪湾上の夢洲会場と日常生活を送る街の垣根をなくし、市民参加のハードルを下げる試みです。

大作戦会議には小学生からクリエーター、メディア関係者、地域課題の解決に取り組む「スーパー公務員」、さらには紙芝居師まで、まちごと万博に関わるキーマン57名が集結。トークセッションに加え、ワークショップや交流会で親睦を深めました。仕事も活動内容もさまざまな人たちが一堂に会し、終始熱気にあふれたキックオフの模様をレポートします!

demo!expoの歩みとまちごと万博の可能性

一般社団法人demoexpo代表理事で株式会社人間の花岡さん、作家のしまだあやさんが司会を務めた

大作戦会議の冒頭、代表理事の花岡(はなおか)さんから、まちごと万博構想の内容が発表されました。

そもそもdemo!expoの活動は、2021年、万博の公式参加型プログラム「TEAM EXPO 2025」にも参加している任意団体から始まりました。会場予定地の夢洲でのキャンプイベント「EXPO TEAM CAMP 2022」や、全国各地のキーマンを店長に据えて万博について語り合う「EXPO酒場」など万博にまつわるイベントを、公式の立場からではなく「勝手に」開催してきました。

万博のイメージカラーである赤と青を混合した紫色のロゴ

こうした活動から生まれたのは「まちの人たちとの共創」という大きな成果。そこから感じられた「まちの人たちの底力」を、「まちごと万博」に結びつけたいと運営メンバーは意気込んでいるようです! いよいよ開催直前期に入る期待感を、花岡さんは次のように語ります。

この日、花岡さんは夢洲会場のお膝元・此花区で開催される「2023このはな万博」の開会セレモニーにも出席

「今宮戎神社の十日戎は、屋台が出ていないと物足りない。これを大阪・関西万博に置き換えれば会場は境内で、周辺の街が屋台にあたると思います。そして、屋台である街は万博が終わってもなくならない」

会場に集まった「自由すぎる人たち」(花岡さん)

まちごと万博が目指すのは、会場だけにとどまらない、幅広い「万博体験」を楽しむことです。たとえば、万博を観覧する人が参加当日までに期待感を高め、日中に「境内」としての会場を見てSNSに投稿。「屋台」である大阪の街へ戻りナイトライフを過ごして、満足感を地元へ持ち帰るという一連の行動は、どれもが万博を機に生まれるおもしろさと価値なのに、メディアが伝える万博像からは漏れかねません。その前提のもと、万博の盛り上げに一役買うのは「屋台」をつくる大阪・関西の街の「人」であること、単なる一過性のイベントではなく、何年も効果の持続する万博にしたいとの思いも、ユーモアたっぷりに伝えられました。

アド近鉄での近鉄沿線活性化の取り組みについて説明する長尾あみり(ながお・あみり)さん
「EXPO酒場」けいはんな店で店主を務めるMIRATORIEの中室健(なかむろ・けん)さん

主催側の思いが伝えられたあとは、今後の活動予定を発表。子どもたちが「パビリオン」という言葉を自由な発想で考えるワークショップ「ばんぱくぱく」、万博に向けて学生ができることを考える「EXPO大学 関大キャンパス」といった「プレ万博」の数々が紹介されました。EXPO酒場は関西圏以外での開催も予定されており、これまで以上にdemo!expoの動きは本格化します。それぞれのプレ万博に関わる参加者のコメントも加わって、会場は徐々に熱気を帯びていきました。

夢洲会場のつくり方、そして街への広げ方

続いては、公益社団法人2025年日本国際博覧会のプロデューサーとディレクターとして、メイン会場となる夢洲の空間づくりに携わるおふたりが登壇。公式の「中の人」として万博にどう関わっているか、その視点からまちごと万博をどうとらえているかが語られました。

藤本壮介/1969年、北海道生まれ。藤本壮介建築設計事務所主宰。日本建築大賞、モンペリエ国際設計競技 最優秀賞受賞を始め、国内外で高い評価を受ける。代表作に武蔵野美術大学美術館・図書館など

大阪・関西万博の会場デザインプロデューサーで建築家の藤本壮介(ふじもと・そうすけ)さんは、円環を描く大屋根が印象的な会場設計に込めた思いについて説明しました。各国のパビリオンを包み込むように建つ大屋根は全周2キロ、もっとも高いところで地上20メートル! 完成すれば世界最大規模の木造建築になるそうです。屋上の回廊から見渡せる円形に切り取られた空は世界を想像させ、今回の万博の理念である「多様でありながら、ひとつ」を象徴しているといいます。

