もっと働きやすい会社を選びたいなら | 八木橋パチの #混ぜなきゃ危険
働きやすい会社とはどんな会社?
少し前に「働きやすい会社を選びたいなら」というタイトルでnoteに記事を書いたところ、「ちょっとよく分からなかったので、質問させてください」と、就活を始めるという学生の方や転職を検討中の社会人の方から連絡をいただきました。
自分でも「もう少し丁寧に書いた方が良かったかな」とも思っていたので、WORK MILLで改めて紹介させてもらうことにします。
…とは言うものの、「働きやすい会社」という言葉はとっても「大きな言葉」で、イメージするものが人によって相当違うし、実際いろんな要素が含まれている言葉ですよね。なので、最初に少しお断りをしておきます。
今回「働きやすい会社」という言葉で私が指しているのは、産休育休の取りやすさや充実した休暇制度や住宅補助制度などの「会社が公式に提供している制度」ではありません。もう少しフワッとしたものです(もちろん、これらの公式な制度も、働きやすさには大いに関係しています)。
それから、「職場の空気感」という、個人によって「好み」や「ちょうど良さ」が大幅に変わるものとも違うタイプのものです(個人的には、職場のムードはすごく大切な要素だと思っています。どんなに楽しくやりがいがある仕事も、サイテーな人たちに囲まれていたらムリ!)。
そんな前提で、「じゃあ、働きやすい会社ってなんなの?」と思われる方は是非このまま読み進めてください。
それでは、働きやすい会社とはどんな会社でしょうか。
それは「あなたが」変えられる部分が大きい会社
「VUCA時代のxxxxx」という言葉を目にすると「またそれか〜」と思われる方も少なくないんじゃないでしょうか。私もそんな1人です。
ただ一方で、社会のさまざまなことが、激しく大きく頻繁に変化しているのは事実だとも感じています。
たとえば、以下は、変化し続けているものの代表格ではないでしょうか。
- 仕事そのもの
- 自分がやらなければならない仕事
- 自分がやれる仕事とやれない仕事
- 自分がやりたい仕事とやりたくない仕事
- 周囲の人びとや社会の仕事に対する意識
たとえば、1の仕事そのものが変わっていくことで、2のあなたの目の前にある「やならければならない仕事」が変わります。そしてそれに対応していくうちにあなたに新しいスキルが加わり、3のやれない仕事がやれる仕事になっていきます。
そしてやれることが増えてくると、あなたは新たに4のやりたい仕事を見つけたり、本当はやりたくないと思っている仕事に気付いていきます。そして変わっていくあなたを取り巻く、5の周囲の人たちや社会の仕事に対する意識や見方も変わっていくのです ―― これ、別に長い年月をかけて変わっていくわけじゃないですよ。職場や個人による違いはあるものの、それこそ毎日のようにどれかが、あるいは全部が変わっていきます。
しかし、ころころと「私はコレをやりたい」「今度はアレをやりたい」と次から次へと違うことをやりたがる社員に「オッケー」と気軽に応えてくれる会社はありません。じゃあ、どうするのか? それは、同じことをやるにもやり方を変えていくことです。自分の新たな発見や興味を、今やっている仕事に取り入れていくのです。
取り入れる内容や取り入れ方によっては、仕事のアウトプットが変化してくるかもしれません。その変化の度合いによっては、一緒に働いている仲間や上司に相談する必要もあるでしょう。「こういうアプローチに変えてみたいんです」とか「新しいやり方を考えてみました」と。そこで試す機会も与えられず「余計なことしなくていいから、これまで通りやって」と言われる会社はヤバいです。なぜかって、社会が変わっていて人びとも変わっているのに、仕事のやり方を変えるなって…おかしいですよね? 少なくとも「なぜ、その部分を変えるべきではないのか」の説明を求めましょう。それに応えてくれない会社は…激ヤバいです。
あなたがやりたい仕事の半分はあなたがやりたくない仕事かもしれない
学生の方と話をしていると、よく「研究所で研究だけを仕事にしたい」だったり、「マーケティング・スペシャリストとしてマーケだけやっていきたい」なんて話をよく聞きます。
でもね、専門職であっても、実際には多くの非専門的な作業が付いて回るんです。すごく有名なマーケターであってもデザイナーであっても、常にマーケティングしているわけでもデザインしているわけでもないんですよ。
2021年に出版され大ベストセラーとなった『LIFE SHIFT2―100年時代の行動戦略』には、以下の一文が記載されています。
定型業務と非定型的な業務の構成比は職種によって異なるが、研究によれば、全般的にひとつの職種を構成する業務のおよそ半分は定型的なもの
