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「間」を受け入れ楽しむことが、変化を生み出す一歩になる ━ AIDA DESIGN LAB ローンチイベント

新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大、気候変動など、さまざまな社会課題が複雑に絡み合う現代。これらの課題に立ち向かい、変化を先導できる人材を育てることを目的に、一般社団法人AIDA DESIGN LABが設立されました。

 

設立を記念して、2021年6月25日(金)にAIDA DESIGN LABがローンチイベントを開催しました。「AIDA(間)のデザイン – 私と私たちの間、そこから生まれるもの」をテーマに、多様なゲストと共に「間」の意味や意義、可能性について探求していきます。ローンチイベントでは、ゲストスピーカーに妙心寺春光院副住職の川上全龍氏をお迎えし、理事5名とともに、「間で生まれる揺らぎと曖昧さの許容」をテーマにパネルディスカッションを展開しました。その様子をお届けします。

 

イベント冒頭では、一般社団法人AIDA DESIGN LAB代表理事の大場光太郎氏より、今回のテーマである「間」についての問いが投げかけられました。その問いを受け、同じく理事の坂本氏がAIDA DESIGN LABの設立背景と存在意義を共有しました。

 

 

大場: 私とあなたの間、組織と個人の間、社会と技術の間、アートとサイエンスの間。さまざまな所に間は存在しますが、皆さんが想像するのはどんな間でしょうか?

 

私の間のイメージは「自他一如(じたいちにょ)」で、自分と他人はひとつのもの、という意味です。昨年からの新型コロナウイルス感染症の拡大を筆頭に、さまざまな社会課題を抱えている現代は、高度成長期の頃のような合理化や進化だけでは上手くいかなくなっています。企業組織ではマインドフルネスや幸福学、共感経営など、人の感情が重視される傾向もみられます。二項対立で考えるのではなく、自分と相手が一つの如く考えられる、そういうマインドが必要です。

 

一般社団法人AIDA DESIGN LABでは、自他一如的なマインドを持つ人を育てる人材育成プログラム、企業組織へのコンサルテーション、プロジェクト支援の三軸で事業を行います。今後の活動を通じて、曖昧な「間」を共に楽しめる仲間ができたら嬉しいです。

 

坂本:間に出会い、社会に問い、ともに未来をつくる場所。AIDA DESIGN LABという場所をこのように定義しています。「誰もが望ましい未来を描き、変化の先導者となる社会の構築」というビジョンを掲げていますが、まずは私たち一人ひとりが一歩を踏み出すこと、変化を起こし続けられることが重要だと考えています。社会にアンテナを張って知識やスキルを習得すること、そして変化を起こしたい人と場所をつないでいくことがAIDA DESIGN LABの最大の使命です。

 

AIDA DESIGN LABには5名の理事がいます。大場さん、小島さんは公的研究機関の研究者、大本さんと私坂本は株式会社Laere(レア)という会社をつくった仲間でもあります。また、デンマークからニールセン北村朋子さんに参画いただいているのは、世界的な社会課題に向き合う今、国の枠を超えてともに議論する場をつくるためで、国際連携も一つのキーワードです。

 

日本でも産官学民の協働が必要と言われていますが、デンマークでは「クインタブルヘリックス」という概念に変わりつつあります。産官学民の要素に加えて、5つ目に環境が追加されたのです。変化を起こすことは決して簡単ではありませんが、志のある一人から広がる行動こそが大きな変化につながります。AIDA DESIGN LABでは、自分たちの問題として取り組むための知識やツール、ネットワークを得られる場所を提供していきたいと思います。

 

「間」とは

曖昧で、つかみどころがない「間」。メインセッションでは、AIDA DESIGN LABの理事たちとゲストとともに探求的な対話を進めていきました。前半は理事の大本綾氏がモデレーターとなり、同じく理事の一人であるニールセン北村朋子氏と、ゲストスピーカーで妙心寺春光院副住職の川上全龍氏がデンマークと日本それぞれの視点で「間」について語りました。

 

大本:今回のイベントテーマは、「間(AIDA)のデザイン〜私と私たちの間から生まれるもの」です。私自身、デンマークをはじめ様々な国に渡った経験から、「真実」は複数あることを学びました。日本の中だけでも異なる考え方や価値観があって、それらの違いに対して寛容になれるかどうか、今私たちに問われています。日本には内と外が溶け合う縁側のような空間やYes/Noでは区切れない婉曲表現など、もともと曖昧さを受け入れる文化を持っていて、「間」は日本人にとって馴染みのある概念ではないかと考えています。川上さんと北村さんは「間」をどのようにとらえていますか?

