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慣れない在宅勤務 どんなことが起こっているのか緊急調査 ー 環境、仕事スイッチ編

新型コロナウイルス感染症対策がとられる中、外出自粛、テレワーク(在宅勤務) の徹底が要請されています。テレワーク採用企業が13.9%(2017 年、総務省情報通信白書)であった状況を踏まえると、多くの方が慣れない環境で働かざるを得ない事態になっているのではないでしょうか。 

オカムラは2017 年のテレワークデイズ参加を機に、テレワークを実施した際に起こる様々な事象を『柔軟な働き方の効果検証報告書』として公開しています。今回は、新型コロナ感染症対策がとられる中で起きていることをお伝えすることを目的におこなった調査の結果を、3回に分けてお届けします。

今回のテレワークの3つの特徴

新型コロナウイルス感染症対策として実施されているテレワーク(在宅勤務)には以下の3つの特徴があります。

・自主的ではなく強制的な実施
本来のテレワークは効率的に、健康に働くための手法のひとつであり、個人がオフィス以外の働く場所を選択して働くことを言います。しかし、今回は外出、出勤の自粛に基づいて本人の意図と関係なくおこなわれています。また、多くの場合「テレワーク=在宅勤務」という認識でおこなわれているのも特徴です。本来のテレワークはシェアオフィスや社内他拠点なども活用して行われます。

・家族が在宅している状態で働く
同居している家族がいる場合、その家族も自粛要請を受けて在宅であることが多くなっているのが今回の事態の特徴です。在宅している家族も在宅勤務をしていたりと、あまり今まで見られなかった光景が多くの家庭で起きているのではないでしょうか。家族と働く、という新しい状況が起こっています。

・子どもが在宅している状態で働く
通常であれば子どもは保育園や学童保育に通っていて、看病を伴う在宅勤務以外の場合にはそばにいることはありません。しかし、今回は臨時休校要請を受けて元気な子どもが外に出られない状況で在宅するという状況が起こってきています。子どもとの距離をどう保つか、育児や教育とどう両立させるかという今まで経験しなかった課題が発生しています。

こうした特徴を踏まえながら、初回は在宅勤務をしなければいけない状況の中、どんな環境で働いているのか、気分転換や切り替えについてご紹介します。

リビングやダイニングの一角で働いている人が4割以上

「働く環境」について聞いてみたところ、4割以上の人がリビングやダイニングの一角を使って働くと答えています(下図)。書斎や寝室など個室にこもって働けている人は3割程度です。この数字から見ると自分専用の仕事空間が持てるということはとても恵まれた状態であると言えそうです。

働くための環境を整えている人は5割以上

今回は1月末くらいからじわじわと危機感が高まってくる状況でしたが、「在宅勤務に向けて働く環境を整えていたか」についても聞いてみました。「今回の事態にあわせて整えた」と答えた人はわずか7%弱にとどまりましたが、全体を見てみると半数以上の人が何らかの働くための環境を整えていたことがわかります(下図)。

一方で45%くらいの人は働くための環境が整わない状態で在宅勤務をしていることがわかります。そのうち4割(全体の18%)の人は環境が整っていないために仕事に支障をきたしています。今回は災害ということで具体的な在宅のイメージを描きにくかったかもしれませんが、結果的に在宅勤務は長期化しており、業務が円滑におこなえているか心配です。

7割弱の人が毎日片づけをしている

環境の話と少し離れてしまいますが、在宅勤務をする際に毎日きちんと仕事の道具を片付けているのか気になりませんか。今回はそういった「在宅勤務の習慣」についても聞いてみました。

結果としては7割弱の人が「毎日綺麗に片付ける」と答えています(下図)。確かにリビングやダイニングの一角を使って働いていると、ご飯を食べるとき、新聞を広げるときなどに片付けることが考えられますが、7割という割合は「リビング、ダイニングの一角を仕事用に設えて働く」と答えた人の割合(45%)よりも多くなっています。ということは書斎や寝室といった個室を利用して働いている人であっても多くの人が毎日しっかり片付けて仕事を終わらせているということになります。

