あなたにとって「万博」とは?一人ひとりが参加する未来へのアクション 「EXPO酒場 東京店」イベントレポート
2025年に開催される「大阪・関西万博」を勝手に盛り上げたい人たちが集うイベント「EXPO酒場」。いよいよ万博まで900日前となった2022年10月26日に、東京店が開催されました。
さまざまな人々が、お酒を片手に万博への思いを語り合った「EXPO酒場 東京店」の様子をレポートします。会場は、企業協創/共創型コワーキングとして、各種実証実験を展開する「point 0 marunouchi」です。
万博のキーワードは「参加型」
まずは、日本国際博覧会協会の巣山広大さんより「大阪・関西万博とは」、株式会社人間の花岡さんより「demo!expoの活動」についてプレゼンテーションが行われました。
巣山
日本で初めて行われた1970年の大阪万博では、アーチ状の屋根である空気膜構造や電動自転車、テレビ電話などがお披露目されました。2025年の万博でも新しい技術に多くの方が期待を寄せてくださっています。
2025年に大阪の夢洲(ゆめしま)で開催される大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。コンセプトに「People’s Living Lab(未来社会の実験場)」を掲げ、来場者数予想は約2,820万人。ロケーションを活かし、世界と繋がる「空」と「海」に囲まれた万博として会場がデザインされています。
巣山
多様な人たちがチームを組み、多彩な活動で大阪・関西万博とその先の未来に挑む、参加型プログラム「TEAM EXPO 2025」では、皆さんが取り組む社会課題の解決に向けた活動、ワクワクする未来のためのアクションを共創チャレンジとして、また共創チャレンジを創出・支援していただける方々を共創パートナーとして登録いただいています。
こちらのプログラムでは、さまざまな方々が出会い、新しい共創が生まれるオンライン・オフラインの場を作り、参加者の皆さんの共創を活性化していきたいと考えています。また、特に優れた活動はベストプラクティスとして、会期中に会場内外で展示・発信予定です。
見るだけじゃない、あなたが主人公になる万博が始まります。このフレーズの通り、今回の万博は会期前から皆さんと一緒に作っていく参加型の万博になっています。ぜひ、一緒に万博を盛り上げていただきたいです。
花岡
「面白くて 変なこと 考える」をコンセプトに、ジャンルにとらわれないアイデアを作るコンテンツ企画制作会社、株式会社人間を運営している花岡といいます。
今回の万博のコンセプトは「People’s Living Lab(未来社会の実験場)」。つまり、誰もが作り手になることができ、万博だからできる共創に大きな価値があるという意味です。会場にあるパビリオンは開催が終わったらなくなってしまいますが、生まれたプロジェクトは残りますよね。
花岡
私たちは2021年9月に、誰でも万博に参加できる仕組みを作るチーム「demo!expo」を立ち上げました。大阪を盛り上げたいという思いを持った有志が集まった非公式団体です。
万博を楽しみたい⼈々が集う⾃由な拠点「EXPO酒場」を、交流の場「勝手にパビリオン」や新たな大阪のお土産作りなど、会場の外から万博を盛り上げるプロジェクトを行っています。
今、クラウドファンディングも計画中なので、応援してもらえると嬉しいです。
万博は新しいことを始めるきっかけにつながる?