書かれているように「職種によって異なる」ものの、たとえば、マーケターは上司を説得して承認をもらうための資料を作らなきゃならないし、コンサルは交通費や資料代の精算をしなきゃなりません。研究者だって打ち合わせの議事録を読まなきゃならないし、デザイナーだってお客様の思いや要望を確認しに行かなきゃならないんです。
でもね、そこで、自分の新たな興味が見つかったり、新たな得意技が生まれたりするんです。元々やりたかったところ以外に、意味や意義、やりがいを見出すケースは本当に多いです。
だから、そうした発見を日々の仕事に小さな変化として取り込んでいき、タイミングが来たときには大きな変化を起こせることが大切なんです。そんなふうに、会社に入ってから、自分や周囲の変化に合わせて仕事のやり方や仕事そのものを変えることができる会社、試してみることが歓迎される会社、それが働きやすい会社です。
人が仕事に求める14の労働価値観
ここで、先ほど書いた「4. 自分がやりたい仕事とやりたくない仕事」の変化について、もう少しお伝えしたいことがあります。
昔、ドナルド・E・スーパーさんという学者が、人が仕事に対して重要性を見出すものを14個に分類しました。
以下がその14です。
- 自律性: 命令や束縛を受けず、自分のチカラだけでやっていける
- 愛他性: 人の役に立てる
- 環境: 仕事や活動環境が心地よい
- 社会的評価: 社会に広く成果を認めてもらえる
- 能力の活用 : 自分のスキルや知識を発揮できる
- ライフスタイル: 自分の望むような生活を送れる
- 達成: 良い結果が生まれたという実感
- 創造性: 新しいものや考えを創りだしたりデザインできる
- 美的追求: 美しいものを見出し、または創り出す
- 社会的交流性: いろいろな人と接点を持ちながら仕事ができる
- 冒険性: わくわくするような、あるいはスリリングな体験ができる
- 経済的報酬 : たくさんの金銭・物質を稼ぎ、高水準の生活をする
- 多様性: 多様な活動ができる
- 身体的活動: 身体を動かす機会を持てる
私の知る限り、この14個はかなり網羅性が高いです。「自分が仕事に求めているものがここに入っていない!」という方にはまだ会ったことがありません。
一方で、「ここに書かれているすべて大切です」という人は多いです。ただし、14個それぞれに対する重み付けは人によりかなり大きく異なります。
ぜひ、皆さんも自分の中でどの要素がどれくらい大切か、細かく1位から14位まで、順番をつけてみてください。「どれも大事」ではなくて、1つずつじっくり比較して、自分にとってより大切なものがどちらかを、時間をかけて比較してみてほしいのです。
そして実はここからがポイントなのですが、この付けた順番ってわりと頻繁に変化するんですよ。「いいえ、私は変わりません。私には人生の大事なミッションがありますから!」と思う人もきっといっぱいいることでしょう。でもね、変わるんだなこれが…(ザッツライフ!)。
そしてこの「労働価値観の変化」を「仕事の変化」とうまくマッチすることができないと、仕事が自分を満たしてくれなくなってしまうんです。要するに、充実度ややりがい、納得感や幸福感が下がってしまうんです。
「下がったら転職すればいい」というのも1つの考え方ではありますが、事務作業が大嫌いな私には、極力避けたいのが書類作業なのです。(面倒くさい事務作業が伴わないなら、きっと転職してたんじゃないかな…)。
大事なお断り
一つ、大事なお断りを伝え忘れていました。実は、私自身は、いわゆる「就活」をしたことがありません。
でも、30代後半までフリーターとしていろんなアルバイトや派遣業務を経験したし、複業やプロボノなどでたくさんの会社や組織で働き、かなり多数の人たちと「働きかた」について対話や実験を行ってきました。そんな私からのアドバイスが今回ここに書いたものです。
あ、もう一つありました。大事なお断り。
私が好きな言葉に、「人の話は話半分で聞け」っていうのがあります。それから「若いうちは、自身の武器を失わないよう、話を聞く相手を上手に選べ。」
私の話は……皆さんに判断はお任せします。
Happy Collaboration!
著者プロフィール
八木橋パチ(やぎはしぱち)
日本アイ・ビー・エム株式会社にて先進テクノロジーの社会実装を推進するコラボレーション・エナジャイザー。<#混ぜなきゃ危険> をキーワードに、人や組織をつなぎ、混ぜ合わせている。2017年、日本IBM創立80周年記念プログラム「Wild Duck Campaign - 野鴨社員 総選挙(日本で最もワイルドなIBM社員選出コンテスト)」にて優勝。2018年まで社内IT部門にて日本におけるソーシャル・ビジネス/コラボレーション・ツールの展開・推進を担当。 twitter.com/dubbedpachi
2023年3月1日更新