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家事アドバイザーに聞く、どんなワークスタイルでも仕事と家事を両立できる「家事の時間割」

出社とリモートワークを融合したハイブリッドワーク。予定が不規則になりがちな生活の中では、家事をちゃんとこなすのは何とも難しいものです。

それでも、家でも気持ちよく仕事に打ち込みたいし、できれば家事も疎かにしたくない!

そんな方の願いを実現できる「仕事と家事の両立法」を、家事アドバイザーの矢野きくのさんにうかがいました。

矢野さんは会社勤務の経験があり、家事アドバイザーになってからは、コロナ前はハイブリットワークを、コロナ以降はフルリモートワークを経験。

今回は、そんな矢野さんの実体験から生まれた、どんなワークスタイルでも仕事と家事を両立できる「家事の時間割」の作り方を紹介します。

―矢野きくよ(やの・きくよ)
家事アドバイザー、節約アドバイザー。女性専門のキャリアコンサルタントを経て、「女性の仕事と家事の両立」を目指して現職に就く。家事の効率化や省エネをテーマに、各メディアに出演している。

家事の大まかな時間割をつくる

出社とリモートワークを組み合わせるハイブリッドワークになってから、突発的に予定が入ることも増えました。生活リズムが変わる中で、家事をうまく回すにはどうすればいいでしょうか?

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矢野

まず1日と1週間の中で大まかな時間割を決めて、この時間は仕事、この時間は家事と分けることがベストです。

時間割の決め方は、どんなパターンで働いているかによって違います。仕事の予定に規則性がある方は、月曜日から金曜日までの家事と仕事の予定を立てるとよいでしょう。

逆に、仕事の予定に規則性がない方もいますよね。

私も家事アドバイザーとして独立してからは、テレビのロケで夜遅くなったり、近所の喫茶店へ取材を行ったりするなど、スケジュールが不規則になりました。

そこで「在宅」「終日外」「半日中」の3パターンで時間割を作り、今日はこれ、今日はこれみたいな感じでやっていましたね。

編集部で作成した、パターンごとの時間割の一例。3パターンの生活スタイルを想定して、家事と仕事で時間分けをしていく。

矢野

次は、家事を3種類に分けて書き出し、時間割に組み込みます。

1つ目の家事は、毎日やらなくてはいけない家事です。例えば料理。家族構成や生活パターンによっては、洗濯もここに入ります。

2つ目は、2日に1回とか1週間に1回くらいやればいい家事です。細かい場所の掃除などですね。

3つ目は、時間や天気に左右されるもので、1つ目と2つ目のグループに書いたものから抽出します。晴れた午前中に洗濯物を干したい場合や買い物の予定もここです。

書き出したそれぞれの家事にかかるだいたいの時間を予測して、それらを時間割に当てはめます。

どのように時間割として組み込むと効果的ですか?

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矢野

家事はタスクが尽きませんし、洗濯や買い物だと時間が限定されてしまうので、私は家事の枠を先に決めて時間割を作っています。

例えば、家族を送り出した後の9〜10時は、毎日やる家事と週に数回する家事をする枠。洗濯は朝イチにしたいのでここで行います。

10〜12時は仕事で、1時間は休憩して仕事再開です。午後がずっと仕事なら、途中で「休憩+家事」の時間をとるのがおすすめです。メリハリがつきますよ。

確かに、在宅で仕事と家事のメリハリをつけるのはなかなか難しいと感じています。

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矢野

実際のところ、出社するよりも1人でリモートワークをした方が仕事効率はいいはずなんです。出社していると、他のスタッフから話しかけられたり、電話がかかってきたりするじゃないですか。

それがないリモートワークでは、本来8時間かかるものを6時間ぐらいで完了できます。そうできるように時間割を作ることで、本当に効率よくやれるようになれます。

そのためには、10時始まり5時終わりぐらいのイメージで、出社する時よりも短めでスケジュールを組んでいくと良いですよ。

私もそうなのですが、夕飯を準備して食べて、その後にずっと仕事をしていることもあります。これを野放しにしていると、際限なく仕事をすることになります。

本当に仕事をしなければならないときでなければ、夜は「仕事をしない時間」にしておくのが良いでしょう。その時間を家事に充てることができますからね。

5分で1つの家事が終わる環境を作る

矢野

あと、時間割を作るときに意識していただきたいのが、5分でできる家事をリストアップする「5分家事のリスト」です。どんな生活パターンを過ごしていても、どこかのタイミングでサッと家事ができるようになります。

5分って意識しないとぼーっとしてしまう時間ですが、5分でやれることがあると思うと結構動けますよね。

一方で、やれることをリスト化していないと、「何をしようか」と考えているうちに過ぎてしまう時間でもあります。5分家事のリストは、どんなパターンで働いている人にもおすすめします。

5分家事には、具体的にどんなものがありますか?

