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上昇志向が必要な理由 現状維持という幻想をやめよう(澤円)

仕事でもプライベートでも、やりたいことは山のようにある。同時に、周りからのいろいろな頼まれごとにも向き合っていくと、いつの間にか予定はいつもパンパンに。この働き方、暮らし方は思っていたのと、ちょっと違う気がする……。そんなときに必要なのは、こだわりや常識、思い込みを手放すことなのかもしれません。連載「やめるための言葉」では、圓窓代表取締役・澤円さんと一緒に「やめること」について考えていきます。

現状維持最高!ってボクも思います。

現状維持って言葉、あなたはどう受け止めますか?

「成長意欲を持たないという後ろ向きな言葉」
「新しい変化を受け入れないという排他的な言葉」

そんなふうに「ネガティブな言葉」と感じる方もおられるのではないでしょうか?

その一方で「現状のままずっといられたらいいのに……」と思う人も中にはいるのではないでしょうか。正直、ボクは「現状維持ができるならそれに越したことはない!」って思います。今のままでずっといられるんだったら、それが一番幸せだと心から思ってます。

意外に思う方もいるかもしれませんが、これは本当のことなのです。現状維持マインド、最高!

そんなボクが「現状維持を望むキャラクターの代表選手」として尊敬しているのが、ピーターパンです。ピーターパン先輩についてより一層理解を深めようと、ChatGPTとこんなやりとりをしました。

Q: ピーターパンは現状維持を望むキャラクターですか?

A:ピーターパンは、確かに現状維持を望むキャラクターとして描かれています。
ジェームス・M・バリーの原作『ピーターパン』において、ピーターパンはネバーランドという空想の島で永遠に少年のまま過ごすことを選んでいます。以下の点から、ピーターパンが現状維持を望むキャラクターであると言えます。

1. 永遠の少年:ピーターパンは成長することを拒否し、永遠に子供のままでいたいと考えています。彼は大人になることを恐れ、子供時代の楽しさや自由を維持したいと望んでいます。

2. ネバーランドの存在:ネバーランド自体が現実世界とは異なる場所で、時間が止まっているような空間です。この島では子供たちは成長せず、冒険と遊びの生活を続けることができます。ピーターパンはこの場所を離れずに過ごすことを選びます。

3. 大人になることの拒否: 作中でピーターパンは何度も大人になることを嫌がり、それに伴う責任や義務から逃れたいと考えています。彼は大人の世界を退屈で窮屈なものとして見ており、子供の無邪気さや自由を重視します。

4. 過去の回避: ピーターパンは過去の出来事に囚われず、常に現在の瞬間を楽しむことに集中しています。彼は過去を振り返ることや未来を計画することを避け、現在の楽しさを最大限に生かそうとします。

これらの要素から、ピーターパンは現状維持を望むキャラクターであり、変化や成長を避けて永遠に子供のままでいることを選んでいると言えます。

「ピーターパン先輩! ついていきます!」と言いたくなるほどに、現状維持という面においては完璧な思考と振る舞いをしておられます。マジ尊敬。

ただ、残念ながら人間世界でこれを実現するのは少々無理があります。なぜならば、環境が違うからですね。今我々が暮らしている世界は、ネバーランドではありません。

容赦なく時間は流れて人は歳をとり、資本主義社会のエコシステムの中で、何らかの経済的な成長を促されることに影響を受けずにはいられないのです。

そんな中で「現状維持」を望み、成長を拒否することは、すなわち「劣化」や「堕落」につながりかねないのです。なんという残酷な世界!

水平飛行をするには4つの力を理解しなくてはならない

今ボクは、ロンドンに来ています。こちらにはJALさんに運んでいただいたのですが、機内でとても面白い動画に出会いました。

この動画の中で、飛行機が飛ぶ仕組みに関して説明があったのですが、これが「現状維持マインド」にも繋がるなぁと思いました。

飛行機が飛ぶ時、「推力」「揚力」「抗力」「重力」の4つの力の影響を受けます。そして、これらの4つの力は大きくふたつに分類できます。

  • 飛ぶための力=推力・揚力
  • 飛ぶのを邪魔する力=抗力・重力

飛行機には、ジェットエンジンもしくはプロペラエンジンが取り付けられていて、その「推力」で機体を前方向に強く押し出します。

そして、翼に取り付けられた様々な機構を用いて、飛行機を浮かび上がらせる「揚力」を生み出します。

エンジンと翼の操作にはパイロットの技術が必要で、厳しい訓練によってその技術を習得することになります。ただ、推力だけあっても揚力がなければ浮き上がることはできないし、揚力だけあっても推力がなければ飛び続けることはできません。

一方、抗力と重力は、常に飛行機にのしかかる力です。そして、この2つは飛行機の都合なんて関係なく押し寄せる力です。前に進めば押し戻そうとする抗力(=空気抵抗)が発生しますし、重力は常に物体に対して働きかけてきます。

すなわち、推力と揚力が弱まれば、スピードは落ち、地面へと落下してしまう。推力と揚力を出し続けなければ、水平飛行すらできないのが飛行機なのです。

現状維持にも「上昇志向」が求められる

言うまでもなく、飛行機の話はキャリアの喩えです。現状維持でOKと思っても、何もしなければあっという間にジリ貧になってしまうのがキャリアというものです。

キャリアにおいて重力に当たるものは「経験年数に伴う期待値の増大」などがあるでしょう。「社会人歴がXX年ならこれくらいできるよね」という期待値は、常にビジネスパーソンにのしかかってきます。

そして、キャリアにおいて抗力に当たるのは「ビジネス環境の変化」です。人口減少や国際競争のさらなる激化、世界経済の不安定さなど、ビジネスを取り巻く環境は常に変化をしています。これは、「今まで通りにやっていればOK」という安定思考を打ち砕くような抗力として向かってくるのです。

そんな状況で、テクノロジーが果たす役割はとても大きくなっています。生成AIがどんどん進化する昨今、仕事への向き合い方を一気に変えていかないといけなくなってきました。

今まで人手でやっていたことが、どんどん生成AIによって置き換えられていこうとしています。これを「抗力」と見るか「揚力」と見るかが、今後のビジネスパーソンの生き方で最重要項目となるでしょう。

テクノロジーは、抗力にもなるし揚力にもなる、飛行機にとっての「空気」のような存在です。単なる空気抵抗にするのか、翼をコントロールして揚力に変えるのかは、ビジネスパーソン一人ひとりの意識次第。

ビジネスシーンで飛び続けるためには、テクノロジーを味方につけて大きな揚力にすることが大事です。

そして、推力を生み出すのは「未来志向」。「この先もっと面白くしていこう」と思いながら仕事をすれば、自然と前向きな思考になります。過去を振り返りながら仕事をするのではなく、自分の未来を作るぞっていう意識が推力に変わります。

揚力と推力を味方につけて、ビジネスの世界をどんどん飛び回りましょう!

アイキャッチ制作=サンノ
編集=ノオト