無責任なことを言ってくれる社外の相談相手を作る 「一人で抱え込む」のをやめよう(澤円)
仕事でもプライベートでも、やりたいことは山のようにある。同時に、周りからのいろいろな頼まれごとにも向き合っていくと、いつの間にか予定はいつもパンパンに。この働き方、暮らし方は思っていたのと、ちょっと違う気がする……。そんなときに必要なのは、こだわりや常識、思い込みを手放すことなのかもしれません。連載「やめるための言葉」では、圓窓代表取締役・澤円さんと一緒に「やめること」について考えていきます。
一人で仕事をするのは本業に集中するため
「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」
アフリカの諺としてよく紹介される言葉です。これはどちらがいいとか悪いとかではなくて、仕事の内容によって判断すればいいと思っています。
ボクは「ぼっち社長」で、誰も雇わずに一人で仕事をしています。そのおかげで、めちゃくちゃ素早く動けますし、判断に時間がかかることもありません。
ただし、出来ることが限られていることも同時に理解しています。また、本業と違うことに時間を使ってしまうと、素早さまで失われてしまいます。
なので、ボクの場合はいわゆる間接業務はどんどん外部委託をして、「早く一人で」を最大化するようにしています。
間接業務を抱え込むということは、ボクに取っては死活問題です。本業以外に時間を使ってしまうことは、そのまま売り上げの減少に直結します。独立して会社をやっている人やフリーランスで働いている人は、この辺の肌感覚がないと生き延びるのは難しいでしょう。
その一方で、会社勤めの人は「自分があれこれ抱え込んでいる状態」を知覚することができない場合があります。なぜかというと、会社という仕組みの中で仕事をしていると、自分のやらなくちゃいけない業務範囲が曖昧になる場面が頻繁に出てくるからです。
なぜ「会社」が存在するのか
会社の存在意義は、「たくさんの人で大きな社会貢献を生み出す」ということだとボクは理解しています。どんな会社も、社会貢献をするために存在しています。
その社会貢献を最大化するためには、複数の人たちで役割分担をして、全タスクがスムーズに回るようにすることが求められます。
自分の得意な業務分野での活躍を各個人が最大化すれば、会社全体の社会貢献のサイズが大きくなるからです。例えば製造業なら、材料の調達、商品開発、製品生産、品質管理、マーケティング、セールス、製品サポート、人事、総務、経理、財務、法務……などなどいくつもの役割の人たちがそれぞれの立場で仕事をすることでビジネスが回ります。
「そんな簡単なことはいちいち説明されんでも分かるわ!」という声が聞こえてきそうです。でも、この簡単なことが分からなくなる場面が、仕事においてはしょっちゅう発生するんですよね。
いわゆる「一人で抱え込んでいる状態」というやつです。他の人に渡せばさっさと進むはずのことを、なぜか自分のところで止めてしまっている。制度上の不備や、例外的な問題も含まれると思います。
しかし、大抵の場合は「心の余裕がないこと」が、抱え込みを発生させる理由としては大きいように思います。
「この件は誰に聞けばいいかわからない……」
「わー、この処理わからないけど、先輩に聞いたらまた怒られそうだしなー……」
「こんなこと相談したら、同期からバカにされそうで嫌だな……」
「昨日も徹夜だったし頭回らないや……。でも、みんな頑張ってるし自分も……」
どれも会社って場においては日常茶飯事に起きてそうですよね。実際のところ、ボクは若い頃に全パターン体験しています。
そして、抱え込んだことでいい結果に繋がったことは皆無です。解決までの時間が長くなっただけで、百害あって一利なしでした。では、どうすればよかったんでしょう?
相談相手をあらかじめ作っておく
もしも、前述のヤバい状態が常に続いているとしたら、原因は2つ。
会社そのものがヤバいか、あなたに向いてない会社で働いているかのどちらかでしょう。構造的欠陥があるか、自分がその構造に適応できないか、とも言い換えられますね。いずれにせよ、転職した方がよさそうです。そんなところにいたら、本当に潰れてしまいますよ。
そうではなく、「ときどき一人で抱え込む場面に出くわす」という人に向けてのアドバイスは、「まともに働けている間に、とにかく相談相手を作っておく」ということです。これは、社内でも社外でも構いません。全く仕事に関係ない人でも構いません。とにかく自分の置かれている状況を言葉にして話せる相手を作っておけばいいのです。
「今自分はXXという状態で……」と話すことで、自分自身が頭の整理ができるかもしれません。人間は誰かに説明しようと思うと、頭が整理できるものです。そのためなら、状況全てが把握できるような立場の人(同僚や先輩、マネージャーなど)である必要はないでしょう。
あなたのことを客観視できて、全体をなんとなく俯瞰できる人なら、気軽に客観的な意見をもらえるかもしれません。
「大変だね〜〜、1日くらいサボって推しのライブでも行きなよ〜」くらいの無責任なアドバイスをくれる人くらいがちょうどいいかもしれないですね。
注意が必要なのは、なんでもかんでも持論でねじ伏せようとする相手です。
「自分が若いころに比べれば、そんなものは苦労のうちに入らない!」
「MBAで勉強したボクとしては、この業務のこの部分が非効率だからあなたはここのスキルを強化して……」
抱え込んでしんどい時に、こんなん言われても困りませんか?(笑)
もっとある意味で無責任に、ふっと力が抜けるようなことを言ってくれる相手を作るのは、人生長い目で見ると大事だと思います。
出会う場所がないという方は、ネットの力を使いましょう。今や、ネット上にはさまざまなコミュニティができています。お金儲けを謳うようなところは避けつつ、自分に合ったコミュニティを探すのも、結構楽しい作業です。それこそ、ボクのオンラインサロンでも大歓迎です。
社外の知り合いを作って、ちょっとした相談ができるようになると、自分の状況をメタ認知しやすくなるものです。ぜひ試してみてくださいね。
アイキャッチ制作=サンノ
編集=ノオト