会議の目的は次のアクションを決めること 「持ち帰って判断する」をやめよう(澤円)
仕事でもプライベートでも、やりたいことは山のようにある。同時に、周りからのいろいろな頼まれごとにも向き合っていくと、いつの間にか予定はいつもパンパンに。この働き方、暮らし方は思っていたのと、ちょっと違う気がする……。そんなときに必要なのは、こだわりや常識、思い込みを手放すことなのかもしれません。連載「やめるための言葉」では、圓窓代表取締役・澤円さんと一緒に「やめること」について考えていきます。
忌み嫌われていたシリコンバレーツアーの内側
世界のテクノロジーや最新ビジネスの中心地、シリコンバレー。今でもその存在感が色あせることはありません。数多くの起業家がシリコンバレーでの成功を夢見て、今でも世界中から集まっています。
シリコンバレーでビジネスをしている人たちとお会いすると、本当に素晴らしい刺激を受けますし、自分の仕事へのモチベーションもアップします。その刺激を求めて、「ぜひ会ってお話しさせてください!」と日本からもたくさんの人たちがシリコンバレーを訪れています。
シリコンバレーツアーと称して、日本の旅行会社が現地の会社を視察するツアーを組んだりして、バスであちこちの企業を回るプランを立ててくれて、「日本企業のえらい人たち」が、「世界の最先端の地域での情報収集のために」忙しい合間を縫ってアメリカに渡るわけです。
そのえらい人たちには、たくさんのお付きの人たちが随行していて、ちょっとした大名行列的様相を呈したりしておりました。
しかし、現地の人たちからすると、日本人は「できれば会いたくない」「むしろ絶対時間を割きたくない」という存在になってきているようです。
もちろん、ウェルカムな人や会社もありますが、何度かネガティブな体験をしてしまった人たちは「日本人お断り」を掲げていたりします。「日本人は礼儀正しいし、マナーも悪くないし、嫌われる理由なんてないのでは?」と思う方もいらっしゃいますよね。確かにそれも一つの日本人の素晴らしいポイントではあります。
しかし、シリコンバレーで仕事をしている人たちからすると、日本人のある側面が「とてもじゃないけど耐えられない」そうなのです。
現地で何も決まらない
シリコンバレーの起業家の中には、日本企業からのツアーの人たちに対して、大きな期待を寄せている人もいます。
「日本の大企業の役職者が来るんだから、ビジネスの話を大いにしよう」てな感じで、腕まくりして待っていたりするわけです。
で、実際に訪問してきた人はというと……
・英語でのプレゼンテーションの最中に居眠りをする
・質問は?と問い掛けても反応がない
・結局通訳を介してやり取りすると、本質的な話とは程遠いトンチンカンな質問が来る
こんな有様なわけです。
そして、「まぁそれでも日本の巨大企業とコラボできるならそれでもいいか」ということで「では、今後どんなビジネスが御社とできますか?」と問いかけると……
「私には権限がないので、持ち帰って検討します」
という回答が飛んできたりするわけです。これ、日本では当たり前に思うかもしれませんけど、起業家からするともはやテロのレベルです。
一言で表すと「あんたら何しにきたんだ」がシリコンバレーの起業家の本音です。時々、「では、今後お付き合いするにあたってスモールスタートで……」なんて言い出して、1日分の資金にも満たない金額を提示したりするわけです。
そして、「アライアンス契約のためにはあとゼロが三つ足りませんよ?」と問い詰めると、前述の必殺技が繰り出されるわけです。
「日本に帰ってから、改めて検討します」
ま。これじゃ話にならんですよね。
判断できない会議は必要ない
「持ち帰って検討する」というのは、日本ではしょっちゅう出てくるセリフなので、「何がおかしいの?」って思う方もいますよね。
でも、これめちゃくちゃダメです。本当にダメです。なぜかといえば、会議の中でなにかしらの結論を出そうとしないということは、その会議自体が無駄だからです。
結論が出ない会議を開くくらいなら、他の方法で情報共有すればいいんです。メールのやり取りでも、Slackなどのチャンネルでも、他に手はいくらでもあるはず。「時間と空間を共有する」という超ハイコストな会議の時間を、完全に無駄にするのが「持ち帰って検討します」の言葉です。
持ち帰らず、「その場でできるなんらかの判断」をしようと思うのが、デキるビジネスパーソンの基本動作です。「私はいつまでに何をします」と宣言することこそ、会議で求められる言動です。
権限がない人間が会議に出ている時点で言語道断。連絡係に過ぎない人間が会議にいるなんてのは、本当にあっちゃいけないことなのです。それならITツールで済ませないと、時間がいくらあっても足りません。
会議というのは、何かしらの結論を出すことと、次のアクションを決めるために開かれる必要があります。それができないなら、会議は開いちゃいけません。
生産性向上だの働き方改革だの口にするなら、「会議で決断する」を徹底することからスタートする必要があるでしょう。ぜひ、皆さんの普段の行動を見直してください。
あなたは、会議で決断できていますか?
アイキャッチ制作=サンノ
編集=ノオト