 

川上:  大乗仏教や華厳経には、「而二不二(ににふに)」という言葉があります。自分と他者は分かれているし、分かれていないという意味です。白と黒の関係性にありながらお互いに存在している、それが間なのかなと思います。

 

北村:私が考える「間」は、いつもはあまり意識しない水や空気のような存在です。あまりにも当たり前すぎて意識しないからこそ、つながっていく可能性を秘めているもの。つながっていく中で、それぞれの役割が緩く溶け出していく「間」があるのではないかと思います。例えば、デンマークでは先生と生徒、経営者と従業員、企業と顧客など、これまで区切られて考えられていたことがつながってきています。きっちりと線を引くことを辞めてきている。

 

川上:間が問われなくなったのは、イギリスでマグナ・カルタが誕生した頃ですね。明文化された文章、法律を絶対視する考え方が出てきています。

 

北村:面白いですね。デンマークでは憲法はあくまでベースラインにすべきで、どう発想するかは自由だという感覚があります。これも「間」かもしれませんね。日本では「金継ぎ」という文化に見られるように、つながらなかったものをつなげることで、新たなものを生み出している。間から価値を生むという意味で、日本は世界に先駆けて進んでいるように思います。

 

「わかりやすさ」に飛びつかず、「わからない」を尊ぶ

川上:言語で考えるとわかりやすくて、英語は白黒はっきりしている言語ですよね。曖昧な答えを避け、明確に示すことが良いことと考えられています。今の日本でも、どれだけ端的にわかりやすく話すかが重視されていますが、そもそも言葉には限界があるんですよ。言葉ってわかりやすいけど、すべてをとらえられるわけではありません。さらには言語の違いで、英語と日本語、デンマーク語でどれかにはあって、どれかにはない表現もあります。

 

北村:デンマーク人は曖昧な言葉を使うのが好きです。デンマーク人が好きな言葉の投票第一位は「Pyt med det!(ピュッ メデッ)」でした。日本では「気にしないで」という意味で、この言葉には「あなたと私、一緒に考えればきっと解決できるから、悩まなくていいよ」というニュアンスが含まれています。日本語の曖昧さと近いところもあって、面白いです。

 

川上:京都弁では「いい時計していますね」と言うと、相手が時間を見るので「少し長居ですよ、そろそろ帰りませんか?」というニュアンスになります。嫌味ではなく、暗号化されているんです。平安時代まで遡ると貴族は短歌で意思疎通していたので、そうやって婉曲的、間接的に伝える文化は昔からあったのだと思います。

 

今、過剰にわかりやすさがもてはやされているのは、安定した心地よさを求めているからです。心地よさは3つの要素でできていると思っています。時短、わかりやすさ、コントロールのしやすさです。

 

でも実際の世の中は、複雑で曖昧ですよね。それを嫌がる文化が生まれているのが怖いと思います。経験と時間がかからないとわからないこと、言葉だけではわからない曖昧なもの、「わかる」と「わからない」の間が欠落している。

 

大本:わかりやすいところに飛びついてしまうのは人間の癖ですね。あえて曖昧を受け入れると、その先にはどのような可能性があるのでしょうか?

 

川上:皆さんの祖父母で、「わからないことが尊い」と言っていた方はいませんか? 哲学者のモンテーニュは、「他人の知恵を聞いても、知識は身につくが知恵にはならない」と言っています。

 

インターネットであらゆる情報が拾える現代、皆が平等に知恵を持っているという感覚に陥りやすい。本を一冊読んだ、ワークショップに一日参加しただけでわかった気になる。本当はごちゃごちゃした間がたくさんあるのに、実用性を重視するあまりそれを無視してしまうんです。

 

「エビデンスベースで、データありきで話して」とよく言われますが、エビデンスやデータって単なる過去なんですよ。コロナ前の時代はデータの直線上で良かったかもしれませんが、今は過去の直線上に答えはありません。不確実性の高い状況では、例えば環境のような、人間以外の要因も結果に絡んできます。

 

要因があって結果が生まれることを「因果」と言いますが、一つの要因に限られるわけではなくて、「縁」が入ってくる。因が果に変わるまでにも間があるわけです。

 

謙虚さと好奇心が、曖昧な時代を突き進める原動力に

パネルディスカッション後半では、AIDA DESIGN LAB理事の大場氏、小島氏、坂本氏も参加し、議題は「間をリードする人材育成」に。複雑性や曖昧さ、多様な価値観を受け入れながら、それでも人々をリードして前へ進むためには、どのようなマインドセットが求められるのでしょうか。

