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【クジラの眼-未来探索】 第17回「コロナ禍、ハイブリッド型の働き方とは!? ~ユニ・チャームの働き方から学ぶ~」

働く環境、働き方の調査・研究を30年以上続ける業界のレジェンド、鯨井による”SEA ACADEMY”潜入レポートシリーズ「クジラの眼 – 未来探索」。働く場や働き方に関する多彩なテーマについて、ゲストとWORK MILLプロジェクトメンバーによるダイアログスタイルで開催される“SEA ACADEMY” を題材に、鯨井のまなざしを通してこれからの「はたらく」を考えます。

 

―鯨井康志(くじらい・やすし)
オフィスにかかわるすべての人を幸せにするために、はたらく環境のあり方はいかにあるべきかを研究し、それを構築するための方法論やツールを開発する業務に従事。オフィスというきわめて学際的な対象を扱うために、常に広範囲な知見を積極的に獲得するよう30年以上努めている。主な著書は『オフィス事典』、『オフィス環境プランニング総覧』、『経営革新とオフィス環境』、『オフィス進化論』、『「はたらく」の未来予想図』など。

 

イントロダクション(オカムラ 西原正敏)

西原: 毎日、同じ時間同じ場所に出社するのではなく、必要な時間に最適な場所で働くスタイルが浸透しつつあります。これまで重視されていた「人が集積することのメリット」とリモートワークにおける「人が分散すること」のメリットを最大限引き出すために、今、働く時間や場所の柔軟性を高め、自分で働き方をデザインする力が求められています。

 

本日は、リモートワークが広がる中で、より生産性を上げるためにリモートと出社を融合させた「ハイブリッド型」の働き方を実践しているユニ・チャーム様から話をうかがい、どうすれば労働時間を減らしながら付加価値を創出できるか、それをどう管理職は評価していくかなどについて考えていきたいと思います。

 

 

プレゼンテーション「ユニ・チャーム株式会社の取組内容」(ユニ・チャーム 渡辺幸成)

渡辺:ユニ・チャームは、生活弱者の方だけでなく加齢や出産など一時的・一定期間不利益を被る方も含め、そうした人たちが健康で文化的な生活を過ごすことのできる「共生社会の実現」をミッションに掲げています。そして「NOLA&DOLA(Necessity of Life with Activities & Dreams of Life with Activities)」という企業理念のもとで、赤ちゃんからお年寄りまで、生活者が様々な負担から解放されるよう、心と体をやさしくサポートする商品を提供し、一人ひとりの夢を叶えたいという想いをもって活動をしています。

 

この「共生社会」と「NOLA&DOLA」を実現させる道のりには社員と会社の成長が不可欠です。社員一人ひとりが自身の夢やありたい姿を見つけ、その実現に向けて努力することがイノベーションを超えたミューテーション(突然変異)レベルの変化を社員にもたらします。そしてその結果、会社も「働きがいのある会社」へと生まれ変わることができると考えています。

 

社員が働きがいを自分で創る、自ら考え行動し成長する。その支援をするため、私たちは「人事制度」「働き方改革」「キャリア形成支援制度」「健康管理」といった取り組みを実施してきています。本日はその中の「働き方改革」についてコロナ禍での対応を中心に紹介したいと思います。

 

 

創造性の発揮と疲労蓄積防止

仕事をしていると目先の業務を優先させてしまいがちです。重要度・緊急度の高い仕事に対してもっと考える時間を増やす必要があると考え、創造性の発揮や重点課題解決に思考と行動を集中できるよう2017年にリモートワークを導入しました。働く時間と場所の選択肢を増やすことで、自身が集中できる時間と場所を考え、そして成果に責任を持つことは社員の自立を加速させることにつながります。

 

さらに、疲労蓄積による生産性の低下を防止するためと健康管理の観点から、勤務間インターバル制度を導入しています。8時間以上の休憩をとることを義務化して(10時間を努力目標)、睡眠時間を充分に確保し健康的な生活を過ごすことで公私の充実をはかるようにしています。

 

 

 

コミュニケーションルールの刷新

2018年からは、緊急時以外、休日の電話やメールを禁止しています。プライベートな時間、休息するための時間をしっかり確保するための制度です。これに加えて社内のコミュニケーション方法も刷新しました。調整や報告などの連絡は電話でなくメールやチャットで行い、思考を中断させないようにするといった意識改革も実施しています。

