WORK MILL

働き方研究者がおすすめするビジネス書 ― GAFAとデジタル化社会編

はじめに

「働く」に関する社会の関心・課題は時代とともに変化し続けてきました。近年、日本では働き方改革が大きなテーマとなり生産性の向上を求めいまやパンデミックをうけて改めて「安心、安全」が見直されています。社会で起きている変化と、働く人々やライフスタイルの在り方を見つめながら「働き方」を考えていきます

働く場においてもオフィスだけでなく、私たちが生活する空間すべてにおいて、健康でいきいきとした人間らしい働き方や過ごし方ができることが、今の時代に問われています。この連載では、これからの働き方や働く場を語るうえで考えるべきテーマをもとに、参考になる書籍を「働き方」の研究者が選定し、ご紹介します。 

今回のテーマ : 「GAFAとデジタル化社会」に関する書籍

おすすめ図書① 

『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界

著  スコット・ギャロウェイ 
訳  渡会圭子
発行 東洋経済新報社  2018年7月27日 

 

この本のおすすめポイント 

  • GAFAが生み出した「新ルール」を紹介している              
  • 企業理念とは、グローバル企業のビジョンの掲げ方を解説           
  • GAFAの経営方針・フィロソフィーについて取り上げている         
  • 圧倒的な資金力と影響力を持つGAFAが法律と衝突したらどうなるか考えさせられる
  • 人間の本能的な欲に訴えるビジネスについて勉強になる            

   

本書は冒頭でGAFAを指して「彼らはなぜ、これほどの力を得たのか。彼らは世界をどう支配し、どう作り替えたのか。彼らが作り替えた世界で、僕たちはどう生きるか」と問いかけています。 GAFA(100万人・社員)の資産保有額300兆円は、なんと日本(1億3千万人)の年間国家予算とほぼ同じ金額です。GAFAの優れた特徴を筆者は次のように挙げています。 

  • Googleはオーガニック検索者の悩みや希望を集めて企業に提供している(市場調査) 
  • Appleは自社直営店舗で ブランドを構築した(商品価値の高揚) 
  • Facebookは世界で27億の人々の幸福と愛(欲望)そして情報を集めている(本能に訴求) 
  • Amazonは通信販売と大規模流通センターを持ち小売業では世界No.1(通信販売) 

筆者のスコット・ギャロウェイは「現代は超優秀な人間にとっては最高の時代だ。しかし平凡な人間にとっては最悪である。」と書いています。ピケティの「21世紀の資本」では世界人口は10%の支配階級と富裕階級、残りは40%の中間階級と50%の下流階級であるとしている。説明は省略するが10%の人が半分の資産を所有する格差社会において平凡な人を顧客とするGAFAはAI、RPA、情報テクノロジーで生産性・効率性そして創造性をもって世界の人々の「愛・夢・希望・欲望」を知り、人々の欲望を満たすことで世界に君臨しているのだという。本書ではGAFAそれぞれの強みと現状を詳しく解説しています。

 

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』の読後感は?

本書は「GAFA」を世界経済に挑戦し君臨する「騎士」として多方面から詳しく紹介しています。世界の情報サービス、通信販売、物流、コミュニケーション、通信機器などを提供する大企業で、4社は一部協力もしますが競合、競争しています。最大の武器はテクノロジーを熟知したデジタル産業ということでしょう。本を読む前は漠然と世界的に有名な大企業とした認識しかなかったのですが、その実態がわかるにつれ驚きと、ある意味恐怖すら感じる様になりました。

4つの会社は似ているように感じますが、多彩なテクノロジーや特色のある独自の経営戦略を取っています。人間の本能に訴えたり、習性や好奇心に訴えたり、巧みな商品やサービスを訴求する企業戦略が存在します。そして4社の総資産は国の国家予算にせまるものがあり影響力は大国に迫るような非常に大きなものとなっています。今後GAFAがどう存続していくのか非常に興味の湧く内容となっています。