 

川上: 「自分は知らない」という謙虚さです。たとえ他人の見解が自分と異なっていても、まずは受け入れる。ただ私たちは少しでも合わない人がいると、相手の全人格を悪と考える傾向があります。絶対悪をつくったほうが楽ですが、自分も悪いところがあるし、知らないこともありますから。

 

最近はSNSで賞賛されることが気持ちよくて慣れてしまっている人も多いですが、実は不快な経験の中に気づきや学びが隠れています。「不快だから面白いんじゃないの?」と思う好奇心を持つことも、謙虚さとあわせて必要だと思います。

 

大場: 私は公的研究機関のロボットの研究者で、ロボットを作る側と使う側の間にいました。ロボットやAIに完全な安全は存在しないので、どこまで不完全さを許容するか、せめぎ合いの日々でした。ロボットを作るメーカー側には、ある程度の危険性も理解したうえで許容してもらう必要があります。作っている人側のリテラシーも含めた安全なんです。

 

大本:「安全」という大きなテーマに対して、全員が主体者になって考える。川上さんがおっしゃったように、謙虚さ、不快さに立ち向かう好奇心が大事ですね。デンマークでは大きな課題に対してみんなで自分ごと化するのが上手だと感じています。北村さんがデンマークの教育に関わるなかで見える特徴があれば、教えてください。

 

北村: デンマークの教育で面白いのは、謙虚な姿勢を持ちながら、いろんな可能性を排除しないことです。学校の先生だから全部知っているわけではないし、国の首相だからといって国民のことを全てわかっているわけではないことを、本人も周囲も理解しています。誰もが完璧ではないし、完成形を見ることもできない。それでも少しずつよりよくできる可能性を見つけるにはどうすればいいかを考えるんです。これは禅の思想とも通ずる「ビギナーズマインド」だと考えています。

 

坂本: 私の娘が10年以上デンマークの教育を受けていますが、学校のルールはとても少ないと聞きます。ルールはできるだけ少なくして、挑戦できる可能性をたくさん残して、ルール以外はチャレンジできるようにする。それを社会全体で許容している印象があります。

 

ルールを決めすぎない、規律と自由のバランス

大本:コントロールしすぎず、自分で進められる自由度を確保することが「わからない」ながらも前に進める人を育てるひとつの要素でしょうか。一方で、組織のなかではルールを決めすぎないというのは、難しさもあります。規律と自由のバランスをどのように見ていますか?

 

川上: 自由と権利を考えてみましょう。自由と権利はもともと明治期に入ってきた外来語です。自由は英語で「リバティー」または「フリーダム」です。日本人が自由と聞いて思い浮かべるのはフリーダムで、何をしてもいい、自分らしく生きるという考えに近い。一方でリバティーには、自分がやりたいことをできるように闘争や努力を行い、かつ他人に迷惑をかけないという意味が含まれています。

 

権利は何でしょう。権はおもり、利は利益の利ですが、福沢諭吉は理(ことわり)と説いています。周りの人の言い分を聞いて、公共のために何ができるか考える。このような意味を考えると、権利や自由という言葉が乱用されていることがわかります。言葉のもとの意味を考えて、文化背景から概念をとらえ直してみることが有用だと考えています。正しい、間違いのラインはありません。考えることから始めるのです。

 

小島: 東日本大震災が起きた時、産官学民と連携して、多様な人をつなぐ経験をしました。その際に学んだのは、自分の判断を脇に置いて人の話を聞いて受け入れる姿勢、そして相手がなぜそう思ったのか考える謙虚さが重要ということです。

 

「批判的な意見を取り入れる」ことは、AIDA DESIGN LABのコンピテンシーにも取り入れました。二項対立にならず、多様な意見を取り入れる。とにかく、謙虚に聞く姿勢が必要だと考えています。

 

大場:地方自治体も企業も、大きな社会課題を解決しようとしても一つの組織ではできないことが多くあります。不安定な間を受け入れ、間をつなぎ、リードする人が求められます。AIDA DESIGN LABでは、そのような間をリードできる人材を育てる「人材育成プログラム」、間で生まれたプロジェクトの支援、また今日のように間にまつわるテーマや困難をみんなで考えて議論できる場所をつくっていきたいと考えています。

 

 

