生活必需品ではなく「幸せ必需品」 京都で洋菓子ブランドを手掛けるロマンライフが愛される理由とは
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社員もお客様も、みんなで「大家族」
「ロマンの森」を見ていると、まずは社内の雰囲気の良さに印象が残りました。
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河内
ロマンライフは「大家族主義」を掲げています。これは本来、社員一人ひとりが信頼し合い、助け合い、思い合える会社であることを目指したものです。
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降矢
この「大家族主義」は、河内誠一会長の時代から受け継がれていますね。
福利厚生としての社員旅行、みんなで食事をする機会など、親睦を深める機会が多いのも、ロマンライフの特徴だと思っています。
また、形式的な福利厚生だけでなく、社員自ら「思い合う気持ち」を体現する行動をしてくれることがよくあるんです。
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降矢
例えば、クリスマスシーズンは私たちにとって一番の繁忙期。特にリーダーは極限までプレッシャーがかかり、心身ともに疲れていきます。
しかし、その状況でも他のスタッフを労おうと、わざわざお菓子を用意してくれたリーダーがいて。ほかにも、おでんを作ったり、ケーキを用意してくれたりするスタッフまでいるんですよ。
役員が「こうしなさい」と指示しているわけでもないのに、自然と思いやりをもてる。非常にうれしいことです。
社員一人ひとりに、誰かを想う心があるのですね。
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降矢
ロマンライフには、「喜びをリレーする」という理念があります。その文面通り、「誰かの笑顔を見るのが好き」という社員が多いですね。
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河内
また、ロマンライフでは祖父(現会長・河内誠一氏)の時代から「デイリーレポート」という日報を自主的に出す習慣があります。社長の元には、1日100通以上の日報が届くんですよ。
そして社長が全部読み、印象的だったものにコメントを返し、その中から選ばれた1通を「ロマンライフニュース」という日刊の社内報に掲載しています。実はこれが会社の血液にもなっていて。
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河内
例えば、「卵アレルギーがある子どものための洋菓子を用意できませんか」という問い合わせをいただいたんです。しかし、うちでは個別のアレルギー対応はできないことになっているんですね。
そこで、そのスタッフはお客様がお住まいの地域にあるアレルギー対応可能な他店をピックアップして、案内したんです。すると喜んでいただいて。「自分はアレルギーではないので、いつか必ず利用します」と言っていただいたそう。
心温まるエピソードですね。
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河内
その日報を読んだ社長は「すばらしいレポートだ」と評価して。
「ロマンライフニュース」に掲載されると、他の社員も「自分もやってみよう」と思えるお手本になります。自然と好事例が共有されて、会社の価値観が育っていくんです。
社員一人ひとりのお人柄の良さを感じます。お客様への姿勢にもつながっているのではないでしょうか。
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河内
そうだと思います。ロマンライフは、1951年に祖父が「純喫茶ロマン」をオープンしたことから始まりました。
オープン当時、あまりに来店者数が少なかったことから、祖父は「お客様それぞれに合った対応をしよう」と心がけ、コーヒーの濃さやBGMを一人ひとりのためにカスタマイズして、お客様にあった空間づくりをしていました。
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河内
そして、洋菓子ブランド「マールブランシュ」を立ち上げたときも、現社長である父は「最高の品質で、最高の空間で、最高のおもてなしを提供するのだ」と意気込んでいたそうです。
「お客様のために」という思いは今でも受け継がれていて、いかにお客様の叶えたい思いを引き出して、最高の状態で叶えるか。それを大切にしています。
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降矢
ただ、「お客様は神様」という考え方とは少し違うんですね。もちろん顧客第一主義で、お客様の満足を頂点に掲げてサービスを提供しています。
しかし、そのためには社員のことも第一に考えなければ、最高の商品はお出しできないんです。
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河内
そうですね。社員がしんどい思いをしてまで、お客様の思いを叶えられない。反対に、社員が楽をしていたら、それは難しい。
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降矢
ロマンライフでは、「感動とそろばん」=「51:49」だと考えています。50:50でもなく、49:51でもない。
お客様の満足や幸せのために、社員がのびのびと働き、結果願いを叶えられる。ここに、社員一人ひとりの行動や価値観が詰まっていると思います。
200回以上来たくなる理由は、社員とお客様との絆
まさに、お客様も社員も含めた「大家族主義」。その真摯な姿勢は、お客様との関係性にも影響を与えているのではないでしょうか。
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河内
実は、「ロマンの森」がオープンして1年経ったときに、最も多く来ているお客様は何回来店されたのかを調べてみたんです。すると、最大で107回も来られているお客様がいらっしゃって。
107回!?