 

 

 

COVID-19流行下における対応

2020年2月、社員から一人の感染者も出さないことを目標として、出社を原則禁止しリモートワークに切り替えました。この間にリモートに適した業務、向かない業務が見えてきたので、同年7月からは完全リモートではなく、働き方は自分の意志と意欲、そして自己責任で決定することが重要だと考え、働く場所と時間を自ら選択できるよう週2回のリモートワークを推進するとともに、コアタイムも撤廃して自律的な働き方を促し「働きがいは自分でつくる」という考え方を加速させています。

 

今年の1月、緊急事態宣言下で、再び原則リモートワークを復活させました(出社時は上司承認が必要)。リモートワークでは創造的な思考業務に集中できるというメリットを存分に活かし、逆に五感を必要とする議論やインサイトの獲得などは出社して行う。リモートと出社、双方のメリットを最大限に活かしていくことが必要だと考え、私たちは「ハイブリッド型」の働き方を指向しています。

 

 

 

リモートワークで加速したこと

リモートワークをしてみてわかったこと、加速したことが二つあります。

 

一つ目は、多方面での無駄な会議や資料作成や上司の問いかけなどによって思考が中断されることが減り、効率化が進んだことです。デジタル技術の進化のお陰で、思いのほか快適に仕事ができることを社員は実感しています。

 

二つ目は、通勤時間を削減することにより創造的思考の時間が創出できたことです。さらに、通勤時間の削減は、肉体的・精神的負担の軽減、家族と過ごす時間が増えたことで人生の豊かさや子どもを育てる価値を実感させることにつながっています。働く意義を考えるようになった、自分の時間を上手に使い分けることができるようになった、という声も寄せられています。

 

 

 

リモートワークでの課題

今後リモートワークの定着が進むと効率化や省人化で総労働時間は減少させられるはずです。しかし、総労働時間を減らすだけでは付加価値の量は増えません。付加価値の創出に繋がる仕事ができるよう、個々の能力開発や組織の適正配置、デジタル活用などの人事戦略をアジャイルに進めていく必要があります。

 

また、管理職が仕事の仕方を見直さなければならない環境になったことも課題だと考えています。リモートワークによって業務内容やプロセスが見えにくくなり、部下の状況を知る必要が出てきています。また、そうなるとおのずと仕事の成果の良し悪しが晒されるようになります。このことは課題でもありますがテレワークの良い面と受け取ることもできそうです。

 

 

 

 

付加価値創出のために

価値創出の源泉は人材です。私たちは、人材育成を第一優先として取り組むことを全社の方針として打ち出し、その具体的な施策として、部門長評価における人材育成のウエイトを50%に引き上げました。部門長は部門の業績を上げるよう努めるのはもちろんですが、部下の育成を思考錯誤し実行しなければなりません。また、部下が達成感を実感できるよう、判定可能な目標設定と面談を徹底することで、目標達成に対する上司・部下の齟齬をなくし、評価に対する不満を無くしていくことにも取り組んでいます。

 

 

 

コミュニケーションや連帯感を高める工夫

上司が部下の状況を把握することと社員の連帯感を高めるため、コミュニケーションに関する施策を推進しています。例えば、始業時にはオンラインでラジオ体操をしています。心身の健康促進、プライベートと仕事の切り替え、そしてなにより社員同士がつながることによる孤独感の解消を目的に行っている活動です。また、毎日始業時と終業時に小集団単位でミーティングを実施しています。その日に行う重点業務とそのアウトプットがどうであったかを各自が発表し、メンバーで共有する。これが連帯感を高めることにつながっていると感じています。

 

 

 

ワークプレイスの刷新

出社したときの執務環境のあり方を見つめ直した結果、ワークプレイスを1フロア増設しました。これからは社員一人ひとりが成果の出る働き方を考え行動することが求められます。状況に応じて働く場を選べるよう、集中して重点業務を行う「Concentration-Room」、ミーティングや打ち合わせスペースとしての「Communication-Room」、TV会議やプロジェクトの場として「Interact-Room」、休憩や昼食などを通じてインフォーマルな交流を行うための「Refresh & Relax-Room」といった4つのコンセプトに基づくワークプレイスを整備しています。

