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モノが少ないと効率が上がる? 明日から活かせる時間管理術、ホームオフィスのはじめ方

働く場所を茶室とコックピットに ホームオフィスの環境づくり

土橋さんは現在、ホームオフィスで仕事をしています。そこでこだわっているのは下記の3点です。

【ホームオフィスで意識していること】
1:デスクの茶室化
2:デスクのコックピット化
3:ワークチェア

1:デスクの茶室化

土橋さんのホームオフィス

茶室といっても、掛け軸や畳を使うわけではありません。そもそも茶室は、お茶を楽しむためだけの空間。この考え方をオフィスに応用すると、「一つの仕事しかできない空間」となります。

こちらが土橋さんのデスク。最小限のパソコンとペンがあるだけで、余白がたっぷりあります。

「余白の効果は、皆さんも気づいているのではないでしょうか。自分の机が書類だらけになっている時、ちょっと集中したいから会議室にこもる。大きな机の上に、いま取り組んでいる書類だけを置いて仕事をすると、意外にはかどった……。そんな経験がありますよね。それは、余計なものがなく必要な書類だけだからです」(土橋)

目の前の仕事だけに集中できる空間づくり、これを土橋さんは「茶室化」と表現しました。パソコンの画面もスッキリしています。

左側には、木のトレイにペンが3本だけ置いてあります。これもちょっとしたこだわりで、一つの器の中に入れるだけで整っている気がするのです。

デスクマットを敷くとリビングのテーブルも仕事空間に

そうは言っても自宅に仕事専用のスペースが無く、リモートワークにより、リビングのテーブルで仕事している人も多いのではないでしょうか。しかし、もともとリビングは暮らしの空間であり、仕事モードに切り替える必要があります。そこで、デスクマットを敷いてみる。そうすると、自分の陣地のようになり、簡易的な仕事空間をつくることができます。

2:デスクのコックピット化

机の上には最低限のものしか置かず、余白をたっぷり設けています。その少ない物を適切に配置することが「コックピット化」です。

飛行機の操縦席には、たくさんの計器やレバーなどがあり、パイロットが自然に操作できる場所に配置されています。それを机の上に応用しました。基本はパソコンが正面にあって、左側にスケジュールをまとめています。

「パソコン仕事は、車の運転に似ています。運転中はハンドルを握って正面を向き、ときおり左側のカーナビを見る。私にとって、それが自然な動きなのです。このように自分の中にすっかり慣れ親しんだ目や手の動きの先に物を配置すると良いでしょう」(土橋)

コックピット化で最近、新たに取り入れたものが2つあります。1つは傾斜台。漫画家さんの仕事場で見たものをマネして、自作したものです。ただ、斜めにするとノートなどがすべり落ちてしまうので、デスクマットを敷いています。

もう1つは、机の後ろ側に置いてあるイーゼル。さっとアイデアを書いたり、デザイン案を立てかけたりするなど、第2の机のような役割を果たしています。

3:ワークチェア

ホームオフィスで、土橋さんが最もこだわっているのがワークチェアです。その理由は「姿勢」にあるそう。

「仕事はアウトプットとインプットの2つに集約できます。例えば、企画書を作るのはアウトプット、メールや資料を読むのはインプット。この2つには適切な姿勢があると思っているんです。もし情報に重力があるとしたら? メールや原稿など頭から出すアウトプットは前傾姿勢、資料を読むインプットは後傾姿勢にする方が情報が流れやすくなると思うんです」(土橋)

後傾姿勢をとりやすいのもオフィスチェアの利点だそう。

「中途半端」を許せるようになった 時間管理のコ

ホームオフィスでは、「自分を律すること」が求められます。家はオン・オフの区切りが付けづらい場所。気合いだけで切り替えようと思っても難しいでしょう。そこで、適切な枠組みを自分にインストールしなければなりません。

これは土橋さんが考案した「時計式ToDo管理ふせん」。AMとPM、2つの時計に1日のやることを記入して管理します。

一日の中には、睡眠や食事、お風呂など欠かせない予定があります。注目すべきは空白の部分。1日24時間といっても、自由になる時間は意外と少ないのです。この余白に仕事や趣味などを埋め、時間管理をしていきます。

多くの人がやっている仕事管理はToDoリストでしょう。ToDoリストは「オープンリスト」なので、紙の余白がある限りいくらでも書けてしまいます。

一方、時計式は24時間の枠組みが決まっている「クローズドリスト」。時間に限りがあるため、やりたいことが入りきらない場合もあります。24時間を広げることはできないので、何かを諦めて埋めていくしかありません。

「ToDoリストだと、余白があるから書いちゃうんですよね。特に朝は、1日が無限に続いているように思い、タスクを多く入れてしまう。それが自分を忙しくしてしまうのです。でも時計式に書けば、無理のないスケジュールになります」(土橋)

とはいえ、実際に運用していくと迷うシーンも。例えば11時までの予定が終わらなかった場合、延長してその仕事をやり続けるか、強制終了するか。

「私の場合は、中途半端であっても終わりにします。中途半端な仕事を許せるようになったのは、かなり大きな変化でしたね」(土橋)

『知的生産の技術』(梅棹忠夫・著)という本の中に、「自分というものは、時間とともにたちまち『他人』になってしまう」という一節があります。さっきは思いつかなかったのに、ふとアイデアがひらめくこともあるでしょう。それは自分が他人になっているからだといえます。

上の画像は、土橋さんがWebで連載している記事の工程表です。縦が日付、横は1本の原稿を書くために必要なタスクを15分割しています。

「以前は、1本記事を書くのに1日8時間かけても終わりませんでした。でも今は、早ければ3~4時間くらい。その日はいくら中途半端でも仕事を一旦やめて次の日、自分が他人になれば、別な視点で考えられるのです。今日の中途半端は明日の自分によくしてもらおうと、中途半端を許せるようになったことで、仕事のストレスは大きく軽減されましたね」(土橋)

タスクを分割する際に必要なのは、着手を早くすること。締め切りより10日前に着手すれば、最初はダメなアイデアでも少しずつ改良していけます。その繰り返しによって良いアウトプットが生まれるのです。

時計式ToDo管理ふせんはパソコンの左下に貼り、予定が終わったらグレーで塗ります。

「最近は何もしない休憩時間を取り入れています。仕事は結局、アウトプットとインプットのどちらかですよね。もし休んでいるときに本を読むと、インプットすることになる。ただボーっとする時間を持つのも意外に大事かな、と」(土橋)