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ラテンアメリカにおける企業主導SDGsプロジェクトとは? 後編

世界の企業におけるSDGsへの寄り添い方を取り上げているこちらのシリーズ、今回はラテンアメリカ後編として、中南米の企業がどのようにして自然と人間社会のバランスをとっているのかについて注目していく。主に貧困やインフラ整備についてのトピックを取り上げた前編に続き、こちらの後編では日本でもなじみ深い男女平等や環境保全のトピックを取り上げる。また、各企業の取り組みを紹介すると同時に、各国の実情や歴史的な背景についても言及する。

Gender Equality 「ジェンダー平等」

『男女平等を実現し、すべての女性と女の子の能力を伸ばし可能性を広げよう。』国連は女性の社会的な地位や家庭内での立場を守り、文化的なしきたりなどによる差別や暴力を根絶しようと取り組んでいる。

Mercado Libre (アルゼンチン)

アルゼンチンでは、男女平等に焦点を当てたSDG指標に基づくジェンダー平等を促進する法的枠組みが徐々に整備され始めている。実際に、2021年には国会の議席の42.4%を女性が占めるなど、女性の社会進出に国をあげて取り組む姿が見られる。アルゼンチン発の電子商取引に特化したオンラインマーケットの運営に携わるMercado Libre, Inc.はIT産業などにおける男女間のジェンダーギャップを縮めるべく10代の女性を対象にインターンシッププログラムを発足した。生徒たちはUXリサーチとデータ、デジタル・マーケティングについて本格的に学びながら、テクノロジーをベースとしたプロジェクトを実際に開発する。また、他企業とも連携し、ブラックやLGBTQの女性たちのIT教育も積極的にサポートしている。

SDGs ラテンアメリカ
(Mercado Libre 公式ウェブサイトより)

Companhia Siderúrgica Nacional (ブラジル)

2019年からの新型コロナウイルスによる政府の資金不足と適切な対策の欠如が女性の社会的立場は悪化に繋がってしまっている。ブラジル最大の鉄鋼メーカー、Companhia Siderúrgica Nacionalは若い女性に海外の学部奨学金を提供するプログラムを行っており、このイニシアティブは、SDGs 5のジェンダー平等の推進に対するCSN財団のコミットメントを強化するものでもある。これまでコロンビア大学附属の女子校などへ、全額負担で学生を送っている。

更に同社では、女性に向けて工場の機械操作、修理、メンテナンスの分野で実践的な講習を行っており、従来男性が独占してきた職場への女性の参加を積極的に奨励している。

(CSN 公式ウェブサイトより)

Clean Water and Sanitation 「安全な水とトイレを世界中に」

『だれもが安全な水とトイレを利用できるようにし、自分たちでずっと管理していけるようにしよう。』国連は2030年までに安全な水道水を安価でアクセスできるようなインフラを整えるとともに、汚染水を減らし水質の改善も目標にしている。

Ecofiltro (グアテマラ)

グアテマラの最も大きな社会問題のひとつに飲み水の汚染がある。2017年には地表水源の95%が汚染されていることが確認されており、汚染により毎年1,000人余りの小さな子供たちが命を落としている。

そんな中、特に被害のひどい農村地帯において2025年までに100万人の住民を助けようとしているのがEcofiltroである。同社が販売するフィルターはどんな水源からの水(蛇口、井戸、川、雨など)も浄化することができ、砂利などの浮遊物が多い場合でも使用できるよう設計されている優れものだ。

(Ecofiltro 公式ウェブサイトより)

更に、一般から寄付を募り、その財源で農村部の学校にフィルターを配布する取り組みを行っている。また、生徒たちの家族には割引した商品が提供され、子供たちが家庭内、学校においても常に安全な水にアクセスができるようにしている。

Ecopetrol (コロンビア)

コロンビアは地球上の生物の多様性の10%近くを保有し、生物学的に世界で最も多様な地域のひとつに数えられている。国土の半分以上は未だ自然林に覆われているものの、乾燥林など環境の変化に弱いバイオームは元の大きさの約2%にまで範囲が減少してしまっている。

Ecopetrol 公式YouTubeより

コロンビアの大手石油会社Ecopetrolは環境保全、特に水質改善、水生生物保護に力を入れており、2024年までに事業で使用された水を100%安全な水に代替し、自然に返すシステムを確立する予定だ。また、国内の都市部における新たな持続可能インフラの建築への投資や補助も行っている。更に、活動は人間だけでなく動物も対象であり、植林、生物の飼育、保護、また業界内における知識の啓蒙を行うことで自国内の自然と人々を守るため尽力している。