公開された大阪・関西万博の大屋根(リング)のパース(提供:2025年日本国際博覧会協会)

構造物から円形に空が開けるつくりは、1970年の大阪万博におけるお祭り広場も同じ。国境をこえて大盛況を博した前回のマインドを継承し、未来に引き渡すことも重要なミッションだと考えているそうです。奇しくもこの日は、万博会場の起工式の帰りだったという藤本さん。柔らかい口ぶりのなかにも、万博を通じて世界に日本をPRする強い意志が感じられました。

忽那裕樹/1966年、大阪府生まれ。株式会社E-DESIGN 代表取締役。都市景観のデザインと使いこなし、持続的なマネジメントシステムの構築に取り組む。主なプロジェクトに「水都大阪 水と光のまちづくり」など

軽妙な関西弁で会場の笑いを誘ったのは、ランドスケープデザインディレクターで、日本各地の公共空間づくりに携わってきた忽那裕樹(くつな・ひろき)さん。藤本さんと連携しながら、夢洲会場におけるランドスケープの構築に尽力しています。

万博会場のランドスケープづくりにあたっては、水とともに発展してきた大阪の歴史を重視。夢洲は瀬戸内の文化を受け止めるウォーターフロントの最前線だと位置づけ、島国としての歴史も踏まえながら、パビリオン同士が円環のなかに島のように浮かぶ、日本庭園にも似た景観づくりを目指したといいます。

忽那流の真骨頂は、街の継続的な「使いこなし」。2009年に開催されたイベント「水都大阪2009」の会場だった中之島公園が、現在は日常生活を潤す場として機能していることも引き合いに、「アフター万博」を見越した壮大な計画が語られました。「まさに今、万博が(会場から)街に広がっていく計画を立てています。これを勢いづけるには、『まちごと万博』しかない!」という力強い言葉に、日頃から大阪・関西の街を「勝手に」盛り上げている参加者たちは、目を輝かせていました。公式な活動に関わっている人がdemo!expoに参加するのは、さらなる活動の広がりを模索しているからなんですね。

自分たちにできることは? カードゲームでシミュレーション

参加者がトレーディングカードになった「まちごと万博カード」
司会を務めたしまだあやさんも笑顔

トークセッションが終わると、この日のメインイベントであるワークショップへ。事前に配付された「まちごと万博カード」を用いたグループワークが行われました。まちごと万博カードには、この活動のキーマンである参加者一人ひとりの肩書きや日々の活動内容に加えて、それぞれの強みを表す「SP(スペシャル)スキル」が記されています。「何にでもワクワクする」「カルチャーおじさん」「誰とでも友だちになれる」といった情報から、その人がどういった形でまちごと万博に参加できるのかがイメージできます。

地図上にもカードが貼り出され、参加者の普段の活動エリアが一目瞭然

このカードを使って行われたのが「まちごと万博をつくる」と題されたグループワーク。参加者が4人ずつグループに分かれ、「SNSに上げたくなるイベント」「子どもが喜ぶ乗り物」「大阪・関西らしいホテル」などのテーマに基づき、引き当てた4人のメンバーで実現できそうなプロジェクトを考えます。 たとえば、「大阪・関西らしいメディア」というテーマをもとに、こんなカードが出ると……

メンバーの属性:「ラジオ」「笑い」「まちづくり」「外国人」
SPスキル:「無限アイデア出し」など
活動エリア:「大阪」

「大阪・関西に住んでいる外国人が大阪・関西のおもしろさを紹介するラジオ番組」というプロジェクトのアイデアが生まれるといったぐあいです。

ゲームの制限時間は5分以内。スタートの掛け声とともに、会場では真剣かつ和気あいあいとしたやりとりが繰り広げられました。

自分がカードになっていることがすでにおもしろいという声も多数

なかには、白熱しすぎて制限時間をこえても夢中で議論を続けるグループも。ゲームはメンバーを変えながら3回にわたって行われ、講評の時間へと移りました。

クリエイティブディレクターでデザイナーの服部滋樹(はっとり・しげき)さん(写真右)、同じくクリエイティブディレクターの齋藤精一(さいとう・せいいち)さん(写真左)が講評を担当。随所のツッコミも冴えました

