ぜんぶプロジェクト、キックオフ! 4人の実践者に聞く、自分の「やりたい」から会社を動かすヒント(富士通・オカムラ)

会社から求められたことをやることが、仕事。でも、それだけじゃ面白くないし、物足りない。
2025年7月30日、「もっと、ぜんぶで、生きていこう。」をステートメントに掲げるWORK MILLの新たなプロジェクトが共創空間Seaにてスタートしました。
その名も『「やりたい」からはじめる社内プロジェクトの育て方 ~職場でも「もっと、ぜんぶで、生きていこう。」』、通称「ぜんぶプロジェクト」です。
まずは、社内プロジェクト実践者4人をゲストに迎えたキックオフイベントの様子をレポートします。
「ぜんぶプロジェクト」とは?

WORK MILLメディアに登場してくださった方も含めたみんなで、職場でも、もっと、ぜんぶで生きていくヒントを探求する「場」を作りたい! と思い、この「ぜんぶプロジェクト」を企画しました。

宮野
そう語るのは、WORK MILL編集部メンバーで、プロジェクト発起人の宮野玖瑠実です。

今回は「もっと、ぜんぶで、生きていこう。」というステートメントに強く共感してくれた嶋田匠さんをモデレーターに迎えつつ、進行します。
嶋田さんはWORK MILLと“バイブス”が合っている方で、一気に意気投合しちゃいました。
このイベントを通じて、組織のためにも、自分のためにも仕事を通じて「ぜんぶ」で生きていける人を増やしていきたいと思っています。

宮野
これまで10年間、さまざまな角度から取材活動を行ってきたWORK MILL。このプロジェクトでは、過去の記事出演者に登壇してもらうなどイベントと記事を横断する取り組みにも挑戦。最新の活動や記事には盛り込みきれなかった話にも踏み込んでいきます。
自分のモヤモヤからスタートした趣味が役員まで伝わって社内プロジェクトへ発展
まず前半では、富士通株式会社から社内でスナックを企画した日水真理さん、Z世代コミュニティを立ち上げた廣木健志さんが現在の取り組みについてお話してくれました。

日水
2022年にWORK MILLで社内スナックの企画を取材いただいた日水です。
まりママって呼んでください。

日水
今日は、私が社内でスナック企画を実施するまでの軌跡をお伝えできればと思っています。


日水
入社1〜2年の頃、思うように職場で活躍できずモヤモヤしていた時期があったんです。ちょうどその頃に、プライベートでとあるゲストハウスへ遊びに行ったところ、肩書き関係なく家族のように過ごせる空間に心救われる経験をしました。
「いつか私も同じようにオープンにフラットに会話できる場を作りたい!」とはじめたのが『スナックまり』でした。


日水
「スナックまり」は実践の中で少しずつ形を変え発展していきましたが、初めて「スナックまり」をオープンしたのは今日のモデレーター・嶋田さんのやっている日替わり店長のBar『ソーシャルバーPORTO』なんです。


日水
「1日店長なんて無理だよぉ」とウジウジしていた私をチアーアップしてくれて、本当に感謝しています!
懐かしいね(笑)。

嶋田


日水
その時に初めて、自分が「主語」になった感覚を味わったんです。
趣味でスナックをオープンした成功体験を得て、この活動をキャリアに活かせないかと考えました。その頃コロナ禍だったため「会社でオンラインスナックから挑戦してみよう」と思い立ち、社内SNS上で仲間づくりを開始。熱い想いのままに企画を進め、約3ヶ月で第一回を開催しました。


日水
そんな中、これまで一度も話したことのなかった役員から『スナックまりをウェビナーでやってみない?』と社内SNS上で声がかかり、全社企画へと発展していきます。
思いもよらず、役職や肩書きを超えて社員が交流できる場をつくることができました。


日水
その後も活動は続き、ついには会社の施設でリアルスナックを開催することも実現しました。


日水
現在ではスナックまりで培われたコミュニティ形成スキルを活かして、当社施設である「Fujitsu Uvance Experience Center」の企画・運営に従事し、お客様と会社をつなぐことを仕事にしています。
これからも個と個で対話できるコミュニティの大切さを追求していく中で、私らしいキャリアを築いていけたらと考えています。
自分の問題意識を、社内制度を使ってカタチにする

