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謎解きで楽しくチームビルディング! SCRAPのリアル脱出ゲームで企業研修のメリットとは?(謎解き制作・青木たつやさん)

多くの人が働く職場で、高いパフォーマンスを発揮するためにも欠かせないチームビルディング。そのための多くの手法が編み出されていますが、その一つに「ゲーム」があります。

たとえば、「リアル脱出ゲーム」は参加者たちで謎を解きながらその場を脱出する、体験型ゲームです。

株式会社SCRAPはそんな「リアル脱出ゲーム」を、ビジネスパーソンや企業向けに応用し、「リアル脱出ゲーム研修&懇親会」を提供しています。

今回は、同社で企業向け研修の担当をしている青木たつやさんにインタビュー。リアル脱出ゲームを通してどんなチームビルディングが可能なのか、伺いました。

青木たつや(あおき・たつや)
2012年までお笑い芸人として活動後、株式会社SCRAPに入社。リアル脱出ゲーム常設店舗「リアル脱出ゲーム原宿店」の店長として数々のイベントMCや制作業務を経験。2015年7月よりフリーランスとして、謎解き制作に関わる。現在はイベントMCやインタビュアーなどとしても幅広く活動中。

普段のゲーム作りを研修に。SCRAPが開発した企業研修

リアル脱出ゲームと言えば、謎解き好きに大人気ですよね。企業研修用のコンテンツがあることに驚きました。

青木

リアル脱出ゲーム自体は、限られた時間の中で、手がかりを元に脱出していくというものです。

1人で取り組めるゲームもありますが、5〜6人のチームで取り組む必要があるものもあって。1人だけでは解けないような内容や難易度にうまく設定しているんです。

そのためゴールに辿り着くためには、チーム内の役割分担や、各々がもつ情報の共有・相談など、積極的にコミュニケーションをとる必要があります。

その時点で、お仕事でのチームビルディングに近い雰囲気がありますね。

青木

まさに、そうなのです。この数人で取り組むタイプのゲームが、企業内のコミュニケーション活性化に繋げられないかと考えて生まれたのが、「リアル脱出ゲーム研修&懇親会」というプランです。

研修では、どのようなことが行われているのですか?

青木

「ある宝島からの脱出」という60分1本勝負のプランが、もっともオーソドックスなゲームですね。過去には新卒採用のテストや入社式の内定式などで活用されたこともあります。

企業からの要望としては、やはり何よりも「もっとコミュニケーションを取り合えるようになりたい」「チームづくりがしたい」という要望が多いですね。

1時間後に沈む無人島を舞台に、制限時間内に島に散りばめられた謎をもとに宝物を探すゲーム「ある宝島からの脱出」

初対面でも、ゲームを通して本性が見える

具体的に、リアル脱出ゲームのどのような部分がチームビルディングや研修に役立つのでしょうか。

青木

チーム内で相談する中で、自然と意見交換ができるところですね。ゲームを進めるうちに、どんどん初対面の人でも人柄が見えてくるんです。

短い時間でも人柄が見えてくるのは、すごいですね。

青木

初対面の場合でも、ゲームには時間制限があるので、人見知りをしている暇はありません。

限られた時間で謎解きを進める必要があるため、半強制的にでも打ち解ける必要がある。能動的に取り組む仕組みになっていることが、一番大きなポイントかもしれません。

なるほど……。ある意味、逃れられない状況の中で取り組まなければならないというのは大きいですね。

青木

制限時間が差し迫ってくると、あえて焦らせる曲を流すんです。すると、それにつられて余裕がなくなってくるので、人間の本性が見えてきたり……(笑)。

「意外とこの人はテンパるタイプだな」「リーダーシップを発揮する人だな」「ひらめいてはいるけど、積極的に意見は言わないんだな」など、プラス/マイナス含めたいろんな面がみえてくるんですよ。

ゲームを楽しんでいるだけで、仲間たちのキャラクターがあらわになるのは面白いです!

青木

社内研修が終わった翌日からなんとなく打ち解けることができた、仲間意識が芽生えた、メンバーと仲良くなれた……といったお声をいただくこともありますね。

盛り上がった流れでゲームの後にご飯に行く、という人も多いようです。

実際に研修で取り入れている様子(提供写真)

長い時間をかけなければわからないことを知れたり、結束感を生み出せたりするのは大きな効果ですね。

青木

ここ数年はコロナ禍で、人と対面で会う機会が減っていましたよね。相手の顔を見ながら直接ゲームを行うことで、社員同士で楽しく交流できたという声は多いです。

食事会やビンゴ大会などいろいろな手法はありますが、室内で対面、それも1時間という短い時間でチームを通した密なコミュニケーションができる方法は意外と少ないようで。そこが良いのだと思います。