こうした習慣はよくフリーアドレス時のクリアデスクについて議論するときに話題になります。「クリアデスクは面倒だ」「結局片付けなくなって固定席化してしまう」といったネガティブな評価をいただくことが多いのですが、7割以上の人が指示されなくても毎日綺麗に片付けているというのであれば、クリアデスクはそんなに困難ではないかもしれません。

気分転換は圧倒的に飲食

次に環境面だけでなく、「仕事をしているときのメリハリ」についてみていきましょう。オカムラでは長年、在宅勤務の検証をおこなってきました。その中で、在宅勤務は集中して個人作業を行うことができる一方、集中しすぎて長時間勤務になったり、疲れてしまったりという声が多く聞かれました。今回、多くの方が在宅をしなければいけない中で、どのように気分転換をしているかを聞いてみました。

結果としては約8割の人が「お茶を飲む、間食をとる」ことによって気分転換をしていると答えています(下図)。次点の「テレビ・ラジオなど公共放送を視聴する」が35%弱であることを見てみても、圧倒的に気分転換の手法として用いられていることがわかります。また、3位の「家事をする」を含めても、上位3つはオフィスではサボっていると感じられて、できないことがあげられていることがわかります。この辺りは在宅勤務の自由度、メリットが色濃くあらわれていると言えそうです。

仕事スイッチを意識しているのは約半数

在宅勤務においては、多くの場合仕事を始めるタイミング、終わらせるタイミングを自分で設定しなければいけません。そういったいわば「仕事スイッチ」的な行為を各人が持っているのかを聞いてみました。

結果としては半数弱(46%)の人が「仕事スイッチ」を意識して特定の行動をとっていると答えました(下図)。2人にひとりは「よし、仕事に取り掛かるぞ」と気合を入れる瞬間を設けているということです。

これについては「どんな行為がスイッチになりうるのか」を知るために、自由記述で教えてもらいました。仕事をするということで当然「PCを開く」といった作業には欠かせない行動をとることが多いのは想像できたのですが、同じ割合で「着替える」という人が一定数いました(下図)。中には「仕事用の服を買いました」とか「身だしなみをきちっとする」「パリッとした服に着替える」と部屋着ではなく、仕事に行くのと変わらない服に着替えている人もいました。

在宅勤務は会社の人から自分の働いている姿を見られることがないので、比較的ラフな格好で働くことができます。極端に言ってしまえばパジャマのまま働くこともできるわけです。そんな中でもきちんと身なりを整えてから働くという人が多かったことは新鮮な発見です。

次いで多かったのは音環境を整えている人たちです。この中には2タイプの人がいて、「耳栓をする」「テレビを切る」といった無駄な音をシャットアウトしようとする人と、「カフェのような音楽をかける」「イヤフォンをして好みの音楽をかける」といった快適な音環境を実現しようとする人です。いずれにしても、聴覚情報が仕事に集中しよう、仕事を始めようとしているときに重要だと考えている人が多いということがわかります。

工夫を見つけ出していく機会に

今回の新型コロナウイルス感染症対策としての在宅勤務は、決して望んでおこなわれるものではありません。実際、在宅勤務を体験してみると、いろいろと不具合が出てくることでしょう。しかし、在宅勤務を長期間体験するなんて、あまりない機会であるのも確かです。快適に、そして効率的に在宅勤務をおこなうための工夫もその中から多く得られるはず。

この事態が収束した後に、みなさんが在宅勤務マスターになっていることを願います。

■調査概要
調査期間:2020年4 月5 日~8日
調査方法:Web アンケート
回答者 :オカムラ社員 162 名(デザイナー、研究職、コンサルタント、事務職など)
集計方法:単純集計

2020年4月21日更新

テキスト: 池田晃一(株式会社オカムラ)
調査:オカムラ ワークデザイン研究所 2020年
データ参照元:新型コロナウイルス感染症対策としての在宅勤務調査 速報版