 

リモートワークが常態化する中でオフィスのあり方も変わっていくはずです。ユニ・チャームではハイブリッド型の働き方をしている今こそ、オフィスに行きたくなる、人が集まりたくなる執務環境が求められているのです。

 

 

 

クロストーク(渡辺 × 西原)

 

仕事のやり方や意識の変化

西原:ここからは、コロナ禍のハイブリッド型の働き方について話題を絞って掘り下げていこうと思います。リモートワークをする中で、社員の方、管理職の方は実際にどのような意識を持って仕事をしているのでしょうか。以前と比べて変化したところはありますか。

 

渡辺:管理職は部下とのコミュニケーションに苦心しています。そのような悩みを持つようになったこと自体が変化だと言えるのかもしれません。コロナ禍はそうしたことを考え、行動を変えるきっかけになったと思っています。まだ最適解を模索している段階で、様々な情報を収集して、それを社内でシェアしているところです。

 

従業員は自律的な働き方を求められるようになりました。以前は、会社にいるだけで仕事をしている気になっていた社員が少なからずいたと思いますが、自分が成すべきアウトプットが何なのかをコミットして働くようになると、そこには義務も発生します。プロとしてアウトプットが求められるようになるわけですから、社員にとっては大変な時代になったのかもしれません。価値を創出するために各自が自身の強みを棚卸して、常にスキルのアップデートをしなければならなくなったのです。彼らの自覚を促すためにビジネスリテラシーや専門性を高める教育カリキュラムを受けられる環境を整え始めているところです。

 

プロセスよりも成果が晒されるようになったことも大きな変化だと思います。テレワークによって日々の行動が見えにくくなり、アウトプット評価のウエイトが高まりました。コミットした成果を上司がしっかり見ることで正しい評価をしていかなければなりません。

 

生産性の変化 リモートと出社の理想のバランス

西原:リモートワークによって生産性が落ちたと世間では言われていますが、ユニ・チャーム様ではどのように捉えていますか。また、その観点でリモートと出社の理想的な比率についてお聞かせください。

 

渡辺:弊社では、1P(ワン・ピー)と呼んでいる重点業務を各自が持って業務を進めています。リモートになっても、この1Pだけを見ると達成率は上がっていますので、その意味では全体の生産性は落ちていないと言えるかもしれません。リモートでは邪魔されることなく思考を集中できるのでそうした結果になったと考えられますが、そこにこそリモートのメリットがあると思います。

 

一方で出社には直接コミュニケーションができるというメリットがあります。ですから、プロジェクトの立ち上げ時や0から1を生むインサイトの獲得などにおいては、オフィスに出社して、五感を活用し活発な議論をすることが望まれます。

 

リモートと出社、双方のメリットを最大限生かせる最適解を各自が探して働いていくことが大切だと考え、ユニ・チャームではハイブリッド型の働き方をしています。その理想的なバランスは、業務の内容や個々の事情によって違ってくるので一概には言えませんが、個人的にはリモート6出社4、あるいはリモート7出社3くらいではないかと考えています。

 

コミュニケーションの変化

西原:リモートだとコミュニケーションが取りづらいことは事実だと思います。あらためて、リモートがコミュニケーションにもたらした変化やそれを解消するためにユニ・チャーム様がとっている方策についてお話しください。

 

渡辺:今までは、メンバー同士、阿吽の呼吸のようなもので仕事ができていた部分がありますが、リモートになると文字や言葉にしないと相手には伝わりません。コミュニケーションエラーを起こさないよう、各自が正しい情報を的確に伝える必要性が生じたと感じています。伝達力を鍛える上でコロナ禍はいい機会になったのかもしれません。

 

リモートで働いているとどうしても孤立感にさいなまれます。だからといって上司が始終かかわりを持つようにすると息苦しい。そこで、ゆるやかなつながりを保つことが重要だと考え、ラジオ体操や終業時のオンラインミーティング、組織の壁を越えた懇親会(1人5,000円の会費は会社が負担)などを実施しているところです。

 

出社した際はコミュニケーション不足の不満を解消せんがために雑談をしてしまいますが、それだけではなく、より質の高いコミュニケーションをより多くの人ととる工夫をすることで社員同士の関係性を高めることができるのではないかと考えています。

 

オフィスの位置づけと活用方法

西原:生産性を向上させるために、オフィスをどのように位置づけ、活用していきたいと考えていますか?

