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22時就寝5時起床で1日を機嫌よく生きる「5時こーじ」さんに聞く 自分の心と体にあった働き方を見つけるヒント

一生懸命に働いているけれど、なぜかいい毎日が過ごせない。もっと自分らしい働き方があるのでは? 心と体が乖離したような、そんな「違和感」がある……。

今回、お話を伺ったのは「5時こーじ」さん。お名前の通り、「22時就寝5時起床が仕事」と豪語する早寝早起きのプロ。これまで1000人以上を夜型人間から朝型人間に変えてきました。

けれど、早起きはあくまでも「自分が1日をご機嫌に過ごすためのもの」と言い切ります。そして、「今日1日この作業ができれば『いい日だった』と思えることを、朝1番に行う」のがミソだとか。

どうしたら毎日を機嫌よく過ごせるか。「自分らしい働き方・過ごし方」のコツを5時こーじさんに伺いました。

5時こーじ(ごじこーじ)
2017年に朝活コミュニティ「朝渋」を立ち上げ。2社で会社員を経験した後に、パートナーが代表を務めるMorningLaboに同年入社。取締役を務める。2024年9月に第2子が誕生し、「朝渋」の活動は翌年1月まで育休中。2025年1月には2冊目の書籍『頑張らない早起き〜「余裕のない一日」を「充実した一日」に変える朝時間の使い方』を出版予定。

1日を機嫌よく過ごすためにルーティンがある

そもそも、5時こーじさんはなぜ早寝早起きしているんですか?

5時こーじ

自分の1日をご機嫌に過ごすためですね。朝起きたら、掃除・散歩・朝風呂・読書、そして朝食を取るんですけど、この1時間は僕にとって大切なんです。

このモーニングルーティンが過ごせれば、残りがどんな1日になっても「今日はいい日だった」と思えるんですよ。

その後、子どもが起きるまでの間は、朝活コミュニティ「朝渋」の活動時間。「朝渋」は、僕が代表を務める「朝活を楽しむコミュニティ」で、渋谷から活動が始まったので「朝渋」という名前なんです。

確かに、早起きしてそれだけ活動ができると気持ちよさそうです。

5時こーじ

その代わり、夕方になると眠くてポンコツになります(笑)。

僕は2人の子どもがいて、普段は家事・会社の経営・朝渋の3つを中心に1日が回っています。

子どもを送り出したあと、10〜17時まで仕事。その後はカフェで心を切り替える時間を作ってから家事をしています。

早寝早起きがご自身にとって大切だ、と気が付いたきっかけは?

5時こーじ

新卒で働き始めた頃ですね。もともと僕は父が5時起きで、幼い頃から早寝早起きのスタイルで生きてきました。

でも、入社後は会社の始業時間や残業に合わせて24時に就寝して朝7時に起床する生活になったんです。

10時に始業して、なかなか頭が働かないからミーティングをしたらランチへ出かけて、16時になっても仕事の8割が残っている……。そんな働き方でした。

新卒の頃って、先輩から突然頼まれる仕事もあるから、予定を掴みにくいんですよね。

5時こーじ

そうなんですよね。しかも、残業が終わってから上司と飲んだりするのも「意味があるのかな……」って疑問を感じ始めて。

そうしたら、なんだか心も体も調子が悪くて、終わりのないマラソンを走っているみたいなんです。「ご機嫌」の対義語って「不機嫌」だと思うんですけど、僕の場合は「違和感」でした。

違和感?

5時こーじ

今思えば、自分の時間をコントロールできていないストレスが高かったんでしょうね。

そういうことが3カ月ほど続いたときに、「なんで仕事ができないんだろう」と考えて、「早寝早起きの生活スタイルが崩れたからだ」とひらめきました。

仕事の能率を上げるための「早寝早起き」

なぜ、仕事の能率と早寝早起きを結びつけられたんですか?

5時こーじ

社会人になってから、24時就寝・7時起床の生活を始めて1日が短く感じたんです。

「これが社会人」と言われたら仕方がないですが、あまりに調子が悪い。それで、上司に相談しました。

なんて相談したんですか?