ここからは、ゲストを交えたトークセッションです。前半のモデレーターは、株式会社オカムラの岡本栄理が務めます。まずは、大阪から来たメンバーに万博と関わったきっかけを伺っていきました。
今村
私は2016〜18年まで大阪府で働いていました。そのときがちょうど万博誘致のタイミングで、万博というイベントがとても面白そうだなと思っていて。
当時、私が専門とする民間企業と公共団体のタイアップも順調に進んでいたので、それを体現する万博の仕事を「ぜひやりたいです!」と自ら手を挙げて、2019〜20年に博覧会協会に出向しました。そこで「TEAM EXPO 2025プログラム」の立上げにも従事しました。
今は、三菱総合研究所に勤務し、万博担当になりました。最近は、万博の機会に会場外や様々なセクターの人たちをいかに巻き込み、盛り上げていくか、という観点での取り組みに注力しています。
日下部
私が所属する大日本印刷は、万博ロゴマークを決めるプロジェクトに運営として関わっていました。2022年には「EXPO共創ミーティング」を開催し、ドバイ万博の日本館に協賛をして、現地で展示をやりました。
万博をどう活用していくか、私自身も自問自答しているところです。
花岡
僕の最初の活動は、2018年に「はじめて万博」というフリーペーパーを自費で発行したことから始まりました。その後は「EXPO STUDY MEETING」という勉強会や、クリエイターがさまざまな企画書を提案する展示会「野生の万博展」を開催し、2021年9月に誰でも万博に参加できる仕組みを作るチーム「demo!expo」を立上げました。
2022年3月16日には1泊2日のキャンプ型イベント「EXPO TEAM CAMP 2022」を開催して、今に至っています。このEXPO酒場でも、いろんな人と交流しながら火を付けて、地域から盛り上げていこうと思っています。
岡本
お三方とも、かなりの熱意を持って活動されていますよね。
私に万博の火がついたのは2021年。実は、この中で一番遅いんです。ある日、共創空間「bee」の活動で出会った方からビデオ電話がかかってきて。なんと、ドバイ万博のリトアニア館の方と映っていました!
岡本
リトアニア館のユニフォームがミツバチがたくさんあしらわれたデザインで、まさにbeeにピッタリだからプレゼントするよ!と電話越しに言われたのです。
そして、「エリ、2025年に絶対大阪に行くから、待っていてね!」と言ってもらって。この時、万博とはいろんな国の市民同士が直接交流できる、すごい場なんだ!と悟り、感動してしまって。それで、万博が一気に自分事になりました。
そこから私も走り出し、気がつけばこの場でファシリテーターをしています(笑)。
岡本
なので、「私にとっての万博とは?」と聞かれたら、私は「交流」と答えます。万博がなかったら、今日の皆さんとも出会えなかったな、と思うので。
皆さんにとっての万博とは何か。お一人ずつ、書いてもらえますか?
花岡
僕は「一揆」。2018年に活動を始めたとき、「クリエイティブで一揆するぞ」と掲げていたので。
今村
万博は人生が変わるきっかけでもあったので、自分にとっては「転機」です。新しいことをする時って、言い訳がほしいじゃないですか。皆さんも、何か変えたいと思っていることがあれば、万博を言い訳に変えてしまう、そんなターニングポイントとして活用してもいいのではないでしょうか。
日下部
僕は「今からここから」です。実はそもそも万博が何なのか、僕自身もまだ分からないんですよ。
でも、今日ここに集まったことで、万博を利用して何ができるか一緒に考えられたらな、と。今からここから、やりましょう!
花岡
熱いなぁ(笑)。
日下部
シンプルなんですけれど、そういう気持ちでやりたいですね。
今村
ちょうど今日が大阪・関西万博開催まであと900日ですが、まだ900日あるではなく、僕らからしたら「900日しかない」ので、今この瞬間から頑張っていきたいですね。
会場にいる全員で「私にとっての万博とは?」を考えてみた
トークセッションの後半は、東京メンバーを中心に4名で話を深めていきます。ファシリテーターは、コミュラボの辻貴之さんです。
辻
万博を通した人と人の結びつきの機会をご一緒でき、嬉しく思います。
今日は、よろしくお願いします。
梶
ソニー・ミュージックエンタテインメントの梶です。
ソニーミュージックも参画している「世界ゆるミュージック協会」の活動として「TEAM EXPO 2025」に参加していまして、その流れで一緒に万博を盛りあげに来ました。
まりママ
私は富士通株式会社に務めながら、人と人とが繋がる交流型スナック「スナックまり」をライフワークとして運営しています。
私自身も万博を考える場に参加しはじめたばかりですが、今後「スナックまり」とも掛け合わせて何かできればと思っています。
久岡
コピーライターの久岡です。「demo!expo」のコンセプトをお手伝いしています。万博に向けて「何かやりたいけれど、どう伝えたらいいか分からない」という方を言葉で応援できたらと思い、活動しています。
今回は、参加者も一緒に「私にとって万博は◯◯だ」をフリップに書き、隣に座っている人に発表する時間が設けられました。お酒を交えながら、それぞれが万博への思いを語ります。
辻
面白いですね。そもそも正解・不正解はないですし、答えも一つではありませんから。梶さんは何と書きましたか?