 

渡辺:いろいろな人とディスカッションしたい、自宅よりもいい環境で執務したい。コロナ禍でリモートワークを強いられている中、社員は様々なニーズを持っています。そういったニーズに応えられる場づくりをしていかなければなりません。会社と社員を相思相愛の関係にするためには、会社に行きたい、そこに集まりたいといったスペースをつくることが大切です。そのために個人の考えをできる限りヒアリングして最適解を探りオフィスに盛り込んでいきたいと思っています。オフィスフロアを削減するのではなく、働く場を各自が選択するときに「行きたい」と思われるオフィスをつくっていかなければならないと私たちは考えています。

 

会社と社員の関係

西原:本日のセミナーを通じて最後に一言ご意見をいただければと思います。

 

渡辺:弊社では、多様性を許容し受容しなければイノベーションやミューテーションは起こらないと考え、画一的な人事制度からフレキシブルな人事制度へと移行させてきました。これは、人材価値を最大化する取り組みで、それを達成するには、個々のニーズや能力といった人材の可視化を進め、適材適所の配置や多様なキャリアパスの整備が欠かせません。これからは社員と会社が互いに高め合うWin-Winの関係になっていくべきです。会社は社員の成長に応えることで社員に選ばれる存在にならなければいけませんし、社員は自らの働き方に責任を持ち価値を創出する努力をする、そんな関係でありたいと思っています。

 

おわりに ~良い無駄と悪い無駄~

リモートワークを強いられる中で「必要性の低い業務をあぶり出すことができた」「無駄な時間を削減することができた」という声をよく耳にします。コロナ禍は幸か不幸か、仕事そのものや働き方を見つめ直すきっかけを与えてくれました。私たちはこれまで何をしていたのだろうと反省するばかりです。

 

日々の暮らしの中でも「不要不急の外出を控える」ことが感染拡大予防対策として求められています。大切ではないこと、急がなくてもいいことは慎まなければいけない。つまり無駄なことはしないで過ごそうということです。

 

仕事でも家庭生活においても、私たちは今、無駄をできる限り取り除いた活動をしています。ここで少し心配になるのは、取り除いた無駄が本当に不要なものだったのかということ。よく考えると役に立っているものまで捨ててしまっているのではないかという疑念を持ってしまいます。

 

リモートワークで切り捨てて良かれと思っているものの中にも残しておくべき無駄があったかもしれません。そもそも無駄のまったくない仕事や生活はきっと息苦しい。ゆとりや豊かさを享受してくれるものまでを無駄の範疇に入れてカットしているのであれば、そこは見直す必要があると思います。コロナ禍が続く今のうちに本当の無駄は何か、良い無駄と悪い無駄を再点検しておくべきではないでしょうか。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。次回お会いする日までごきげんよう。さようなら!(鯨井)

 

 

登壇者のプロフィール

-渡辺幸成(わたなべ・ゆきなり) ユニ・チャーム株式会社 グローバル人事総務本部人事部長 兼 いきいき健康推進室長 兼 働き方改革推進室長
営業本部でキャリアをスタート。盛岡、仙台、東京、名古屋で小売業を中心とした営業活動を経験後、人事部門に異動。採用、教育、評価処遇、制度設計、人事労務を担当し現在に至る。まずはやってみる、何とかなるをモットーに、社員の働きがいと全社戦略を合致させることに日々試行錯誤しながら邁進中。

 

-西原正敏(にしはら・まさとし) 株式会社オカムラ 人事部 人事企画課 課長
2001年株式会社岡村製作所(現 株式会社オカムラ)入社。入社時より人事部配属となり、労務管理、新卒・中途採用、人事制度企画ほか人事領域全般について担当。現在は主に従業員の働きがい向上、生産性向上を目指した賃金制度、評価制度などの制度企画に携わっている。

 

■クジラの眼「未来探索」シリーズ 過去掲載記事
第15回「テレワークとオフィスワーカーの生産性 ~動機づけを中心として~」
第16回「生産性を上げて働くための組織と環境のあり方は? ~コロナ禍を経験して~」

 

2021年2月25日更新
取材月:2021年1月

テキスト:鯨井 康志

 

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