発表された34ものプロジェクトの一例は以下の通り。いずれもSPスキルや普段の取り組みが効果的に組み合わされています。

・万博の森のおしゃれな八尾レストラン
・ママも子どももうれしい、泊まれる工場
・何でもアリの自由研究が魅力のホテル
・子どもキャプテンプロジェクト
・紙芝居ボードゲーム型お菓子

講評を受けて、会場からは「これは絶対に実現させよう」「Discordでグループつくります」といった声も。「サウナ列車」というプロジェクトでは「ポイントの駅で水風呂に入る」という具体的すぎるプランまで提案されました。1人の力では想像のつかないことでも、たくさんの個性が集まれば隠れた可能性が見えてくることがよく分かる結果になりました。

街の人とつながり、1つでも多くのプロジェクトを生み出して、街と人の心に残る万博をつくるのが、まちごと万博が掲げる最大の目標。それぞれに専門分野がありながら、共創のマインドを持つ参加者が考えた自由闊達なアイデアの数々は、まちごと万博、ひいては大阪・関西万博そのものの成功への弾みとなりそうです!

大阪・関西と万博のこれからが垣間見えた一夜

プログラム終了後にはお楽しみの交流会が開かれました。乾杯の音頭はもちろん「デモ〜、エキスポ!」。参加者は面識の有無に関わらず、年代や立場をこえてまちごと万博の展望を語らいました。

「勝手にパビリオン」と「大阪 ええYOKAN」を紹介するPOP

会場では、万博を起点にさまざまな新しいプロジェクトを生む「勝手にパビリオン」から、「あたらしい大阪みやげ計画」も紹介。そのなかから生まれようとしている新しいお菓子「大阪 ええYOKAN」が参加者に振る舞われました。

大阪の和菓子店がそれぞれに工夫を凝らし、地元の魅力を表現した

色とりどりのようかんは「大阪みやげとなるお菓子がほしい!」という声をもとに開発が進められたもの。たこ焼きでも豚まんでもない、新時代の大阪名物に誰もが「ええ予感」を抱いているようでした。

開発を主導した老舗和菓子店・髙山堂の竹本洋平(たけもと・ようへい)さん。高山堂は前回の大阪万博(1970)でも直営売店を出店し、粟おこしなどを販売した

盛り上がるみなさんに話を聞いてみると、こんな声が。

「企業や団体の力だけで万博は盛り上がらない。その点、今日は普段から自発的に活動している、市民との架け橋になる人が集まったと思います。大阪の侍ジャパンですね」

「忽那さんの話を聞いていてワクワクした。万博がより身近に感じられました」

そんな忽那さんは、多忙な合間を縫っての参加。大作戦会議の感想を次のように話してくれました。

「この25年間、都市は徹底的に使い倒すべきと訴えて街づくりに関わってきましたが、今回集まったみなさんはそのうねりを生み出す主役だと思います。ワークショップは、カードという形で自分が社会からどのような役割を与えられているか、客観視できておもしろかった。社会における役割があれば、自らが実行すべき行動が必ず見えてくるはずです」

中島さち子(写真右)/1979年、大阪府生まれ。数学研究者、STEAM研究家、音楽家と多彩な顔を持つ。大阪・関西万博では「いのちを高める」をテーマにプロデュースに携わる

また、会場には大阪・関西万博のテーマ事業プロデューサーで、ジャズピアニストの中島さち子(なかじま・さちこ)さんの姿も。「これだけフランクに情報のやりとりができるのが大阪らしいと思います。グローバルな取り組みを進めていくには、これくらいの熱量がないと。自分もカードにしてもらって、参加したいと思いました」と笑顔で話してくれました。周囲を巻き込んで盛り上げるパワーの強さこそが、大阪・関西という都市の強みなのかもしれません。

交流会の最後は一本締めではなく「打〜ちましょ」の大阪締めでお開きに。一人ひとりが心から楽しみ、沸きに沸いた大作戦会議は大阪・関西の人、そして万博に秘められた街を動かすポテンシャルを大いに感じさせるものでした。万博開催まで残り2年。気になるプレ万博があれば、ぜひ足を運んでみてください。

一般社団法人 demoexpo
https://demoexpo.jp/

2023年4月取材

取材・執筆:関根デッカオ
写真:西島本元
編集:かとうちあき(人間編集部)