5時こーじ

正直に、「早寝早起きができないから、仕事がうまくいかないんだと思います」って打ち明けました。

当時の上司は30代で、そのチームに僕しか若手はいないこともあり、すごくかわいがってくれていました。

僕が幼い頃から早寝早起きの生活スタイルだったという話までちゃんと聞いてくれて、「じゃあ、自分のライフスタイルで仕事をやってごらん」と言ってくださって。それで、7時半に出社するようになったんです。

大きな変化ですね。

5時こーじ

7時半に出社すると、誰もいないので、もちろん話しかけらない。そうすると仕事が進むので、ほかの社員が出社する10時前には最重要タスクがほぼ終わっている状態になりました。

だから、先輩から別のタスクをお願いされても、すぐ対応できるんです。そうすると仕事の効率が上がって、成果も出るようになりました。

早寝早起きの効果が出たんですね。

5時こーじ

はい。相談に乗ってくれた上司も、夕方になると「そろそろ帰りな」って声をかけてくれて。僕は1番若手でしたけど、1番早く帰っていましたね。

もちろん、「早起きのライフスタイルを認めてもらったんだから、成果を出さなきゃ」と焦る気持ちも少なからずありました。

でも、この当時の体験はすごく大事にしていて。今も「自分のやりたいことを主張したなら、成果に結び付けよう」という考え方が軸になっています。

転職先では、始業時間が変わるきっかけにも

5時こーじさんは、転職も経験されていますよね。

5時こーじ

はい。インターンで知り合った方が会社を興して、「人が足りないから」と声をかけてくれたんです。入社前に早寝早起きのスタイルで仕事がしたいことを伝えて、了承いただいていました。

そこの社長は僕のライフスタイルを聞いたときは、「低血圧だから、俺は真似できない」と話していましたけど、僕があまりに楽しそうに働くから真似してくれるようになったんです(笑)。

そうしたら、早起きした方が仕事の効率が上がることに気が付いたらしくて……。最終的には、会社全体の始業時間が10時から9時に変わりました。

すごい! こーじさんの早寝早起きがきっかけで、勤務先の始業時間まで変わったんですね!

5時こーじ

ベンチャー企業だからフットワークが軽かったのもありますね。

僕にとって、早起きは自分のリズムを保って生き抜くための生存戦略なんです。最初は無理やり作り出した自分のコアでしたけど、これができないと今や仕事もできません。

早起きはあくまで「手段」。自分の棚卸しが大切

早起きができたら、誰もが仕事の効率もあがるのでしょうか?

5時こーじ

そういうわけではないでしょうね。いろんな方から「早起きがしたい」と相談されますけど、早起きはあくまで「手段」で「目的」じゃないですから。なので、まずは自分についての棚卸しが必要です。

棚卸し?

5時こーじ

「新しい資格を取りたい」「副業したい」「家族との時間を作りたい」――。そういう目的がある人は、「早起きするとその時間が作り出せる」という考え方です。

なるほど。

5時こーじ

ポイントは「何の作業ができれば、その後に何が起こっても『いい日だった』と思えるか」ですね。

僕の場合は、それを朝のルーティンにしたんです。

うーん、それって考えるのが難しそうですね……。逆に違和感があるポイントを探るのもいいんでしょうか?

5時こーじ

そうですね。サーフィンが好きな人は、週末にサーフィンへ行かないと違和感があるでしょう。でも、仕事が忙しいとできない日が続く。そうするとどんどん自分らしさを失っていきます。

人生って、仕事だけじゃないはずです。まず、自分が何をしたら楽しいのかを、理解する必要はあるんじゃないでしょうか。そして、1日の時間を何に使うか、考えるのが大事ですね。

仕事もある中で、優先順位のつけ方はどうしていますか?

5時こーじ

僕がよく言うのは、「自分の時間をまずは充実させよう」です。

だから、優先順位は「自分時間>家族時間>仕事時間」としていて。スケジュールは仕事から入れずに、自分の時間から入れるようにします。

5時こーじ

たとえば、読書が好きで月に本を4冊読みたいなら、本を1冊読むのに何時間必要かをまず抜き出します。

仮に2時間半かかるなら、先に10時間のスケジュールを押さえればいい。時間を確保しちゃえば、半分できたようなものです。

あとは実行するだけですもんね。

5時こーじ

そうです。仕事の進め方に関しても、どうしたら成果がより出せるかを考えるといいと思います。

カフェで仕事した方が捗るのか、一人で集中したいのか。チームプレイか、個人プレイか。

そうやって、自分の得意なことを棚卸ししていく。僕の場合は、朝9時までに仕事の6~7割が終わっているのがベストです。

つまり、自分を知ることが大切なんですね。

5時こーじ

そうです。現代人は、自分で意思決定することに慣れていない人が多いと思うんです。

偏差値に合った大学を選び、行けそうな就職先に滑り込む。そこから一歩脱して、自分の心地よい時間を探すわけですから。

自分にとって何が良くて何が悪いのか。敏感にアンテナを張ることが大切です。

職場の環境にズレを感じた時は?

自分のやりたいことや得意なことを棚卸しすると、職場の勤務時間や勤務形態と合わないことも出てきそうです。

5時こーじさんは職場の上司に相談したわけですけど、どう提案したらいいのでしょうか?