Sustainable Cities and Communities 「住み続けられるまちづくりを」

『だれもがずっと安全に暮らせて、災害にも強いまちをつくろう』スラムなど、貧困によって危険な場所に住んでいる人々の生活環境を改善するという目標。また、国連は行きすぎた開発の結果、環境が変化し自然災害によって住んでいた土地を離れざるを得ない状況を問題視し、長く同じ場所で暮らせるように持続可能な都市開発を提唱している。

Grupo Vidanta (メキシコ)

Grupo Vidanta 2022年レポートより

メキシコでは大規模な干ばつによって農村部から都市部への移民が急増しており、持続可能な都市開発の必要性が提唱されている。貧困や過密により違法な建築にやむを得ず居住する移民も後を経たない。

Grupo Vidantaはメキシコの金融関連の商品やサービス、ファイナンスなどに携わる企業で、持続可能な都市開発プロジェクトへの融資や支援をしている。融資にあたり、プロジェクト内容、企業のサステナビリティに対するポリシーなども精査することでこれまでに2,600万本の木に相当する160万トンのCO2が削減された。同様に、2,500戸の持続可能なマテリアルを使った住居も開発し、住居不足の解消にも取り組んでいる。また環境保全のため独自のネットワークを確立し現在国内の10万㌶の生態系を保護しており農家や先住民コミュニティが参加している。

Climate Action「気候変動に具体的な対策を」

『気候変動から地球を守るために、今すぐ行動を起こそう』気候変動を起こさないよう具体的な対策を各国に求めるとともに、自然災害が起きた場合の対応や事前の備えの重要性を訴えている。

Ecológica Desarrollo S.A. (ウルグアイ)

Ecológica Desarrollo S.A. 公式ウェブサイトより

ウルグアイでは近年過剰なゴミの排出に悩まされており、違法な投棄が原因で環境汚染、水質汚染などより命に危険が及ぶような深刻な問題に繋がってしまっている。

ウルグアイの廃棄物管理業者Ecológica Desarrolloは13番目のSDGsに乗っ取り、産業廃棄物を回収、リサイクルするだけでなく、ゴミを減らす為の工夫を惜しまない。最終的には廃棄物埋め立てゼロを達成し、チリ国内で発生するゴミを100%有価化することで新たなビジネスの構築を目指している。

同社では、クライアントのために社内の廃棄からインデックスを制作し、何がどのように使用され捨てられているのかを調査、改善案を提案してくれる。更にコミュニティへの還元として、特に恵まれない環境に置かれている子供達を対象に、就学前の教育的支援を行っている。毎週1年間、家庭訪問を行い、児童にあった方法で発達の手助けをし、金銭的な状況による機会格差をなくす取り組みをしている。

Algramo (チリ)

Algramo 公式ウェブサイトより

チリは近年ファストファッションの墓場と呼ばれており、世界各国から廃棄物として洋服が不法投棄される。これは国内に存在する免税港が原因であり、毎年数万トンの衣類が到着し、砂漠に投げ捨てられている。これは一つの例に過ぎず、都市部では人口過密から廃棄物の処理が追いついていなかったりと、ゴミは非常に深刻な問題となってしまっている。

チリで大注目のスタートアップ企業Algramoは国内のスーパーマーケットなどの小売店やコンビニに詰め替えステーションを設置している。利用者は不必要なプラスチックのパッケージにお金を払うことなく、必要な中身にだけを購入することで、環境保全でありながら金銭的にも易しいシステムになっている。なお、商品は他ブランドと提携しており、同社のブランド以外の市販の洗剤などの液体もリフィルすることができる。また、今後は事業拡大により、商業施設のみならず学校や市役所などといった地域コミュニティとも密接に支え合っていきたいとしている。

未だかつてない発展と、それに伴う自然への脅威

急速に発展が進むラテンアメリカにおいて、現在ほとんどの国に見られるのはインフラ整備の追いついていない実態である。また、都市化が進み人口が過密することで廃棄物量が圧倒的に増加、それに伴い大気汚染、河川汚染が悪化していく。栄養不足が目立つ子どもたちはその水を飲むことで命の危機にさらされている。

このようにインフラの整っていない地域に住む社会的立場の弱い人々に過剰な開発と発展の皺寄せがくる、というのがラテンアメリカ各地に共通する現実である。今回取り上げた企業の多くはこういった問題に真摯に取り組んでおり、人、動植物、自然、全てにおいて誰一人取り残さないというポリシーを垣間見ることができた。ラテンアメリカは世界有数の自然を保有する場所であり、今後も開発が進んでいく中、どのように自然と歩んでいくのか、注目することで学びとしていきたい。

テキスト:松尾舞姫