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デンマークの大企業エリートの仕事術 ー レオファーマとエルステッド

この記事は、ビジネス誌「WORK MILL with ForbesJAPAN ISSUE02  THE DANISH WAY デンマーク 「働く」のユートピアを求めて」(2019/10)からの転載です。 


世界幸福度ランキングで長らくトップを維持してきたデンマーク。そんな国の働き方や学び、そして暮らしとは。
起業家・大企業社員・クリエイターたちを取材し、幼稚園からビジネススクールまで学びの現場を訪ね、一般の家庭にも話を聞いた。幸せの源泉は、働き方の理想郷は、どこにあるのか。 

「世界一幸せな国」のビジネスパーソンは、どのような働き方をしているのか。デンマークを代表する2つの大企業に聞いた、仕事の価値観。

働けば働くほど成果が出る。日本のそんな考え方はもう古い。年間の1 人当たりの平均労働時間を見ると、デンマークは日本よりも約300時間少なく、法定労働時間は週37時間と定められている。だが、1 人当たりの名目GDPランキングで日本は22 位、デンマークは9 位だ。日本は、デンマークから何を学ぶべきなのか?

世界100カ国以上で製品を販売するLEO PharmaのHRディレクター、ジョン・ホルスト・クリステンセンは言う。「社員のパフォーマンスを最大化するため、有能な社員に負担をかけすぎないしないようにしています」。仕事ができる社員にタスクが集中しがちな日本とは正反対だ。「なぜなら、長時間労働はクリエイティビティを阻むからです」。

─LEO Pharma (レオファーマ)
1908年創業の製薬会社。皮膚科の薬剤で世界的シェアをもつ。社員数約4,800人。世界61カ国に自社の販売拠点を展開している。「社員が相互の尊敬と信頼関係のもとで協力し合うこと」を企業理念とする。

LEO Pharmaでは労働時間も短く設定している。平均出勤時間は朝7〜8時で、終業は16〜17時。子育て世代だと15時に帰宅する人もいる。残業は基本的にない。「家では仕事のことは忘れるように、と社員に言っています。なぜなら、次の日にはリフレッシュした状態で出社してほしいからです」とクリステンセンは言う。また、年間の休暇は6週間。日本であれば休み明けはハードワークになりがちだが、同社では休暇中にたまった仕事は周りがフォローする。休んだ分だけ仕事が忙しくなるようでは、休暇の意味がないからだ。こうした徹底した制度から、米求人サイト「Glassdoor」では、社員のワーク・ライフ・バランスに高い評価がついている

数字よりも大事なこと

社員のモチベーションや信頼関係の面から生産性にアプローチしたのが、エネルギー企業のØrstedだ。同社は2017年に社名を変更し、石油・天然ガス事業からグリーンエネルギー事業一本へ切り替えることを発表。すでに風力発電で大きな利益を出していて、今後は洋上風力発電を主要事業に据えるという。

─Ørsted(エルステッド)
2006年、国営電力会社DONG Energyとして創業。十数年にわたって再生可能エネルギーへの投資、既存の石油・天然ガス事業の売却を進め、17年にグリーンエネルギーに一本化することを表明。社名を変更した。(写真は、副社長のジェイコブ・アスコー・ボスさん)

欧州有数の石炭依存の電力会社だったØrstedが、約5,600人の社員を率いてここまで大きな方向転換に成功した秘訣は何か?「能力が高くて、直属の部下から支持される指導者を育成することです。当社のマネジャー層の信頼は厚く、部下たちは、デンマークの平均的な会社と比べて直属のマネジャーを高く評価しています」と、副社長ジェイコブ・アスコー・ボスは話す。上司と部下の信頼関係が強固な協力体制を生み、成果を出していく。そのため、仮にリーダーになっても、素質がなければ降格もいとわない。いまだ年功序列を重視する日本と大きく異なる点だ。部下が上司を信頼しているからこそ、会社の方針が変わっても体制が崩れなかったのだ。

日本やアメリカの経営者は「成功に必要なのは目標や数字を部下と共有すること」と語る人が多い。しかし、インタビューをした2人は一度も「目標」や「数字」という言葉を口にしなかった。デンマークでは、日々の暮らしや人間関係の充実が仕事の成功につながると考えているからだ。

2020年7月22日更新
2018年2月取材

テキスト:吉田彩乃
写真:デイビッド・シュヴァイガー = 写真(portrait)
※『WORK MILL with ForbesJAPAN ISSUE02 THE DANISH WAY デンマーク 「働く」のユートピアを求めて』より転載