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チームワーク・コラボレーションを高めるセンターオフィスの最先端 ― ユニクロ / エイベックス

この記事は、ビジネス誌「WORK MILL with ForbesJAPAN ISSUE02 THE DANISH WAY デンマーク 「働く」のユートピアを求めて」(2018/3)からの転載です。


ユニクロ

製造小売業から、“情報製造小売業”へ-ユニクロのCEO柳井正は新オフィスの開設時にそう宣言した。 東京・有明の地からユニクロの服づくり、そして働き方はどう変わるのか。

アンティーク家具がちりばめられた、しゃれた書店のような空間。ここは、2017年3月に新設されたユニクロ有明オフィス内にある「リーディング ルーム」と呼ばれる場所だ。リーディングルームは、ワンフロアで構成される約5,000坪もの広大なオフィスの中心部、約1,100人の社員たちが頻繁に往来する場所に位置する。

その理由は、ユニクロが掲げるサプライチェーン改革を実現させるために必要な“コンカレントワーク”のために重要な役割を担っているからである。コンカレントワークとは、各専門部署から人を集めた小さなチームを形成し、よりスピーディーに仕事を進める働き方のこと。各部署内にとどまりがちな情報の共有をシームレスに行うことが目的である。オフィス全体を見渡すと、「ポーチ」と呼ばれる人のたまり場に気づく。

社員同士の接点が増えるS字状の長い通路や、ワークスペースの出入り口に設置され、会議や雑談など社員が自由に使う。チーム内のみならず、社内全体の情報共有を促すゾーニングとなっている。現場のコンカレントワークを陰で支えているのは、執行役員たちだ。各チームの情報はすべて執行役員たちに集約され、ほかのチームに共有すべきアイデアや課題があれば現場におろしていく。

情報の流動性を高くすることで服づくり改革に挑んでいることがうかがえる。「商品企画から物流まで、アパレルにかかわる工程のすべてをこの有明オフィスに集約させることで、迅速かつ正確に顧客のニーズを満たすことを目指す」と広報担当者は語る。コンカレントワークは会社が目指す理想から逆算された働き方。それを実現するための組織・オフィスのデザインがなされているのだ。

エイベックス

2017年12月、エイベックスの新社屋が南青山に完成した。 エイベックスがオフィスを通じて提案する、新しい働き方とは。

激変するエンタメ業界で非連続な成長を遂げ、イノベーションを起こし続ける会社でありたい—その考えのもと、新たなタグライン「Really! Mad+Pure」を策定し、社内の構造改革に乗り出したエイベックス。同社は社 内の構造だけでなく、“働き方”の改革にも着手。2017年12月、南青山に新社屋をオープンした。新社屋の設計にあたって、強く意識したのは2つのC。「Communication」と「Collaboration」だ。

設計に携わった、エイベックスのグループ執行役員グループ戦略室長の加藤信介はこう語る。「いろんな才能がかけ合わさることでイノベーションが起きやすくなる。だからこそ社員同士のコミュニケーション、外部の人とのコラボレーションを最も重視してオフィスを設計しました」

アメリカ西海岸をイメージした17階の社員食堂「THE CANTEEN」は社員同士の交流はもちろんのこと、外部の人との打ち合わせにも使われている。また、執務エリアはフリーアドレス制を導入。以前は同じアーティストの担当でも、週に1度の定例会でしか顔を合わさなかったが、いまでは定例会後に一緒に作業をするなど、自然なコミュニケーションも生まれている。

2階のコワーキングスペース「avex EYE」はエイベックスとのシナジーが期待できる企業や個人に開放。コラボレーションを促進する。もちろん、機会を提供するだけではイノベーションは生まれない。アイデアの種をいかに事業へと昇華させるか。それがイノベーションを起こすポイントになる。「今後はアイデアに対して、ヒト・モノ・ カネを投入する仕組みをつくっていく。最終的にはオフィス自体がひとつのコミュニティになったらいいですね」

2020年8月26日更新
取材月:2017年1月

テキスト:石原龍太郎、WORK MILL
写真:金東奎(ナカサアンドパートナーズ)
※『WORK MILL with ForbesJAPAN ISSUE02 THE DANISH WAY デンマーク 「働く」のユートピアを求めて』より転載