仕事の肝である役割分担と情報共有の重要性を実感

簡単すぎても難しすぎても、盛り上がりに影響が出そうですね。

青木

ゲームの成功率は15〜20%に設定しているので、本気でやらないと解けません。

難易度が高いからこそ、より本性が見えそうですね。あえて成功率が低い状態に設定しているのでしょうか。

青木

難しいからこそ、全力で取り組むんです。簡単=面白いとは限りません。

悔しさには、よい悔しさとよくない悔しさがあります。全力で取り組んでいないのにうまくいかず悔しがるのは、「よくない悔しさ」。

リアル脱出ゲームに関しては、8割くらいまではクリアできるように設定しているのですが、「あと一歩でクリアできたかもしれない」「次ならできるかも」と思える「よい悔しさ」が味わえるようにしているんです。

また次もこのチームで結束して取り組もうという気持ちになれる悔しさなのですね。緻密なバランスで作られていることを感じるエピソードです。

青木

リアル脱出ゲームでは、臨機応変に役割分担と情報共有をする必要もあるわけです。だからこそ、ゲームを通して「情報共有の重要性を実感できた」という声もありましたね。

謎解きの中には、人によっては得意不得意がある国語の問題や計算が含まれています。それをチームの中の向き不向きを見て、役割分担する。 そして、最終的にクリアするには、それぞれが解いた問題と答えの情報をきちんと共有しあわないといけません。

なるほど! まさに仕事の情報共有と同じですね。

研修でも非日常感を体験できる

謎解きをチームビルディングに活用する最大の効用は何だと思いますか?

青木

謎解きという非日常感のある体験を通して、チームビルディングができる点ではないでしょうか。

大人になって、1時間で追い詰められるという“ごっこ遊び”はなかなかありませんよね。そのなかで、自分自身が主人公としてゲームをクリアしていく。他のコンテンツではなかなか体験できない面白さだと思います。 また、他のチームがいることで、自然と競争心もかきたてられるんですよね。

隣にいるチームが醸し出す雰囲気も、一役買っているのですね。

青木

そうなんです。周りのチームがどんどん進むことで、場のテンションや熱量が上がっていきます。

また、会社によってはバラバラの年代が集まる場合もあります。ベテラン社員の中には、「ゲーム?」と斜に構えて参加される方もいますが、難易度的にそんなふうには言っていられない状況に陥ります。

最終的に、斜に構えていた方が一番アツくなっている……、なんてこともありますよ(笑)。

すごいですね。斜に構えた人でも熱中できる非日常経験をさせるために、司会者として工夫されていることはありますか?

青木

場の温度はコントロールするように心がけています。

どんな現場でも、最初は参加者のテンションはさほど高くないんですね。まずはその空気感に合わせて進行をしつつ、だんだん盛り上がる声かけを増やしていきます。私はかつてお笑い芸人をやっていたのですが、その経験が活きていますね。

あと、「チームビルディングをしよう」と打ち出さないことです。

と、言いますと?

青木

研修が名目だと、なんだか気持ちが固くなってしまいますよね。楽しいゲームで遊んで、結果としてチームビルディングができているだけなんです。

なので、「まずはゲームを楽しくやろう!」という雰囲気を大切にして、終わったあとに「よく考えると、これってチームビルディングになっていませんか?」と問いかけるようにしています。

なにより、ゲームだからやらされている感も減らせるんですよね。

それは、参加者側にとっても気が楽ですね。

青木

「やらされている」と思うと、何事もとたんに辛くなりますから。でも、ゲームにするだけで、能動的に取り組むことに繋がるんです。

それにゲーム心や遊び心は、「リアル脱出ゲーム」に限らず、仕事に取り組む上でも大切だと感じています。

ちなみに、SCRAP社内でもこの研修会を実施することもあるのでしょうか?

青木

 実は、社内では特別「チームビルディング用」としてゲームを実施していないんですが、ゲーム開発のためにかなりの数はこなしていますよ。

どれくらいの頻度でプレイされているのですか?

青木

全員、毎月10本くらいはプレイしていますね。

すごい本数です!

青木

なので、日々ゲームを通して自然とチームビルディングに取り組んでいる状態とも言えますね。

かなり厚い実体験から生み出された研修が、他社のチームビルディングにも役立っているのですね。

このサービスを利用するのに向いている会社やチームはありますか。

青木

エンタメを利用して、チームビルディングをしたいと思っている人すべてに向いていると思います。

大切なのは、体験する社員が楽しもうと思えるかどうか。その気持ちを持って、ぜひリアル脱出ゲームでビジネスに活用してほしいです!

2024年3月取材

取材・執筆=ミノシマタカコ
撮影=栃久保誠
編集=桒田萌/ノオト