5時こーじ

まずは、なぜそういう働き方がしたいのかの理由や自分の価値観をしっかりと相手に共有することが大切です。

ただ、自分を主語にしたわがままにならないように、同時にどうやって成果を保つのかなども考えて一緒に伝えてください。

自分らしさを了承してもらえても、成果が伴わなかったらNGです。そこは仕事ですから。

そう考えると、塩梅が難しいですね。

5時こーじ

僕たちの会社でも、「在宅勤務に挑戦したい」と言ったけれど成果が伴わず、出社に戻した事例もあるんですよ。やっぱり、自由と責任のバランスでしょうね。

あとは自分のキャラを相手に印象付けることも、一つの手です。僕たちの会社では、「自分の取扱説明書」を作っています。

5時こーじさん自身の「取り扱い説明書」。社員に公開をしている。

5時こーじ

要は、自分という商品の説明文。特技や経験、得意な仕事のほかに、「NGワード」や配慮してほしいことを共有して、自分のことを相手に開示するんです。

そんなことまで?

5時こーじ

そうです。相互理解が深まりますよ。たとえば、「僕は人と一緒にいると疲れやすい。だから適度に1人にして」と伝えています。

そうすると、会社にいなくても「カフェで仕事してるんだ」と理解してもらえるんです。

5時こーじさんの取扱説明書より。苦手なことも言語化して、社内で共有している。

ほかのメンバーのことがわかるのもいいですね。

5時こーじ

はい。ほかの社員は、「目と目を合わせて話してほしい」と書いていました。

その社員から「最近、生返事が多いですね」と指摘されると、「ああ、この人とは目を合わせて話さないといけなかった」と思い出すきっかけになります。

苦手な部分を共有することで、人間関係の摩擦が起こりにくくなるんですね。

継続するには、「失敗を失敗にさせない」考え方が必要

そうやって機嫌よく過ごせる働き方を見つけても、うまくいかない日もありますよね。飲み会の翌日に寝坊したり、気が散って読書できなかったり……。

ネガティブになりませんか?

5時こーじ

うまくいかない日があることを、事前に戦略的に考えるといいですよ。「月に1度くらいOK」とか。

僕も飲み会に参加して24時に寝る日があるんです。そういう日は早起きをやめて7時に起きます。

そうなんですね!

5時こーじ

その代わりに、仮に水曜日が飲み会だとしたら、火曜日と木曜日は何も予定を入れない。そうやってムラが少なくなるよう心がけます。

つまり、事前に「失敗にさせないプランを作る」ことです。

なるほど。最初から朝ゆっくり眠ると決めて週の中で調整しておけば、失敗も失敗にならないですもんね。

でも、上司からの急な誘いなど、断りにくい予定もありませんか……?

5時こーじ

自分のやりたいことも立派な予定だから、僕は飲み会の誘いを断ってもいいと思います。僕なら「早起きだから飲み会には参加できないのですが、モーニングやランチはどうですか?」って逆に提案します。

実際、僕は何度も断ってきましたけど、それで人間関係が悪化したことなんて一度もありませんよ。飲み会だけが、関係を深める唯一の手段じゃないんですから。

確かに、代案があれば「一緒に食事する意思はあるんだ」と嫌な印象を与えない気がします。

5時こーじ

仮に断れない時も、「そういう日なんだ」と考えて、最初から失敗を失敗にさせないプランで過ごせばいいんです。

仕事をしていれば、どうしても予定通りにいかない時もあります。そういう時は視野を広げて、週や月単位でできない日を吸収する。

トータルで自分のやりたいことがどれだけ進んだか可視化してあげればいいんです。

毎日、がっつり取り組まなくてもいいんですね。

5時こーじ

80点くらいでいいんです。うまくいかない日があってもOK。

職業によっては、仕事の繫忙期がありますよね。その時に「資格試験を受ける」といった個人のプロジェクトをぶつけても辛いだけです。

いつならできるかを考える。週や月単位、3カ月単位と引いて見るといいと思います。

ありがとうございます。まずは自分のやりたいことを棚卸しして、スケジュールを組みたいと思います!

前田 英里
前田 英里

【編集後記】
早寝早起き、とにかく苦手です。つい夜更かし、朝寝坊、からの仕事という毎日を過ごすわたしが「早寝早起きのプロ」に合わせる顔などあるのだろうか……と気後れしつつ、いざ対面。お会いしてみると、凛々しい笑顔以上に「自分自身をよく知っている」ことが印象的な方でした。自分は何に違和感があって、どうしたらご機嫌になるのか。どういう過ごし方ならパフォーマンスを発揮できるのか。これらを丁寧にひもといていった先に、5時こーじさんの場合は早寝早起きという手段があったのです。ただやみくもな「早く起きなきゃ!」では何も変わらないと反省しつつ、やりたいことの棚卸しから始めた取材後の午後でした。

2024年11月取材

取材・執筆=ゆきどっぐ
撮影=栃久保誠
編集=鬼頭佳代/ノオト