廣木
2023年に富士通の若手社員が集まるコミュニティ「Fujitsu Gen Z Community」を立ち上げた廣木健志です。
エンジニアとして富士通に入社したのですが、インターネット広告の運用や新規事業を経て、現在はグローバルマーケティング本部でブランド戦略に従事しています。


廣木
社内SNSではこんなにも面白い若手社員が多いのにスポットライトが当たるのは、すでに何者かになっている人たちばかり。
そこにモヤモヤを抱き、「Z世代によるZ世代のためのブランド活動があってもいいのでは?」と考えるようになりました。


廣木
2020年から全社DXプロジェクト「フジトラ(Fujitsu Transformation)」がスタートし、業務外の「自分のやりたいこと」や「富士通を良くする活動」に勤務時間の10%を使える制度ができたのも大きかったですね。


廣木
社内での活動が、次第に企業をまたいだ価値創造へと発展していきました。
これまでに2,000名以上がイベントに参加し、企業コラボは60件ほど、約140社とのつながりを築くことができています。


廣木
富士通のサブチャンネルやサステナビリティ企画などさまざまなメンバープロジェクトが進行中です。
意識的に「社内から社外へ越境しよう」と考えていたのですか?

嶋田

廣木
越境の意識はあまりなかったですね。とにかく「Z世代」という軸で会社関係なく熱くなれる「場」を作りたかった。そう考えると、他社の若手同士がつながれることは、大きな価値になると考えています。
今は若手でも、5年、10年と年月を重ねていけばいろんな経験をして強者になっていく人もいるでしょう。そうなってからがさらに面白くなるはずです。
2人ともコミュニティの価値を心の底から信じていますよね。そのエネルギーの源はどこにあったのでしょうか?

嶋田

廣木
僕の場合、価値を信じているというより「自分のやりたいことができる場所に行きたい」という気持ちが強く、その結果がコミュニティだったという感覚です。先に場所を作ってしまったというか。

日水
私もそうかもしれません。まりママをはじめた頃の私って本当に悩みすぎっていうくらい悩んでいたので(笑)。
私と同じように悩んでいる人を助けたい、打ち明けられる場を作りたかった。それが派生して、コミュニティに発展したように思います。

なるほど。社内プロジェクトを立ち上げたい人がまず最初の一歩を踏み出すために必要なことはなんでしょうか?

嶋田

廣木
街中で1人が踊りはじめると、伝播して踊り出す人が出てくる海外の動画があるじゃないですか?
「Fujitsu Gen Z Community」も最初はたった1人からはじめたものでしたが、発信し続けていれば必ず賛同者は現れると信じていました。
だから、伝え続けることじゃないかな? ファーストペンギンとして踊り続けてほしいです。

日水
自分の活動や「やりたい」想いを褒めて、全面的に肯定してくれる仲間を見つけることだと思います。私は弱々な人間なので……(笑)。
そのためにも想いを内に留めておくのではなく発信する、言う! 「もやもやしている!」でもいいから口に出すことが最初の一歩になります。

廣木
誰かに愚痴を聞いてもらうだけでもいいですよね。次第に腹落ちしていくから。

日水
そうそう!
誰かに話す、聞いてもらうことでだんだん決まっていくこともあると思いますよ。
巻き込んでいるのか、巻き込まれているのかわからない。株式会社オカムラが万博で演劇に挑むまで
後半は株式会社オカムラから、社内外の共創活動を手掛ける岡本栄理、DX人財育成プログラムを運営する宇高沙織がそれぞれの活動を紹介しました。

岡本
2008年に経理として入社し、営業事務や秘書を経て2017年からWORK MILLのコミュニティマネージャーになりました。
経理や秘書として働いていた頃とは視点とは大きく変わったので、正直戸惑いが大きかったです。


岡本
関西出身で、2023年まで大阪で働いていたのでどうしても「万博」は切り離せない存在でした。オカムラ社内でも「万博プロジェクト」が立ち上がり、その中で活動することに。
最初は自分ごとにできなかったのですが、熱いパッションを持っている社外の方々に巻き込まれ、私も万博に深く関わっていくようになりました。