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河内
本当に驚きました。ちなみに、「マールブランシュ」の北山本店にも、年間200回以上来られているお客様がいらっしゃるんです。
おそらく、「お菓子がおいしいから」以外にも来られる理由があるのだと思います。どうしてそのお客様方は、何度もお店に来られるのでしょうか?
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河内
僕が思うに、スタッフとおしゃべりしたいんじゃないか、と。実際、スタッフも「いらっしゃいませ」とかしこまるのではなく、「こんにちは! 今日もいい天気ですね」「お孫さんお元気ですか?」とフランクに対応しているんです。
スタッフと交流しながら、「今日は〇〇さんに会いに来た」「あの人はやめてしまったけど、元気にしてる?」なんて言葉をかけて、絆を深めてくださっています。スタッフの異動情報も、誰よりも早く知っているんですよ(笑)。
おそらく「自分の居場所の一つ」と思ってくださっているんでしょうね。自分の生活ルーティーンに入っているというか。
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降矢
僕はかつて、ロマンライフが経営する「侘家古暦堂」で調理スタッフとして働いていたのですが、お客様から食べ物の差し入れをいただくことが多かったですね。
私たちスタッフはお客様に大切にされているのだと思え、うれしかったことを覚えています。その関係性に誇りを感じていました。
コロナ禍で再認識した「幸せ必需品を提供する」という使命
ロマンライフさんには「喜びをリレーする」という理念があるかと思います。まさに経営活動や地域貢献を通してそれを具現化されていますが、そこにどんな使命があるのでしょうか。
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河内
私たちは「幸せ必需品」を提供している会社なんです。
人と人がいれば、必然的に感情が生まれますよね。それは感謝かもしれないし、「何かしてあげたい」という気持ちかもしれない。そんな気持ちをつなぐ触媒になるのが、僕たちです。
マールブランシュのお菓子を見て、「これ、おいしそう。誰かにプレゼントしたい。そうだ、あの人にあげよう」と思ったりしてくれたら、僕たちの本望。関係性そのものを作ることはできませんが、作るサポートならできます。
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降矢
ロマンライフは「幸せ必需品」を提供しているのだな、と改めて認識したのは、新型コロナウイルスの流行でした。
2020年4月に緊急事態宣言が発令されて、やむを得ず店を長期的に閉めました。当然、売上は大幅ダウン。会社存続の危機すら感じ、自分たちは社会に必要とされていないのではないか、と思わざるを得ませんでした。
その後、感染対策を徹底的に講じて、緊急事態宣言があける前の「母の日」に再開を決意したんです。すると、オープン前にも関わらず、長い行列ができていて……。
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河内
たくさんのお客様を見て、社長は泣いていました。この事業を信じてやってきた社長本人にとって、コロナ禍のお店クローズは本当に辛かったのでしょう。
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降矢
私たちはお水やお米などの生活必需品を販売しているわけではないけれど、「幸せ必需品」を提供しているのだ、という思いを強くしましたね。ある意味、一つの転換点でした。
そんなロマンライフさんの今後のビジョンを教えてください。
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河内
「ロマンの森」を立ち上げたからこそ、もっとたくさんの方とロマンライフの接点を増やしていける。「喜びをリレーする」という思いを叶える幅がぐっと広がったと思っています。
将来的には、洋菓子を作っていくことには変わりありませんが、いずれ外食産業にジョインするかもしれませんし、遠い未来には家具を売っているかもしれません(笑)。
引き続き、「幸せ」や「喜び」を提供していきたいと思います。
2022年3月取材
取材・執筆:桒田萌
写真:楠本涼
編集:鬼頭佳代
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