「頼る」ことは大人の社会スキル 「助けたい」を引き出す上手な頼り方と頼れる人の探し方
相手を喜ばせるのは大人社会のルール
行き詰まったとき、人に相談することかどうかは、どうやって見極めればよいのでしょうか?
WORK MILL
吉田
例えば、研究チームに学生さんや事務のスタッフが新しく入ってきたら、私は「5秒考えても分からなかったら聞いてね」「5分検索しても見つからなかったら聞いてね」というように、頼る基準や目安となるリミットを早めにセットしておくことを勧めています。
時間という客観的な目安があると、判断が楽になりますね。相談に乗ってもらったり、何か助けてもらったりした後は、どのようにお礼をするとよいですか?
WORK MILL
吉田
私は感謝の言葉とともに、「相手から受け取ったもの・受けた影響」「自分が変わったこと、成長したこと」「自分が他の人の為にできそうなこと」の3つを伝えるようにしています。
そうすると、相手の「人の力になれてうれしい」「自分は世の中に貢献している」という気持ちを引き出すことができます。できればお会いしたその日のうちに、難しくても翌朝までには、メールやチャットなどで感謝を伝えられるといいですね。
慣れないうちは気恥ずかしいかもしれませんが、相手を喜ばせることも大人社会のルールの一つ、と思えば割り切れるかもしれません。
「頼れる人」を探すなら数人のオンラインミーティングで
リモートワークが普及したことで、なかなか頼る相手を見つけづらい人もいるかもしれません。
WORK MILL
吉田
顔を合わせる機会があるのならば、挨拶を増やすだけでも、相談しやすい雰囲気づくりはできます。くりかえし接するだけで好感度が増す「単純接触の原理(ザイオンス効果)」という心理効果がありますから。
オンラインツールが主なコミュニケーションならば、少人数のオンラインミーティングが狙い目です。開始時刻より少し早めに入って、そこにいる人と雑談をしましょう。
おすすめの話題はありますか?
WORK MILL
吉田
「○○さん」と相手の名前を呼び、その相手にフォーカスした質問を投げかけるといいですよ。
初対面ならば、「○○さんの名字はどこの土地に多いんですか?」「××さんの名前は、どんな意味を込めてつけられたんですか?」など、名前についてよく質問します。
他には、相手のネクタイやマスク、シャツなど、画面に映ったものに関して気軽に質問してみてはどうでしょうか? 相手が「自分に関心を持ってもらっている」と思えるので、互いの心理的安全性を築く入り口になります。
雑談に乗ってくれるかで、頼れる人かどうかを探れるかもしれませんね。
WORK MILL
吉田
確かに、コミュニケーションを厭わない人ということですからね。
そういう人はネットワークを持っているので、何かを相談したときに、その人がわからなくても誰かを紹介してくれる可能性も高いと思います。
過去に、勇気を持って相談したのにむげにされたなど、傷ついた経験からなかなか一歩が踏み出せない人もいそうですが……。
WORK MILL
吉田
私も、断られたら嫌な気持ちになるし、傷つくこともあります。だから、誰かに頼るときには、いつも断られる前提でいるんですよ。
断られたときに返すセリフも必ず準備しておきます。「これじゃダメだ」には「どんなものだったらいいですか?」、「今はダメだよ」には「いつでしたら、ご都合がよろしいでしょうか?」など、少しでも事態が好転しそうな“前向き質問”で返事をしていると、一部だけでも答えが見つかったりする。
それでも難しい場合は、最後に自分から「言いにくいことを言ってくださって、ありがとうございました」「お忙しい中、時間を取ってくださり、ありがとうございました」と感謝して終わります。
ここでも感謝を!
WORK MILL
吉田
感謝を伝えると、断った側にも、相手の役に立ちたいという気持ちが湧くんです。だから、「ちょっとだけ近づけた」と思って、次はもっと良い方法、もっといいタイミング、いい内容でこの人に頼ればいいんだ、と考える。
私自身、子育てとの両立でキャリアをつなぐのに苦労しました。けれど、断られたり、拒否されたりしても感謝して縁を断たないでおくと、別のところで声をかけてもらったり、相手が困った時にこちらが力になれたりするんですよ。自分の弱みが相手の強みを引き立てる、とWIN-WINの関係を目指しています。
どうか、自分の足りない部分を見つけたときは、「これは伸びしろなんだ」「自分はどうありたいのかに気付くチャンスだ」と自分を励まして。「頼る」を繰り返すうち、必ずあなたは成長していけるはずですから。
取材・執筆:有馬ゆえ
編集:鬼頭佳代(ノオト)