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電気代の節約とサステナビリティは両立できる? リモートワーク中にできる省エネのヒントをハチドリソーラー池田さんに聞きました

自宅でリモートワークをしていると、日中の電力消費量は自然と増えるもの。一方で、電気料金の値上げや電力不足のニュースも続いています。地球のことを考えれば、サステナブルな電力を選びたい。でも、お金がかかりすぎるのは正直つらい――。

この夏、どうやって電気代節約とサステナビリティを両立すればよいのでしょうか? 住宅太陽光発電で自然エネルギー100%の社会を目指すハチドリソーラー・代表の池田将太さんにお話を聞きました。

池田将太(いけだ・しょうた)
ハチドリソーラー代表。千葉県船橋市出身。麗澤大学在学中に、国際協力やヒッチハイクでミクロネシア連邦など9カ国を巡り、さまざまな価値観に触れる。非営利国際協力団体の代表や環境負荷の小さい地域の小水力発電のコンサルティング会社でのインターンを経て、2021年ボーダレス・ジャパンに入社。2021年10月、ハチドリソーラーを設立。初期費用0円で導入可能な住宅太陽光発電サービスを提供している。

コロナ禍の電気代が上がっている理由

そもそも完全にリモートワークをしている人の電気代は、週5日出社するライフスタイルに比べてどれぐらい上がっているのでしょう。

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池田

リモートワークで日中も電気を使う世帯では、1カ月の電気代が約1万5,000円~2万3,000円、電気使用量は500~550kWhになっているのが私の肌感です。

総務省「家計調査」によれば、2019年は1カ月の電気代の平均は3人世帯で約9,700円、4人世帯で約1万1,000円ですから、それと単純に比較しても5,000円~1万2,000円程度高くなっています。

そんなに増えているんですね。使用量が増えただけでなく、電気料金そのものが高騰しているというニュースも耳にします。

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池田

そもそも電気料金は、
・「基本料金」
・「使用した電気の料金」
・「燃料費調達額」
・「再エネ賦課金」
で構成されています。

2022年の春以降、このうち燃料調整費と再エネ賦課金の2つがどんどん値上がりしているのです。

それは、なぜでしょうか?

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池田

まず、日本の発電の7割を占める火力発電の燃料、つまり化石燃料や液化天然ガスの市場価格が、ウクライ情勢の影響もあって高騰していること。

電気料金のうち燃料費調達額は、発電に使う燃料費が市場想定価格より低ければ割引になり、高ければ加算されます。多くの電力会社では、2021年までは燃料調達費は割り引かれていたはずですが、現在は軒並み大幅に加算されているんです。

もう一つの再エネ賦課金についても教えてください。

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池田

「再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)」は、2011年に始まった再生可能エネルギー固定買取制度を支えるための費用です。

この制度は、太陽光、風力、水力などの再生可能エネルギーを電力会社が一定期間、国が定めた価格で買い取ることを義務づけた制度。再生エネルギーは高コストなので、再エネ賦課金はその一部を補填するために回収されています。

再エネ賦課金の対象になるのは、再生エネルギー以外のエネルギー。開始直後は1kwあたり0.2円ほどでしたが、2022年7月現在は3.45円。月に500kw使っている人は、1,500円以上の再エネ賦課金を支払っていることになるのです。

リモートワーク中にできる省エネとは?

電気代だけでなく、電力消費量による環境への負荷は大きくなっているのでしょうか。

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池田

日本でも、ここ何年かで太陽光発電やバイオマス発電など環境にやさしいエネルギーの割合が増え、2021年には全体の22.4%を占めるようにはなっています。

ただ、一方で地球温暖化などにより電気の消費量自体が増えているという現実もあります。日本では、停止していた火力や原子力発電所の再稼働も議論されていますよね。

また、日本の自然エネルギーでもっともシェアの高い太陽光発電が、電気使用量の増える夜間は使えないという課題もあります。

夜間は、火力発電などのエネルギーに依存せざるを得ないのですね。昼間に作った電力を使えないのはなぜですか?

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池田

実は太陽光発電所には作った電気をためておく「蓄電池」の設置が日本ではまだまだ進んでいないからです。蓄電池がついていないと昼間に発電した電気を夜まで貯めておくことができないため、日中は発電量が消費を上回り、夜間は電気が足りないという状況になってしまうのです。

太陽光発電の蓄電池はコストが高いので、今後すぐに整備されていくとは言えないのが現状です。

とはいえ、私たちの健康を守るためにエアコンを使ったりすることはどうしても必要です。リモートワーク中の人ができることはないでしょうか?

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池田

環境のためを考えるなら、節電に勝るものはないと断言できます。とはいえ、生活を変えすぎると続けるのが苦しくなってしまいますので、ぜひ日々、無理のない範囲で省エネをしてみてください。

例えば、
・使っていない電気を消す
・冷蔵庫をなるべく開けっぱなしにしない
・離席するときはパソコンをスリープ状態にする
・エアコンの温度設定に気遣い、必ず部屋のドアを閉めること
などを心がけましょう。

使わない家電のコンセントを抜くと待機電力の節約になると聞きますが、どれくらい効果があるのでしょう?