おすすめ図書②   

デジタルの未来 事業の存続をかけた変革戦略

著  ユルゲン・メフェルト、 野中賢治 
序文  アンドレ・アンドニアン   
訳  小川敏子 
発行 日本経済新聞出版社 2018年8月28日

この本のおすすめポイント 

  • 「デジタル化推進」の上で重要な事を紹介している            
  • デジタル化は業務改革が目的ではない、重要なことは新しい思考法だ!と説明する
  • 職場環境を進化させるにはまずは何から始めたらよいかが分かる      
  • デジタル文化の改革は重要で、オフィスの環境改善だけではだめだと気付かされる
  • 工業化社会は直線的でデジタル社会は指数関数的スピードの進歩だと解説する

 

この本は注目を浴びているDX「デジタルトランスフォーメーション」とは何かを詳しく解説してくれます。(名称がDXなのは、「Trans」を「X」と略すことが一般的な英語圏の表記であるため)Dはデジタル技術を指していてXが活用の場と方法を指しています、重要なのはツールよりその活用の場と方法です。

日常生活のネットワークは企業を中心に自宅、銀行、商業店舗、エネルギー、行政、自治体、情報通信関連、などと改めて挙げていけばきりがないほど構築されています。もちろんネットワークは国内だけの話ではなく世界の国々でも同様です。

すでに日常生活の中では特段DXを意識せずとも、コンビニのキャッシュレス、私鉄、地下鉄、JRなどと繋がっていて、定期入れの中のSuica一枚で決済できます。しかし日本では一部のIT企業や大手企業は別にして、官庁や企業活動の多くは、いまだアナログな書類の紙に埋もれて仕事に励んでいます。 

本書は、押し寄せるデジタル化の嵐をどのように乗り越えていかなければいけないのか、デジタルの現状と将来の姿を見ながら、具体的にどのような準備をして、何が最も重要で、何を強化していけば良いのか解説し教えてくれます。

デジタルの未来 事業の存続をかけた変革戦略』の読後感は?

「デジタルの未来」は三年前に発行された本ですが、本書で取り上げている多くの事象は、紹介されているのと近い形で既に身近に存在します。しかも善悪共通でありさらに変化のスピードがまた一段と加速しています。

科学技術の進歩はムーアの法則のように確実に二次曲線の指数関数的加速を示し、立ち止まることなく世界は変わり、気が付いたときには全く新しい時代に変化していきます。 第一章は「デジタルは世界を急速に不可逆的に変えている」として私たちの目を覚ましてくれます。「そうだったのか!いつの間にか全て変わってしまっていた」と気が付くのです。 

今回の参考書籍として下記二冊も是非とも読んで頂きたい書籍としておすすめします。 

①「未来を味方にする技術」 斎藤昌義著  技術評論社                      
②「コンピューター サイエンス」   ブライアン・カーニハン著  日経BPマーケティング

おわりに

デジタル化の世界は、情報工学、電子工学、コンピューター工学と言われる分野です。関連図書を探してみるととても広い学問で「デジタルの世界」は一般人が見ている世界と専門家が見ている世界では大きな違いが有るようです。 

コンピューターが大きく発展したのは、第二次世界大戦以降ですが、その進歩のスピードは想像もできないような速さで進んでいると言ってよいと思います。日常の生活の中にはすでに多くのCPU(プロセッサー=中央処理装置)が使われています。自動車、毎日使っているスマホはもちろんトイレ(ウォシュレット)、ガス湯沸器、テレビ、ラジオ、デジタルウオッチまで数え上げたら数限りなくあります。 

これからの世界は今以上のテクノロジーとデジタル化が進んだ社会と言えます。ムーアの法則も物理的な限界に近づいているといわれていますが、それを乗り越えようと科学、技術、物理はさらに発展進化していくと思われます。

著者プロフィール

ー田尾悦夫(たお・えつお)
株式会社オカムラ ワークデザイン研究所 研究員。企業のオフィスや金融機関店舗のスペースデザインを長年、現場中心に携わりクライアントと一体となる空間づくりを心掛け支援する。その後、オフィス構築のノウハウを生かし、人々の「モチベーションやウェルビーイング」を主軸にこれからの「働き方」の研究に従事。 また、研究活動の傍ら「オフィス学会」、「ニューオフィス推進協会」、「日本オフィス家具協会など多くの関係団体で研究や教育研修、関連資格試験制度の運営にも携わることで、業界全体の啓蒙活動にも積極的に活動している。 

2021年8月5日更新

テキスト:田尾悦夫
イラスト:前田豆コ