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矢野

実は、ほとんどの家事は5分で終わらせることができるんです。洗面台の掃除でも、なんでも。発想を変えて、1つの家事が5分で終わる環境を作るといいですよ。

例えば、歯ブラシなどを吸盤やマグネットなどで壁面に貼り付けておきます。すると洗面台の上には何もない状態になるので、1分もかからず拭き掃除が終わりますよね。

また、「5分でできること」を目安に家事を区切ることも有効です。例えば、お風呂掃除なら「浴槽の中」「床の奥側だけ」という感じで分けてみると、それぞれ5分で済ませられます。

とにかく5分で区切ることが大事なのですね。

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矢野

そうなんです。5分以上やってしまうと他のスケジュールに影響してしまうので、意識的に短時間で区切る。

例えば、私は家でもスマートフォンを身に着けていて、Siriに5分後にアラームを鳴らしてくれるように頼んでいます。これなら、手を使わなくてもタイマーをセットできます。

翌日のToDoリストで急な予定変更にも柔軟に対応

とはいえ、突発的に予定変更がある場合はスケジュールが狂ってしまいそうです。こうしたケースはどうすれば良いでしょうか?

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矢野

予定が狂ってしまった時には、寝る前に翌日のスケジュールとToDoを書き出すと良いですよ。私の場合、翌日の天気も踏まえて、「この時間帯はこの家事」というふうに入れています。

その時に、今日予定が狂ってできなかったタスクを、明日のToDoリストにさも何もなかったかのように入れ直してあげます。

何もなかったかのようにリスケジュールをするのですね!

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矢野

はい。そうすれば気分的にはさほど圧迫感もなく、かつやり残しもなくなります。

家事には、本当にその日のうちにやらなければいけない締め切りはありません。例えば、3日とか1週間ずれたとしても、やれていればいいんです。

家事のToDoを書き出すことは、仕事の効率化にもつながりそうですね。

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矢野

そうなんです。書き出して目に見える状態にしておくことで、自分への指示書になります。

指示書があると、「次はこれ」という感じで体も覚えていきますし、達成感も得られます。この意味で仕事でも家事でも作業は可視化しておくことが大切です。

とはいえ、メモをするのが得意な人もいれば、日常的にあまりメモをする癖がない人もいますよね。何かメモをつづけるコツはありませんか?

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矢野

まずはいつでもメモがとれることが大事なので、ポケットに入るサイズのメモ帳を常備するのがおすすめです。

ただ小さな手帳は表紙が柔らかいものが多く、立って書くのがすごく大変です。例えば、無印良品の小さく表紙が硬いタイプのメモなら立っていても書けますよ。

手書きがわずらわしいなら、音声でメモやToDoリストを作れるアプリもありますね。このようにメモすることのハードルを物理的に下げてみてください。書き出せば頭の中が整理され、やるべきことが明確になるので効率が上がります。

頭の中がすっきりしてないと、家の中も整わないってことですね。

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矢野

本当にそうなんですよ。頭の中を整理さえすれば、やるべきことが可視化されてどんどんこなせるようになるんですね。

今まで放ったらかしにしていた家事を週に一度の家事に組み込むようになったりして、だんだん効率化に向かっていきます。

まずは自分の身の回りにある家事の書き出しですね!

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矢野

はい。まずは、すでに話したように家事を以下の3パターンに分けてリストにするのが大切です。それをやらないと、本当に放ったらかしてしまう家事が出てきます。毎日やらなければいけない家事

  1. 2日〜1週間に1回必要な家事
  2. 時間や天気に左右される家事。
  3. 1と2から抽出する。

抜けやすいのは掃除ですね。下手をしたら、家の中に1年間も掃除をしていない場所もありますよね。リスト化しておくとやるべきことが見えるので、仕事をしながらでもなあなあにならず、実行できるようになります。

この日の家事は、夕方に10分だけ。「5分家事のリスト」から2つやろう、という感じで枠を取り、家事サイクルを回していってください。

仕事のパターンに合わせて1週間の大まかな家事スケジュールを立てること、家事を3つに分類してスケジュールに割り振ること、1つの家事が5分で終わるように工夫をして少しずつこなすこと。

これらを行うことで、働きながらでも効率よく家事ができることがよく分かりました。まずはやるべき家事を書き出すところから始めようと思います!

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取材:波多野友子
執筆:山縣綾子
編集:桒田萌(ノオト)