■登壇者プロフィール

ー川上 全龍(かわかみ・ぜんりゅう) 臨済宗妙心寺派本山塔頭 春光院 副住職
米・アリゾナ州立大学で宗教学を学んだ後、宮城県の瑞巌寺にて修行を行う。2007年より春光院の副住職として、国内外の企業、大学、学会やイベント(イートン校、MIT、ブラウン大学、HBS、INSEAD、Mind & Life InstituteのISCS 2016とIRI 2018、 TEDx、マイクロソフト社など)で禅やマインドフルネスの講演、ワークショップ、リトリート等を行う。また2008年からは米日財団の日米リーダーシッププログラムのフェローとしても活躍。

 

ーニールセン 北村 朋子(にーるせん・きたむら・ともこ)
2001年10月よりデンマーク、ロラン島在住。日本とデンマーク、世界。人と人。人と人を取り巻く環境とのつながり。教育と民主主義をツールにこれらを思考し、ほぐして広く伝え、協働する実践者。人とそれを取り巻く環境が幸せな地球を目指し、そのためのネットワークづくり、学びと思考と実践の場づくりを行う。ロラン島で食を切り口にしたインターナショナル・フォルケホイスコーレLollands Højskoleの開校準備中(2022年秋開校予定)。著書に「ロラン島のエコ・チャレンジ〜自然エネルギー100%の島」

 

ー大本 綾(おおもと・あや)
外資系広告会社で大手消費材メーカーのブランド戦略、コミュニケーション開発に携わった後、デンマークのビジネスデザインスクール、KAOSPILOTに初の日本人留学生として入学。クリエイティブは才能ではなく、トレーニングによって獲得できるスキルであると確信。卒業後、株式会社Laereを立ち上げ、共同代表に就任。様々な組織に対してクリエイティブな人材育成と組織開発プログラムを開発・実施している。ベルリン日独センター主催「第15回日独ヤングリーダーズフォーラム」日本側代表メンバーに2020年に選出。

 

ー大場 光太郎(おおば・こうたろう)
1991年東北大学大学院博士課程修了(博士工学)。2009年より独立行政法人産業技術総合研究所知能システム研究部門副部門長、2015年より国立研究開発法人産業技術総合研究所ロボットイノベーション研究センター副センター長。2018年より産総研デザインスクール準備室長兼務、2020年に産総研デザインスクール事務局長、現在に至る。ユビキタス・ロボット(現在のIoT)、ロボット安全を通じて、コンサルテーション、ファシリテーション、デザイン思考などの人材育成研究に従事。日本ロボット学会フェロー、第13回産学官連携功労者表彰で内閣総理大臣賞を受賞。

 

ー小島 一浩(こじま・かずひろ)
1972年埼玉県飯能市生まれ。東京工業大学総合理工学研究科知能システム科学専攻博士課程修了(博士工学)。2001年独立行政法人産業技術研究所入所。2011年産総研気仙沼プロジェクトに従事し、一般社団法人気仙沼市住みよさ創造機構設立メンバーを務める。2020年現在、国立研究開発法人産業技術総合研究所 人間拡張研究センター 共創場デザイン研究チーム チーム長兼同産総研デザインスクール事務局所属。現在、共創デザイン研究に従事。

 

ー坂本 由紀恵(さかもと・ゆきえ)
JICAにて研修監理、及び国際交流のコーディネーション業務に15年間従事。その間、日本全国の教育機関を廻る。結婚と同時にデンマーク人の夫と英会話スクールを企画、運営。その後、人材育成を核とした地域活性化の在り方を研究するため、事業構想大学院大学にて事業構想修士を取得。卒業後、株式会社Laereを立ち上げ、共同代表に就任。北欧をはじめとした世界各国の多様な教育機関の調査や、大学・企業向けの視察を企画し実施している。

 

AIDA DESIGN LABでは、2021年10月よりさまざまな間でつながる場をデザインし、未来をリードする人材を育成するプログラムを開始予定です。7月19日に無料説明会を行うので、ご興味・ご関心のある方はぜひご覧ください。

 

AIDA DESIGN LABとは
一般社団法人 AIDA DESIGN LABは、変化を先導する人材の育成プログラムを提供するとともに、プロジェクトの実践支援を行っていきます。
多様な社会問題が複雑に絡み合う時代において、組織や産官学民の枠組みを越え、学びや知恵を結集することが必要です。北欧をはじめ世界中で共通のビジョンを持った人々を繋いで、共創しながら未来をつくります。

 

2021年6月取材
2021年7月19日更新

テキスト:花田奈々

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