岡本
こうした活動を続けていくと「オカムラさんも万博に出たら?」と声をかけてもらえるようになったんです。


岡本
こんなチャンス、滅多にない。どうせなら「何か面白いことをしたい!」と会社の役員を説得して生まれたのが劇団「ザ・オカムラ座」です。

岡本
社員公募で役者を集めたのですが、10名の枠に108名もの応募がありました。
すごい……! 本当にみなさん楽しそうに演劇をしていますね。

嶋田

岡本
そうなんです。もう自分が巻き込まれているのか、巻き込んでいるのかわからないですよね(笑)。
社内・社外という境目を超えて、自分ごとを会社ごとにシフトしていく。種火がどんどん伝播していくのを見守ることができました。
やりたかったことを諦めない。思いを経営陣に伝えられる場をつくる

宇高
岡本さんに続きまして、オカムラ社内のDX人材育成プログラムを担当している宇高です。
私自身も普段から自分の「やりたい」に正直になって過ごしていて。お休みの日は、とある科学館で展示解説のボランティアも行っています。
宇宙とか深海、ロボット、暗号技術などに特に興味があるので、気になる方はぜひ後ほどお話しましょう!


宇高
またAR・VRのコンテンツを作るのが好きで、国交省主催のPLATEAU AWARD 2024でファイナリストになったこともあります。
すごいですね〜! どんな作品だったんですか?

嶋田

宇高
深海は、太陽の光が届かなくなる水深200メートル以降のこと。実は、虎ノ門周辺にそびえ立つビル群は200メートル以上あるんですよね。
それで「ダイオウイカが縦で泳ぐ姿を見てみたい……」と思い、自分でVR空間を作りました。


宇高
このままですと深海の話で終わってしまいそうなので、本題に行きます(笑)。
社内プロジェクト「DXLP」はDX風土を醸成するプロジェクトです。新規事業や業務改善のアイデアが現場から湧き上がる場所にしたいという思いで取り組んでいます。


宇高
今まで社員が経営陣に直談判できる機会が少なかったので、このプロジェクトではまず「やりたい」を伝える場を整えることからスタートしました。


宇高
現在5期目を迎え、これまでに200名以上の社員が参加しました。
社員の「やりたい」という気持ちが原動力となり、さまざまないいサービスが展開されているのを感じています。
社員の「やりたい」と出会うために工夫していることはありますか?

嶋田

宇高
生きていく中で、好きなものや昔やりたかったことが誰にでもあると思っているんです。でも、進学や就職では選ばなかった。そういうこともやりたいことのヒントになる、と思っていて。
過去に思い描きながらも実現できなかった「やりたい」ことも、別の方法でなら実現できるかもしれません。
次は「あなた」の番! 自身のやりたいを起点としたプロジェクトを描いてみよう
イベントの後半は、登壇者が4つのテーブルに分かれテーブルトークが行われました。参加者も、社内プロジェクトに興味がある人ばかり。

「コミュニティのゴールってどうやって設定している?」
「ターゲットは?」
「プロジェクトの熱量が異なる人をどう巻き込むか?」
「社内の風当たりに負けないためにはどうしたら?」
社内で、自分の「やりたい」を実現するための具体的なヒントを参加者同士で話し合いながら模索していきます。

また、このプロジェクトでは毎回、ワークシートなども準備し、それぞれが自分の「やりたい」を生かすプロジェクトについて考えが深まるようにサポートをしていきます。

「ぜんぶプロジェクト」の次回開催は2025年10月7日(火)を予定しています。この企画では、参加者向けのFacebookグループを開設し、参加者さん同士での交流を深めていく仕掛けも用意中です。ぜひぜひ、お気軽にご参加くださいませ!
【申込受付中】
10/7 鉄道業界から生まれる柔らかな共創~地域と描く社内プロジェクト
ゲスト:武部 俊寛さん
ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社 建築設計本部(さこすて担当)係長
菊池 祥子さん
京王電鉄株式会社 開発事業本部 課長
安定感のあるイメージを持たれやすい鉄道業界の中で、自身の「やりたい」という想いを熱源に、地域の人々を巻き込みながら、自社だからこそできるプロジェクトを育てあげているお二方。
社内で「自分らしさ」を活かしたプロジェクトを始めてみたい方、仲間の事例からヒントを得たい方、そして地域や組織との関わり方をもっと広げたい方にとって、新しい気づきや出会いの場になるはずです。ぜひご参加ください!
日時:2025年10月07日(火)19:00~21:00
場所:point0 marunouchi
(東京都千代田区丸の内2丁目5−1丸の内二丁目ビル 4F)
2025年7月取材
執筆=つるたちかこ
撮影=栃久保誠
編集=鬼頭佳代(ノオト)