働く環境を変え、働き方を変え、生き方を変える。

WORK MILL

EN JP

完全な人間なんていないーー「カッコつける」のをやめよう(澤円)

仕事でもプライベートでも、やりたいことは山のようにある。同時に、周りからのいろいろな頼まれごとにも向き合っていくと、いつの間にか予定はいつもパンパンに。この働き方、暮らし方は思っていたのと、ちょっと違う気がする……。そんなときに必要なのは、こだわりや常識、思い込みを手放すことなのかもしれません。連載「やめるための言葉」では、圓窓代表取締役・澤円さんと一緒に「やめること」について考えていきます。

カッコよさに憧れるのは大事なマインドセット

皆さんこんにちは、澤です。年も明けて2023年、めでたく連載も第三回目! 張り切って参りましょう。

さて、今回のテーマは「カッコつける」です。誰しも子どもの頃に「カッコいいなぁ」と感じる対象があったのではないでしょうか。

アニメに出てくるヒーロー・ヒロインかもしれないし、運動会で大活躍する同級生かもしれないし、近所のお姉さん・お兄さんかもしれないし。

「カッコいい人」に憧れるのは、めちゃくちゃ自然な心の動きであり、自分を高めようとする原動力にもなりえます。

先般行われたサッカーのワールドカップで、アルゼンチンが優勝しましたね。アルゼンチンの代表チームの中には、キャプテンであるメッシのカッコよさに憧れてサッカーを始めた選手が何人もいたそうです。

そんなサッカー少年たちが、ひたすらにカッコいい存在だったメッシと一緒にプレーして優勝を体験するとか、もはや映画のストーリーのようですね。「カッコよさに憧れる」ことが、厳しい練習や大きなプレッシャーに耐えるモチベーションになりえる好例ではないでしょうか。

カッコよさに憧れすぎている状態を「厨二病」と言って揶揄する人もいますが、ボクは全然アリだと思っています。世の中で成功している人たちは、超重度の厨二病を拗らせている人もウヨウヨいます。イーロン・マスクさんをその代表例に挙げる人も少なくないようです。


カッコいい状態だけで生きるのは大変

さてさて、普段お仕事をする中で「カッコよくありたい」と思う人は多いのではないでしょうか。少なくとも「カッコ悪いところは見せたくない」と思うのは、とても自然なことだと思います。

というのも、「カッコ悪い状態」を見せることは、キャリアリスクにつながる場合もあるからです。カッコ悪いという状態は、すなわち仕事がうまくいっていない時、何か失敗をしてしまっている時、物事をコントロールできていない時である場合が多いのではないでしょうか。

何かしらの操作ミスでパソコンがいうこと聞いてくれなくなって(たいていテクノロジーは、ここ一番というときにエラーを出してくれたりする)、画面の前で変な汗をかいてワタワタと慌てるなんて有様は、カッコよさとは対極の状態ですよね。

毎日この状態を見せているのは、キャリアの観点で相当ヤバいわけです。となると、このような状態はできるだけ他人には見せたくない、表面だけでもカッコをつけておかなくちゃ……と思うのも無理からぬ話です。

でも、このようなカッコつけは事をさらにややこしくしてしまう場合もあります。

できないことをできないと言えないとか、知らないことを知らないと言えないとか、そんな環境は健全ではないでしょう。

とはいえ、「そんなこともできないのか」「それ知らないとか常識ないね」なんてフィードバックが返ってくることを想像すると、なかなか怖くて言い出せないものでしょう。ボク自身もそうでしたし。

ガタピシした姿を見せられればキャリアアップは楽になる

ただ、このように「他人の目を気にしすぎてしまう」という状態は、キャリアアップにはあまりプラスには作用しないとボクは思います。相対的評価ばかりに気を取られてしまっていると、幸せなキャリアアップは遠ざかってしまうのではないでしょうか。

自分と他人は違う、他人にできることを自分ができないのは仕方がないことだ、と割り切れると、自分がやることに集中できると思います。

自分の得意分野がしっかりとある人は、できないことをできないと言いやすくなります。ボク自身のことを振り返ってみても、これは間違いないと思います。

ボクが「これができない、あれは知らない」と言えなかった時代は、「得意分野」が明確ではない状態でした。

30歳前後の頃、若手として甘えるわけにもいかず、かといってベテラン勢には太刀打ちできない。そして、組織はマネジメントが確立されておらず、パワハラ・モラハラが横行してしました。その時が、キャリアの中でも一番しんどかったですね。

でも、運よく「社内外にできる人がほとんどいない得意分野」が自分の中にできて、かつ社内でもその分野の仕事が増えてきたことで潮目が変わりました。自分の得意分野に集中することで、苦手な部分を他の人に頼みやすくなったのです。

得意分野で活躍すれば「カッコいい自分」を見せることができますし、できないこと・知らないことを素直に出して「カッコ悪い自分」を見せることを恐れなければ「近寄りやすい人」というタグをつけることができます。

Web3時代は「個の時代」と呼ばれたりもします。ただ、これは「個として全てやらなくてはならない」ということではなく、「個がそれぞれの得意領域で活躍し、その相乗効果で世界を動かしていく」と解釈した方が適切だと思っています。

そのためには、カッコいい自分・カッコ悪い自分の両面をどんどん開示していくことが不可欠です。ジョン・レノンはこんな言葉を残しています。

僕らは、自分のすばらしさと不完全さのなかで、何よりも自分自身を愛することから学ばなければいけない。

自分自身を愛することって、簡単なようでなかなかできない人もいますよね。

ボク自身もそうです。でも、不完全な自分を受け止めないことには、カッコ悪い姿を見せる勇気は湧かないものでしょう。

「完全な人間なんていないんだ」という極めて当たり前のことを、今一度噛み締めることが、結局「カッコいい自分」を作るためには一番の近道なのかもしれません。

編集:ノオト