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ビジネスパーソンに必要なのはグレる勇気 「ちゃんと真面目に働く」をやめよう(澤円)

仕事でもプライベートでも、やりたいことは山のようにある。同時に、周りからのいろいろな頼まれごとにも向き合っていくと、いつの間にか予定はいつもパンパンに。この働き方、暮らし方は思っていたのと、ちょっと違う気がする……。

そんなときに必要なのは、こだわりや常識、思い込みを手放すことなのかもしれません。連載「やめるための言葉」では、圓窓代表取締役・澤円さんと一緒に「やめること」について考えてきます。

「ちゃんとしなくちゃいけない」の呪い

皆さんこんにちは、澤です。この度は、ご縁あって連載を持たせてもらうことになりました。テーマは「やめる」。大好物です(笑)

ボクは2022年の8月に22年11ヶ月勤めた日本マイクロソフトを退職しました。その前に勤めていた会社も合わせると、約28年のサラリーマン生活でした。

最初は金融系のIT子会社でCOBOLというレガシー言語を使うプログラマーからキャリアをスタートしました。その後、マイクロソフトに転職してITコンサルタントやプリセールスエンジニア、最後は技術営業部隊のマネージャーをしていました。

そして、やめてみてわかったことは「ボクは会社員に向いていない」ということでした。なんと気付くのが遅いことか……。

「え? 澤さん、めちゃくちゃ自由にやってたじゃないですか!」とおっしゃる方もたくさんおられますし。それは確かに事実です。

とても法人営業部隊にいるとは思えない長髪に髭面。服装も、どんどん自由度が増していって、間違われる職業トップ3は「ミュージシャン」「美容師」「サーファー」です。

リモートワークも10年くらいしていましたし、最後の2年くらいは出社をほとんどしない生活を送っていました。社内で滅多に見ないレアキャラってことで、「はぐれメタルスライム」なんて呼ばれることも。

そんなボクでも、「やっぱり会社員である自分」を意識する機会って、結構あったんですよね。

いわゆる手続系のものとか、公的書類とか。マネージャーをやっているとそれなりに処理しなくちゃいけないし、間違えると色々面倒なことになります。

そこに持ってきて、ボクは書類仕事が超絶苦手。数多くの書類仕事を、いろんな人に手伝ってもらいながらこなす日々でした。本当に、ボクの周囲には優しくて親切な人がたくさんいたなぁ……。

ちなみに、そうやって周囲に助けてもらいながら仕事を進められるようになったのは、キャリアの後半の話で、前半は「人を頼る」ということが「よくないこと」という意識がどこかにありました。

これを分析すると、結局「ちゃんとしなくちゃいけない」という意識があったということではなかろうかと。「社会人なんだから、ちゃんとしなくちゃ」と、自らに無理ゲーを押し付けていたわけです。

そもそも、この「ちゃんとする」の「ちゃんと」ってなんなんでしょう。気になって調べちゃいました。

どうやら「丁度」や「丁々発止」の「丁=ちょう」からきているようです。そして、この「ちょう」は刀同士が触れ合う音を表しているとか。つまり、特に意味はない(笑)。そんな言葉に振り回されるとか、なかなか滑稽なことであります。

なので、「ちゃんとしなくちゃいけない」と思いすぎるのは、ある意味「呪いにかかっている状態」かもしれませんね。

「忙しい」のメカニズム

とはいえ、仕事をしていると忙しさのせいでなかなかゆっくり考えられず、結局「ちゃんとしなくちゃ」という呪いに振り回されている自分を意識できない、なんてことも起きがちです。

では、なぜ人は忙しくなるのでしょう。人類は1日を24時間と定め、その中で時間を区切って様々なものに使っていきます。(そうではない民族もいますけれど、それはとりあえず置いときましょう)

その割り振りの隙間がなくなればなくなるほど、どんどん「忙しい」と感じるようになっていきます。

仕事の優先度を上げ過ぎてしまうと、本来割り当てなくちゃいけない時間を削る、という行動に出てしまう人もいますよね。睡眠を削ったり、食事を抜いたり。これは、生命体としての人間であることを維持できなくなりかねません。

本来、「社会人」というタグは、「人間」である自分に副次的につくものであり、「人間である自分」よりも優先されることはないはずです。なのに、忙しくなって「人間としての自分」をおろそかにしてしまうのでしょう。

主に会社員や公務員にありがちな話であると思っているのですが、「他人の人生を生きている状態」が忙しくなる原因になっているのではないでしょうか。これは「XXさんの気を悪くしないように」とか「◯◯部から怒られないように」とか、「顧客の□□が求めてきているから」とか、そんな感じです。

「え? それって仕事してれば当然では?」とお思いになるかもしれませんが、本当にそうでしょうか? XXさんの機嫌をとった結果、自分の睡眠時間が劇的に減ることは、人生を豊かにする効果がどれほどあるのでしょうか?

まず最低限キープしなくちゃいけないのは「自分の心身を整える」ことでありいい仕事をするのはそれからだと思っています。

もちろん、ボク自身明らかに自分の心身を顧みずに仕事ばかりしていた時期があります。ラッキーだったのは、たまたま心身の不調を大きく崩さなかったこと。でも、その運に賭けてしまうのは少々リスクがあると思っています。

「あ、やばい、自分の心身の燃料が減ってきてる……」と思ったら、まずは休むことです。壊れてしまってからのリカバリーは、休んで回復するのに比べて遥かに効率が悪いものです。

ビジネスパーソンに必要なのは「グレる勇気」

では、「ちゃんとするの呪い」から解放されるにはどうすればいいでしょうか? ボクは「グレる」をお薦めしています。と言っても、別に盗んだバイクで走り出す必要はありません。(この例え、わからない人多そう……)

「普段しないけどやってみたかったこと」にチャレンジしたり、「なんとなく惰性でやっていたこと」をやめてみたりすることをお薦めしています。

例えば、「平日の昼からビール飲みたい」って思っているなら、突然午後半休とかを取得してお気に入りのレストランのランチタイムにビール頼んじゃうとか。お酒が入ったら、もう仕事なんて放り出しちゃっていいでしょう。

むしろ、戻るとまずいことになりかねないので、そのままサボりモードに突入しましょう。家でゴロゴロしながらYouTubeみたり、サラリーマンがまだきてないマッサージ屋さんでまったり過ごしたりするのもいいですね。

「なんとなく惰性でやっていたことをやめる」の例は、「発言しない会議への出席をやめる」とか「誰が読んでいるかわからない報告書を出すのをやめる」とか、そういうやつです。

許可を取る前に、やめてみましょう。もちろん評価に直結するような会議やレポートの優先度は高めにしておいていいと思いますが、「これなんのためにやっているんだ?」という仕事は、ほぼ例外なく不要な仕事でしょう。そんなものに時間を使うのはもったいない。やめてしまいましょう。

ビジネスパーソンたるもの、最も重視しなくちゃいけないのは「時間」です。

時間の絶対量は増やせません。だからこそ大事にしなくちゃいけないのは配分なのです。いい配分ができる人こそが、「仕事ができる人」です。その積み重ねが、いいキャリアにつながるものだとボクは信じています。

執筆:澤円
編集:ノオト