青山学院未来共創センター「taaaaarp」にWORK MILLが伴走。心地よく共創できる関係をどうつくる?
2025年4月に開設された“つながりを生む、共創を支える”ための組織「青山学院未来共創センター」。その中心拠点が青山学院の敷地内にある『taaaaarp(タープ)』と名付けられたスペースです。
実は、WORK MILLチームは2025年から『taaaaarp(タープ)』の空間づくりの面から、青山学院未来共創センターが目指す共創の形を実現するため伴走を続けています。
なぜWORK MILLに声をかけてくださったのか、ともに歩んだことで生まれた気づきについて、関係者4名に話を聞きました。当時を振り返りながら、これからオープンする空間への想いを伺います。
taaaaarpとWORK MILL、目指す「共創」のあり方が重なった

読者の中には、そもそも「WORK MILLチームが他の会社・組織の共創のお手伝いをしていること」を知らない方もいらっしゃるかと思います。
WORK MILLが、青山学院未来共創センターの共創活動に関わることになった経緯を教えてください。


宮野
きっかけは、私たちが運営する共創空間Open Innovation Biotope “Sea”へお問い合わせのメールをいただいたことでしたよね。

内田
そうですね。
私たち青山学院未来共創センターは、30年後の未来像「AOYAMA MIRAI VISION」実現に向けて、学院内外のステークホルダーとの間に新たなつながりを生むため、2025年に設置されたばかりの新しい組織です。


内田
そのために、これから幼稚園から大学までの教職員、在学生、卒業生も含めた共創を生み出すための空間をつくりたい。
そんな時、書籍『「行きたくなる」オフィス 集う場のデザイン(著・株式会社オカムラ ワークデザイン研究所 花田 愛/刊・彰国社)』に感銘を受けて。ぜひ、直接お話を伺いたいと相談したんです。

では、最初は「共創活動のパートナー」ではなく、「空間づくりのパートナー」をお探しだったんですね。


内田
そうですね。
ただ、場所を見て条件に合った提案をするだけではなく、「まだ言語化されていない我々の本当にやりたいこと」を一緒に顕在化させてくれるデザイナーさんと出会えるといいな、とは思っていましたね。

宮野
最初のメールに「デザイナーさんも同席してほしい」とリクエストいただいていて。せっかくなので、お二人に喜んでいただけるような場にしたいと思ったんです。
それで、本の著者である花田愛さんをはじめ、オカムラの共創空間Seaを担当したデザイナー・吉田直人さんにも同席してもらいました。

内田
それで当日、Seaに伺ったら本当にたくさんの人が出迎えてくれて驚きました。
若い方がいっぱいで、ワクワクしたのを覚えています。

宮野
私は「青山学院大学 副学長」という内田さんの肩書きに、すごくドキドキしていたんですけども……(笑)。お会いしたら、お二人とも本当に素敵な方で安心しました。
共創という言葉って、使われるフェーズによって指しているものがかなり違うと思っていて。対話の場づくりや関係性のデザインといった入口の話から、試行錯誤を経て最終的にビジネスや実装につながっていく出口の話まで、ひとつのプロセスの中で意味合いが変わっていくものだと思います。
でも、どんな空間をつくりたいかを話す中で、そうした共創の捉え方や目指している方向が、お二人と私たちでとても近いと感じられて。すごくうれしくなったんです。

井上
我々もシンパシーを感じて。
私は「2つ上の部活の先輩を見つけた!」みたいな気持ちになりました。


井上
まず立ち位置が似ているんですよね。
組織の大きな理念があって、青山学院未来共創センターもWORK MILLもそこに向かって共創活動をしていて。手段として、「場」と「メディア」に取り組んでいる。

岡本
ありがとうございます。私たちは先輩というよりも、「素敵な仲間」だと感じていますよ!
発信も含めて、お二人は新しい取り組みをどんどん始められますよね。場にどんどん熱量がたまっていくのを感じています。
青山学院未来共創センターのPodcastには、WORK MILLの二人も出演しています。

『taaaaarp(タープ)』があるのはこちらの間島記念館です。

間島記念館の3階へと向かっていくと……

廊下の突き当たりにあるのが、『taaaaarp(タープ)』の入り口。どんな空間になったのかは、またWORK MILLでお伝えできればと思っています。お楽しみに。
契約や発注ではなく、まずは同じ景色を一緒に見にいくところから
まずは空間づくりの話から始まったんですよね。具体的にはどのように進めていかれたのでしょうか?


