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【体験レポート】ワーケーションの価値って何だろう? ― 丹後で考える「はたらく・まなぶ・あそぶ」の重なり合い

元料亭のイノベーションハブ「ATARIYA」

2日目の午後は、与謝野町の元料亭を改装した「ATARIYA Tango Innovation Hub」へ。こちらは、今回のワーケーションをプロデュースいただいた、株式会社ウエダ本社が手掛ける施設です。

「ATARIYA」外観

単にリモートワークが行えるだけの場所ではなく、地域の方と外部の方の両方が集い、地域資源と結びついて新たな価値を生み出すための拠点として、2022年1月にオープンしました。

かつては「當里家(あたりや)」という立派な料亭で、地元の方々に親しまれた場所。結婚式や卒業祝い、誕生日など、多くの方の人生の節目とともに月日を経てきた、かけがえのない地域資産です。

そんな地域のハブとしての存在感を大切に、新しく生まれ変わった「ATARIYA」には、さまざまな仕掛けが施されています。

セラースペース「TANGO CELLAR」では、地元企業の商品や職人の技術を紹介

ハード面で言えば、元々の建物を活かした内装に、丹後地域の企業の素材を利用した家具を設置。さらに、地元企業の商品を展示したセラースペースを設け、来訪者が丹後の技術や資源に親しむきっかけを生み出しています。他にも、長テーブルに掘りごたつの部屋、庭とも行き来しやすいキッチンスペース、イベント・セミナーに最適なスタジオなど、充実の設え。コワーキングから地域の憩いの場としての活用まで、多様な使い方が可能です。

長テーブルに掘りごたつ。個人ワークにも、複数人での会話にも使いやすい

ソフト面についても、丹後以外からも人を集めて地域との懸け橋となるために、外部企業との連携や、共同でのイベント開催などの取り込みを進めています。今回のワーケーションプログラムでも、実際に2階のスタジオを利用して講演を伺いました。

元々の大広間を利用したスタジオ

丹後織物を日常に ― たてつなぎ

登壇されたのは、「たてつなぎ」の臼井勇人さん。たてつなぎは、丹後の織物に関わる同世代3名によるグループで、丹後ちりめんを使ったオーダーメイドギフトや、地元企業とのコラボレーション商品を手掛けています。

「たてつなぎ」の臼井勇人さん(臼井織物株式会社)

丹後は織物の一大産地であるにもかかわらず、その多くは外部向け。地域に暮らす人々と織物との関わりが薄いと感じたことから、「地域の人に使ってもらえる商品をつくりたい」との思いで活動していると臼井さんは話します。

実は、それぞれが織元・印刷・デザインという異なる分野で織物産地にたずさわる3人。互いの力を結集し、試行錯誤を経て誕生したのは、ポリエステル100%のちりめん生地にインクジェットプリントを掛け合わせる技術でした。その結果、日常使いができる強度を持つ、小ロット印刷によるオリジナル柄の商品を提供できるようになったのです。

中でも、丹後で愛される牛乳「ヒラヤミルク」(平林乳業株式会社)とコラボした柄のポーチは想像以上の反響を呼び、なんと約2時間半で完売!

「ヒラヤミルクポーチ」は、セラースペースにも展示されている

手で触るとわかりましたが、たしかに非常にしっかりとした生地で、しかも(域外の人間でも欲しくなるほど)かわいい。普段から親しんでいる方の愛着はなおさらでしょう。実際に、多くは地元からの購入だったそうで、臼井さんたちの想いが少しずつ丹後地域の方へ広がりつつあることが感じられました。

振り返りも忘れずに! ワーケーション体験から語らう

2日目の最後に、「ATARIYA」プロデューサー・ウエダ本社代表の岡村充泰さんとWORK MILLチームで、ワーケーションの意義や今後の展開について意見交換を行いました。

普段は勤務地も職種もさまざまな、WORK MILLのプロジェクトメンバーたち。通常とは異なる環境に身を置いている影響もあってか、一人ひとりから率直な意見や感想が出てきます。

例えば、訪れる側としては、余白や休みへの罪悪感、通常業務との両立への不安などから、ワーケーションへの懐疑的な声が多いこと。それでも、行けば必ず学びがあると今回実感したこと。受け入れ側としては、観光要素ばかりではなく、産業や人といった地域資源と結びつける取り組みがもっと必要ということなど。

対話を繰り広げる皆の言葉や表情には、自分たちで体験したからこその実感がこもっているのがわかります。現状への反省も含めて、よい点や改善点、さらにはワーケーションが持つ可能性にも話は広がり、あっという間に時間が過ぎていきました。

「はたらく、まなぶ、あそぶ」の重なり合い

わたし自身が1泊2日の体験を通して感じたのは、まさに「『仕事(Work)』でもあり『休暇(Vacation)』でもあるのがワーケーション」という、シンプルなもの。なぜかというと、「はたらく、まなぶ、あそぶ」が重なり合う中で経験が形づくられていて、明確に分けられるものではなかったからです。

もちろん、リゾート地へ行って通常業務をリモートでこなし、きっちり終業後に観光を楽しむ場合もあれば、地方の合宿所に缶詰めになって会議をする場合もあるでしょう。ワーケーションの中身や得られるものは、目的・行き先の特性・参加者の意識等によっても大きく変わってきます。(そのため、事前の目的整理、目的に応じた行き先選び、事後の振り返りを行うと、より意義を実感できると思います)

ただわたしは、「はたらく、まなぶ、あそぶ」の重なり合いを実体験するところに、ワーケーションの一つの価値があると感じました。自身や所属先だけの世界から一歩踏み出して、地域の人や資産とつながり合い、そこでの経験から新しい視点や問いを発見する。「仕事」の枠にも「休暇」の枠にもおさまりきりませんが、そうした「第3の枠」の機会を持つことは、企業にとっても、働く一人の人間にとっても、新たな価値を生み出すうえで非常に重要になるはずです。

働きながら学び、遊びながら気づきを得て、仕事を含めた人生全体に還元していく。そんなきっかけを提供してくれるワーケーションが、働き方・生き方の選択肢として当たり前になる社会は、すぐそこに来ているかもしれません。

2022年6月取材

執筆:前田英里(株式会社オカムラ)
写真:WORK MILL