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池田

正直なところ、一世帯単位では大した効果はないと思います。

でも、この記事を読んでいる人すべてが待機電力の無駄をなくせば、それは大きなインパクトになる。ぜひ力を合わせて環境への負荷を減らしましょう。

電気代を抑えるという視点で、省エネ以外にできる工夫はありますか?

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池田

家電の買い換えを検討しているならば、最新モデルを選ぶほど省エネになり、トータルの電気代も抑えられるはずです。

また、電力プランの見直しが、節約につながる場合もあります。特にオール電化住宅の場合、昼は割高で夜は割安というプランに加入しているケースも多いです。

コロナ禍でライフスタイルが変化した人は、1日のうち使用量が多い時間帯が割安になるプランはないか、電力会社のサイトで確認してみてください。

リモートワーク中心の働き方であれば、1日の電気代が固定のプランのほうが全体では安くなる可能性が高いので、変更をおすすめします。

サステナブルな電力を使うには?

環境への配慮を考えてサステナブルな電力を選択してみたいという人もいるかもしれません。

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池田

火力発電がメインの電力会社から、自然エネルギーを扱う電力会社へ切り替えるのは、環境によく配慮された選択です。

日本では、火力発電で排出されるCO2は全体の40%を占めており、それを少なくできれば必ず地球温暖化に大きなインパクトがあるでしょう。

ハチドリ電力は自然エネルギー100%の電力会社で、使った分の電気代の1%を「再エネ基金」という太陽光発電所の建設資金に回せる仕組みになっています。

つまり、普段通り電力を使うだけで、自然エネルギーの普及を促進できるのです。

電気料金は据え置きのまま、サステナブルな電気を選ぶことはできるのでしょうか?

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池田

戸建てに住んでいるならば、ハチドリソーラーの住宅用太陽光パネルを設置することは解決策の一つだと思います。

これまで、住宅用の太陽光パネルは発電した電気を売る投資目的で注目されてきました。しかし、電気料金が上がっている今、発電した電気は売らずに、自宅でそのまま使うほうが圧倒的にメリットがあります。

例えば今、東京電力の電気代は1kW当たり平均30円ぐらいです。一方、自宅で発電した電気の売却金額は1kW当たり平均17円ほど。発電した電気を使えば、1kW当たり13円生活コストを下げることができるのです。

電力会社から電気を買っているわけではないので、燃料調達費も再エネ賦課金もかかりません。

住宅用太陽光パネルはどんな生活スタイルの人におすすめしたいですか?

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池田

お問い合わせをいただくのは、リモートワークをしている方、お子さんが小さくて親子で家にいる時間が長い方、二世帯住宅など高齢者の方が生活している方、ペットを飼っている方……。

いずれも、昼間の時間帯にエアコンを含む電化製品をよく使う方々です。太陽光パネルは雨や曇りでも発電するので、発電した電力で日中の電力消費を十分にまかなうことができます。

災害時に備えて小さなソーラーパネルを持つ人も増えていると聞きますね。

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池田

実際に、災害時に備えたいというニーズもあり、蓄電池のついたプラン、電気自動車に蓄電するプランが人気です。電気自動車に満タンまで蓄電しておけば、それだけで4~5日は発電しなくても従来通りの生活ができますから。

大きな企業などではなく、世帯という小さな単位で太陽光発電を使うことが、環境にとってどんな意味を持つのでしょうか。

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池田

電力は遠くへ運ぶほどロスが生じます。例えば、東京電力の発電所から電線を通して静岡まで届けるだけで、100あった電力が60~70にまで減ってしまう。一方で、自宅で発電し自宅で使えば、そうした移動の無駄がなく省エネにもなるのです。

それに、住宅用太陽光パネルを持つ世帯数が増えれば、意外に大きなソーシャルインパクトが生まれるんですよ。

1世帯に太陽光パネルを設置すると、毎日平均5kW程度の発電ができます。10世帯になれば50kWという計算ですが、これは小さい高圧発電所ひとつ分の発電量と同じです。さらに100kWを超えれば、大きな高圧発電所ひとつ分になるんです。

大きな太陽光発電所ができるのと同じなのですね。それは確かに大きな一歩です。

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池田

より大きな一歩に変えるために、今後は賃貸住宅でも太陽光パネルが使えるようにしていきたいと思っています。

今ちょうど、太陽光パネル付き賃貸住宅を建設できる法人向けのパッケージを進めているところです。

ほかにも、農作物を育てているハウスのうえで太陽光発電をするといった形で、その発電量を分け合うソーラーシェアリングができないかという話もしています。

将来的には、ヨーロッパで普及している、建物の壁面に設置できるビニールシートのような薄型の太陽光パネルも導入したいです。ガラス張りの高層ビル一面にそれを設置できたらどれだけ発電できるか……。

日本の風景が変わりそうなアイデアです。

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池田

地域や自治体、企業、家庭など、それぞれに合った太陽光発電の形を提案していきたいです。小さな風力発電機を加えるなど、複数の自然エネルギーを掛け合わせれば、持続可能性も上がります。

これからの5年間で、自然エネルギーの割合はもっと増えるはず。僕たちは、日本の屋根から自然エネルギー100%の社会を実現できるよう、これからも取り組んでいきます。

2022年7月取材

取材・執筆=有馬ゆえ
編集=鬼頭佳代/ノオト