井上
デザイナーの吉田さんが「一緒に視察に行きましょう」と声をかけてくれましたよね。

岡本
私たち共創ディレクター2名と営業メンバー1名、そしてデザイナーの吉田さんで鎌倉へ行って、つながりのある方々や場所をご紹介して。楽しかったですよね。


井上
実は当時、まだ契約も何もしていなくて。
私たちも、他の企業さんの話も聞いて検討をしている段階でした。「まだ発注できないんです」とも、正直に伝えていたんですが……。

宮野
私も「吉田さん、視察からご提案するんだ!」って驚いた記憶があります。一般的には、予算と要件を伺って、実際の場所の状態を確認しながら、空間レイアウトのご提案をしていくので。
でも、吉田さんの中で「青山学院さんの場合、『Sea』を作ったときと同じようなプロセスを一緒に進めていくのがいいのでは?」と考えていたんだと思います。


井上
あの時、吉田さんは同じ景色を見る中で、単なるヒアリングでは見えてこない「言語化できていないニーズ」を読み取ってくれたんだろうな、と思っていて。
視察中の反応も含めて我々を観察し、より深く理解しようとしてくれたのではないかな、と。


内田
思えば、その頃からなんとなく「一緒にやりましょう」という雰囲気になっていたのかもしれませんね。

井上
他にも「空間をつくる前にコンセプトを作ろう」「ステートメントを作ろう」とか、視察した後にハード面の空間設計だけでなく、ソフト面についてもいろいろお声掛けいただいて。
ずっと一緒に進めていきながら仲間を増やしていくような感覚でしたね。それがすごくいいな、と思いました。

内田
ちなみに、もともとこの施設に名前をつける予定はなかったんですよ。
いろいろなことを言語化していく中で、WORK MILLチームからご提案をいただいて、このスペースを「taaaaarp」と名づけることになりました。


井上
でも、言葉にするってアウトプットの前に刺激がないと出てこないんですよね。
この部分は、WORK MILLチームにご紹介いただいた、コピーライター・久岡崇裕さんとご一緒して。丁寧なヒアリングのもと、言葉を紡ぐことができました。

内田
この空間に何を期待しているのか。
それが言語化できたからこそ、「このカウンターはこうしよう」「こういう机がほしい」とみんなで目線を揃えて考えることができるようになったと感じています。

共創空間に数値目標はいらない?
具体的な空間については、これから作っていく段階だと思うのですが、目標や心がけていることはありますか?


内田
青山学院では、輩出したい人材像として「サーバント・リーダー(※)」という言葉を掲げています。
※AOYAMA VISIONでは、サーバント・リーダーは「自由で自立した存在として、他者に仕えるとともに、互いの価値を見出し、それを他の価値とつなぐことによって、新しい時代を創造する」存在と定義されている。taaaarpのステートメントでは、「人と人のあいだに、風を通すことのできる人」という表現に。


内田
ですから、私の中にありたい姿は朧げにあるのですが、それを目標として掲げるのではなく、目標自体も共創的でありたいと思ったんですよね。
そのため、明確な目標というより、「”つい”共創しちゃう場とは?」という問いを設けて、それをみんなで考えながら、そこに向かうといった、目標の立て方をしています。

井上
ちなみに、状態目標として2028年3月末時点で「未来共創コミュニティが組織・社会に貢献している」姿として設定していて。それがどういうことなのか、今も問い続けています。
目標というと利用者数やイベント数など数値目標を掲げたくなるのですが、共創空間においては、問い続けることが大切だと思っていて。

岡本
わかります。最初に完璧な空間を作って「さあ、ここで共創しましょう」ではないんですよね。
私たちオカムラの場合は、「人が活きる」がキーワードで。「人が活きる場、人が活きる社会を実現するために何が必要なのか?」を問い続けた先に、答えがある気がしているんです。
関係性と空間と活動の三位一体で「場」をつくる
WORK MILL共創ディレクターのお二人は、『taaaaarp(タープ)』での共創活動を近くで見ていて、いかがですか?


