定例会議の解像度を上げる なんとなく続けていることをやめよう(澤円)
仕事でもプライベートでも、やりたいことは山のようにある。同時に、周りからのいろいろな頼まれごとにも向き合っていくと、いつの間にか予定はいつもパンパンに。この働き方、暮らし方は思っていたのと、ちょっと違う気がする……。そんなときに必要なのは、こだわりや常識、思い込みを手放すことなのかもしれません。連載「やめるための言葉」では、圓窓代表取締役・澤円さんと一緒に「やめること」について考えていきます。
「悪習慣」を避けるのはビジネスパーソンの基本動作
皆さんは、「どうしてもやめられない悪習慣」がありますか?
よく話題に上がるのは喫煙。これは、様々な観点から「悪習慣」という認識が広がっているようですね。欧米のたばこのパッケージには、健康に対する害を喚起するような恐ろしい写真が添付されていますね。あれで売っちゃうんだからすげぇなあといつも感心しています。
他にも、「過度の飲酒」や「糖分の取りすぎ」、「慢性的な睡眠不足」なども悪習慣として認知されていることかと思います。喫煙同様に健康に悪影響が出ると一般的に認識されており、実際に科学的にも証明されているようです。
(ボク自身は医学分野の専門家ではないので、断言は控えておきますけれど)
ちなみに、ボクは25歳になるくらいまでの数年間は、煙草を吸っていたのですが、どうにも体調に悪影響を与えている気がしたので、やめてみました。
やめてみたらとても体調もよくなり、喫煙にまつわる諸々のネガティブな事象(臭いがする、たばこ代がかかる)などもなくなったので、結果として「やめてよかった」一つの習慣だったと思っています。
ただ、ボク自身は喫煙者を極端に蔑んだり攻撃したりする気にはなりません。自分が吸っていたのもありますし、喫煙を通じてちょっとしたコミュニケーションが生まれたり、リラックスした時間を過ごせたりするのも事実なので、「習慣として残したい」と思うなら、それは個人の自由だと思っています。
ただ、健康を管理するのはビジネスパーソンの基本中の基本。健康に明らかにマイナスの影響を与えていると自覚したら、すぐにその習慣をやめるのは、必須アクションであることは間違いないでしょう。
そして、「プラスになるとは思えない」と感じるのなら、そもそも習慣にしないという意思も大事ですね。心身へのネガティブインパクトを避けるのは、いい仕事をする上で極めて重要な判断だと思います。
やっかいなのは「悪影響」が目に見えない習慣
前章でいろいろ書きましたけれど、あの内容は読者の皆さんはきっと百も承知ですよね。喫煙や飲酒などは、「習慣」と「健康」が密接に関連しているとイメージしやすいので、習慣を変えるモチベーションもわきやすいでしょう。
厄介なのは、「健康などには直接影響しないけれど、続けてもプラスにならないもの」の扱いです。これ、どんなものが思いつきますか? ボクの連載をお読みの方なら、なんとなく想像がつくかもしれませんね。
そう、「意味の薄い定例会議」です。これは「定例会議には意味がない」とは言っていません。あくまでも「意味の薄い定例会議」はやめた方がいいんじゃないの?というお話です。
定例会議は、メンバーの予定をあらかじめ抑えるという意味では大変に効率的ではあります。その時間帯を外して予定を組んでもらえばいいので、会議開催をする側としては、いろいろ楽ちんです。
ただ、ここには一つの罠があります。この定例会議の存在のために、他の予定が入れにくくなったり、ダブルブッキングした時に調整の時間が必要になったりします。
「え、そんなの当たり前じゃん」とお思いになるかもですが、ここで考えていただきたいのが「その定例は本当に必要なんだっけ?」ということです。意味の薄い定例会議が設定されていること自体に問題意識を持った方がいいのでは?というのがボクの提案です。
意味の薄さを測る基準とは
意味が薄いかどうかを判断するためには、何らかの基準が必要になりますね。ここで登場するのが、ビジネスパーソンなら誰しも聞き飽きまくっているであろう「ホウレンソウ」です。
ホウレンソウ、つまり報告・連絡・相談が基準を作る材料になります。定例会議で話されている内容の解像度を上げてみて、どの要素がどのくらいの割合含まれているかを測ってみてください。
もし、報告が8割超えてますよという場合は、定例会議は即やめてしまっていいでしょう。会議で報告事項を共有するのは、効率が悪すぎます。
ボクは「ホウレンソウ」の三要素を
・ホウ=過去
・レン=現在
・ソウ=未来
で分けて考えましょう、といつも言っております。
そして、
・ホウ=できる限りツールで自動化
・レン=チャットを活用
を激推ししています。
報告は過去の話なのですから、なんらかのデータがあってしかるべきでしょう。そのデータがいつでもどこでも確認できる状態になっていれば、わざわざ会議をする必要がないのです。
連絡は、相手の時間を強制的に奪ってしまう電話ではなく、チャットを活用すればいいでしょう。会議で連絡事項を共有していたのを、SlackやTeamsのチャット機能で代替すれば、時間差で確認することもできるようになります。
会議は、「時間と空間を共有する」というものです。これは、コロナ禍でめちゃくちゃ貴重な体験であったことを、多くの方が実感したことでしょう。だからこそ、その価値を見直してほしいのです。
時間と空間を共有するためには、多くのリソースが必要です。移動しなくちゃいけない、会議室の予約で時間を使わなくちゃいけない、作業の途中で頭を切り替えなくちゃいけない……そんな感じでリソースが使われるのです。
そのリソースを割く価値があるかを見極めるのは、とても大事なことです。「オンラインならOKかな?」という考えもあるでしょう。たしかに、オンラインなら移動はなくなります。ただ、その会議の価値が薄いのであれば、もっとも大事なリソースである時間の浪費につながります。
ちなみに「ソウ=相談」は未来の話。ここに時間を使いたいですね。なにしろ、未来だけはコントロールできるので、ここでメンバーの人たちとアイディアを出し合うことこそ、楽しい仕事につながるのではないでしょうか。
明らかに「ホウ」と「レン」に時間使いまくっている定例会議があるなら、どんどんやめてみてはいかがでしょう? 会議をやめる勇気がなければ、その中での「ホウ」と「レン」をやめて、「ソウ」に全振りしてみるのはどうでしょう。
ぜひ、習慣的に行われている会議をじっくり観察するところから始めてください。会議の開催者なら、内容をどんどんアップデートしましょう。出席者なら、アップデートを提案しましょう。
もし提案する勇気がなければ……サボりましょう(笑)。会議に出る意味が薄いんだったら、その分社会に貢献するために時間を使ってみましょう。なにせ、時間は増やせないので、それを無駄にするのは一番の悪習慣ですからね。
アイキャッチ制作=サンノ
編集=ノオト