梶
僕にとって、万博とは「夢」です。悲しいニュースが多い世の中ですが、僕はエンタメに関わる人間として、子どもたちにもっと夢を見させないといけないと思っています。万博のテーマが「いのち輝く」なので、夢を見せてあげることが子どもたちのいのちを輝かせることになるのかな、と。
まりママ
私は「魔法」です。私は入社後すぐ営業として働いていたのですが活躍できない時期があり、ずっと社会に取り残されたような気持ちでいたんです。そこである時、趣味で活動していた「スナックまり」を会社に持ち込んだら、思いが伝わっていろんな人が協力してくれて。まさに魔法にかけられた気分になりました。
人との繋がりに支えられて、自分が今ここにいるので、今度は私自身が万博をきっかけに社内外の方と繋がって、いろんな魔法をかけていきたいと思います。
久岡
僕は「万人の楽しみ」と書きました。大阪はドバイ万博と比べると、残念ながらあまり会場のスペースが広くありません。そうなると、街全体で、国内外から来てくれた方に楽しんでもらうことが重要です。
お店であろうが、会社であろうが「ここに来てくれてありがとう」という気持ちでいれば、その場所がパビリオンになるのかな、と。まずは楽しみながら参加していただいて、万博がみんなにとって良い思い出の一つになってくれたらいいなと思っています。
辻
コロナ禍になって、何をするにもやりづらい時期が続きましたよね。
けれど、万博があることで、その流れに乗っかっていける。「やろうと思っていたけれどやれなかったこと」に挑戦する「きっかけ」であり「言い訳」になればいいですよね。
開催まで900日を切った万博に向けて
辻
実は東京とか大阪とかは関係なくて、結局のところ「あなたはどう考えますか?」なんですよね。
ということで、ご登壇いただいた方に「万博とは何なのか?」をお伺いして締めたいと思います。
梶
僕が印象に残ったのは「人」です。
コロナがあったからこそ生まれたコミュニケーション機会もありましたし、一人の親として人間を育てるとはどういうことなのかなど、教育についても考えさせられることがたくさんあります。
なので、最後はやっぱり人間に立ち返ってくるのではないかな、と。
まりママ
先ほど「今からここから」というキーワードがあったように、私も今日から万博に向けて何かチャレンジしていきたいです。
「この人面白そう、この人といるとワクワクする」という思いがあれば、一緒に話したり、まずは何かを一緒にやってみたり……。このイベントから何かが生まれていったらいいな、と思いました。
久岡
僕も「今からここから」という言葉にインスピレーションを受けて、「万人の今日からの楽しみ」ですね。
今日のイベントも「万博イベント楽しかったね」で終わるのではなく、今日から一人ひとりが2025年を楽しみになってくれたらいいな、と。
この会場にいらっしゃる皆さんも、新たな出会いをして、ぶつかり合って、何かを生み出していってくれたら嬉しいです。本日は良い機会をありがとうございました。
辻
おっしゃるとおり、万博は「人」ですし、「きっかけ」でもありますね。
それを1から10にするもよし、今までなかったものを生み出すもよし。このタイミングから皆さんの万博はスタートしました。
今日からさっそく、万博を楽しんでいきましょう!
イベント終了後は、登壇者、参加者同士で親睦を深める交流会が開催されました。
終盤には、万博のコンセプトである「People’s Living Lab(未来社会の実験場)」の実現を目的として活動する、PLLクリエイターの齋藤精一さんも駆けつけ、まさに人と人とが繋がる場になっていました。
2025年に開催予定の万博。メインの会場は大阪ですが、この一大イベントをきっかけに、地域を問わず新しい共創の芽が生まれていくことを予感させる、エネルギーに満ちた時間となりました。
2022年10月取材
取材・執筆=矢内あや
撮影=小野奈那子
編集=鬼頭佳代(ノオト)