岡本
これまでの経験から、共創は「AとBが二項対立になりがちなところを、ゆるやかなグラデーションの中で新しいCの未来を見つけて作っていく」ものなのかな、と感じていて。
内田さん井上さんとのやりとりの中では、「私が思い描いていた共創はこれなのかもしれない!」と何度も思う場面がありました。こうやって同じ方向を向いて共創ができるお二人と出会えたことがとても嬉しいです。

宮野
最近、共創に関する論文を読むようになったんですけど、その中で「A + B → A’ + B’ + α 」という式に出会って。
これは、AとBの二者で何かを生み出そうとしたときに、関わるプロセスの中でAもBも少しずつ変わっていき、その結果として当初は想定していなかったαが立ち上がってくる、というイメージを表したものなんです。
『taaaaarp(タープ)』が大事にしているのは、AとBがどう出会って、AとBがどう変化するか。実は、「+α」はおまけのようなものなんだと、お二人と出会ってから気づきました。

井上
すごくわかります。どうしてもアウトプットを生み出すことに注目されがちですけど、何もアウトプットがなかったとしても、その過程で関係者に何か変容は起きているんですよね。
一緒にアウトプットを生む「togetherの共創」に加え、参加している人たちの認識が変容する「each otherの共創」があるのかもしれないな、と。

内田
アウトプットを目指してもいいと思うのですが、あらかじめゴールががっちり決められすぎていると分業になり、新しいものは生まれてこないんですよね。
だから、何かしらの共創が発揮されるときは、「つい」生まれていることが多いように感じます。関係性と空間と活動の三位一体というのかな?

岡本
みんな、「心のバリア」があると思うんですよ。
そこを壊した先に、A’ や B’が起こると感じています。ちょっと心がくすぐられる、そんな体験を重ねていくことで、共創空間の価値が広がっていくと思います。

井上
WORK MILLチームに伴走してもらえたおかげで、自分の創造性が上がった感覚もありました。心理的安全性が高かったこともあるんですけど、「このアイデア、先輩が笑ってくれてるから大丈夫かな」みたいな(笑)。
お二人にもっと喜んでほしくて、もっと楽しんでほしくて、どんどんアイデアが出てきた感覚はありますね。

宮野
打ち合わせが本当に楽しいんですよ! ついついお話するために、会いに行きたくなっちゃう。
「今日はデザインの話がメインだから、宮野さんは出席しなくても大丈夫だよ」って言われても……、行きたくなるんですよね(笑)。

気軽に助け合える心地よい関係性だから、共創が生まれる
改めて、どうしてこんな関係性を作れたんだと思いますか?


内田
自分たちだけでは完結できないから、多くの人たちが「共創」を求めていますよね。
だからこそ、困っているときに「困った、助けて」と言えたり、「自分はまだ答えを知らない、あなたの考えを聞かせて」と言えたりする姿勢が、大事になってくるのではないでしょうか。

井上
シーソーみたいな関係になるのが理想ですよね。一方が助けて終わりにするのではなく、助けてもらった側が「よし、もっと力になろう」と恩を返す。
それにまた返しあっていくことで、自分たちのアイデアが大きく膨らんで、結果として「+α」も生まれてくると信じています。

内田
二人と話しているときは、まさにこのシーソーの関係性でしたね。アイデアに付け足しされて、より良いものになっていく経験ができました。
いろいろご一緒してきましたが、2025年秋の教職員向けのセッション実施のタイミングでWORK MILLチームとの活動には一区切りがついたんです。
でも、岡本さんと宮野さんに会えなくなるのが寂しいね、となって。「共創対話会」という、共創を肴に語り合う会を作ったんですよね。これからも、ご一緒にやっていきたいなと思っています。

岡本
こちらこそ、よろしくお願いします! 共創は目的ではないので、「共創しましょう」からスタートすると思考も姿勢もガチガチになるな、と感じていて。
急がば回れじゃないですけど、プロセスを大事にしたいですよね。「この人たちと一緒に何かやりたいな」「今、この時を楽しくしたい」と思い続けた結果が共創になっていくのかな? と。
寄り道を楽しみながら、気づいたら共創できていた、そんな空間をぜひ『taaaaarp(タープ)』でも感じてもらいたいですね。

内田
本当ですね。
『taaaaarp』の空間が出来上がるのも、とても楽しみにしています。
みんなの想いがこもったスペース『taaaaarp(タープ)』はどんどん進化中。また、空間設計については改めてご紹介予定です。
WORK MILLでは本記事のように空間設計を含めた共創活動のお手伝いもしています。共創の進め方に迷いがある方は、ぜひ一度お問い合わせください。

2025年12月取材
取材・執筆=つるたちかこ
写真=栃久保誠
編集=鬼頭佳代/ノオト


