リモートワークでのプロジェクト管理・時間管理に おすすめツール7選
昨年はじまったパンデミックに伴い、世界中の多くの人々が慣れない状況への順応を余儀なくされている。オフィス以外の遠隔の場所で作業を行うリモートワークもその一つである。多くの企業が様々な形でリモートワークへの移行を進めているなか、直接顔をあわせることのない業務は、生産性や効率面から絶えず課題とされている。今回はこれらの課題を乗り越えるための、リモートワークを効率化させる便利なツールを紹介していく。
リモートへの移行をいち早く実行している企業は、どのようなポリシーを掲げ、移行に取り組んでいるのだろうか。Twitter社は2020年5月、希望する社員に対しパンデミック収束後も原則「永久」に完全リモートでの業務を許可することを発表し話題となった。同様に、Dropbox社も昨年10月には社全体でバーチャルファーストに移ることを定め、現在までに複数のオフィスがすでにシャットダウンされている。
一方で、富士通などの日本企業も「ワークライフプログラム」と呼ばれる取り組みを開始しており、全社員に対し、今後自由な時間、および自宅を含む自由な場所での勤務を認める方針を固めている。
リモートに欠かせないオンライン・ビジネスツール
以下、難しいリモートワークを効率化するために必要不可欠なツールを、プロジェクト管理、時間管理、またコミュニケーションなどのジャンルごとに比較する形で紹介していく。
プロジェクトマネジメントソフトウェア
プロジェクトの一括管理 ProofHub
アメリカのProofHubは、プロジェクトを一括管理することのできる非常に優れた管理ソフトウェアである。仕事/タスクの割り当てから、ファイルの作成、校正、作業時間の記録、内蔵のチャットでのリアルタイムで意思疎通などのすべてが可能である。
ProofHubは秘匿性の解消に非常に優れており、チームに参加しているクライアントは進捗状況を逐一確認、および直接承認やフィードバックを送ることができる。また、マネージャーは、自動で作成されるアジェンダやチャートを活用することで、全体で物事がどのように進行しているかを明確に把握することができる。
現在、ProofHubはネットフリックスやNASA、Pinterestなどの企業に使用されており、今年3月には中国語バージョンが実装されたことから、日本でのサービス開始への期待も高まる。
Googleも使用しているClickUp
2016年にサービスを開始し、多数の企業に重宝されている、トップクラスの管理ツール。ドキュメント、リマインダー、目標、カレンダー、さらに受信箱などの機能が搭載されており、遠隔でのプロジェクトの一括管理を効率化してくれる。あらゆる規模や業界のチームのために作られたClickUpは、非常に広い範囲でのカスタマイズが可能である。個人、またプロジェクトに最適なプラットフォームを作成し、チーム内で共有し、使用することができる。カスタマーサービスが非常に充実しており、二十四時間対応や、オンデマンドでのインストラクション、更にウェブセミナーで直接指導してくれる。使用企業として、Google、Nike、Uberなどがある。
ProofHub vs. ClickUp どちらがオススメ?
両者とも優れたプロジェクトマネジメント・ツールとして紹介したが、実際にサービスにどのような違いがあるのだろうか。両者ともほぼ同様の機能を搭載しているが、ProofHubは非常に直感的で初見でも使いやすいデザインが特徴で、タスクやスケジュールの可視化に優れている。値段に関して、使用人数に関わらず一律約100ドル (日本円で約一万円)であるため、大人数での使用を目的としている方に適していると言える。
一方でClickUpは基本無料での使用が可能であるという点でProofHubより優れているといえる。柔軟なパーソナライズが可能な仕様は、時に使い方が分かりづらいという欠点もあるものの、ウェビナーやオンラインでのインストラクションなどの手厚いカスタマーサービスは、ユーザーから高く評価されている。どちらも等しく優秀でリモートワークに欠かせないツールであるが、どちらかに決める際は予算や使用人数などがファクターとなるだろう。
時間管理ツール
従業員の作業時間を一括管理するTime Doctor
2012年にアメリカで開発されたTime Doctorは、Verizonなどの大企業だけでなく、中小企業、フリーランサーからも幅広く使用されているタイムトラッキングツールだ。作業時間の管理や計算、ユーザーの労働時間に基づいた給与明細の発行などを自動で行ってくれるため、限られた時間をより有効に使うことが可能になる。
また、同ツールは従業員のモニタリングにも優れており、スクリーンモニタリング機能はユーザーの画面のスクリーンショットを定期的に撮影しマネージャーに送信する。更に、チャットや会議、通話、インターネットに費やした時間などもトラックして計算し、それらの情報も細かく給与明細に反映される。Time DoctorはGoogle Appsやslackなどと統合しているため、幅広い作業をツール内で完結させることができる。
プロジェクトの管理から採用までをToggl 一つで
もう1つの注目すべき時間管理ツール、Togglをご紹介する。大きく分けて三つある機能は、プラン、トラック、そしてハイア(採用)である。プラン機能は極めてシンプルなデザインのカレンダーで、複雑なプロジェクトの秒刻みのスケジュールもわかりやすく整理することができる。
更に、トラック機能は、カレンダー内でのリマインダーやタイマーなどをタスクごとに詳細に設定することができる。また、同機能では端末上で十秒以上使用したアプリケーションやウェブサイトを自動で追跡し記録、レポートにまとめてくれる。三つ目のハイア機能は求める役職に最適なテストを自ら作成することができ、スコアに基づいて一度に多数の応募者をふるいにかけることができる。AmazonやUber、Linkedinなどの企業に使用されている。
Time Doctor とToggl、どちらがオススメ?
数あるタイムトラッキングツールの中でも1位2位を争うこれらの2つ。具体的にどのような違いがあるのかを明らかにしていきたい。
まず特筆すべきなのは、遊休時間、アイドルタイムのトラックの仕方の違いだ。どちらも同様に、一定時間作業の停止を確認した場合、どのくらいの時間ユーザーが休んでいたかを記したポップアップが表示される。Time Doctorでは休憩時間の継続、またはトラックを終了し作業を再開するという選択肢しかないが、Togglの場合、誰でもラックされた時間を削除、編集することができる。そのため、プライバシーを保護の面はあるものの、同時に不正な時間報告が行われる可能性が存在する。
また、コストではどうだろう。Time Doctorには、いずれも14日間の無料トライアルが伴った、ニーズに合わせた数種類の有料プランがある。(トライアルを始める際、クレジットカードの登録の必要なし)ベーシックプランは月額8ドル、グレードの一番高いプレミアムプランは月額24ドルで使用できる。Togglの場合、3つの有料オプションと、30日間の無料トライアル(クレジットカードが必要)があり、基本プランは9ドル、ハイグレードのプレミアムは18ドルだ。一方こちらは機能的制限のない無料プランも存在するが、メンバー数は五人までとなっている。少人数での使用を目的としている方にはTogglの方が適していると言えるだろう。
コミュニケーションツール
一億四千万人のユーザーを誇るMicrosoft Teams
Microsoft社がコミュニケーションおよびコラボレーションツールとして開発し、言わずと知れた代表的なオンライン・コミュニケーションツール。1対1のメッセージから、グループチャット、ビデオ会議まで、ほぼ全ての可能なコミュニケーションの手段を提供している。更に、Microsoft365やOffice365などへのシームレスなアクセスも可能なことから、コミュニケーションのみならず、リモートワークに必要な様々なツールをこれ一つで完結させることができる。まさに、オールインワンツールだと言える。
シンプルかつ機能性の高いSlack
2009年に開発され、世界で広く使用されてきた、もう一つの必要不可欠なコミュニケーションツールである。シンプルなデザイン、および無駄のない機能はSlackの高い人気の一つである。Slackでは、生産的なチームワークを実現するために、チームが共同作業を行う専用スペースとして機能するチャンネルを作成することができる。
また、メール機能を通して行われた会話はきちんと整理され、必要な時に素早いアクセスが可能であったり、機能だけでなく、情報も非常にオーガナイズされている。Slackは、Google DriveやSalesforce Chatterなどの他のサードパーティアプリとも連携している。AirbnbやPinterestなどの企業が実際にSlackを使用している。
お得なMicrosoft Teams vs. 使いやすいSlack
これらの二つのツールはどちらも等しくコミュニケーションに特化しており、リモートワークに欠かせない存在であるが、実際にはどのような細かい違いがあるのか。この2つのアプリの最大の違いは、使いやすさにあるだろう。実際、二つのツールの初期設定にユーザーが費やす時間を比べると、Slackは十分以内なのに対し、Microsoft Teamsでは一時間ほどかかってしまう。
更に、ユーザーを招待する場合も、一定の時間と労力を求められるが、複雑な設定や仕様は、主に大企業向けに設計されているからである。また、Teamsは他のMicrosoft系アプリケーションとの統合性に優れているが、統合機能を重視するのであれば、会社を問わず多種多様なツールとの統合が可能なSlackに軍配が上がる。
金銭面ではどうだろう。Teamsが入っている最も安いOffice 365プランは Business Basicと呼ばれ、1ユーザーあたり月額540円で、年間プランを購入しないとスタートできない。これは、Slackの一番安いプラン(Standard)の850円よりもかなり安い。加えて、Microsoft Teamsに500円使うと、Office 365へのアクセスも可能になることを考えると、この価格はかなり魅力的である。
Krisp
遠隔でのコミュニケーションに特化した便利ツールとして、もう一つKrispを紹介したい。こちらはAIを搭載したノイズキャンセリングソフトウェアで、通話中のバックグラウンドノイズを最小に抑えてくれる。ほとんどすべてのノイズを認識して通させないため、ユーザーはクリアな音声を相手に届けることができる。
公式サイトで聞くことのできるデモンストレーションがKrispmの AIの性能を物語っており、会話の効率化やプライバシーの保護にも役に立つ優れものだ。Krispは、マイク、ヘッドフォン、スピーカーに対応しており、オーディオ/ビデオコミュニケーションだけに頼って仕事を共同で行うリモートチームに最適なアプリである。Zoom、Microsoft Teams、Discordなど800以上のツールと連携可能だ。
困難な時代を少しでも過ごしやすく
慣れないリモートワークを長時間続けることは、チームにとっても個人にとっても非常に大きな挑戦である。そんな中で私たちは、リモートライフを快適にし、同時に生産性を高めることが出来るツールを見つけることがポイントとなる。この記事で紹介したリモートワークツールが、在宅勤務をはじめリモートワーカーとして最高のパフォーマンスを発揮するのに役立つだろう。
2021年6月1日更新
テキスト:松尾舞姫